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『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』(三田一郎) [読書(サイエンス)]

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 多くの日本人にとって、不思議なことでしょう。宇宙のはじまりにはビッグバンがあり、人類は原始的な生物から進化したことは、学校でも教えられています。なのに、なぜ彼らは、そのような神の存在を本気で信じることができるのだろう、と。
 しかも、さらに不可解なことには、宇宙や物質のはじまりを研究している物理学者や、生命のはじまりを研究している生命科学者、つまり「神の仕業」とされてきたことを「科学」で説明しようとしている人たちでさえ、多くが神を信じているのです。これはもう、矛盾でしかない、と思われるのではないでしょうか。
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新書版p.16


 科学は「神」による創造を持ち出すことなく宇宙や人類の存在を説明することに成功した。しかし、科学者の多くは神を信じている。これは矛盾なのだろうか?
 理論物理学者であり、かつカトリック教会の助祭でもある著者が、信仰と科学の関係史を語る一冊。新書版(講談社)出版は2018年6月、Kindle版配信は2018年6月です。


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 国連のある調査では、過去300年間に大きな業績をあげた世界中の科学者300人のうち、8割ないし9割が神を信じていたそうです。
 これはとても不思議なことです。神を否定するかのような研究をしている人たちがなぜ、神を信じることができるのでしょうか? この素朴な疑問について考えることが、本書のテーマです。
 実は私自身も、理論物理学者として素粒子論の研究に人生の大半を捧げてきた者でありながら、カトリック教会の助祭として、神に仕える身でもあります。
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新書版p.3


 全体は、終章を含めて8つの章から構成されています。


『第1章 神とはなにか、聖書とはなにか』
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 もちろん現代のわれわれから見れば、聖書には科学的真実ではないこともたくさん書かれています。しかし、まだ自然科学というものがほとんど存在していなかった時代には、その重みは現代の私たちの想像を絶するものがあったことは確かなのです。
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新書版p.30

 まず、キリスト教の歴史をざっと振り返り、「聖書」がどのようにして成立したのか、歴史を通じてどれほど大切にされてきたのかを確認します。


『第2章 天動説と地動説――コペルニクスの神』
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 知識層の多くが神学を修めていたこの時代は、自然科学者の多くも聖職者でした。そこでは科学者と神の関係は、概して単純なものでした。すなわち科学を進歩させたのは、愛する神のことをもっと知りたいという単純な衝動でした。しかしその結果、聖書や教会の定めとの矛盾に気づいてしまうコペルニクスのようにすぐれた科学者は、信仰と研究のはざまで葛藤することにもなったわけです。
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新書版p.62

 カトリック教会の司祭でありながら地動説を唱えたことで、ルターから猛烈に非難されたコペルニクス。科学と教会の衝突がここから始まります。


『第3章 宇宙は第二の聖書である――ガリレオの神』
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〈聖書と自然はともに神の言葉から生じたもので、前者は聖霊が述べたものであり、後者は神の命令の忠実な執行者である。二つの真理が対立しあうことはありえない。したがって、必然的な証明によってわれわれが確信した自然科学的結論と一致するように、聖書の章句の真の意味を見いだすことは注釈者の任務である〉
 ヨハネ・パウロ2世は声明のなかで、このガリレオの言葉を正しいと明言しました。つまり、聖書の読み方は、科学の進歩によって変わるべきであることを教皇が認めたのです。
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新書版p.94

 ガリレオの死から350年。教皇ヨハネ・パウロ2世は、ガリレオ裁判の誤りを認め、彼の名誉を回復するとともに、自然科学の発展に合わせて聖書の解釈は変わるべきであることを明言した。聖書と科学の矛盾をめぐる葛藤の歴史を振り返ります。


『第4章 すべては方程式に――ニュートンの神』
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 人間を信じられなかったニュートンにとっては神だけが、信じるに値する絶対的な存在だったのでしょう。そして科学とは、神に一歩でも近づくための手段でした。運動方程式がいかに万物の動きを指し示そうとも、その考えは終生変わらなかったようです。
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新書版p.128

 ニュートンが完成させた運動方程式はあまりにも完璧だった。神の仕事はせいぜい宇宙に初期条件を与えることだけで、その後はすべての動きと変化が機械的に決まってしまう。では神の存在意義はどうなるのか。ニュートン個人のなかで科学と信仰は矛盾しなかったものの、科学の発展はついに神の立場を危うくするまでになったのです。


『第5章 光だけが絶対である――アインシュタインの神』
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 この世で絶対のものは光速だけであることを発見したアインシュタインは、神の居場所をとことんまで狭めました。
(中略)
 アインシュタインは、間違いなく神を信じていました。その神とは人間の姿をして教えを垂れるものではなく、自然法則を創り、それに沿って世界と人間を導くものでした。幼い頃に聖書と教会に絶望した彼はそれに代わる神を見いだし、その忠実な信奉者になったのです。
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新書版p.168、172

 科学によって次々に後退を迫られる神。その最後の居場所は、一般相対論が予言するビッグバン特異点だった。無神論者とも云われるアインシュタインにとって「神」とは何だったのでしょうか。


『第6章 世界は一つに決まらない――ボーア、ハイゼンベルク、ディラックらの神』
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 アインシュタインがなぜこれほどまでに量子力学に敵愾心を抱いたのかは、ひとつの謎ともされています。想像をたくましくすれば、幼い頃に既存の宗教と決別した彼は、みずから「世界的宗教」を標榜するほどに、彼にとっての神を築きあげていた。それを真っ向から壊しにきたものが量子力学だった、ということではないかとも思うのです。
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新書版p.220

 存在のあり方は本質的に定まっておらず、観測から切り離すことが出来ない。すなわち全知の存在はあり得ない。アインシュタインと量子力学の対立は、ある意味で神の存在をめぐる宗教論争でもあったのです。


『第7章 「はじまり」なき宇宙を求めて――ホーキングの神』
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 1983年、ホーキングとハートルは「宇宙無境界仮説」を論文にして発表しました。ホーキングはこの仮説の誕生について、こう述べています。
〈宇宙が本当にまったく自己完結的であり、境界や縁をもたないとすれば、はじまりも終わりもないことになる。宇宙はただ単に存在するのである。だとすると、創造主の出番はどこにあるのだろう?〉
 まさに会心の弁といえるでしょう。
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新書版p.237

 神の最後の居場所として教会から認定されたビッグバン特異点。しかし、ホーキングらの宇宙無境界仮説はそれすらも消去してしまう。宇宙から神を追放した男、ホーキングは神についてどのように考えていたのでしょうか。


『終章 最後に言っておきたいこと――私にとっての神』
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 人間には神をすべて理解することは永遠にできません。しかし、一歩でも神により近づこうとすることは可能です。近づけばまた新たな疑問が湧き、人間は己の無力と無知を思い知らされます。だからまた一歩、神に近づこうという意欲を駆り立てられます。「もう神は必要ない」としてこの無限のいたちごっこをやめてしまうことこそが、思考停止なのであり、傲慢な態度なのではないでしょうか。科学者とは、自然に対して最も謙虚な者であるべきであり、そのことと神を信じる姿勢とは、まったく矛盾しないのです。晩年のホーキングも、またディラックも、そのことに気づいていたのではないかと私は考えています。
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新書版p.263

 「科学とは、神の力を借りずに宇宙や物質のはじまりを説明するものであるはずなのに、最後には神を持ち出すのは卑怯ではないか」(新書版p.4)
 高校生から厳しく問われた著者は、この質問にどのように答えるのか。理論物理学にしてカトリック教会の助祭でもある著者が、当事者としての立場から信仰と科学の関係を語ります。



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『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」』(川添愛、花松あゆみ:イラスト) [読書(サイエンス)]

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「応用上はたいしたことのない問題を、必要以上にあげつらって「難しい、難しい」と言っている」と思われるかもしれません。しかし少なくとも、「この課題をクリアしない限り、言葉を理解しているとは言えない」という、「言語学者から見て絶対に譲れないライン」は提示したつもりです。この本を通して、言語の研究者が日々どのような「怪物」を相手にしているかを、読者の皆様に少しでも感じていただければ嬉しく思います。
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単行本p.263


 少なくとも何ができれば「言葉が分かる」といえるのか。自然言語処理における課題を明確にすることで、「言葉の意味を理解し、会話をする」という私たちがあまりにも簡単に行っている(ように感じられる)行為の驚くべき困難さを明らかにする好著。単行本(朝日出版社)出版は2017年6月、Kindle版配信は2017年6月です。


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 言語処理の世界に入ってしばらく経った頃、ここにもまた「報われなさ」があることに気がつきました。「子供にも分かるような言葉が、なぜ機械に分からないの?」「機械が将棋のプロに勝つ時代なんだから、言葉を話すぐらいできても別に驚かない」などと言われたりして、なかなか難しさが理解されないのです。とくに第三次人工知能ブームが起こってからは、「言葉が分かる機械なんて、ディープラーニングを使えばすぐにできるはずだ」などという声があちこちから聞かれるようになり、研究の現場で感じていることと世間の印象とのあまりのギャップに、違和感を通り越して危機感を感じるほどになりました。
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単行本p.261


 というわけで、「言葉の分かるロボット」を作ろうと悪戦苦闘するイタチたちの寓話を通じて、自然言語処理の現状と課題を解説する本です。同じ趣向のサイエンス本では、しばしば動物寓話パートがひどくつまらないことが多いのですが、その点、本書はひとあじ違いますよ。イタチたちの物語はそれだけ読んでも十分に楽しめます。

 あと、イタチたちがありがちな「誰もが共感を覚える頑張り屋さん」ではなく、どちらかといえば「性根は腐っているのに妙に律儀で勤勉、なのに、いざというときにサボる、無責任、上にはへいこら、下には横柄、悪の組織の下っぱ感むんむん」なのがとてもよいです。


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 イタチたちはみんなそれなりによく働いていましたが、心の奥ではいつも「もう、働きたくないなあ。働かなくてもいいようにならないかなあ」と考えていました。そんなある年、イタチ村では悪いことばかりが続きました。きゅうりが不作だったり、桃や柿を猿に食べられたり、村の通貨「イタチドル」が暴落したり……。そのせいで、みんなの「働きたくなさ」はますます強くなりました。
 そんなとき、他の村から妙なうわさが流れてきました。フクロウ村やアリ村やその他のあちこちの村で、何やら「便利なロボット」を作ったというのです。しかもそれらを使って、何やら「いい思い」をしているようなのです。
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単行本p.5


 他の動物が何やら「いい思い」をしている、許すまじ。イタチたちは自分たちもその「いい思い」をすべく、どんな努力をしてでも「言葉が分かるロボット」の開発に取り組むことにします。といっても、他の村にはすでに「言葉を聞き取る機械」「会話をする機械」「言葉による質問に的確に答えてくれる機械」などが存在するというので、それを奪うなり買い取るなりすればごく簡単に開発できそうに思えたのですが……。


『第1章 言葉が聞き取れること』
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商魂モグラ「ほらほら、このように、「声」を認識して、「書き言葉」としてモニターに表示するのです。どう? すごいでしょ?」
 商魂モグラはそう言いますが、イタチたちはあまりすごいと思いません。
イタチたち「「こんにちは」って言ったんだから、「こんにちは」っていう文字が出てくるのは、当たり前なんじゃない?
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単行本p.14

 意味を理解する以前に、まず言葉を聞き取る。たったそれだけのことが、機械にとっていかに難しいことであるかを解説します。


『第2章 おしゃべりができること』
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イタチたち「やっぱり、僕らはきちんと考えてる、と思う。その……証明とか、できないけど」
カメレオン「まあ、あんたたちがそう思うのなら、それでいいさ。それに、あんたたちの言いたいこと、俺にも分からなくはないよ。でも、自分が本当に何か考えているのかなんて、誰にも分かんないんだから、他人が本当に考えているかなんて、もっと分からないに決まってる。だから俺は、そういうことは考えるだけ無駄だと思うね」
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単行本p.42

 会話する機械、チャットボット。それは自分が話している言葉の意味を理解していない。では、「言葉の意味を理解している」とはどういうことなのか。


『第3章 質問に正しく答えること』
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イタチたち「それ、やっぱりおかしいよ。リンゴを見たことも食べたこともないのに、リンゴについての質問に答えるなんて、本当の意味で「言葉が分かってる」とは言えないと思うよ」
アリたち「何だと! 我々の蟻神は、立派に「言葉が分かる」と言えるぞ。質問に正しく答えられること以上に、言葉が分かるということがあるか? これ以上、どうしようというんだ!」
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単行本p.60

 どんな質問にも答えてくれる機械、検索エンジン。だがそれは言葉と言葉を結びつけているだけで、その意味内容は全く関知していない。言葉が分かる機械とは何か、を探すイタチたちのクエストは続きます。


『第4章 言葉と外の世界を関係づけられること』
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フクロウたち「言葉の意味ってのは現実世界にあるもんだ。言葉が分かるって言うんだったら、現実世界に結びつけられないと意味がない。「木」という言葉は木に結びつけられないといけないし、「フクロウ」という言葉は俺たちフクロウに結びつけられないといけない。つまり俺たちの機械だけが、言葉を分かっているんだ」
イタチたち「そこまで言っていいの?」
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単行本p.75

 現実世界のイメージ(画像)と言葉を結びつける機械、ディープラーニング。これこそ「言葉が分かる機械」と言えるのだろうか。


『第5章  文と文との論理的な関係が分かること(その一)』
『第6章 文と文との論理的な関係が分かること(その二)』
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 タヌキはニコニコしていますが、イタチたちは気が遠くなってしまいました。すでにタヌキからは「文の形を、推論パターンに入る形に変えること」、「文の構造に気をつけること」、「語彙の知識や常識を集めること」を言われています。その上、またわけのわからないことをやらされることになりそうです。イタチたちはもう何もかも投げ出したくなって、ついにこう言いました。
イタチたち「僕らには、このやり方は無理だよ!」
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単行本p.160

 言葉を並べた「文」が何を言っているのか、推論パターンに当てはめることで、その論理構造を分析する機械。しかし、現実にそれを実現しようとすると途方もなく面倒な課題が次から次へと発生する。追い詰められたイタチたちの明日はどっちだ。


『第7章 単語の意味についての知識を持っていること』
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メガネザル「こういうふうに、意味の近さの度合いを「ベクトルどうしの近さ」で表せるのは、機械が言葉を扱う上でとても便利です。しかも、完全に自動だから、とても楽です」
 イタチたちは、細かいことはよく分からないながら、いたく感心しました。とくに、「完全に自動」というところが気に入りました。
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単行本p.188

 あらゆる言葉と言葉の「意味の近さ」をすべて定量化しておけば、言葉の意味を理解したことになるのではないか。イタチたちの挑戦はついに実を結ぶか。


『第8章 話し手の意図を推測すること』
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タヌキ「今みなさんが抱えている問題は、「意図の理解」の問題だと思いますよ」
動物たち「意図の理解?」
タヌキ「ええ。話された言葉から、話し手の意図――つまり何が言いたいかを推測する問題です」
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単行本p.217

「イタチたちがついにやった。もう、誰も働かなくて良くなるんだ」
 喜びに湧く動物たち。しかし、ただ「言葉が分かる」だけでは実用性がないという深刻な問題が持ち上がる。


『終章 その後のイタチたち』
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 イタチたちは、「言葉が分かるロボットを作るために必要なデータを自動的に作るロボットが出したデータの間違いや不足を修正することができるロボット」を探す旅に出かけたのです。
 イタチたちは今度も、そういうロボットを見つけることができるでしょうか? そして、もし運良く見つかったとしたら、今度こそ彼らの暮らしは楽になるでしょうか?
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単行本p.251

 一つ難関をクリアするごとに、これまでより難しい課題が次々と持ち上がる。ちょっと考えると簡単そうな気がした「言葉が分かる」人工知能を作るという目標が、今現在、どれほど遠いところにあるのかを示します。でも、イタチたちも、そして私たちも、言葉の分かる機械の探求をあきらめず、あらゆる努力を惜しまないことでしょう。楽をするために。



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『うなぎばか』(倉田タカシ) [読書(SF)]

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 祖父も、坂田さんたちも、父も母も、みんな悲しかったのだ。
 ひとつの生物が絶滅するということ。
 それ自体も、もちろん悲劇ではあるけれど、それによって、ひとつの文化が失われてしまうこと。幸せな思い出に彩られた、たくさんの人の営みの、足元が崩され、消え去ってしまうこと。それもまた、とても辛いことだった。その悲しみが、みんなの心に影を落としてきたのだ。
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単行本p.47


 遠未来ポストヒューマンSF『母になる、石の礫で』の著者が、近未来ポストうなぎSFに挑む。うなぎ絶滅後、人類に迫る大きな決断。例えば、秘伝の「ウナギのたれ」を捨てちゃうのかどうか、とか。単行本(早川書房)出版は2018年7月、Kindle版配信は2018年7月。


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 数年前に、ニホンウナギは「野生絶滅」という認定を受けた。これにつづいて、同じように絶滅の危機にあったほかの種のうなぎも世界的に禁漁になった。そのうちのいくつかの種については、すでに数が減りすぎていて、絶滅を防ぐことはできないのではないかともいわれている。
 日本では、どんな種類であっても、うなぎを食用にすることは一切禁止されてしまった。
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単行本p.24


 実際に絶滅危惧種に認定されているウナギ。近いうちに起きる「ウナギの絶滅」というこの人類史上未曾有の危機を前にして、とにかく頑張った日本人。流通量を確保するため密漁かどうか問わず海外から稚魚を大量に購入する、うなぎ蒲焼を値上げする、生協パルシステム「ウナギを食べて応援」キャンペーン。しかし、……。


[収録作品]

『うなぎばか』
『うなぎロボ、海をゆく』
『山うなぎ』
『源内にお願い』
『神様がくれたうなぎ』


『うなぎばか』
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 母が静かにいう。
「お父さんがうなぎを背負っていかなくてもいいのよ。そんな義務はないんだから」
「わたしにはそうする責任がある。そして、本来なら、正人くんにも」
「ううん、どちらにもない」
 母は語気を強める。
「うなぎがいなくなったことは、お父さんたちに責任があるんじゃないんだから。もっと大きい、簡単には変えられない状況がたくさんあって、その結果おきたことでしょ」
「それでもだ」
 祖父の顔は、静かな決意に引き締まっていた。
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単行本p.39

 うなぎ絶滅により廃業に追いやられた老舗のうなぎ屋。跡取りとなるはずだった息子は、うなぎからきっぱり手を引こうとする父と、うなぎ文化をあくまで守り抜くと決意した祖父の間で繰り広げられる、滑稽かつ切ない家族紛争に巻き込まれるが……。


『うなぎロボ、海をゆく』
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 わたしは、ほそながーい形をしたロボットです。色は黒いです。体をくねくねと曲げられます。
 頭に近いほうに、小さなひれがついています。なにに似ているかというと、うなぎに似ています。
 そうです、あの、何年もまえに絶滅した、おいしい魚です。
 おいしいからって食べつくしちゃうなんて、人間はすこしおバカなのかな?
 でも、人間のお手伝いができると、わたしはとてもうれしいです。
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単行本p.61

 乱獲によりニホンウナギが絶滅してから十年。魚の密猟を監視する任務についていた「うなぎロボ」は、様々な出来事から世界と人間について学んでゆく。マグロの絶滅をテーマにしたSFコミックや、魚介類がレーザーを撃ち合うゲームなど、様々な先行作品を連想させつつ、読後感はちょっとしんみり。


『山うなぎ』
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 ここは南米のとある国。世界有数の大河があって、広い広いジャングルがある、といえば、おなじみのところ……このジャングルの奥に、真美たちの求める生き物がいる。
 それは、「山うなぎ」と呼ばれていた。便宜上。
 それは、とても、とても、おいしかった。
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単行本p.107

 南米ジャングルの奥地に「山うなぎ」と呼ばれている謎生物の牧場があるという。サンプルの謎肉を試食したところ、これが絶品。やばっ……うわっ、やっば、なにこれ、うまい。すぐ独占契約しろとの社命を受けた四人。しかし、うまいからといってまた乱獲して絶滅させてしまうのではないのか懲りない日本人。懸念を抱きつつも、ジャングルの奥地を目指す彼女たちが目撃したものとは。


『源内にお願い』
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「まあ、だいたいわかった」
 そういって、源内は火鉢に煙草の灰を落とした。
「ひとつだけ、わからねえことがある」
 ふたりを見やった源内の顔に、少しだけ、困ったような表情が浮かんだ。
「その〈うなぎ〉ってのは、なんなんだい」
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単行本p.158

 うなぎ絶滅を「なかったことにする」ために、江戸時代にタイムトラベルして平賀源内に「土用の丑の日には鰻を食べようキャンペーン」の考案を止めてもらうよう説得する。だが、源内の時代には既に「うなぎ」は絶滅していた!
 うなぎ絶滅を阻止するための歴史改変計画は、思わぬ壮大な時間SFへとはじけてゆく。はたして「うなぎと人類の両方とも絶滅しなかった歴史」は存在可能なのか。


『神様がくれたうなぎ』
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「それはやめて、うなぎにしない?」
「……は?」
 雄高はすっとんきょうな声を出した。
「願い事をさ、〈うなぎの絶滅をなかったことにしてほしい〉というのにしてみない?」
「え、意味わかんないです」
 神はいう。
「あのね、うっかりやっちゃったことは、もう神自身では戻せないのよ。神なりの決まりがあって、そこは不可逆なの。でも、人間の願いごととして受理するなら、やっても大丈夫な範囲なわけよ。だから、ここできみがうなぎの復活を願ってくれると、すごく助かるんだけどな」
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単行本p.221

 自宅に神がやってきて、特別キャンペーンで願い事をひとつだけ叶えてあげるという。じゃ、実は好きな女の子がいて……。「あ、それやめて、うなぎ復活を願わない?」と言い出す神。実は不手際でうなぎを絶滅させてしまったので、それを「人間の願いをかなえる」という大義名分で「なかったこと」にしたいという。あ、そういうの別にいいです、恋愛成就の方向でお願いします。そっかー、でも、うなぎかわいそうだと思わない? 食い下がってくる神。女か鰻か。意味わかんない心理戦が展開する。本書収録作品中で個人的に最も気に入った作品。



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『ヒトラーとUFO 謎と都市伝説の国ドイツ』(篠田航一) [読書(オカルト)]

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 グリム童話を生んだドイツは、民間伝承の豊かな伝統を持つ国だ。勤勉なイメージのあるドイツ人も一皮むけば実に噂好き、ゴシップ好きの人たちで、インターネット上で使用される国際言語としてドイツ語は上位を占めるとの調査もある。ドイツ人は世界に冠たるおしゃべり民族だ。
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新書版p.11

 ハーメルンの笛吹男からナチスのUFO開発まで。新聞社の特派員としてドイツに駐在した著者が、ドイツで語られている民間伝承や都市伝説を紹介してくれる本。新書版(平凡社)出版は2018年6月、Kindle版配信は2018年6月です。


[目次]

『第一章 ヒトラーは生きている?』
『第二章 UFOを追え』
『第三章 どこにもない町』
『第四章 フリーメーソンの真実』
『第五章 異人へのまなざし』
『第六章 ハーメルンの笛吹き男』
『第七章 怪物ワンダーランド』


『第一章 ヒトラーは生きている?』
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 ヒトラーに関する伝説は無数に存在する。その多くはいわゆるガセネタで、学術的な裏付けに乏しいものばかりだ。だが生存説や南極開発史のように、「ヒトラーの死因について議論が続いていた」「ナチスによる南極開発自体はあった」という史実の部分が少し加われば、伝説は多くの歴史ファンまで巻き込み、増殖力を持ってしまう。
 いったん増殖し始めた噂話は、どれほど学術的に否定しても忘れた頃に息を吹き返す。ヒトラーを巡る都市伝説は今も、そんな自己増殖を繰り返しているのだ。
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新書版p.34

 川で溺れていた子供を命がけで助けた牧師、その子こそ後のヒトラーだった……。
 ヒトラーは自殺しておらず密かに脱出し、今も南米あるいは南極で生きている。
 ヒトラーを巡る都市伝説の数々を紹介します。


『第二章 UFOを追え』
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 戦後の1948年8月4日、シュリーファーは空き巣に入られた。そして設計図と簡単な模型がごっそり盗まれた。シュリーファーは、かつて一緒に働いたチェコの技術者が、どこかの「外国勢力」のためにこの円盤計画を再現していると確信したという。
 シュリーファーやベルッチォは戦後、メディアの取材に対してこうした事実を公然と語っており、ナチスの円盤計画が特に秘密というわけではない。戦後に広まった「ナチスがUFOを作った」との都市伝説はその意味で、計画は頓挫したものの、確かに半分は当たっているのだ。
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新書版p.55

 UFO秘密文書公開請求をめぐる裁判の行方、ドイツの著名なUFO事件、中世のUFO出現記録、そしてナチスが開発していたUFO。ドイツ人のUFO好きを示す噂話の数々を紹介。


『第三章 どこにもない町』
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 架空の町や国を巡る都市伝説で、「ビーレフェルトの陰謀」がいわばジョークの範疇として純粋に楽しめる話なのに対し、「帝国市民」は明らかに反社会的行為をする人が続出しているため、笑い事では済まされない後味の悪さがある。
(中略)
 テロに詳しい学者は「どこにも存在しない国を信じるのは自由だが、彼らはそれを現実社会の中で主張し始めた。もう純粋な都市伝説の域を超えている」と話す。そして、「背景には難民の増加もある。排外主義的な空気が生まれている今のドイツを体現している」と分析する。
(中略)
 かつての広大な版図を懐かしみ、今のドイツは真の国家ではないと主張する人々は、もはや従来の「少しおかしな人たち」のレベルでは済まなくなっている。都市伝説や陰謀論が時に「娯楽」と「危険思想」の境界を行き来することを、ドイツの例が教えてくれる。
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新書版p.73、75、77

 「実は存在しない」というネタが大流行したビーレフェルトの街。今のドイツはニセモノの傀儡国家で、ナチス時代のドイツ帝国こそが今も本当のドイツだと主張する「帝国市民」。都市伝説と陰謀論と極右思想の危うい関係をあぶり出します。


『第四章 フリーメーソンの真実』
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 数多くの陰謀論が語られることについては、会員は特に気にしていないらしい。むしろ人気作家ダン・ブラウンが書くメーソンを題材にした本についても博士は「メーソンをよく書いてある部分が多いですよね」と評価している。
 にこやかに話を続ける博士の声のトーンがやや変わったのが、本題の「イルミナティ」について質問した時だった。
「イルミナティ、来ましたね」
 博士はにやりと笑った。
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新書版p.108

 世界を裏であやつる巨大秘密組織?
 フリーメーソンを取材する著者は、ベルリンのグランドロッジに出向いて、グランドマスターにインタビューする。はたしてフリーメーソンの実態とは、そしてイルミナティとの関係は。「イルミナティ、来ましたね」。


『第五章 異人へのまなざし』
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 ジョークとも都市伝説ともつかぬこの手の噂話が、当時は新聞にまで取り上げられた。統一の高揚感とは裏腹に「社会主義圏の人間は働かない」「東の住民は貧しい」との根強い偏見が西独地域の住民に浸透していたことが、流行の背景にある。
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新書版p.137

 ドイツに広がる排外主義の空気のなかで、よそもの(外国人)を危険視する噂や都市伝説が流布される。オルレアンの噂、エイズ・クラブへようこそ、バザールでの誘拐、そして東ドイツ人に関する悪意の噂。有名な都市伝説がドイツでどのように語られているのかを紹介します。


『第六章 ハーメルンの笛吹き男』
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 共通する数字がいくつかある。まず失踪した子供たちの「130人」という数字だ。そし
て失踪した日付を特定する「ヨハネとパウロの日」という表記だが、これは6月26日を指
す。「1284年」に起きたことも史料からほぼ断定できる。
 事件発生は1284年6月26日。それはおそらく間違いない。
 この日、ハーメルンの町で何が起きたのか。
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新書版p.153

 ただの民間伝承と思われがちな「ハーメルンの笛吹き男」の伝説。しかし、複数の史料による裏付けから「1284年6月26日にハーメルンで子供たち130名が大量失踪した」というのは歴史的事実とみてほぼ間違いない。いったい事件の真相は何だったのか。


『第七章 怪物ワンダーランド』
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 グリム童話の「赤ずきん」が代表例だが、「森とオオカミ」の二つはドイツの民間伝承に欠かせない要素だ。だがオオカミ男は中世の話とは限らない。現代にも時折その姿を垣間見せる。
 その一例が、東西冷戦末期の1988年にドイツ西部モアバッハで起きた「モアバッハの怪物」事件だ。
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新書版p.174

 森に棲む巨大なオオカミ男?
 民間伝承から抜け出して来たような「モアバッハの怪物」事件。謎めいた黒いヒョウの暗躍。中世の迷信や伝説が今もなお目撃され続けているドイツの深い森へと読者を案内します。



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『UMA事件クロニクル』(ASIOS) [読書(オカルト)]

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 通常、こういった本では、獣人型、飛行型などのタイプ別か、地域別にまとめられることが多いのですが、本書では年代順にまとめられました。(中略)項目は全部で44。主要なものは取り上げつつ、特定の地域に偏らないよう配慮したつもりです。また、その他にもUMAに関連したコラム、この分野の人物事典、年表なども収録し、本書を通読していただければ、UMAに関する知識を深めていただけるものと考えています。
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単行本p.2


 おなじみASIOS(Association for Skeptical Investigation of Supernatural : 超常現象の懐疑的調査のための会)のオカルト謎解き本。その最新刊は、主要なUMA事件を年代ごとにまとめて紹介してくれる、『UFO事件クロニクル』の姉妹編です。単行本(彩図社)出版は2018年7月。


 『UFO事件クロニクル』と同じく、ネッシーやビッグフットなど有名どころから、モンゴリアン・デスワームやラーガルフリュート・オルムリンまで、総数44ものUMAが取り上げられています。

 UMA本というと、同じネタ(しかも古い)を何度も読まされてうんざりするという印象がありますが、そこはさすがのASIOS本、新ネタ多数含まれていて新鮮です。


 例えば、「会いにゆけるUMA」が日本にいる、とか。

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 モノスは、写真に写るものと、その正体とされるものの姿が見事に一致する珍しい例である。すでに確認されているという点ではUMAとは言えないが、それでもあえて言わせてもらうならば、モノスは実在するUMAである。しかも日本にもいて、会いに行けるのだ。
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単行本p.49

 子供の頃、なんかすごく恐かった、あの写真のUMAに会える、それも東京23区内で。子供の夏休みの宿題はこれで決まりだ。


 よくネッシーの正体の候補として挙げられる「アザラシ説」。ところがそもそもネス湖にアザラシが棲息しているという証拠がなく、目撃証言も「ネッシーの見間違いではないか」と批判されてきた。それが、何と1985年に「ネス湖アザラシ棲息説」の決定的な証拠が得られたというのです。知らなかった。

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 かつてネス湖のアザラシについては、目撃報告はあるものの写真が撮られていなかったため、その実在を疑う声があった。
 ところが、1985年に初めて決定的な写真が撮られた。そして約7カ月にわたってその生態も観察されたことにより、ネス湖にアザラシがいることは証明された。
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単行本p.66

 ネス湖アザラシ実在論争に終止符が打たれるまで約50年。ネス湖の秘密はすでに解かれていた。


 トルコのワン湖に棲息するというジャナワールを追った高野秀行さんの『怪獣記』。その後、ジャナワール探索がどうなったかというと……。

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 ワン湖でのジャナワール探しも地元の水中写真家らの手で続けられている。怪物は見つかっていないが、その代わりに湖底に眠るロシアの沈没船や石筍、墓石といった遺跡が次々発見されている。
 2017年11月には「トルコ最大の湖に怪物がいるという噂を元に10年間行われた探索に焚き付けられ、スゴイものがみつかった」というニュースが流された。ワン湖の湖底に約3000年前のものとみられる古代遺跡が沈んでいたことが発見されたというのだ。
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単行本p.275

 「ジャノを追っててとんでもないものを見つけてしまったあ、どうしよう?」という銭形案件。ちなみに本項で解説されている、高野秀行さんの『怪獣記』については、私も紹介を書きました。UMAファン必読だと思います。

  2016年07月20日の日記
  『怪獣記』(高野秀行)
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-07-20


 “闇のナビゲーター”栗山千明さんが、「謎の映像を見るとすぐにCGだ捏造だと言い出す懐疑主義者たち……。ふっ(蔑みの微笑)、人生経験たりないんじゃない?」などと煽りまくる人気番組、NHK BSプレミアム「幻解! 超常ファイル」。子供の頃に胸ときめかした「浅瀬に長々と横たわる黒いシーサーペントの写真」こと通称セレック写真の謎は、この番組ですでに解明されている?

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 セレック写真がニセモノだとしても、そこに写っている巨大な物体の正体は未だ謎のままだ。セレックは一体、何を撮影したのだろうか?
 2015年にNHKの番組「幻解! 超常ファイル」がこの謎に挑み、NHKの番組アーカイブの中から、よく似た映像を見つけ出すことに成功した。
(中略)
 確かにセレック写真とよく似ている映像で、大変に興味深い仮説であることは間違いない。ただ、セレック写真の正体が海岸べりにいた小魚の群れだとすると辻褄が合わない点も生まれる。
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単行本p.109、110

 「幻解! 超常ファイル」のシーサーペント回で放映された映像は衝撃的なもので、私もすっかり「これで決まり」「謎はすっきり解けた」と素直に思ったのですが……。


 オカルト探偵ジョー・ニッケル氏よりも先に「モスマンの正体はフクロウ」説を唱えた人がいる?

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 この本でキールは、モスマン目撃のいくつかはフクロウの誤認だろうと書いている。――そう、キールはジョー・ニッケルより先に「モスマン=フクロウ説」を唱えているのだ。しかし不思議なことに『プロフェシー』では、このことにまったく触れられていない(きっと忘れてしまったに違いない)。
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単行本p.116

 思うに私たちはジョン・A・キールを甘やかし過ぎではないでしょうか。


 しかし、本書において個人的に最も感銘を受けたのは、チュパカブラは宇宙生物、しかも秘密研究所で遺伝子工学により生み出された人工生命体だったのだぁーっ、という衝撃の真相。

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 宇宙生物や人工生命体といったヨタ話の類は、こういった話題になると必ず誰かが言い出す定番のトンデモ学説といえるだろう。
 だが、チュパカブラの場合はちょっと様子が違っていた。恐ろしいことにどうやら、チュパカブラのルーツは、本当に宇宙生物であり、遺伝子工学で生み出されたハイブリッド人工生命体だったようなのである!
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単行本p.267

 な、なんだってーっ、と思った方はぜひ本書で衝撃の真相をお確かめください。


[目次]

第一章 1930年代以前のUMA事件

  河童
  人魚
  クラーケン
  モンゴリアン・デスワーム
  ジャージー・デビル
  モノス
  コンガマトー
  ネッシー
  キャディ

  [コラム]マン島のしゃべるマングース
  [コラム]博物館が買ったねつ造UMA コッホのシーサーペント

第二章 1940~1960年代のUMA事件

  ローペン
  イエティ
  エイリアン・ビッグ・キャット
  ハーキンマー(スクリューのガー助)
  シーサーペント
  モスマン
  ミネソタ・アイスマン
  ビッグフット(パターソン-ギムリン・フィルム)
  [コラム]怪獣が本当にいた時代

第三章 1970年代のUMA事件

  ヒバゴン
  ツチノコ
  カバゴン
  クッシー
  野人(イエレン)
  チャンプ
  ドーバーデーモン
  ニューネッシー
  イッシー
  [コラム]北米のレイク・モンスター
  [コラム]懐かしの川口浩探検隊

第四章 1980年代のUMA事件

  モケーレ・ムベムベ
  天池水怪(チャイニーズ・ネッシー)
  ヨーウィ
  タキタロウ
  リザードマン
  ナミタロウ
  [コラム]怪獣無法地帯 コンゴの怪獣たち

第五章 1990年代のUMA事件

  オゴポゴ
  フライング・ヒューマノイド
  スカイフィッシュ
  チャパカブラ
  ジャナワール
  [コラム]出現する絶滅動物たち

第六章 2000年代のUMA事件

  モンキーマン
  オラン・ペンデク
  ニンゲン
  グロブスター
  ナウエリート
  ラーガルフリュート・オルムリン
  セルマ

第七章 UMA人物事典&UMA事件年表事件



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