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『文章読本さん江』(斎藤美奈子) [読書(随筆)]

 斎藤美奈子さんの傑作が文庫化されました。

 ふつう文芸評論家が対象としないような物件を徹底的に読み漁り、発見したことを報告する、というのが斎藤美奈子さんの文芸評論手法。本書では「文章読本」というやつを徹底的にリサーチしています。

 文章読本というのは、「文章の書き方」「小説の書き方」といったものを指南する書物のことで、累計すればこれまでに何と1000冊の大台に乗るほど多種多様なものが出版されているのだそうです。驚きです。

 斎藤美奈子さんがまた例によってこんな感じで読みまくります。

「好戦的な姿勢でいられるのもせいぜい十冊前後まで。二十冊に到達するころには何を読んでも笑って許せる程度には成長し、三十冊を超えるころには『はいはい、さようでございましょうとも』という退嬰的な気分が支配的となり、五十冊めともなればすっかり解脱して『無の境地』に至る」(文庫版p84)

 どうしてそこまで・・・。

 本書の前半は、こうして読み漁った文章読本の山を分析して、“話すのと同じように書いたものが自然で良い文章なのか、それとも技巧を駆使した格調高い文章を書くべきなのか”といった論点について、歴代の代表的な文章読本の著者間で静かなる戦い、思想闘争が繰り広げられてきたことを明らかにします。

 もちろんそこは斎藤美奈子さんですから、文章読本から感じられるオヤジ連中の「ご機嫌ぶり」について、辛辣な皮肉を飛ばすことも忘れはしませんが。

 後半は、文章読本のルーツが学校の国語教育にあると見た作者が、明治時代までさかのぼって、小学校の作文教育がどのような方針の元に行われてきたかを分析し、それと文章読本バトルとの関係性を明らかにしてくれます。

 前半、後半、ともに面白い。読めば目からウロコが落ちること請け合いです。文章指南本に手を出そうと思っている人は、事前に本書を読んで傾向と対策を練ってからにした方がいいと思います。あと、これから小説を書くゾ、と気合入れてる人にもお勧め。

タグ:斎藤美奈子
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