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2013年を振り返る(5) [SF・ミステリ] [年頭回顧]

 2013年に読んだSF・ミステリなどのジャンル小説のうち、印象に残ったものについてまとめてみます。なお、あくまで「2013年に私が読んだ」という意味であって、出版時期とは必ずしも関係ありません。

 まず国内作品ですが、何と言っても昨年は、過去50年について、1年1作、各年を代表するSF短篇を選び、著者の重複なく、総計50著者による名作50作を収録する、日本SF作家クラブ創立50年周年記念アンソロジー、

『日本SF短篇50』全五巻、

が出版された年でした。日本を代表するSF作家と代表作がコンパクトにまとまっていますし、これに、

『てのひらの宇宙 星雲賞短編SF傑作選』(大森望:編)、

を加えた全六冊(作品の重複なし)を読むだけで、日本SF史の全貌を把握できるかという勢い。現役SF読者はもちろん、昔はSFとか好きだったなあ懐かしーという方、ほとんどSFは読んでないけど興味はあるという方まで、幅広くお勧めします。

 さらに、現在の日本SFの到達点を確かめたいという方のために、

『極光星群 年刊日本SF傑作選』(大森望、日下三蔵)、

『NOVA9 書き下ろし日本SFコレクション』(大森望)、

『NOVA10 書き下ろし日本SFコレクション』(大森望)、

『SF JACK』(日本SF作家クラブ編)、

といったアンソロジーが出版されました。

 今の日本SFを代表する作家の作品が収録されていますので、目を通しておけば、誰の話題になっても「ああ、その作家なら読んだことがある」と言えますよ。

 終わりなき戦争という日常を生きる人々と、人間を映し出す鏡のような日本製アンドロイドDX9との関わりをえがく連作短篇集『ヨハネスブルグの天使たち』(宮内悠介)からは、並々ならぬパワーが感じられました。今年はスペース金融道シリーズを単行本化してほしい。

 軍用パワードスーツによる凶悪犯罪に立ち向かう警察を描く『機龍警察』シリーズの月村了衛さんは、『機龍警察 暗黒市場』からSFアニメ的要素をばっさり取り除いてもやっぱり警察小説+熱血冒険小説として抜群に面白い『黒警』、さらに時代劇と西部劇を融合させ、江戸を舞台に大規模銃撃戦を描いてみせた『コルトM1851残月』の二冊を上梓。今、イキオイに乗っているという感じで、何を書いても面白い。今年も『機龍警察 未亡旅団』に期待です。

 他には、巨大怪獣という物理的にあり得ないはずの存在をハードSFとして書いてみせるMM9シリーズその最新長編『MM9 -destruction-』(山本弘)、戦国時代にタイムスリップした若者たちが力を合わせて歴史を変えようとする『ガーメント』(三島浩司)、計算による全知というテーマにひねりを加えた『know』(野崎まど)など、ちょっとしたアイデアの導入により、使い古された感のある設定や展開に新鮮味を与えることに成功した作品が多かった印象があります。

 個人短篇集では、とてつもない想像力と奇想と論理に突き動かされる傑作を集めた『ルーティーン 篠田節子SF短篇ベスト』(篠田節子)、会社や会社員という存在の不条理を鋭くえぐった『社員たち』(北野勇作)の二冊が素晴らしい。SF読者でなくても読んでおくべき名作です。

 海外作品では、まずは『夢幻諸島から』(クリストファー・プリースト)が超絶的傑作。夢と現実のあわいに浮かぶ夢幻諸島(ドリームアーキペラゴ)の島々を舞台とした物語の断片がぎっしりと散りばめられ、読み進めるにつれて様々なパターンが浮かび上がってきます。魔術的な語りの技法を駆使して構築された驚異の幻惑小説。これも、SF読者に限らず、海外小説が好きな方にはぜひ読んでほしい。

 外交チームを乗せた宇宙船クラーク号に乗り込んだコロニー防衛軍ハリー・ウィルスン中尉の冒険(災難)を描く、シリーズ最新刊『戦いの虚空(老人と宇宙5)』(ジョン・スコルジー)は、ドンパチより外交に力点が置かれた、まあ懐かしTVシリーズ『バビロン5』みたいな感じで、いつも通り安心して楽しめました。今年も独立した長編が翻訳される予定とのことで、楽しみにしています。

 アンソロジーでは、『時を生きる種族 ファンタスティック時間SF傑作選』(中村融:編)が昔懐かしいオールドスタイル海外SF短篇を集めてくれました。前述の『日本SF短篇50』と比べてみるのも面白いかと思います。

 懐かしいと言えば、大好評だった『ダース・ヴェイダーとルーク(4才)』の続篇、『ダース・ヴェイダーとプリンセス・レイア』(作:ジェフリー・ブラウン、訳:とみながあきこ)も出ました。子供より大人が夢中になる絵本です。このシリーズ、さらに続篇は出るのでしょうか。


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