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『宇宙人のためのせんりゅう入門』(暮田真名) [読書(教養)]

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良い寿司は間接がよく曲がるんだ
いけにえにフリルがあって恥ずかしい
県道のかたちになった犬がくる
観覧車を建てては崩すあたたかさ
銀色の曜日感覚かっこいい
ティーカッププードルにして救世主
未来はきっと火がついたプリクラ

・予想はしてたけどぜんぜんわからない。
・そういうもんだと思ってもらえたらいいよ。
・書いた人の体験や気持ちが伝わってくるような作品ならすぐに良さがわかるのに。どうしてクレダはそういうのを書かないの?
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 川柳って何だろう。サラっとした川柳と現代川柳はどう違うのか。先入観を持ってない宇宙人との対話を通じて川柳について語る入門書。単行本(左右社)出版は2023年12月です。

 現代詩や短歌や俳句といった詩歌は、一瞬の光景に永遠を宿してみせたり、言葉にならない情感を言葉の狭間に忍ばせてみたりしていて、それはそれはもう凄いわけですが、でも疲れたとき心が弱っているときに読みたいのは、これまで知られてなかった言葉の隠し機能を引き出すような、言語の錬金術というか、つまり川柳。

 参考までに、過去に書いた川柳の句集紹介記事にリンクを貼っておきます。みんな、川柳を読もう。


2018年08月07日の日記
『スロー・リバー』(川合大祐)
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2018-08-07


2017年02月01日の日記
『転校生は蟻まみれ』(小池正博)
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2017-02-01


 本書はそんな川柳について、読み方、作り方を教えてくれる本です。川柳入門書といってよいでしょう。俳句や短歌に較べると川柳の入門書は少ないので貴重です。


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・俳句のすごいところは、勉強のためのインフラが徹底的に整備されているところだよ。(中略)とにかく母数が多いから、退屈だと感じた本を途中で投げやっても読むべき本がまだ山ほど残されているんだよ。
・なるほど。
・それが俳句と川柳の大きな違いでもある。俳句は入門書や作り方本がとにかく充実してるけど、現代川柳には入門書や作り方本がほぼないと言っていい。『宇宙人のためのせんりゅう入門』なんか絶対に読みたくないっていう人のための本がないんだ。
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 入門書が少ない理由は、要するに入門希望者が少ないから。それはなぜかというと……。


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・川柳をマジでやる人が少ないのは、どうしてなの?
・一つは、川柳は誰でも書けるから。もう一つは、川柳を「作品」だと思っている人が少ないからかな。
・言葉を選ばずに言うと、ありがたがられてないってこと?
・いいこと言うね。
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・実は、多くの人にとって川柳は「今年の主なトピックをダジャレまじりに五七五にしたもの」なんだ。
・ええ!?
・昨日ちょっと話した「川柳のパブリックイメージ」っていうのが、これなんだ
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 川柳のパブリックイメージ、それがサラ川。では現代川柳とはどう違うのか。


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・ただ、「サラ川」にない現代川柳の特徴は「普通」からこぼれ落ちていこうとするものに目を向けていることだと思うんだよね。(中略)社会の「普通」を書くのが「サラ川」、「普通から外れるあり方」を書くのが現代川柳。一言でいうならそういうことじゃないかな。
・とりあえずわかったよ。
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 で、現代川柳について宇宙人に紹介してゆくわけですが、地球人にとってもけっこう新鮮な指摘がごろごろと。


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・川柳がほぼ口語で書かれることも、短歌や俳句との大きな違いだね。短歌も俳句も文語と口語どちらで書かれることもあるから。
・どうして川柳は話し言葉なんだろう?
・どうしてだろうね。一つ言えるのは、川柳が「庶民のもの」だったからじゃないかなあ。
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・現代川柳の一つの特徴として、「家族をひどい目に遭わせがち」っていうのがあるんだ。
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・新しい芸術は「前の時代への反発」を原動力として生まれる。川柳も例外ではなくて、今の現代川柳は時実的な「想い」を書く川柳への反発の上に成り立っているところがある。
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・実際のところ川柳人は句集を全く作らないか、作ったとしても生涯に一冊、みたいな人が多いんだって。「川柳人の美学」といったらそれまでだけど、本のかたちになっていないものにアクセスするのってハードルが高いでしょ。川柳はせっかくおもしろいんだから、どうしてももったいない気がしちゃうんだよね。
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・始めたてのときに川柳のどういうところを魅力的に感じていたかというと、「自分の思ってもいないことが書けるところ」だった。「こんなに嘘っぱちを書いていいんだ」っていうことに救われたんだよね。
・「嘘を書く」ことが救いになるっていうのは、ふつうと逆なような気がするけど……。
・確かにね。でも「詩を書くからには自分の本当の気持ちを表現しなきゃいけない」と思い込んでいて、「それができない自分はだめだ」と落ち込んでいたわたしにとっては、そのことが天啓のように思えたんだ。(中略)川柳がわたしに教えようとしてくれているのは、「生産性」とか「業績」みたいな社会的な値つけができない側面が世界にあるってこと。
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