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『起請文の精神史 中世の神仏世界』(佐藤弘夫) [読書(教養)]

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 私がここで扱うのは、だれもが思いつく親鸞や道元といった著名な思想家のテキストではありません。本覚思想や神道思想に関わる体系的な著作でもありません。日記などのまとまった文学史料でも、文学作品ですらありません。それは起請文とよばれるたった一枚の、およそ思想など読み取れそうもない古文書です。私はこの一通の文書から、かつてこの列島にいた人々の内面世界を再構成するという試みに挑戦したいと考えているのです。
(中略)
 起請文はその作成にあたって、参加者の前で読み上げられることが重要な手続きだったのであり、その影響は文字に縁のない社会の底辺の人々にまで及んでいたのです。
 起請文がそうした性格を有するものであったとすれば、身分や階層や地域を超えて広く同時代人に共有されたという点において、この右に出るものは存在しません。私が中世人のコスモロジーを解明しようとするにあたって、起請文に注目する理由はまさしくここにあるのです。
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単行本p.13、20


「私はこれこれを誓う。この誓いが真実である証として、もし破ったら神仏による罰を受けると宣言する」

 日本の中世において盛んに作成された起請文。そこに「誓いを破ったものに罰を与える存在」としてリストアップされた存在とその席次を詳しく調べることで、中世において広く共有されていた神仏などを含む世界観、コスモロジーを明らかにすることが出来るのではないか。起請文という意外な資料から日本の思想史を読み解いてゆく興奮の一冊。単行本(講談社)出版は2006年4月、Kindle版配信は2015年7月です。


[目次]

序章  方法としての起請文
第1章 起請文を読む
第2章 神と死霊のあいだ
第3章 垂迹する仏たち
第4章 神を拒否する人々
終章  パラダイムに挑む




序章 方法としての起請文
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 私たちの価値観やものの見方が通用しない領域が存在するのは、なにもはるかな異国の地だけに限ったことではありません。この同じ列島上においても、時間を遡っていったときに、現代人の常識では推し量ることのできない世界が忽然と目の前に現れてくるのです。
 私はこれまで研究者として、そうした世界をいくたびも垣間見てきました。現代に生きる私は、その異様なありさまに繰り返し強い衝撃を受けました。そしていつのころからか、一部の研究者だけが特権的に目にすることのできるこの異界の風景を、できる限り多くの方々にもみていただきたい、この驚きを皆さんと分かち合いたい、という思いを抱くようになりました。
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単行本p.6


 中世において、思想家や宗教家だけでなく、庶民にまで広く共有されていた世界観を読み解くにはどうすればいいか。そのための具体的な方法として起請文に注目したわけを解説します。


第1章 起請文を読む
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 それぞれの起請文においてどういった神仏が勧請され、どの神仏が勧請されなかったのでしょうか。起請文に名を連ねるものたちは、どのような理由で選ばれることになったのでしょうか。――神仏の序列と同じく、この点にも、中世人が神仏に抱いていたあるイメージが反映されているように思われるのです。
 起請文に登場する神仏の名前とその席次に、当時の人々が神仏の世界に対してもっていた共通のイメージを読み取ることはできないか――私たちは、この素朴な疑問を胸に抱いて、まずは神文の神仏のリストを洗い直すことから作業を開始することにしましょう。
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単行本p.28


 起請文で挙げられる神仏リストには、常連というべき名前があるいっぽうで、まず登場しない名前もある。名前の挙げられる順番、つまり席次にも大きな意味がある。起請文に登場する神仏などのリストから何が読み取れるのかを解説します。
「天照大神は嘘をつく神だから、正直を旨とする起請文に勧請するのはふさわしくない。――こうした認識が、室町時代には一定の知識人のあいだで共有されていた」(単行本p.31)など意外な事実も。


第2章 神と死霊のあいだ
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 梵天や閻魔や大仏が起請文に登場することについては、私でなくとも違和感を覚える方は多いのではないかと思います。違和感とまではいわなくとも、なんらかの説明は必要でしょう。その一方で、そこに日本の神々が勧請されるのはごく当然だという感覚をもつのも、私だけではないような気がします。
 しかし、ほんとうにそうなのでしょうか。日本の神々が「罰」を下すことを期待して起請文に勧請されるのは、それほど当たり前のことなのでしょうか。
 じつは違うのです。日本の神々の果たす機能を「罰」という言葉で表現するようになるのは、起請文の成立からそれほど遡った時代ではなかったのです。さらにいえば、日本の神々は、元来起請文に勧請されるような生やさしい存在ではなかったのです。
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単行本p.65


 日本における神のイメージの変遷。そして、御霊、死霊、モノノケ、疫神。中世日本で広く共有されていた超自然的存在のイメージや位置づけ、その変遷を、起請文から読み解いてゆきます。


第3章 垂迹する仏たち
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 中世的コスモロジーの中心的位置を占めていたのは、「あの世の仏」と「この世の神仏」という二種類の超越者=〈神〉でした。所在地も役割も異なるこれら二つのグループを、中世人はどのような関係をもつものとして理解していたのでしょうか。もっと具体的にいえば、当時の人々が彼岸の極楽浄土の阿弥陀仏と、宇治の平等院鳳凰堂に鎮座する定朝作の阿弥陀仏像とを、いかなる関係性をもつものとして把握していたのかという問題です。
 私のみるところによれば、その二者を結ぶものが本地―垂迹の論理でした。
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単行本p.117


 起請文をベースに読み解いていった中世のコスモロジー。それをもとにして、本地垂迹、神仏習合の意味を再考してゆきます。


第4章 神を拒否する人々
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 法然や親鸞の思想のラディカルさは、時代のコスモロジーそのものに正面から挑み、その改変を試みたことにありました。神祇不拝などをめぐる専修念仏と伝統仏教との対立は、まさにコスモロジーを奪い合う闘争だったのです。それは単なる机上の教義論争ではありませんでした。現実の矛盾を深く見据えながら、宗教者としての自己の全存在を賭して主体的に時代のコスモロジーを読み替えていこうとする、壮大な知的冒険にほかならなかったのです。
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単行本p.179


 神祇不拝。親鸞の言葉にみられる「過激さ」を、コスモロジーそのものを読み替えようとする思想闘争、という視点から読み解いてゆきます。


終章 パラダイムに挑む
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 単に既存の思想像を脱構築するだけでなく、なんらかの方法によって、過去の人々の息遣いが聞こえるような形でその精神世界を再現することはできないものだろうか。それは、従来のものに代わるグランド・セオリーを作り上げることによってはなしえません。私にそのような能力はありませんし、個別研究がこれだけ細分化・深化した現状ではそれはまして困難です。
 それでは、どうすればいいのか。私たちにとっても可能な道筋は、まずはこの地球上の一つの地域に焦点をあわせて、ある時期そこに実在した小さな思想世界をできるだけ忠実に、リアルに再現していくことです。そのなかで起こった思想とコスモロジーをめぐる葛藤・闘争を、丹念に発掘していくことです。その実績の積み重ねとそこでえられた方法面での錬磨を踏まえながら、個別具体的な思想像をつなげて、少しずつ大きなものを作り上げていくことです。
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単行本p.195


 思想史の全体像や歴史発展の図式をまとめる「大きな理論」。それを否定し脱構築する研究だけでよいのだろうか。起請文の読み解きからはじまった旅が見据えている先を熱く語ります。



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『無人の兵団 AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争』(ポール・シャーレ:著、伏見威蕃:翻訳) [読書(教養)]

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 テクノロジーは、人類と戦争との関係における限界点へと私たちを押しあげた。未来の戦争では、生死に関わる決定を機械が下すかもしれない。世界中の軍隊が、海、陸、空で競い合ってロボットを配備している――90カ国以上が、無人機(ドローン)に空を哨戒させている。これらのロボットは、どんどん自律化が進み、多くは武装している。いまは人間に制御されて活動しているが、プレデター無人機がグーグル・カーのように自律性を強めたとしたら、どうなるだろう? 生か死かという究極の決断について、私たちはどういう権限を機械にあたえるべきなのだろうか?
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単行本p.27


 自律的に索敵し、人間の指示を待たず自動攻撃する戦闘マシン。効率的にターゲットを撃破する戦術を学習してゆく攻撃ドローンの大群(スォーム)。敵兵と民間人を「識別」して攻撃判断を下すAI。それらは戦争をより人道的なものにする「スマート」なテクノロジーなのか、それともスカイネット/ターミネーターへの道なのか。急速に進められている自律兵器の開発、その制限に向けた国際的取り組み、それらをめぐる様々な論点を整理し、包括的に論じた一冊。単行本(早川書房)出版は2019年7月、Kindle版配信は2019年7月です。


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 イスラエルのハーピー無人機のような兵器は、すでに完全自律の領域に達している。ハーピーは、人間が制御するプレデターとは異なり、広い範囲で敵レーダーを捜索し、発見したときには許可を得ずに破壊する。小数の国に売却され、中国はリバースエンジニアリングで、その派生型を製造した。ハーピーはさらに拡散する可能性があるし、この種の兵器はこれからいろいろ開発されるに違いない。韓国はロボット歩哨機関銃を、北朝鮮とのあいだの非武装地帯に配備した。イスラエルは武装した地上ロボットにガザ地区の境界線をパトロールさせている。ロシアはヨーロッパの平野での戦争に備え、各種の武装地上ロボットを製造している。17カ国がすでに武装無人機を保有し、さらに十数カ国が公然と配備を進めようとしている。
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単行本p.28


[目次]

第1部 地獄のロボット黙示録
第2部 ターミネーター建造
第3部 ランアウェイ・ガン
第4部 フラッシュ・ウォー
第5部 自律型兵器禁止の戦い
第6部 世界の終末を回避するー政策兵器




第1部 地獄のロボット黙示録
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 まもなく国防総省は、すさまじいペースでドローンをふたつの戦争に投入するようになった。2011年には、ドローンの年間支出は9.11前のレベルの20倍以上、60億ドルを超えるほどに増大した。国防総省が配備したドローンは7000機を超えていた。ほとんどは手から発進できる小型ドローンだったが、MQ-9リーパーやRQ-4グローバル・ホークのような大型ドローンも、貴重な軍事資産になっていた。
 それと同時に、国防総省は、ロボットが空以外でも貴重だということを知った。空ほどではないにせよ、陸でもやはり重要だった。簡易爆破装置IEDの増加に応じて、国防総省は6000台以上の地上ロボットをイラクとアフガニスタンに配備した。
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単行本p.41


 群れで協働するドローン・スウォーム、自律ミサイルなど、自律型兵器の研究開発、そして配備に関する現状をまとめます。また「自律」という言葉の意味や、オートメーション(自動化)との違いなど、議論の混乱を防ぐために用語と概念を整理します。


第2部 ターミネーター建造
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 先進国の軍だけが自律型兵器を建造できる世界と、だれもが自律型兵器を手に入れられるような世界には、大きな違いがある。自律型兵器をだれでも自分のガレージで造ることができるようになったら、テクノロジーを隠したり、禁止したりするのは、きわめて難しくなると、スチュアート・ラッセルをはじめとする反対派は主張する。(中略)私たちは、殺傷力のある自律型兵器を国民国家だけではなく個人でも建造できるような世界にはいりつつある。その世界は遠い未来ではなく、すでにここにある。
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単行本p.172、189


 様々な自律型兵器とともにその基盤となっているテクノロジーを解説します。また、それらのテクノロジーが、国家だけでなく、どんな組織にも、個人にさえ、簡単に手に入れられるという事実が何を意味するのかを考察します。


第3部 ランアウェイ・ガン
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 自律型兵器が引き起こす破壊は、無作為なものではない――ターゲットを定めたものになる。人間が干渉しなかったら、弾薬が尽きるまでシステムが不適切なターゲットと交戦しつづけ、一度の事故が多数の事故に拡大しかねない。「機械は過ちを犯していることを知らない」と、ホーリーは述べた。民間人や友軍に壊滅的な影響が及ぶだろう。(中略)自律型兵器を評価する際の重要な要素は、システムのほうが人間より優れているかどうかではなく、システムが故障したときに(故障は避けられない)、どれほどの損害が生じるかということと、そのリスクを容認できるかということだ。
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単行本p.263、265


 自動化された兵器システムの故障あるいは誤判断によって引き起こされた過去の事例を紹介し、自律型兵器をめぐる様々な懸念のうち「故障したときの被害が甚大なものになりかねない」という問題について考察します。また深層ニューラルネットの「ブラックボックス化」が兵器にとって何を意味するのかを考えます。


第4部 フラッシュ・ウォー
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 この速度の軍拡は、重大なリスクをもたらす。競争者たちが速度の誘惑に屈し、反応時間をマイクロ秒単位で削減する高速のアルゴリズムとハードウェアを開発したときの株取引が典型的な例だ。コントロールを失った現実の世界の環境では、事故は予想外の結果ではない。そういった事故では、機械の速度が大きな負担になる。自律プロセスが、たちまち制御できないきりもみ状態に陥り、会社をつぶし、市場をクラッシュさせかねない。理屈のうえでは、人間は干渉する能力を維持するはずだが設定によっては干渉しても手遅れかもしれない。オートメーション化された株取引は、国家が自律型兵器を開発して展開したときに、世界がどのようなリスクを負うことになるかを暗示している。
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単行本p.309


 株式の自動取引ソフトの暴走が引き起こした市場暴落、いわゆるフラッシュ・クラッシュを例に、自律型兵器の速度競走、サイバー空間における自律型兵器という問題、さらにマイクロ秒で決着がつくフラッシュ・サイバーウォーのために高度AIに判断を任せるという構想を取り上げます。


第5部 自律型兵器禁止の戦い
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 自律型兵器が私たちと武力行使の関係の性質を根本的に変えることに、疑いの余地はない。自律型兵器は、殺人を個人的な行為ではないようにして、そこから人間の感情を取り去る。それがよいことなのか、悪いことなのかは、見方によって異なる。感情は、戦場で人間を残虐行為に駆り立てるか、慈悲を呼び覚ます。帰結主義者には賛否両論があるだろうし、義務論者の意見も分かれるはずだ。(中略)殺人に対して人間は責任を持ちつづけなければならない、と義務論者は唱える。戦争の道徳的重荷を機械に渡したら、人間の道徳観は弱まる、というのだ。帰結主義者も、それについてはおなじことを主張している。殺人の道徳的な痛みは、戦争の悲惨さを抑える唯一の手段だからだ。
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単行本p.394、395


 自律型兵器の開発あるいは配備の禁止を目指す運動と、各国がどのように対応しているかを概観します。具体的に「何を」「なぜ」制限するのか、その錯綜した論点と様々な議論を俯瞰します。


第6部 世界の終末を回避するー政策兵器
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 人類は、人間と戦争との関係を根本的に変える可能性がある新テクノロジーの潮流の間際に立っている。人間社会がそれらの難問に対処するための機構は、不完全だ。CCWで合意に達するのが困難なのは、それが総意を基本とする枠組みだからだ。完全自律型兵器は、法律、道徳、戦略的理由から、悪しき発想であるかもしれないが、国家間でそれを規制しようとしても失敗するだろう。そういった実例が、これまでにもあった。現在、各国、NGO、ICRCのような国際組織が、CCWの会議を開いて、自律型兵器がもたらす難問について話し合っている。その間も、テクノロジーは猛スピードで前進している。
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単行本p.471


 自律型兵器の禁止が実効力を持つためには、どうすればいいのか。あるいはどのような制限なら各国が受け入れることが出来るのか。残り時間がどんどん失われてゆくなかで進められている、未来の戦争をめぐる議論をまとめます。



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『こども六法』(山崎聡一郎) [読書(教養)]

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 人権は人びとが何百年もかけて努力の末にわたしたちに渡してくれたバトンなんだ。わたしたちも未来の人たちにバトンを渡せるように努力しないとね!
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単行本p.178


 いじめなどの問題に直面して苦しんでいる子どものために、この社会を支えている基本的な考えや決まりを教えてくれる本。刑法から憲法まで、子どもに関わりの深いルールを抜粋して分かりやすく説明し、「いじめなどの人権侵害は許されないし、はっきりとした決まりによって、みんなが守られ、誰もが安心して暮らせる、そんな仕組みで社会は動いている」「まともな大人はその決まりを守って行動してくれる」という希望を伝えてくれます。単行本(弘文堂)出版は2019年8月です。


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 いじめで苦しんでいることをわかってもらえれば、保護者も学校の先生もきっときみのことを助けてくれるはずです。しかし、万が一それでも助けてくれないときは、両親と先生以外の大人にも助けを求める必要があります。(中略)両親と先生以外の大人に相談するのはちょっと勇気がいるかもしれません。でも、助けてくれる大人は必ずいるはずです。自分を守るために逃げていい、ということも忘れないでください。
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単行本p.194


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 昨今はいじめ問題のほかにも児童虐待、性的搾取といった理不尽な危険に子どもたちは晒されています。そして恐ろしいことに、いじめ問題も含め、そういった問題を深刻化させるのはしばしば大人たちの「見て見ぬふり」なのです。
(中略)
 『こども六法』は、こういった課題の解決を目指した本です。「わたしは今、苦しい思いをしています」というSOSが子どもの側から発信されることを目指し、またそのSOSに根拠を持たせることで、SOSを受けた大人が積極的に問題解決に動けるようにする、それでも最初に相談された大人が問題を解決してくれなかった場合は他の大人にも助けを求められるようにすることが、本書の目的です。
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単行本p.195


[目次]

第1章 刑法
第2章 刑事訴訟法
第3章 少年法
第4章 民法
第5章 民事訴訟法
第6章 日本国憲法
第7章 いじめ防止対策推進法




第1章 刑法
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 何が犯罪なのか、どのくらいの罰を受けるのかが決まっていないと、いつも「これは犯罪になるかもしれない」と不安に思いながら生活することにもなります。そのため、刑法にはあらかじめ「この犯罪に対してはこの罰があてはまる」ということが細かく決められていて、それ以外の罰を受けることはありません。
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単行本p.9


 14歳になるまでは何をしても犯罪にならないの?
 鉄道に置き石するいたずらは犯罪なの?
 お酒や薬を悪用したエッチは犯罪なの?
 気軽に「きもい」「うざい」「死ね」と言っては駄目なの?
 当たらないように石を投げたり水をかけたりしても暴行なの?
 子どもには世話をしてもらう権利があるの?


第2章 刑事訴訟法
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 刑罰を与えるということは、国が強制的に個人の権利を侵害することなので、どんなに慎重に決めても慎重すぎることはありません。なにもしていないのに間違って犯人とされて無実の人が罰を受けることがあれば、それは最悪の悲劇です。刑事訴訟法はそんな悲劇を避けるための法律なのです。
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単行本p.53


 保釈金って何だろう?
 警察官と検察官ってどう違うの?
 現行犯逮捕は誰でもできるの?
 どんなに軽い犯罪でも裁判になっちゃうの?
 黙秘をすると裁判で不利に扱われてしまうの?


第3章 少年法
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 少年法は、未成年者が法律を破る行為をしたときに、自分のした罪を反省させ、教育を受けさせ、または子どもを取り巻く環境を調整して、子どもにやり直すチャンスを与えようとする法律です。(中略)基本的には子どもには刑罰ではなく教育を与えることで、他人の権利を大切にできる大人に育ってもらおうと考えられているのです。
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単行本p.87


 悪いことをしても子どもなら謝るだけで許されるの?
 少年院ってどんなところ?
 やり直すためにどんなチャンスが与えられるの?


第4章 民法
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 民法は、こんな「あたりまえ」をルールにしておくことで、人びとの間でトラブルが起きることを防ぎ、トラブルを公平に解決できるようにしているのです。
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単行本p.107


 大人のフリをして買い物をしてはいけないの?
 親の代わりにオンライン注文してあげるのは大丈夫?
 他人のものを壊したらどのくらい弁償しなければいけないの?
 親が世話をしてくれないとき、どうすればいいの?


第5章 民事訴訟法
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 民事裁判は、争っている人同士が話し合うだけでは解決できないもめごとを、法律の力で解決するお手伝いをしましょう、という制度なのです。
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単行本p.143


 裁判ではどうやって戦うの?
 和解ってなんだろう?
 判決はいつ確定するの?


第6章 日本国憲法
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 憲法は、法律を作る国会、法律を使う裁判所や行政(内閣)など、国民の代表者を縛るものなのです。
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単行本p.161


 憲法は、国民のために、国家の権力をみはってくれているよ
 みんな幸せになる権利がある
 みんなと違っていてもいい


第7章 いじめ防止対策推進法
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 いじめられているとき、いじめを見たときは、すぐに大人に相談しましょう。そして、この法律のとおりに対応してくれているか、チェックしてみてください。もし、大人がこの法律を守っていなければ、別の大人にも相談してみましょう。本気で助けてくれる人が見つかるまで、あきらめないことが大切です。
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単行本p.183


 大人にはいじめから子どもを救いいじめをなくす義務がある
 先生たちはチームでいじめに対応するよ
 助けてくれる大人はかならずいるよ
 勇気を出して、いろんな大人に相談してみてください



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『とてつもない失敗の世界史』(トム・フィリップス:著、禰冝田亜希:翻訳) [読書(教養)]

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 世界で起こっている最近の出来事を見聞きして、あなたの個人的な意見がどうであるか、あなたの政治的な立場がどうであるかにかかわらず、こうぼやいたことがあるのではないだろうか。「なんてこった。どうして人間はこうなんだ?」
 そんなとき、本書はせめてもの慰めになってくれる。「大丈夫だよ。私たちはいつだって、こうだったじゃないか。今もまだ同じところにいるというだけだよ!」と。
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単行本p.9


 人類の歴史は悲惨で間抜けな大失敗に満ちている。私たちの脳は致命的な欠点を抱えているし、環境保護も統治も戦争も外交も何もかも壊滅的に下手で、科学技術の発展は失敗を地球規模にまで拡大させただけだった。木から落ちて死んだルーシーからアメリカを再び偉大にするリーダーを選出した米国民まで、多くの人びとがやらかしてきた大失敗の歴史について語る一冊。単行本(河出書房新社)出版は2019年6月、Kindle版配信は2019年7月です。


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 人類のこれまでの出来を率直に評価すると、あなたを目の敵にしている上司がくだす無慈悲な査定と同程度だ。私たちはありもしないパターンを想像してしまうし、仲間とのやりとりは心もとなくて、コミュニケーション能力はときに欠如している。したがって、こんなことを変えたらあのことも変わってきて、さらに悪いことに陥り、しまいには、ああやめてくれ、こんなことになっちまった、どうやって止めたらいいかわからない……となると、事前に気づけなかった残念な歴史がある。
(中略)
 人間の脳はこんなに優れているにもかかわらず、極端に変てこで最悪のときに果てしなくおかしなことをしでかしやすい。毎度のように恐ろしい決断を重ね、ばかげたことを信じ、目の前にある証拠から目をそむけ、まったくもってナンセンスな計画を行きあたりばったりに思いつく。(中略)国政の何もかもが最悪の状況になっているのが日を追うごとに明らかになっているときにでも、国を代表する大臣たちが「交渉はまことにうまくいっている」だとか、「前向きな進展があった」だとか、かたくなに言い張る。もう選択はなされたのだから、選択は正しかったに決まっているではないか、なぜなら選択をしたからだ、というわけだ。
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単行本p.9、21、29




目次

第1章 人類の脳はあんぽんたんにできている

第2章 やみくもに環境を変えたつけ
最後の一本まで木を伐採したイースター島

第3章 気やすく生物を移動させたしっぺ返し
鳥をみくびってはならない——中国からスズメを駆逐した毛沢東
鳥をみくびってはならない——米国にムクドリを放ったニューヨーカー

第4章 統治に向いていなかった専制君主たち
兄弟を幽閉するオスマン帝国の黄金の鳥かご

第5章 誰が誰を、誰をどう選ぶかの民主主義
初めからばかにされていたヒトラー

第6章 人類の戦争好きは下手の横好き
おざなりだったケネディーのキューバ侵攻

第7章 残酷な植民地政策をヘマばかり
スコットランドを破綻させた投資家、パターソン

第8章 外交の決断が国の存亡を決める
チンギス・カンに消された大国ホラズム

第9章 テクノロジーは人類を救うのか
二度も地球を汚染した発明家、トマス・ミジリー

第10章 人類が失敗を予測できなかった歴史




第1章 人類の脳はあんぽんたんにできている
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 私たちの独特な思考のしかたは、どんなに素晴らしい方法で世界を思うように変えることを可能にしてきたのだろう? それでいて、それがどんなに最悪かがわかりきっているのに、可能なかぎり確実に最悪の選択を絶えまなくできるのだろう? つまり、私たちは月に人を送ることができるほど賢いのに、どうしてあんなメッセージをもう別れたはずの元カノに送ることができるのか。煎じ詰めれば、その答えは私たちの脳の進化のしかたにある。
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単行本p.21


 まず、最悪の大失敗をしでかす理由について、私たちの脳が持っている様々なバイアスとその進化的由来を解説します。


第2章 やみくもに環境を変えたつけ
――――
 ポリネシア人は、私たちよりまぬけだったわけではない。野蛮でもなかったし、ましてや状況に気づいていなかったわけでもなかった。もしあなたが、いつ何どき環境災害に見舞われても不思議ではない社会が、みすみす問題をやりすごし、そもそもの問題の元となることをし続けるのはどうかしていると思われるなら……あ、ちょっとあなた、少しまわりを見まわしていただきたい。
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単行本p.57


 アメリカ中央平原のダストボウル、干上がったアラル海、カヤホガ川の炎上、イースター島の伐採。環境破壊により強烈なしっぺ返しを受けた大失敗の歴史について語ります。


第3章 気やすく生物を移動させたしっぺ返し
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 1890年のある寒い初春の日にシーフェリンがしでかしたことは、結果として、病気をばらまき、毎年何百万ドルもの値うちがある作物を台なしにし、飛行機事故で62人もが命を落とす羽目になった。これはどこかの誰かが、ただ自分がどんなに熱烈なシェイクスピアのファンであるかを見せつけようとした報いとしては、あまりにも損害が大きい。
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単行本p.74


 オーストラリアのウサギ大繁殖、ヴィクトリア湖のナイルパーチ災害、ダストボウル問題を解決するために導入されたクズ、スズメを駆逐したことで起きた中国の大飢餓、ムクドリの大繁殖。軽はずみな外来種導入で生態系をずたずたにしてしまった大失敗の歴史について語ります。


第4章 統治に向いていなかった専制君主たち
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 独裁者がどこまで愚行を犯せるかという好例を見てみたいなら、二度あることは三度あり、悪いことは三度続くことを地でいくオスマン帝国の時代に勝るものはない。(中略)この時期のオスマン帝国の歴史は、人を人とも思わない血塗られた白昼夢のようで、本当に起こった出来事とは信じがたい。
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単行本p.96、122


 永遠の命にとりつかれた始皇帝、シンデレラ城で国を埋め尽くそうとしたルートヴィヒ二世、窃盗症のエジプト王ファルーク、思いつきで動いたトルクメニスタンのサパルムラト・ニヤゾフ、そしてオスマン帝国の阿鼻叫喚。独裁者たちがしでかした大失敗の歴史について語ります。


第5章 誰が誰を、誰をどう選ぶかの民主主義
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 何かおぞましいことが起こると、私たちはその背後に統制の取れたインテリジェンスがあったに違いないと想像しがちである。そう思うのも無理はない。天才的な悪人が裏で糸を引いているのでなければ、そこまでひどい事態に陥るはずはないだろうと考えるからだ。このことのまずい面は、天才的な悪人が身のまわりにいなければ、〈何も問題はない〉から安心できる、と思いがちなことである。
 この考えが大はずれだということは歴史からよくわかる。これこそ私たちが何度も繰り返してきた過ちである。
――――
単行本p.122


 国民の投票で選ばれた犬、足パウダー、そしてヒトラー。大失敗をしでかす能力に関する限り専制君主制度に勝るとも劣らないことを証明してきた民主主義の歴史について語ります。


第6章 人類の戦争好きは下手の横好き
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 アーサー・シュレジンジャーはのちにこう述懐している。作戦会議は「すでにできあがったコンセンサスのある奇妙な場の空気」の中で行われ、内心、計画が愚かしいと思っていても、会議中は押し黙っていた。「遠慮がちにいくつか質問をする以上のことをできなかった私の落ち度を言葉にするなら、この愚かな計画に警鐘を鳴らそうとする意欲が、会議の場の空気のせいで削がれてしまったと言うことでしか説明できない」と書いた。シュレジンジャーの肩を持つわけではないが、私たちは皆そうした場を経験している。
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単行本p.144


 英国軍が戦わずして負けたカディスの戦い、オーストリア軍がそもそも敵すらいなかったのに大敗北を喫したカランセベシの戦い、まぬけな自滅で大敗したピーターズバーグの戦い、戦争していることにすら気づかなかったグアム、ナポレオンとヒトラーがしでかした同じ間違い、第二次世界大戦で同士討ちをしでかした米軍、トイレ問題で沈没したドイツ軍の潜水艦、そしてベトナム戦争にキューバ侵攻。愚行にあふれている戦史について語ります。


第7章 残酷な植民地政策をヘマばかり
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 口を酸っぱくして言うが、植民地支配は悪かった。実に悪いことだった。本書のこの部分はあまり愉快でなくて申し訳ない。
 本来、このことは言うまでもない大前提であるべきだ。こんなことをわざわざ言わなければならないのは、私たちは現在でも、植民地主義は良いものだったという強烈な反動のただ中にいるからである。(中略)人類は実際に起こった事実にもとづいて過去を考えようとすべきで、漠然たる郷愁の想いから、帝国がどんなに良かったかという短絡的でわかりやすい物語にすべきではない。
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単行本p.157、159


 探検家から征服者、統治者まで、ありとあらゆる人びとが悲惨で壊滅的な大失敗を重ねてきた植民地政策。そもそも最悪でありながら、なお愚行と蛮行の底を突き抜けようとし続けた植民地支配の歴史を語ります。


第8章 外交の決断が国の存亡を決める
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 ドイツは「敵の敵は友だ」という論理を鵜呑みにするという古い罠にはまった。これはつねに間違いだとは限らないが、友情の賞味期限はたいてい驚くほどに短い。実際に至上最悪の無数の決断の背後には、「敵の敵だ」という思い込みが潜んでいる。このことから、何世紀もの極端に混乱したヨーロッパの歴史を説き明かすことができる。
 この現象の別名は「戦後のアメリカの外交政策」と言ってもいい。
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単行本p.197


 残念な、あるいはまったく意味不明な、外交上の決断により滅びた国の数々。外交における愚行の歴史について語ります。


第9章 テクノロジーは人類を救うのか
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 科学、技術、産業の時代の夜明けは、これまで私たちの祖先が夢にも見なかった可能性を人類にもたらした。あいにく、これまで想像もしなかった規模で失敗をする機会ももたらした。
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単行本p.214


 ヤード・ポンド法のおかげで火星に激突した探査機、ポリウォーターやN線の大発見、優生学やルイセンコ学説の猛威、有鉛ガソリンとフロンの両方を発明して地球を徹底的に汚染した発明家。科学技術の発展が大失敗を防ぐのではなく、その規模をどんどん拡大していった歴史について語ります。


第10章 人類が失敗を予測できなかった歴史
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 私たちはたいして変わることなく、同じ行いを続けるのだろう。他人に責任をなすりつけ、空想世界を入念に築き上げさえすれば、自分のしたことに向き合わなくて済む。経済危機のあとでポピュリストの統治者たちが台頭し、金の争奪戦が繰り広げられる。集団思考に呑まれ、一過性のブームに浮かれ、確証バイアスに屈する。そしてまたもや性懲りもなく、この計画は抜かりなく、うまくいかないはずがないと心に言い聞かせるのだ。
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単行本p.264


 過去の過ちの再現速度が輪をかけて速まっている現代。私たちは過去から学ぶことはなく、これからも大失敗は続くだろう。それとも、今度こそ私たちは変わり、賢明になり、同じ大失敗を繰り返すことのない新しい時代を迎えたのかも知れません。現アメリカ合衆国大統領の、自信に満ちた笑顔の写真とともに、本書は幕を閉じます。



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『結局,ウナギは食べていいのか問題』(海部健三) [読書(教養)]

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 ニホンウナギが絶滅しない可能性はあります。しかし、だからと言って現状を放置することはリスクの高い博奕にすぎず、そのような博奕を受け入れる社会は、健全とは言えません。ある程度の不確実性はあっても、絶滅リスクを回避するために、予防原則に従って「ニホンウナギは絶滅するかもしれない」と考え、適切な対応をとる必要があります。
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単行本p.16


 ウナギは絶滅危惧種。いやいや漁獲高が減っているだけでウナギが減っているという証拠はない。食べるなんてとんでもない。いやむしろ食べて応援すべき。密漁を取り締まれば、稚魚を川に放流すれば、石倉カゴを設置すれば、完全養殖が実現すれば、それで解決する問題でしょう。いやいや多国間の取り決めやワシントン条約こそが大切。何となくモヤモヤが晴れないウナギ問題に関して、現時点で可能な限りの科学的知見と社会状況解説をQ&A方式で分かりやすくまとめた一冊。単行本(岩波書店)出版は2019年7月です。


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 ウナギの問題は、小さく見れば多様な問題の1つにすぎません。しかし、さまざまな要素を内包しているうえ、日本では社会の注目を集めるため、河川環境の問題や生物資源の持続的利用に関する問題、密漁や密売の問題を解決に向かわせるシンボルになりえます。ウナギの問題を解決することが、同じような問題を抱えている別の魚種、別の生物資源を守ることにつながるかもしれないのです。
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単行本p.vi




[目次]

1.ウナギは絶滅するのか

 ・ウナギは絶滅危惧種なのですか?
 ・ウナギはどの程度減っているのですか?
 ・なぜウナギは減ったのでしょうか?
 ・ウナギは数が多いから絶滅しない、という話を聞きましたが……
 ・結局のところ、ウナギは絶滅しますか?

2.土用の丑の日とウナギーーウナギを食べるということ

 ・なぜ土用の丑の日にウナギを食べるのですか?
 ・我々は、どのくらいウナギを食べているのでしょうか?
 ・ウナギを将来もずっと食べ続けることは不可能なのですか?
 ・安いウナギを食べるのは,よくないことですか?
 ・ウナギの代わりにナマズを食べればよいのでしょうか?
 ・結局のところ、土用の丑の日にウナギを食べてはいけないのですか?

3.ウナギと違法行為ーー密漁・密売・密輸

 ・法律に違反したウナギが売られている、って本当ですか?
 ・なぜ違法行為が行われるのですか?
 ・密漁や密売は暴力団がやっているのですか?
 ・シラスウナギはなぜ密輸されているのですか?
 ・法律に違反することと、ウナギの減少に関係はありますか?
 ・ウナギをめぐる違法行為は根絶できますか?

4.完全養殖ですべては解決するのか

 ・完全養殖とはどんな技術ですか?
 ・完全養殖が実用化されれば、天然のシラスウナギを捕らずにすみますか?
 ・完全養殖によって、どんな問題が解決されるのですか?

5.ウナギがすくすく育つ環境とは

 ・ウナギは川に戻ってくるのですか?
 ・ウナギが川で成長するにあたって、最も大きな問題は何ですか?
 ・ウナギを増やすには、「石倉カゴ」がよいのですか?
 ・どうすればウナギの住む環境を守れますか?

6.放流すればウナギが増えるのか

 ・なぜウナギを放流するのですか?
 ・放流すればウナギは増えますか?
 ・子供たちがウナギを放流することで、環境学習の効果が期待できますか?
 ・結局、ウナギの放流は行うべきですか?

7.ワシントン条約はウナギを守れるか

 ・ワシントン条約とは、どんな条約ですか?
 ・ニホンウナギの取引はワシントン条約で規制されるのですか?
 ・ワシントン条約でウナギを守ることはできますか?

8.消費者にできること

 ・行政は、ウナギの問題にどう対応していますか?
 ・政治は、ウナギの問題にどう対応していますか?
 ・消費者にできるのはどんなことですか?
 ・どんなウナギを選べばいいですか?




1.ウナギは絶滅するのか
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 リョコウバトの絶滅でも明らかなように、個体数が多いから絶滅しないとは言い切れません。むしろ個体数の多い生き物の場合は、「個体数が多い」状況が維持されなければ生存できない、という可能性すら考えられます。個体数の減少がある限界を超えたとき、一気に崩壊して絶滅に至る可能性があるのです。(中略)現在のところ、近い将来ニホンウナギがこの限界(ポイント・オブ・ノーリターン)を超えるのか、判断に必要な情報はありません。しかし、その生態とアリー効果を考慮したとき、ニホンウナギがある瞬間から急激に減少し、崩壊へ向かうことは十分に想定できるのです。
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単行本p.14


 ウナギは本当に絶滅するのか。現状、科学的にどこまでのことが判明しているのかを詳しく解説します。


2.土用の丑の日とウナギーーウナギを食べるということ
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 適切な消費量の上限が設定されていれば、値段や食べる時期など、食べ方は個々人がそれぞれの価値観に基づいて決めるべきことです。(中略)消費に関する最大の問題は、適切な消費量の上限が設定されていないことにあります。現在必要とされていることは、早急に適切な消費量の上限を設定し、誰もが後ろめたさを感じることなくウナギを消費できる状況を作り出すことです。
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単行本p.28


 日本人の食生活とウナギの関係について詳しく考えてみます。


3.ウナギと違法行為ーー密漁・密売・密輸
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 2015年漁期に国内の養殖池に入ったシラスウナギ18.3トンのうち、約7割にあたる12.6トンが、密輸、密漁、無報告漁獲など違法行為を経ていると考えられます。これら違法行為を経たウナギと、そうでないウナギは、シラスウナギが流通される過程や養殖の過程で混じり合い、出荷される段階では業者でもほとんど判別できません。(中略)シラスウナギの密漁や密売は、ウナギに関連する産業界ではごく当たり前のことであり、シラスウナギをスムーズに入手させてくれる「必要悪」だと信じられています。
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単行本p.32、38


 密漁などウナギに関する犯罪とその背景、影響について詳しく見てゆきます。


4.完全養殖ですべては解決するのか
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 今後、技術の革新が進み、ニホンウナギ人工種苗の商業的利用が可能になったとしても、費用対効果の面で人工種苗が天然のシラスウナギを凌駕する日は、さらにずっと後になるか、永久にやって来ないかもしれません。また、もし人工種苗が商業化されても、現状では天然のシラスウナギの漁獲量を削減する効果は期待できません。
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単行本p.55


 ウナギの完全養殖の現状と今後の見通しをまとめます。


5.ウナギがすくすく育つ環境とは
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 ニホンウナギは海の産卵場に集まって産卵し、その子どもは東アジアの各地へ分散します。ニホンウナギのこのような性質は、この魚の管理や生息環境の回復を難しくします。(中略)ある地域でウナギを取り尽くしたとしても、次のシーズンには産卵場からシラスウナギが運ばれてきます。このため、ウナギは保全のための努力が報われにくいのです。
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単行本p.59


 ウナギが成長しやすい河川環境を守るにはどうすればいいのかを考えます。


6.放流すればウナギが増えるのか
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 「放流すれば魚が増える」という考え方は非常にシンプルで説得力があります。しかし、現実はそう単純ではなく、放流はむしろ有害である可能性も高いということが、近年の研究で明らかになってきました。それでも放流が盛んに行われる背景には、放流に関する情報、特に放流がもつ負の側面が、適切に伝達されていないことが挙げられます。
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単行本p.81


 川に放流することでウナギを増やそう、という素朴な考えにはどのような問題があるのかを見てゆきます。


7.ワシントン条約はウナギを守れるか
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 ワシントン条約に頼らなくとも、科学的な知見に基づいて、適切な消費量の上限を設定すれば、過剰な漁獲を抑制し、ニホンウナギを含むウナギの仲間を持続的に利用することは可能なはずです。しかし、第2章で説明したように、現在のニホンウナギの消費量の上限は過剰であり、消費を抑制する機能を果たしていません。また第3章で紹介したように、シラスウナギの漁獲と流通には違法行為が蔓延しています。現状では、適切な管理が行われているとは言えません。このような状況が継続すれば、強制力を伴った国際的な枠組みであるワシントン条約による規制を望む声は、必然的に大きくなるでしょう。
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単行本p.93


 ワシントン条約でウナギを守ることが出来るのか、それは望ましいことなのかをを考察します。


8.消費者にできること
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 水産行政に関わる人間がそろって極悪人で、業界からの賄賂を懐に入れ、ニホンウナギを絶滅に追い込むことに至上の喜びを感じているという状況は、どう考えてもありえません。私の知る限り、水産行政の方々は、可能であればウナギの持続的な利用を実現したい、と考えています。
(中略)
 水産行政の科学的知識の欠落は、科学的な知見に基づいて問題を解決しようという姿勢が欠けている、という根本的な問題も関係している可能性がありますが、おそらくは主に、人員というリソースの不足によるものでしょう。
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単行本p.97、98


 行政や政治がどれほどウナギ問題に取り組んでいないのか、そして消費者に出来ることは何かを探ります。



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