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『Pina / ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(ピナ・バウシュ、ヴッパタール舞踊団、ヴィム・ヴェンダース監督) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 2009年に没した偉大なコレオグラファー、ピナ・バウシュの作品を扱ったドキュメンタリー映画。ヴッパタール舞踊団メンバー総出演で、ピナの代表作の舞台映像を美しい最新映像で観ることが出来る贅沢なドキュメンタリーフィルムです。劇場公開は2011年、ブルーレイディスク発売は2012年。劇場公開時は3Dだったのですが、ブルーレイ版では2Dで収録されています。

 収録されている作品は、『春の祭典』、『カフェ・ミュラー』、『コンタクトホーフ』、『フルムーン』。いずれも一部抜粋ですが、作品の雰囲気は充分に伝わってきます。

 ヴッパタール舞踊団が2006年に来日したとき、『春の祭典』と『カフェ・ミュラー』を劇場で観て感激したのですが、このフィルムではカメラ視点が舞台上に入り込んでゆくこともあって、観客席に座って観るのとはまた違った印象をうけます。躍動的で、美しく、臨場感あふれる映像です。

 『コンタクトホーフ』は、ヴッパタール舞踊団バージョン、高齢者バージョン、若者バージョンという三つのバージョンをコラージュするという編集のマジックにより、思わずはっと息をのむような効果が加わっています。

 『フルムーン』は、水飛沫がかかるほどの至近距離(実際、メイキングフィルムでカメラにかかった水滴を拭うシーンあり)から、水と踊るダンサーたちの姿を撮ってくれ、もう大感激です。とにかく瀬山亜津咲さんが素敵。

 ドキュメンタリーフィルムとしては、余計な言葉や説明を加えず、ピナの作品にすべてを語らせる、という姿勢に徹しているところに好感が持てます。

 作品映像の間にヴッパタール舞踊団メンバーへのインタビューが挟まるのですが、画面の中でダンサーたちは一切しゃべりません。音声トラックで自分の話し言葉が流れるシーンですら、様々な表情をカメラに向けながら、黙ったままです。ピナは言葉では表現できない。

 ダンスで表現する者もいます。何本かの短いソロあるいはペアのダンスシーンが散りばめられ、各人がピナをダンスで表現するのです。ヴッパタール市街やモノレール(ヴッパタール空中鉄道)車内などを舞台に、短くも印象的なダンスが繰り広げられます。

 ピナ・バウシュの作品はとても雄弁で、人と人とがどうしても分かり合えない苦しみや孤独、血の出るような無言の叫び、といった強い感情がダイレクトに伝わってきます。これまでコンテンポラリーダンスを観たことがない観客でも、その強烈な表現には心を揺さぶられることと思います。

 というわけで、ピナ・バウシュのファンはもとより、むしろコンテンポラリーダンスになじみがない方にこそ観てほしい作品。これをきっかけに、劇場に足を運んでコンテンポラリーダンス公演を観て頂ければ嬉しい。

 ピナ作品に感動した方には、この秋の公演であれば、たとえばヤスミン・ゴデールや黒田育代といったコレオグラファーたちの作品をお勧めします。あと、珍しいキノコ舞踊団。個人的に、ヴッパタール舞踊団を観ていると、なぜか珍しいキノコ舞踊団のことを思い出すのです。


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『PLACE』(ミハイル・バシリニコフ、アナ・ラグーナ、マッツ・エック振付) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 古典バレエの現代的改作で名高いスウェーデンの振付家、マッツ・エック。2007年に初演された彼の作品を、ミハイル・バシリニコフとアナ・ラグーナが踊った舞台映像です。収録は2009年05月。

 劇場の監視カメラがとらえたモノクロ映像が最初と最後に挿入されており、それらを除けば実質20分強の短い作品です。

 舞台はシンプルな構成で、絨毯よろしく広げた防水シートの上に、机が一脚あるだけ。四角いスポットライトが、それらを取り巻く空間(PLACE)を切り取っています。この空間に一緒に入った、今や60代のミハイル・バシリニコフと、50代のアナ・ラグーナが、(おそらく)中年夫婦の葛藤を踊るのです。

 現代の服装で男女が踊るマッツ・エック作品というと、その胸を刺すような悲哀が衝撃的で、ちょっと忘れられないものがあります。自分の核となる部分が決定的に壊れていて、つながることも、分かりあうことも、自立することも出来ない。そんな苦悩や悲哀がダイレクトに伝わってきます。

 本作もその路線上にありますが、何というか、突き刺すような悲哀はやわらぎ、厚みを増し、静かに迫ってくる、そんな感じがします。昔の作品のように無言の悲鳴のような悲しみがずっと続くというのではなく、ときに楽しげなシーンになり、ロマンティックなシーンもあり、躍動的なシーンも出てきます。それらを包み込むような静かな無常観がひしひしと。50代、60代の名ダンサーだからこそ出せる味でしょう。

 一部(特にバシリニコフのソロダンス)に特撮というか、痙攣的な早回しやリピートといった映像効果を加えているのですが、これはそんなに感心しませんでした。

 衰えを感じさせない迫力あるダンスを披露してくれるバシリニコフも凄いのですが、個人的にはアナ・ラグーナの静かに詰め寄ってくるようなダンスに戦慄しました。やはりマッツ・エック作品はアナ・ラグーナが踊るのがぴったりだと思います。


『PLACE』(2009年05月収録、スウェーデン・ロイヤル・ドラマチック・シアター)

振付: マッツ・エック
出演: ミハイル・バシリニコフ、アナ・ラグーナ
映像監督: ジョナス・アカーランド


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『Jiri Kylian Forgotten Memories + Wings of Wax』(イリ・キリアン) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 現代最高のコレオグラファの一人、イリ・キリアン。彼が自らの人生について語るドキュメンタリーフィルムです。制作は、Don KentとChristian Dumais-Lvowski。

 幼少期の思い出、故国への思い、師ジョン・クランコのこと、妻のこと、そしてもちろんダンスとNDTのこと。カメラに向かってキリアンが語り、そこに様々なイメージ映像、レッスン風景、舞台映像が挿入されるという作りになっています。収録時間は52分。

 日本語字幕は付いていませんが、キリアンの英語は発音・表現ともに簡潔にして明瞭で、聞き取りに困ることはありません。なお、事前にキリアンの来歴を調べておくことをお勧めします。(よく知られていること以外、特に目新しいことは言ってません)

 まあ、無理に聞き取らなくても、ただ次々と流れるキリアン作品の映像に酔いしれるだけで充分かも知れません。これまでに市販されている舞台映像のハイライトシーンが詰め込まれています。

 初めて観る映像もいくつかあったのですが、作品名が分からないというのは残念。最後にドキュメンタリー内で使用した作品のリストがまとめて提示されますが、どれがどれだか確認するのはかなりの手間。舞台映像シーンで作品名を表示してほしかったと思います。

 また、付録としてキリアン作品『Wings of Wax』の舞台映像が収録されています。収録時間は24分。

 天井から逆さまに吊るされた木、その周囲をゆっくりと周回する光源。いや、たぶん舞台こそが(樹上に拡がる)天上界で、その周囲を回る光源は太陽なのでしょう。この印象的な舞台で、数名のダンサーが踊ります。

 特に明確なストーリー(例えばタイトルから連想されるイカロスの物語)があるわけではなく、いわゆる抽象ダンスです。ドキュメンタリーでキリアンは「舞台に人間が立っている限り、“抽象”ダンスなんてあり得ない」と断言していましたけど。

 ドキュメンタリーに挿入されている映像も、『Wings of Wax』の舞台映像も、いずれも素晴らしい。まとめて観るとキリアン作品の凄み、その恐ろしいほどの吸引力、動きの斬新さ、色あせないシャープな演出、全てに感激を禁じ得ません。

 何より驚かされるのは、作風が多彩なこと。同じ振付家の作品とは思えないほどバラエティに富んだダンス、しかもどれも心を揺さぶられるような傑作ばかり。キリアン作品に興味がある方には、まずは入門としてこのディスクをお勧めします。


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『プエンテ・デ・トリアナ Puente de Triana』(ラファエル・カンパージョ) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 先週末(12月3日)のNHK BS プレミアムシアターでは、2009年モン・ド・マルサン フラメンコ芸術祭における、セビリアのフラメンコ名手ラファエル・カンパージョの公演を放映してくれました。

 6名のバックミュージシャン、5名のダンサーによる、こじんまりとした作品。大半の演目ではダンサーがソロで踊るのみ。ショーアップの要素はほとんどなく、ひたすら真剣にフラメンコを追求した、ストイックな印象すら受ける密度の高い舞台です。

 登場するダンサーはいずれも鳥肌が立つほどのパフォーマンスを見せてくれますが、やはりラファエル・カンパージョが凄い。激しく床を踏み鳴らすタップの響き、気迫のこもった腕の振り、情熱ほとばしる旋回、飛び散る汗、圧倒的な存在感。その迫力に満ちたダンスには激しく引き込まれます。目を離すことが出来ない。

 あまりの白熱ぶりに極度の精神集中を強いられ、途中で気分が悪くなって中断。翌日に再鑑賞しましたが、すぐにまた異常な高揚と集中で頭痛が。ガチのフラメンコを長時間鑑賞するだけの体力がもはや己にないことを痛感させられます。

 不満が残ったのはカメラワークと編集。ダンサーが気迫の動きを見せているときに、バックミュージシャンをのんびりと映したり。超絶的なタップや、衣装の長いすそを見事にさばいているというのに、わざとのようにバストアップショットで上半身だけとらえたり。

 観たいのはダンサーだよ、足さばきだよ、全身表現だよ、ちゃんと映せよ、叫びたくなります。これだけ力のあるダンスなのだから、何の工夫もなく観客目線の固定カメラで撮った方が良いのでは、とさえ思いました。

 という具合に色々と映像作品としては不満もありますが、公演としては恐いくらい素晴らしい。フラメンコに興味がある方は必見でしょう。恐ろしく密度が高い舞台なので、一度に全部観ようとしないで、何回かに分けて少しずつ鑑賞することをお勧めします。


『プエンテ・デ・トリアナ Puente de Triana』(ラファエル・カンパージョ)

放映
  2011年12月3日(土) 23時30分~
  NHK BS プレミアムシアター

収録
  2009年7月10日
  エスパス・フランソワ・ミッテラン

[キャスト]

  ラファエル・カンパージョ
  イサベル・バジョン
  アデラ・カンパージョ


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『ボンベイ・ベリーウッド Bombay bellywood』(ベリーダンス・スーパースターズ) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 先週末(12月3日)のNHK BS プレミアムシアターでは、2009年の初来日時に大きな話題となった「ベリーダンス・スーパースターズ」の最新日本公演(2011年5月)『ボンベイ・ベリーウッド』の舞台映像を放映してくれました。

 ベリーダンスとインド古典舞踊を組み合わせた派手なダンスショーで、13名のダンサーとタブラ(ドラム)奏者により繰り広げられるめくるめくカラフルな舞台。ソロダンスあり、群舞あり、色鮮やかな布が乱舞するかと思えば、多彩なパーカッションに観ているこちらの身体の芯まで揺さぶられる。

 激しいベリーダンスと軽快なインド舞踊、ときにバレエやヒップホップの技法も混ざって、何ともいえずエキゾチックで魅力的な公演となっています。下手な小細工なし、ひたすらダンスのパワーで引っ張ってゆくのも見事。

 最初からあまりの盛り上がりに、途中で飽きるのではないかと心配になりましたが、最後までどきどきしながら観ることが出来ました。これ、いいですよ。ものすごく楽しい。

 派手で、リズミカルで、力強く、自信と歓喜に満ちた踊り。最近、日本でもベリーダンスがブームと聞いていましたが、なるほど、この舞台を観れば、若い女性が「踊ってみたい!」と思うのはよく分かります。

 この番組はNHKオンデマンドでも配信するそうなので、見逃した方はそちらでどうぞ。お勧めです。


『ボンベイ・ベリーウッド Bombay bellywood』(ベリーダンス・スーパースターズ)

放映
  2011年12月3日(土) 23時30分~
  NHK BS プレミアムシアター

収録
  2011年5月29日
  東京 シアター1010

演出・プロデューサー
  マイルス・コープランド

[キャスト]

  サバ、プチ・ジャミーラ、シヴァーニ・タッカー(インド古典舞踊)
  ステファーニャ、モライア・チャッペル、コリーン、エイプリル・ローズ
  ローレン、エデーニア、ヴィクトリア、インカ、オーブレ、ジャイナ

タブラ(ドラム)
  イサーム・フシャーン

振付
  サバ、ミーラ、サミール、ボジェンカ、ジリーナ、
  デビッド・オブ・スカンディナビア、カミ・リドル、モライア・チャペル、
  ゾイ・ジェイクス、プチ・ジャミーラ

照明
  スティーヴ・エルリントン

音響
  ブライアン・チェイス


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