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『未闘病記──膠原病、「混合性結合組織病」の』(笙野頼子) [読書(小説・詩)]

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 災難に遇う、立ち向かって書く。『未闘病記』はその私小説的系譜のひとつである。そしてまた、私は今ここからなんとかして、現在私をも苦しめている世界的困難を自分の分だけでも身辺雑記に綴り、報道し、さらなる災難を越えていく積もりである。
 何も恐れず、見えなくされたものをひたすら書く私小説には、そういう力があると信じている。
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『岩波現代文庫版後書き』p.311


 シリーズ“笙野頼子を読む!”第141回。


「この国の人々は、女ごときは病気をする資格もないと思ってないでしょうか。女はただ看病する側だけなのでしょうか」
『膠原病を生き抜こう――生涯の敵とともに』p.285


 純文学のてっぺんとった野間文芸賞受賞作『未闘病記』が一部修正のうえ岩波現代文庫から新たに出版されました。2016年の日本慢性看護学会講演録『膠原病を生き抜こう――生涯の敵とともに』と『岩波現代文庫版後書き』が併せて収録されています。

 本編については最初に単行本が出たときに紹介していますのでそれを参照して頂くとして(2014年の日記における引用箇所は当然ながら旧版当時のままです。手抜きですいません)、以降では今回新たに追加された講演録と後書きについて紹介します。

2014年08月01日の日記
『未闘病記----膠原病、「混合性結合組織病」の』
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2014-08-01




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 いつも人生にやむなき我慢を強制し、同時に私を鍛え、独特の幸福を獲得させた。私を今の職業とその評価に導きました。でも、この相手を私はとても文学の先生とは呼べません。やはり、敵なのです。
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『膠原病を生き抜こう――生涯の敵とともに』p.289


 『日本慢性看護学会誌』第10巻第二号、2016年に掲載された講演録です。初期作品からずっと苦しんできた“独特の生きづらさ、疲れやすさ、肉体の痛み”、私を含む読者の多くが「社会からの疎外や他者との軋轢」といったものの文学的表現だと思っていたそれ、生涯の敵、の正体が難病、膠原病の一種だと判明した経緯を中心に、自身の人生と文学について語ります。


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 授業から帰って家事が出来た。締め切りが終わってから駅前に出られた。健康な人からは笑われるかもしれないけれど、全身から喜びが吹き上げている。「そんなの幸福だと思わない」という人は別に思わなければいい。しかし誰も私の心の底から産出される笑い声を止める事は出来ない。またそんな心境や今までの体験を書いた『未闘病記』で、純文学の最高峰と言われる野間文芸賞を受賞出来たですし。
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『膠原病を生き抜こう――生涯の敵とともに』p.276


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 私の小説を理解しない人からは時に、社会性のない作家と思われてきました。しかしそれは違います。私を理解しない人こそ、世間を、現実を、病気の肉体をなめているのです。
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『膠原病を生き抜こう――生涯の敵とともに』p.288


 そして『岩波現代文庫版後書き』では近況が書かれています。


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自分の命もお金も全て、今の世相に抵抗して勝ち取るしかないものだと私はもう判って来た。だけど自分から率先してそれをやるとまず自分が干されてしまうのだと、思い知らされてもいる(でも、やる)。
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『岩波現代文庫版後書き』p.304


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 今までは言論の自由を守る側だった左翼が、実はこの「政治的正義」に関して、弾圧側の張本人となっている地獄。しかしこれもまた世界趨勢なのだ。
 私は新世紀の暴風に飛ばされながら、二十年支持した左系政党を見限り、とうとう一昨年から投票先を変えた。苦渋の、覚悟の、選択であった。
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『岩波現代文庫版後書き』p.306


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 新世紀は退屈する暇などない、常に書くべきものがある時代である。しかしそれを書けば報道の世界からも文学の世界からも追放されてしまう。
 要するに今現在書き手の全員が、例えば前世紀の東電告発における田中三彦氏のような立ち位置にある。そうしておいてマスコミはひたすら隠蔽を続けている。
 と書くと何か「判りにくい話」になってしまうけれど、……。
 でもまあそれこそが『未闘病記』のその後なのであって、……。
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『岩波現代文庫版後書き』p.306


 最後に、本書の最初に書かれているメッセージの一部を引用しておきます。


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 すべての読者へ、新作をお待たせしご心配を頂き、申し訳ありませんでした。今後はシリーズを含め書き続けます。
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タグ:笙野頼子
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