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『連星からみた宇宙 超新星からブラックホール、重力波まで』(鳴沢真也) [読書(サイエンス)]

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 じつは、宇宙に存在する星々のおよそ半数は、連星であると考えられています。しかし私たちにとってもっとも身近な恒星である太陽が1つだけなので、多くの人は、恒星はみな一人ぼっちで存在していると思っているようです。「ブルーバックス」の編集部のみなさんでさえ、恒星の半数は連星だと知らない人が少なくなかったと聞いて、ちょっとびっくりしました。連星は宇宙で珍しいものではなく、むしろありふれた存在なのです。
 しかも、ただ「珍しくない」だけではありません。じつは天文学の進歩において、連星は非常に重要な役割を担ってきたのです。
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単行本p.5


 共通重心を中心に互いの周囲を公転している複数の恒星、連星。新星、ブラックホール、Ia型超新星、ダークエネルギー、重力波など、様々な発見に連星がどのように関わっていたのかを平易に解説する天文学入門書。単行本(講談社)出版は2020年12月です。


 宇宙や天体に関するサイエンス本で名高い鳴沢真也さんによる最新作です。これまでに読んだことのある鳴沢さんの著書の紹介はこちら。


2016年07月27日の日記
『へんな星たち 天体物理学が挑んだ10の恒星』(鳴沢真也)
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2016-07-27

2014年02月25日の日記
『宇宙人の探し方 地球外知的生命探査の科学とロマン』(鳴沢真也)
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2014-02-25


 今作のテーマは「連星」。連星に関する基礎知識から始まって、天文学の歴史における様々な大発見に連星がどのように関わっていたのかを紹介してくれます。


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 天文学や宇宙論に大発見をもたらし、その発展を支えているのは、連星だといっても過言ではないでしょう。さらに、星が見せる不思議な特徴や、説明のつかない奇妙な現象について調べていくと、連星があることが原因だったという事例は、まさに枚挙にいとまがありません。「宇宙の謎解き」は、連星を知らなければ絶対にできないのです。
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単行本p.6


〔目次〕

第1章 あれも連星、これも連星
第2章 連星はどのようにしてできたのか
第3章 なぜ連星だとわかるのか
第4章 連星が教える「星のプロフィール」
第5章 「新しい星」は連星が生む幻か
第6章 ブラックホールは連星が「発見」した
第7章 連星が暗示する「謎のエネルギー」
第8章 連星が解いた「天才科学者最後の宿題」
第9章 連星のユニークな素顔
第10章 連星も惑星を持つのか
第11章 連星は元素の合成工場だった
第12章 もしも連星がなかったら 




第1章 あれも連星、これも連星
第2章 連星はどのようにしてできたのか
第3章 なぜ連星だとわかるのか
第4章 連星が教える「星のプロフィール」
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 人間の場合、双子が生まれる確率は約1%といわれています。しかし、星は人間よりも双子で生まれる確率が圧倒的に高いと考えられています。
 その双子が連星になると考えられていますが、双子ではなく「他人」が連星になる場合もあります。さらに、最初は連星だったのに、あとでペアが解消される場合や、連星のペアをチェンジしてしまう場合すらあるのです。星の世界の人間関係(星関係?)も、なかなか複雑なのです。
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単行本p.42

 連星とはどのような構造をしているのか。現時点でわかっている最多の多重連星は何重連星か。連星はどのようにして誕生するのか。ある恒星系が連星であることをどうやって確認するのか。そして連星の観測により何が分かるのか。連星に関する基礎知識を解説します。


第5章 「新しい星」は連星が生む幻か
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 新星の正体はなんなのでしょうか。一見すると、夜空に新しい星が生まれて輝きだしたようにも思えます。しかし輝きは一時のことで、しだいに暗くなって見えなくなるのですから、星が誕生したわけではないのです。新星現象は長い間、天文学上の大きな謎であり、古いものでは1651年に出された論文に、13もの説が提唱されています。
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単行本p.104

 突然、夜空に輝く星が現れる新星(ノヴァ)現象。長年に渡って天文学上の謎だった新星の正体には、連星が深く関わっていたのです。


第6章 ブラックホールは連星が「発見」した
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 連星は、謎のX線源をつくり、通常なら私たちけっして姿を見せないブラックホールの姿を暴き出す役割を果たしていました。ブラックホールの発見は、ジャッコーニさん、ロッシさん、小田さんら「X線天文学」を切り拓いた人たちの功績によるものですが、同時に、連星がブラックホールを発見させたともいえるのです。
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単行本p.134

 光を放出せず発見困難と考えられていたブラックホールは、実際には強烈なX線を放出していた。そのメカニズムは。ブラックホールの発見に連星がどのように関わっていたのかを解説します。


第7章 連星が暗示する「謎のエネルギー」
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 超新星というと、非常に重い星が、一生の最後に大爆発する「重力崩壊型」が一般の方にはなじみがあるようですが、Ia型はそれとは別のタイプの超新星で、重力崩壊型とはまったく異なるメカニズムで発生すると考えられています。(中略)
 では、どのようなメカニズムで白色矮星が爆散するのでしょうか。じつは2つの説があり、ともに連星がからんでいるのですが、どちらが正しいのかは現在も大論争中です。
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単行本p.139

 標準光源として利用できるIa型超新星。連星が作り出すIa型超新星の観測が宇宙の加速膨張という衝撃的な発見、さらにはダークエネルギーの謎につながっていった経緯を解説します。


第8章 連星が解いた「天才科学者最後の宿題」
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 GW170817の検出と、そのときのキロノバ、ショートガンマ線バーストの検出は、重力波と電磁波による、それも広い波長域にわたっての観測という意味で、人類史上初めての快挙でした。理論で予測されていたいくつかの現象が、このとき一気に証明されたのです。
 アインシュタインの一般相対性理論の正しさや、これらの天体現象のメカニズムが解き明かされただけではありません。ブラックホールどうしの連星の場合と同じく、中性子星どうしの連星もたしかに存在すると立証されたことは、天文物理学でも、星の進化の研究などにおいてきわめて重要な意義がありました。物理学者にとっても、天文学者にとっても、それは一大イベントだったのです。こうしたわけで、中性子星どうしの合体が観測された2017年8月17日を私は「21世紀天体物理学の勝利の日」と呼んでいます。
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単行本p.169

 重力波と電磁波によるブラックホール連星や中性子星連星の観測は、これまでの理論を一気に裏付ける重要な成果をあげた。連星観測により宇宙の姿が明らかになってゆく様子を解説します。


第9章 連星のユニークな素顔
第10章 連星も惑星を持つのか
第11章 連星は元素の合成工場だった
第12章 もしも連星がなかったら 
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 結婚指輪に使われるプラチナ、有史以来人々を魅了し続ける金、原子力発電の燃料となるウラン、これらの元素は中性子星の連星が衝突・合体してつくられるのです。このことがわかってきたのは、じつはかなり最近のことです。
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単行本p.221

 様々な連星の様子、金やウランなどの元素の合成過程に連星がどのように関わっているのか、そして連星を周回する惑星の存在など、様々なトピックを解説します。





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『世界のふしぎな木の実図鑑』(小林智洋、山東智紀、山田英春:写真) [読書(サイエンス)]

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 木の実の形態はじつに多様だ。その多様性は、次世代に命を繋ぐため新たな土地へ旅に出る手段の違いに起因する。あるものは翼を持ち、またあるものは羽根を持ち、またあるものは綿毛を持って空を翔け、またあるものは浮きを使って川や海を旅する。バネ装置やねじれ装置を使って自ら弾け飛ぶもの、鉤爪で動物たちにひっつき連れ出してもらうもの、蟻や鳥などにご褒美を携えてその身をゆだねるものもいる。人間にとっては災害としか思えない山火事ですら、耐火性を備え繁殖のチャンスに変える木の実まで存在する。
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 世界中の様々な「木の実」を形態や機能により分類し美しい写真とともに掲載したビジュアル図鑑。単行本(創元社)出版は2020年11月、Kindle版配信は2020年11月です。


〔目次〕

第1部 あつまる

ドングリの仲間
クルミの仲間
セコイア3兄弟
世界の松ぼっくり
豆いろいろ
ヤシいろいろ
レウカデンドロンの仲間
ユーカリの仲間
バオバブの仲間

第2部 ひろがる

風に舞う
回転しながら落ちる
動物にひっついて移動する
海や川を漂流する
はじけ飛ぶ
乾燥や山火事の熱で拡散する

第3部 かたちづくる

鱗をまとう
棘をのばす
ひねる・ねじれる
花ひらく
口をひらく
自然の器
自然のビーズ
丸いかたち
紡錘のかたち
でこぼこのかたち




第1部 あつまる
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 従来の体系が外部形態的な仮説を根拠に植物を演繹的に分類していったのに対して、APG体系はミクロなDNA塩基配列の解析から実証的に分類体系を構築する、根本的に異なる手法である。(中略)APG分析体系はまだ日が浅く、一般的にはまだまだ新エングラー体系やクロンキスト体系に基づいた表記の書籍も多い。
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単行本p.49

 まず様々な「木の実」を主にその形状によって分類してみます。色々な松ぼっくり、様々などんぐり、多種多様な豆や椰子。そこから分類学の進展に目を向けてゆきます。


第2部 ひろがる
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 人間は空を飛びたいと想い描き、ダヴィンチに始まり様々な飛行機械を考案してきたが、植物はそれよりもはるか昔から長い進化の中でそれらをすでに編み出している。大地に根を張り、人間や動物のようには自由に身動きの取れない植物は、より遠く、より広く、種子を新天地に届けるために、様々な工夫を凝らしてきた。
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単行本p.50

 飛翔・滑空する「飛翔タイプ」、クルクル回りながら地面に落ちる「回転タイプ」、動物の体毛に絡みついて移動する「ひっかけタイプ」、水流に乗って移動する「漂流タイプ」、弾けて種子を拡散させる「爆裂タイプ」、さらには火事や乾燥を利用する、鳥に食べられる、など様々な方法で種子を拡散しようとする木の実たち。その拡散方法がどのような形状により実現されているのかを詳しく見てゆきます。


第3部 かたちづくる
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 見た目重視の本書の中でも特に外見のユニークさに注目して選り分けてみた。鱗や棘といった表面のテクスチャーの特徴から、球や紡錘といった全体の立体型、花や器など別の何かへの見立てまで、テーマも様々だ。
 正直なところ、どの木の実もグループに分け切れないほど個性にあふれていて、なおかつどれも外したくない木の実ばかりなので、章立てには頭を悩ませた。
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単行本p.114

 ウロコ、トゲ、ねじれ、花や花瓶やビーズに似たかたち、などふしぎで美しい形状の木の実を集めて鑑賞します。





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『ダチョウ力 愛する鳥を「救世主」に変えた博士の愉快な研究生活』(塚本康浩) [読書(サイエンス)]

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 取材で、「ダチョウの研究を続けるなかで、いちばんの苦労は何ですか?」とたずねられたときには、僕は迷わず「凶暴なダチョウを相手にすること」と答えてきた。
 ダチョウに近づかなければ、襲われることはないが、そういうわけにはいかない。抗体の入った卵を産ませるには、メスのダチョウに抗原であるウイルスのたんぱく質を打つ必要があるからだ。(中略)ダチョウを捕まえるときには物干しざおなどを片手に、五~六人でターゲットのダチョウを追いかける。
 追われるほうのダチョウは壁に向かって逃げ、追いつめられるとくるりと向きを変えるため、襲うつもりはなくても、Uターンしたときに追いかけている人間と正面衝突してしまうことがある。
 ダチョウは走るときに、足を前方に蹴り上げる。正面衝突すると、足で蹴り上げられた人間のほうは地面にたたきつけられる。さらにダチョウはひっくり返った人間のことなど無視して百キロを超える体重で踏みつけて去って行く。
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単行本p.96、98


 新型インフルエンザ予防用の「ダチョウマスク」を開発した研究者がダチョウ研究について語るサイエンスエッセイ。『動物のお医者さん』(佐々木倫子)を思い出さずにはいられない一冊。単行本(朝日新聞出版)出版は2009年3月、Kindle版配信は2020年11月です。


〔目次〕

第1章 ダチョウは不死鳥?
第2章 博士、ダチョウを飼う
第3章 大発見! ダチョウの卵パワー
第4章 ダチョウ抗体が恐怖のウイルスを退治する!
第5章 人類を救うダチョウの底力




第1章 ダチョウは不死鳥?
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 もしかしてダチョウは世界を制覇していたのではないだろうか。真剣にそう考えることがある。身長は2.5メートルを超える。巨体から振り降ろすキック力、時速60キロを超える俊足、年間に100個もタマゴを産む高い生殖能力、60年も生きる生命力――。46億年の地球の歴史の中で、ダチョウが天下をとっていれば、進化の過程で人類が勃興していたかどうかは疑わしい。
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単行本p.8

 ダチョウ主治医としてダチョウ牧場にやってきた鳥類大好き研究者である著者。そもそもダチョウってどんな鳥なのか。その驚くべき治癒能力など知れらざるダチョウの生態にせまる。


第2章 博士、ダチョウを飼う
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 大学の畜舎でダチョウを飼いはじめたことは大学の職員の間でも知れわたるようになった。「それはまたけったいな」というのが大方の感想だろう。同僚の研究者たちからは「どんな研究をするんですか」とよく聞かれた。そんなときは「好きなんですよ~。研究とか言わんと大学で飼えないじゃないですか」と正直に答えてはいけない。
 冷静かつ知性的に「ダチョウのホルモン分泌の研究です。ニワトリの伝染性気管支ウイルスの解明につながると見込んで……」と話した。たいていは「おもしろそうな研究ですね」と言いつつもクビをかしげて去って行ったが、こうでも言わなければ命取りである。
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単行本p.61

 ダチョウを飼いたいという夢をかなえるために、ニワトリからダチョウへと研究テーマを変えた著者。大学の畜舎でダチョウを飼育することが出来たものの、養育費の捻出、脱走事件など、苦労が絶えない。


第3章 大発見! ダチョウの卵パワー
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 ウサギやラットで生産される抗体は1グラムあたり数億円もする。これに対してダチョウ卵の抗体は1グラムあたり十万円。湯水のごとくというとオーバーかもしれないが、格安で大量生産できるので、フィルターやマスクのような工業製品にまで用途を広げることができ、しかも製品コストを下げられる。あえて自画自賛するなら、ダチョウ卵から抗体を発見したのは画期的であり、その抗体の大量生産化は革命的な開発といっても差し支えないと思う。
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単行本p.122

 ダチョウに抗原を注射して抗体を作らせ、それを卵から抽出する。そうすれば安価で大量に新型インフルエンザ抗体が手に入るのではないか。だがそもそもダチョウに注射を打つところから、卵から抗体を抽出するまで、苦労の連続だった。


第4章 ダチョウ抗体が恐怖のウイルスを退治する!
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 2008年11月19日は人生のなかで忘れられない日となった。その日、僕はインドネシアの首都ジャカルタから車で三時間ほど南に下ったボゴール市郊外のボゴール農業大学ウイルス研究所にいた。(中略)
 研究所には感染者から採取した高病原性鳥インフルエンザウイルスの「H5N1」が保管されている。幸い日本ではまだ感染して発症した患者は出ていない。だが、インドネシアでの致死率は約80%。2009年2月中旬までに判明しているだけで、141名が感染し、そのうち115人の住民の命を奪ったじつに恐ろしいウイルスだ。
 僕たちは患者から採取したウイルスでダチョウ抗体の効果を確認する実験を行うために、はるばる京都から一日がかりで赤道直下にあるこの大学までやってきた。
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単行本p.126、127

 ダチョウの卵から抽出した抗体がはたして実際に新型インフルエンザに効果があるのか。検証のために高病原性鳥インフルエンザ発生地域に飛び、危険な実験に挑む著者。


第5章 人類を救うダチョウの底力
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 いま、ダチョウが有史以来、はじめてスポットライトを浴びている。2008年10月某日の朝、ダチョウ抗体マスク開発のニュースがNHKで放送された。その直後から、研究室の電話は鳴りっぱなし。新聞社、テレビ局、雑誌の取材依頼はもちろん、ウイルス対策で一攫千金を狙う企業からも続々と電話が入った。その日は電話の応対以外は何もできなかった。いちばん困ったのは大阪のおばちゃんだ。「どこで買ったらええの」と聞くので、通販での購入方法を教えてあげると「まけてくれへん」と言い張って、電話を切ってくれない。
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単行本p.187

 ついにダチョウ抗体マスクとして製品化の目処がたった。だが研究は続く。ダチョウ抗体納豆から、ネコのヘルペス治療薬、ダチョウオイル、そしてガンの診断や治療まで。人類を救うかも知れないダチョウパワーの未来を語る。




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『認知バイアス 心に潜むふしぎな働き』(鈴木宏昭) [読書(サイエンス)]

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 人の知覚はとても限定的だし、記憶も儚く脆い。知性の根幹をなす概念も時にわずかなサンプルから作り上げられてしまい、偏見や差別を生み出す。推論や意思決定などの思考も表面的な特徴に惑わされ、本質を見損なうことがある。人間に固有の言語というものも、現実を酷く歪んだ姿で捉えることを増幅し、記憶や思考を阻害する。他者は人をおかしな方向に導き、不合理、非道徳的な集団意思決定を生み出す。こうしたことから、人はバイアスまみれの当てにならない存在であるということが導かれる。このようなことを紹介する本は、日本語のものに限っても相当な数となっている。そうしたことから、人の非合理性、非論理性はある意味、常識化しているとも言える。
 しかし、人はそうした側面だけを持つわけではない。(中略)人を愚か者だと断定してしまうのは、それ自体もバイアス、つまり「認知バイアス」バイアスといえる。
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単行本p.218


 人間の知覚、記憶、概念、推論、意思決定には大きな偏り、認知バイアスが含まれる。代表的な認知バイアスを紹介するとともに、そのような偏りや不合理の存在は人間にとってどのような意味があるのかを論じる一冊。単行本(講談社)出版は2020年10月、Kindle版配信は2020年10月です。


〔目次〕

第1章 注意と記憶のバイアス
第2章 リスク認知に潜むバイアス
第3章 概念に潜むバイアス
第4章 思考に潜むバイアス
第5章 自己決定というバイアス
第6章 言語がもたらすバイアス
第7章 創造(について)のバイアス
第8章 共同に関わるバイアス
第9章「認知バイアス」というバイアス




第1章 注意と記憶のバイアス
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 この事件では被害者の証言により、ある心理学者が逮捕された。しかし彼はすぐに釈放されることになった(忖度のせいではない)。というのも、その時間に彼はテレビの生放送に出ていたからである。ではどうして被害者は虚偽の証言をしたのだろうか。実は彼女はその事件の直前まで、その心理学者が出演していた番組を見ていたからなのである。
 そんなバカなことがあるのかと思われるかもしれない。しかし私たちは何を見たかは覚えているが、それをどこで見たかは意外に覚えていないものだ。
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単行本p.30

 有名なゴリラ動画など私たちの視覚や注目がいかにあてにならないかを示す実験の数々を紹介し、チェンジブラインドネスや虚偽記憶のメカニズムにせまります。


第2章 リスク認知に潜むバイアス
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 メディアは珍しいこと、つまりめったに起きないことほど集中的に報道する。するとリハーサル効果により記憶に定着し、利用可能性ヒューリスティックが働くことで、現実とはまったく逆のリスク頻度の推定を行ってしまうのだ。つまり、私たちは同じタイプのことが100回起きることと、そのタイプの一つの事例について100回聞くことを区別していないのだ。
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単行本p.53

 私たちがありそうな危険を無視し、可能性が低いリスクに過大に脅えるのはなぜだろうか。利用可能性ヒューリスティックという心の働きが引き起こす認知バイアスを解説します。


第3章 概念に潜むバイアス
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 代表例を用いてカテゴリー判断を行うと、連言錯誤のような論理的にはあり得ないような間違いを犯すことがある。また、これが社会的ステレオタイプという形を借りて、人種などの人の集団に適用されることで、差別や偏見が生み出されることも或る。また代表例の特徴はそれが代表する集団全員に当てはまると考える心理学的本質主義が加わると、差別、偏見はさらに増長される。
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単行本p.78

 差別や偏見はどのようにして生まれ、強化されてゆくのか。連言錯誤の実験から始まって、代表性ヒューリスティックについて解説します。


第4章 思考に潜むバイアス
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 演繹推論(4枚カード問題)、帰納推論(2-4-6課題)において確証バイアスが働き、それが非論理的な答えを導き出してしまうことを述べた。こうした推論のバイアスは、実験室の中だけで見られるものではない。人間関係においては第一印象に過度に頼り、正確な人間評価を妨げることもある。さらに、原因を求める際にも、偏った非合理な方向へと私たちを導いてしまう危険性がある。
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単行本p.96

 何かを推論し、それを確かめようとするときに働く確証バイアス。その働きのために下してしまう非合理な判断、そしてその強化プロセスについて解説します。


第5章 自己決定というバイアス
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 人の行動は自由意志によって、その人が自覚できる意図に基づいて行われるわけではなく、意識できない情報、無意識の働きによって引き起こされる。これは大きな問題となる。なぜなら原因が意識できないからだ。意識できないものは理由や原因の候補とはならない。ではどうするのだろうか。
 今までも見てきたように人は意図に基づく作話、つまり意図を使ったでっち上げをするのだ。
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単行本p.131

 私たちの行動は無意識のレベルで決定されており、さらにその行動は自分が意図的に決めたものだという作話(つくり話)をでっち上げることに長けている。行動原因を探ることの難しさを解説します。


第6章 言語がもたらすバイアス
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 そうした能力は言語の発達とともに表に出ることが少なくなるということだ。言語能力が十分でない(あるいはほとんどない)、ナディア、クロマニヨン人、チンパンジーは写真的記憶能力をフルに活用して絵を描いたり、難しい記憶課題を楽々とこなしていく。一方、言語能力に長けた大学生たちは「物体X」としか言いようがない、笑うしかない絵を描き、チンパンジーが楽々こなす記憶課題で四苦八苦する。
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単行本p.152

 言語の発達によりある種の能力の発動が妨げられていることを示す実験を取り上げ、世界を言語によって理解することの功罪を論じます。


第7章 創造(について)のバイアス
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 ひらめきが突然現れたかのように思うのは、意識的なシステムが無意識的システムによる漸進的な向上をうまくモニターできないからとも言える。
 こうした結果の解釈は、ひらめきは学習、それも無意識的な学習だ、という反直感的な考え方を提示する。ひらめきは突発的なものであり、試行を積み重ねて徐々に上達するような学習とは無縁であると考えるかも知れないが、そうではない。無意識的システムが試行を重ねる、つまり学習を行うにつれ徐々に洗練されていき、結果としてひらめきを生み出しているということになる。
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単行本p.181

 思考の飛躍が必要な課題に取り組むとき、試行錯誤するなかで私たちの無意識は何をしているのか。イノベーションを生み出す心の仕組みに関する誤った思い込みについて解説します。


第8章 共同に関わるバイアス
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 集団には集団の力学というものがあり、1人の行動を支配する原理とは別の原理が働くのだ。だからある時には集団は個人では期待できないような成績を残すこともあるし、見事な秩序を生み出すこともある。一方、ブロッキング、評価不安、タダ乗りの結果、合計が2にはならず、1.3になるかもしれないし、0.7のように1人の時よりも悪くなることもある。また3や4になる時もあるだろうが、それが素敵なことかどうかは仕事の種類にもよる。
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単行本p.213

 人は集団になると驚くほど愚かな、あるいは非人道的な行動をとることがある。その背後にはどのようなメカニズムが働いているのだろうか。人と人との共同作業の背後で働いている認知バイアスを解説します。


第9章「認知バイアス」というバイアス
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 人の知性は、人の住む環境の中で、そして人の生物学的な条件の下で作り出されたものである。限られた注意資源、勝手に繋がりを作り、作話をしてしまう記憶、自分のコントロールの及ばない無意識的な処理、諸刃の剣である言語の利用、そういう生物学的な条件、そして社会との協調およびそれがもたらす軋轢という環境の条件の中で私たちの知性の基本は作り出された。また、今後現れるであろうすべての状況に事前に準備するわけにはいかないので、ここ数万年くらいはあり合わせのものでプリコラージュしながら修繕屋として生活してきたのである。だから、それを度外視した状況を勝手に設定して、そこで人間の知性を論じたりしても意味がない。
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単行本p.252

 これまで見てきた数々の認知バイアスの存在から、人間の知性は欠陥だらけの粗雑なものだとつい考えたくなる。実はそれも人間の知性を評価するときの認知バイアスの一種だということを論じます。





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『笑う数学 ルート4』(日本お笑い数学協会) [読書(サイエンス)]

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今回は数学で全学問を乗っ取るべく、学校で学ぶ国語、英語、理科、社会、はたまた家庭科、道徳、美術に体育と、全教科を数学に絡めて語っています。
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 ちょっと面白い数学ネタから、役立つ計算法や解法、さらには数学用語による駄洒落まで、数学の「笑える」話題を集めた『笑う数学』シリーズ最新作。単行本(KADOKAWA)出版は2020年10月、Kindle版配信は2020年10月です。

『笑う数学』シリーズ第一弾の紹介はこちら。

2018年02月28日の日記
『笑う数学』
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2018-02-28


 さて、その第ルート4弾、というか素直に第二弾と書けばいいのに、では「数学で全学問を乗っ取る」という野望のもと、学校の全教科を数学にしてしまうというネタで遊びます。だいたいこんな感じです。


・漢字をトポロジーで解析して「猫」=「神」であることを証明
・言葉を数字に変換して、「いぬ」と「ねこ」の平均が「すた」であることを証明
・円周率を英文に変換して覚える
・グラフにすると英語になるような方程式
・葉っぱの生え方に隠された数学的性質
・数学を使って真田信繁の石高を計算する
・最も早い割り勘の計算方法
・黄金比に近い文字ランキング


〔目次〕

1時間目 (国語)×数学
2時間目 (英語)×数学
3時間目 (理科)×数学
4時間目 (社会)×数学
5時間目 (その他の教科)×数学




1時間目 (国語)×数学
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 トポロジーではよく「コーヒーカップはドーナツと同じ」などとたとえられます。(中略)「猫」と「神」も同じです。猫は神なので、当然ですね。
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「漢字の「本質」 ~猫は神~」より




2時間目 (英語)×数学
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点P、それは、算数・数学界の中で最も嫌われている存在。
点P、それは、何者かの力によって動かされている存在。
点P、それは……

なぜ、点Pは点「P」なのだろう?
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「点Pはなぜ「P」なのか」より




3時間目 (理科)×数学
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カタツムリの殻、羊のツノ、巻貝などなど。さらに台風や渦潮といった自然現象や、ハヤブサが獲物に近づくときなども「ベルヌーイの螺旋」を描くと言われています。「ベルヌーイの螺旋」は自然界で大人気なんです。

一方、「アルキメデスの螺旋」は超不人気。自然界でお目にかかることは一切ありません。(中略)とか言いながら、じつはひとつだけ見つけてしまいました。それは……
――――
「自然界で《大人気の螺旋》と《不人気の螺旋》」より




4時間目 (社会)×数学
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なんと、明治時代以降(近現代)の長さを1とすると、近現代、近世、中世、古代、原始の長さが、見事なまでに1:2:3:4:5になっています。
――――
「日本史は数式でできている」より




5時間目 (その他の教科)×数学
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小さい方から順に見ていくと、「少々」が8/5くらい集まって「ひとつまみ」になり、「ひとつまみ」が5くらい集まって「小さじ」になり、「小さじ」が3集まって「大さじ」になり、「大さじ」が2くらい集まって「ひとつかみ」になり、「ひとつかみ」が6くらい集まって「1合」になり、「1合」が10/9くらい集まって「計量カップ1」になる。つまり料理の計量は「約8/5進法」と「約5進法」と「3進法」と「約2進法」と「約6進法」と「10/9進法」が混在しているのです。
――――
「料理の計量は何進法?」より





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