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『TRANSVERSE ORIENTATION』(ディミトリス・パパイオアヌー) [ダンス]

 2022年7月30日は、夫婦で彩の国さいたま芸術劇場に行ってディミトリス・パパイオアヌーの公演を鑑賞しました。2021年初演の最新作です。上演時間は105分。

 三年前の来日公演『THE GREAT TAMER』がちょっと忘れがたい衝撃だったので、今回もこちらの理解や認識が追い付かないようなべらぼうなものを見せてくれるのではないかと期待していたのですが、いや期待以上でした。ちなみに前回来日公演時の紹介はこちら。

2019年07月01日の日記
『THE GREAT TAMER』(ディミトリス・パパイオアヌー)
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2019-07-01

 今作も次から次へと休む間もなく奇怪なイメージがくり出され、まるで悪夢のなかにいるような気持ちになります。なかでも数名で操演する巨大な牛は圧巻。他にも二人の出演者がくっついて合成人間として歩いたり、ビーナスが全身から水を吹き出したり、舞台を海に海辺に変えてしまったりと、ひとつひとつの演出に驚きが。

 冒頭近く登場するエウロペやミノタウロスなどギリシア神話のモチーフに気をとられていると、すぐ全裸になって有名な西洋絵画のシーンをそのままやってしまう。過剰にまき散らされた神話や絵画のイメージが、背広を着た現代人たちと重なって、強いインパクトを生み出します。最初から最後まで驚きと戸惑いに満ちた謎めいた作品で、その衝撃は深いものがあります。舞台芸術のすごみを目の当たりにして思考がぶっとぶような公演でした。





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『やりなおし世界文学』(津村記久子) [読書(教養)]

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 本書を作る作業を通して、本は友人である、という気持ちを再び強くしました。本書で取り上げた数十冊のうち、誰かはおそらくあなたの気持ちをわかってくれるはずです。もしかしたら、意外な誰かかもしれません。本書を手に取った方が、「こんなやつでもとにかく読もうと思ったら読めるんだ」を入り口に、わかる/わかってくれる誰かを見つけることを願います。
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「もういいかげん、ギャツビーのことを知る潮時が来たように感じたのだった」
「自分もボヴァリー夫人についての話をすごく後ろの方で聞いて、一応へーとかと言いたい」
「そういうわけで「アッシャー家崩れるのか」と思ったまま二十年以上が経った」


 タイトルくらいは知ってるけど内容はよく知らない、いまさら読んだことがないとは言いにくい、そんな立派な世界文学の数々に津村記久子さんが挑む。実際に読んでみたらこんな話でした、感銘ポイントはここ、ぜひこの登場人物について語りたい……。親しみやすい文章で名作の数々を個人的視点から紹介してくれる、一読するや読みたい本がもりもり増殖してゆく最高の読書エッセイ集。単行本(新潮社)出版は2022年6月です。


 教養として知っておきたい「世界の名著」の内容を簡単にまとめてくれるガイドは、まあよくあります。本書がひとあじ違うのは、そのお勧めポイントの表現が熱いところ。単なる読者ではなく自身も作家であり同じ土俵に立っている、という覚悟から出てくる畏怖や感嘆や羨望の気持ちも込められていて、すごい迫力。こちらとしても対象の本を読書予定リストにぽんぽん放り込んでしまいます。


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 この作品を読んで、改めて、美しいものが文字で書かれるということの、開かれた幸福のようなものを思い出した。画像や映像によって規定されない言葉のイメージには終わりがなく、行間からは純粋な期待だけが吹き付けてくる。
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 唸る。巧まざる八方塞がりに、絶妙な信頼のおけなさに、絶望的なボタンの掛け違いに、悪魔のような面の皮の厚さに、悪意に、蒙昧さに、そして誇りに。
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 何も持たされずに生まれてきたわたしたちの怒りと誠実さについて。本書のすべての小説のあらゆる文章には、その核心に限りなく近いものがみなぎっている。
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 これほどまでに、夏の空気の密度と、世界がのしかかるような文章を自分は読んだことがない。本に夏が閉じこめられているようだ。
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 こんなにもつまらないことを、こんなにもおもしろく書ける。小説の力の例題集のような小説だと思う。
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 軽く寒けがした。小説が書けるということはこういうことなんじゃないかと、みじめになるぐらい今さら考えた。
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 あえて対象作品名が分からない部分を引用しましたが、ぜひ本書を隅から隅まで読んで読書予定リストあるいは積ん読を増やしてください。ちなみに対象作品が分かる紹介はこんな感じ。


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 あー終わってしまった、と思った。読了した時だ。これから『荒涼館』なしにどうやって生きていけばいいのか。読み返すのもいいけれども、それもなんか違う。まだ読んでいない人をうらやましく思う。
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 『リア王』に関しては、もう人前で文章を書いている人間にあるまじきことなのだが、「思ったよりひどい話だった」という屁のような感想が最初に出てきた。うーんこれはひどい……、と腕組みしながら、なぜか既視感のあるこのひどい感じについて考えてみて、これは世界史の教科書のひどさだ、と思い至った。
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 アリバイ崩しというジャンルの金字塔にして、江戸川乱歩も絶賛の本格推理小説であるという本作だが、「樽萌え」というものすごく特殊な気持ちも扱っている小説でもあると思う。樽好きからしたらもう垂涎の的だろうし、樽にそこそこ興味がある、ぐらいの人は読んだら「樽!」となるだろうし、樽なんてどうでもいい、という人が読んでも「樽けっこういいな」ぐらいの気持ちは持つようになるんではないだろうか。
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 また本書は読書エッセイでもあり、津村記久子さんの若いころの読書傾向について知ることが出来ます。けっこうなSF読みだったんだ。


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 マルタの鷹って何? 親に買ってもらったあかね書房の推理・探偵傑作シリーズの『ABC怪事件』のいちばん後ろのページの目録を眺めながら、小三のわたしはずっと考えていた。
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 児童文学についていろいろ美しい思い出は持っているけれども、結局いちばん読んだのは妖怪事典だと思う。小学校の学級文庫にあった水木しげる先生の妖怪事典などは、たぶん休み時間の度にそこにある限り手にとって眺めていたような気がする。
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 中学生の時は文学少女みたいに思われていたのだが、実際のところはそうでもなかった。活字というとライトノベルばかり読んでいたし、小説よりは友達が貸してくれる『少年アシベ』とかの方が楽しみだった。
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 高校三年から大学三年ぐらいまでは、早川書房や東京創元社のSFばかり読んで過ごした。文庫の後ろについている目録から、自分に合いそうなものを買ったり借りたりしては読んでいた。
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 初めてラファティを読んだのは大学一年の頃で、タイトル買い表紙買いだった。(中略)タイトルの変さといい、横山えいじさんのお祖母さんがテキスタイルと化した表紙のデザインといい、「これなら大丈夫そうだ」と感じられるものだった。実際大丈夫だった。
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 自分はこの作家の本をできる限り読もう、ということになって、卒業論文もヴォネガットの小説について書くことになる
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 ギブスンについてはもう、十年やそこらは頭になかったと思う。けれども、話していることに、やっぱり確かに自分にとってはキブスンを読んだことが、本を読んでいく、ひいては小説を書いていく上での重要な扉だった
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 以下に、本書で紹介されている作品のリストをつけておきます。「どんな話か知りたい。ついでにみんなどこに感銘を受けるのかも知りたい」というものがあれば、ぜひ本書をご一読ください。


『華麗なるギャツビー』
『ねじの回転』
『脂肪の塊・テリエ館』
『流れよ我が涙、と警官は言った』
『たのしい川べ』
『アシェンデン 英国秘密情報部員の手記』
『わらの女』
『パーカー・パイン登場』
『スポンサーから一言』
『終りなき夜に生れつく』
『かもめ』
『ストーカー』
『新編 悪魔の辞典』
『ムッシュー・テスト』
『闇の奥』
『ノーサンガー・アビー』
『813』『続813』
『クローム襲撃』
『長いお別れ』
『トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す』
『山月記・李陵 他九篇』
『スローターハウス5』
『るつぼ』
『スペードの女王・ペールキン物語』
『灯台へ』
『黄金の壺 マドモワゼル・ド・スキュデリ』
『遠い声 遠い部屋』
『知と愛』
『アラバマ物語』
『樽』
『たんぽぽのお酒』
『料理人』
『ワインズバーグ・オハイオ』
『響きと怒り』
『人間ぎらい』
『城』
『郵便配達は二度ベルを鳴らす』
『ゴドーを待ちながら』
『幸福論』
『肉体の悪魔』
『オー・ヘンリー傑作集』
『欲望という名の電車』
『チップス先生、さようなら』
『蜘蛛女のキス』
『世界の中心で愛を叫んだけもの』
『人形の家』
『ペスト』
『夜と霧』
『長距離走者の孤独』
『子規句集』
『クレーヴの奥方』
『ドリアン・グレイの肖像』
『一九八四年』
『椿姫』
『マルテの手記』
『ボヴァリー夫人』
『リア王』
『マクベス』
『赤と黒』
『君主論』
『自由論』
『マンスフィールド短編集』
『日々の泡』
『マルタの鷹』
『クリスマス・キャロル』
『幼年期の終わり』
『風にのってきたメアリー・ポピンズ』
『緋文字』
『孫子』
『宝島』
『ジキルとハイド』
『アッシャー家の崩壊 黄金虫』
『ハイ・ライズ』
『マイ・アントニーア』
『外套・鼻』
『深夜プラス1』
『カヴァレリーア・ルスティカーナ― 他十一篇』
『完訳 チャタレイ夫人の恋人』
『バベットの晩餐会』
『カンディード』
『ずっとお城で暮らしてる』
『ヘンリー・ライクロフトの私記』
『九百人のお祖母さん』
『サキ短編集』
『山海経』
『悪魔の涎・追い求める男 他八篇』
『怪談』
『津軽』
『ラ・ボエーム』
『鼻行類』
『金枝篇』
『カラマーゾフの兄弟』
『荒涼館』





タグ:津村記久子
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『導かれるように間違う』(ジャンル・クロスII 近藤良平×松井周) [ダンス]

 2022年7月16日は、夫婦で彩の国さいたま芸術劇場に行って近藤良平さんの公演を鑑賞しました。劇作家の松井周さんが書き下ろした脚本をもとに近藤良平さんが演出振付を担当した80分の舞台です。


[キャスト他]

作: 松井周
演出・振付・美術: 近藤良平
出演: 成河、亀田佳明、宮下今日子、荒木知佳、中村理、浜田純平


 舞台は精神病院という設定。車椅子に乗った(自分の足に強い違和感を持っている)患者、常に動き続けて止まらない患者、身体が前後逆(後頭部に仮面をつけて後ろ向きに歩く)の患者など、奇妙な症状を持つ患者が何人も登場します。

 出演者の半分はダンサー/元ダンサーということで、変な振付を大真面目に踊り続ける様子が驚くべき効果をあげています。中村理さんの身体前後逆ムーブメントとか。近藤良平さん率いる障害者ダンスチーム「ハンドルズ」の公演でもおなじみ車椅子ダンスも素晴らしい。不自由な制約つきの動きを組み合わせることで荷物(熊のぬいぐるみ)を受け渡そうと四苦八苦する振付など、いかにも近藤良平さんらしくてステキでした。




タグ:近藤良平
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超常同人誌「UFO手帖6.0」掲載作品『白のクイーンとピンクのユニコーン』を公開 [その他]

 馬場秀和アーカイブに、超常同人誌「UFO手帖6.0」(2021年11月刊行)に掲載された作品を追加しました。

『白のクイーンとピンクのユニコーン』
http://www.aa.cyberhome.ne.jp/~babahide/bbarchive/Ultraterrestrials.html


 ちなみに「UFO手帖6.0」の紹介はこちら。

2022年04月14日の日記
『UFO手帖6.0』 「本の雑誌」で大槻ケンヂさんに紹介されました。
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2022-04-14





タグ:同人誌
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『イデソロキャンプ』(井手茂太) [ダンス]

 2022年6月5日は、夫婦でシアタートラムに行って、井手茂太さんのソロダンス公演を鑑賞しました。公演時間60分です。


[キャスト他]

振付・演出・出演: 井手茂太
音楽: ASA-CHANG&巡礼
美術: 伊藤雅子


 井出さんのソロ公演『イデソロ』と、流行りのソロキャンプをひっかけたタイトル。背広を着てネクタイをしめたさえない会社員の格好(定番)をした井出さんが踊ります。ストレスにつぶされそうになっていた会社員が、休暇をとってソロキャンプに出かける。大自然の中で解放感を満喫していたものの、やがて夜になって怪しい物音が近づいてきて大慌て、という展開。

 仕事のストレスから解放されて浮かれ踊りまくる。ひょうきんでカッコいいダンスが前半のクライマックスで、観客もいっしょに浮かれてしまいます。後半は夜のキャンプで熊に襲われそうになり、あたふたする演出が楽しい。思ったより笑える演出はひかえめで(たき火のそばでノリノリで踊って火傷するシーンは思わず笑ったけど)、どちらかといえばシリアスな雰囲気で展開。最後はテントや樹木などの舞台装置を全部片づけてしまい、せり上がった台の上で井出さんらしいダサかっこいいダンスでしめます。

 次は8月に予定されているイデビアン・クルーの新作公演ですね。観にゆきます。





タグ:井手茂太
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