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『禍いの科学 正義が愚行に変わるとき』(ポール・A・オフィット:著、関谷冬華:翻訳) [読書(サイエンス)]

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 科学は、パンドラの美しい箱になりえる。そして、科学の力でどんなことができるのかを模索する私たちの好奇心が、時として多くの苦しみと死をもたらす悪霊を解き放ってしまうこともある。場合によっては、最終的な破滅の種がまかれることになるかもしれない。これらの物語は、有史以来、現在にまで続いている。そして、パンドラの箱の教訓は忘れられたままだ。
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単行本p.13


 科学の進歩は世界を変え、多くの人々の命を救ってきた。だが科学はときとして世界に災厄を解き放ってしまうこともある。鎮痛薬、マーガリン、化学肥料、優生学、ロボトミー、環境保護運動、メガビタミン療法。善意から生み出されたものが悲劇を招いた七つの事例を通じて科学と社会の関係を探究する本。単行本(日経ナショナル ジオグラフィック)出版は2020年11月、Kindle版配信は2020年12月です。


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 最後の章では、私たちが学んできた教訓を電子タバコや樹脂化学品、自閉症治療、がん検診プログラム、遺伝子組み替え作物などの最先端の発明に当てはめて考え、発明が誕生する段階で科学の進歩と科学が引き起こす悲劇を見分けられるのかどうか、私たちが過去から学ぶのか、あるいは再びパンドラの箱を開くのかを見ていく。そこから導き出される結論は、間違いなく読者を驚かせることだろう。
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単行本p.14


【目次】
第1章 神の薬 アヘン
第2章 マーガリンの大誤算
第3章 化学肥料から始まった悲劇
第4章 人権を蹂躙した優生学
第5章 心を壊すロボトミー手術
第6章 『沈黙の春』の功罪
第7章 ノーベル賞受賞者の蹉跌
第8章 過去に学ぶ教訓




第1章 神の薬 アヘン
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 かつて科学者たちは、モルヒネでアヘン中毒を治療できるのではないかと考えていた。次には、ヘロインでモルヒネ中毒を治療できるのではないかと期待した。そろそろ別の方法を試してみる時期が来ていた。彼らは、薬を合成することにより、痛み止めから中毒性を取り除くという挑戦を再び始めた。だが今度も挑戦はうまくいかず、結果は大失敗に終わることになった。
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単行本p.30

 痛みを取り去る鎮痛剤。神の恩恵ともいうべき鎮痛剤には、しかし中毒性という罠がつきまとう。アヘン、モルヒネ、ヘロイン、そしてオキシコンチン。麻薬中毒を治療するための新たな麻薬の開発をくり返した鎮痛剤の歴史をたどります。


第2章 マーガリンの大誤算
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 悪玉だと信じられていた飽和脂肪酸を大量に含むココナッツ油やパーム油などの熱帯植物油とバターのような動物性油脂を使用する企業を糾弾することで、CSPIやNHSAは知らず知らずのうちにもっと危険な食品であるトランス脂肪酸を米国に普及させていた。25パーセントのトランス脂肪酸を含むマーガリンのような食品が突如として「健康に良い代用品」に祭り上げられたのだ。1990年代の初めには、数万点の食品に部分水素添加油脂が使われるようになっていた。安価で、宗教の戒律に触れず、健康に良い代用品といわれたこれらの食品は、飛ぶように売れた。
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単行本p.62

 科学は脂肪の摂取が心臓病の原因となることを発見した。動物性脂肪を含むバターの代わりに、安価で健康に良い植物性脂肪のマーガリンを食べよう。だがマーガリンに含まれるトランス脂肪酸がどれほど危険であるか、手遅れになるまで誰も気づかなかった。脂肪の安全性に関する混乱の歴史を解説します。


第3章 化学肥料から始まった悲劇
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 ミュンヘンのドイツ博物館には、見学者が近づかないよう低い柵で仕切った内側に、フリッツ・ハーバーとロベール・ロシニュールが空気から窒素を固定するために制作した卓上装置が置かれている。時折、見学者が装置の前で足を止め、少し眺めてから、そのまま通り過ぎる。この装置から世界的な化学肥料の生産が始まり、多くの人命が救われたが、過剰な窒素で環境が汚染され続けているために最終的な破滅へのカウントダウンが始まったかもしれないことに、思いをはせる者はいない。
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単行本p.108

 窒素固定技術。その発明により化学肥料の大量生産が可能となり、数十憶人が飢餓から救われた。しかし、それに伴う窒素化合物汚染は深刻さを増し、地球の生態系を脅かしている。私たちの生活を豊かにすると同時に爆薬や毒ガスを作ってきた化学の功罪に迫ります。


第6章 『沈黙の春』の功罪
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 DDTを足がかりとして、米国は泥沼から抜け出した。ハマダラカはいなくなり、人々がマラリアにかかる心配はなくなった。それから、環境保護の名目で、米国は自分たちが脱出に使った足場をしまい込み、途上国には役に立たない生物戦略や、高くて買えない抗マラリア薬だけを残した。
 環境保護庁が米国でDDTを禁止した1972年以降、5000万人がマラリアで命を落とした。そのほとんどは、5才未満の子どもたちだった。(中略)『沈黙の春』でカーソンが警告したにもかかわらず、ヨーロッパ、カナダ、米国の研究により、DDTは肝臓病や早産、先天性異常、白血病、あるいは彼女の主張にあった他の病気の原因にはならないことが示された。DDTの使用期間中に増加した唯一のがんは肺がんだったが、これは喫煙が原因だった。何といっても、DDTはそれまでに発明されたなかでは最も安全な害虫対策だった。他の多くの殺虫剤に比べれば、はるかに安全性が高かった。
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単行本p.208、209

 殺虫剤DDTの危険性を訴える『沈黙の春』(レイチェル・カールソン)はベストセラーとなり、ここから米国における環境保護運動は始まった。しかし、この本の警告には科学的根拠がなく、DDTの禁止による弊害は大きかった。カーソンが生み出した「ゼロ・トレランス」概念は今もなお大きな問題を引き起こしている。環境保護運動が抱える影の側面を示します。


第7章 ノーベル賞受賞者の蹉跌
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 理由はどうあれ、この3人が及ぼした悪影響は計り知れない。ポーリングは人々にがんや心臓疾患のリスクを高めるだけでしかない大量のビタミンとサプリメントの摂取を勧め、デュースバーグは間接的にだが南アフリカで数十万人をエイズで死亡させ、モンタニエは治療効果が見込めず、有害性を持つ可能性すらある薬を提供して、子どもたちを何とかしたいという親たちの切なる願いを利用した。
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単行本p.242

 ノーベル賞を受賞した科学者たちが間違うとき、その権威は大きな災厄を引き起こすことがある。自分の間違いを認められず、あらゆる証拠を無視して有害な療法を普及させた三人のケースを取り上げ、科学者の社会的責任について考えます。


第8章 過去に学ぶ教訓
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 あらゆる進歩には代償が伴う。その代償が高いものになり過ぎないかどうかを調べるのは、私たちに課せられた仕事だ。ワクチンや抗生物質、衛生管理プログラムのように、ごくわずかな代償で済む場合もある。だが、トランス脂肪酸やロボトミー手術、メガビタミン療法のように、ある場合には代表は非常に大きくなる。これらのケースについては、どれも計算は簡単だ。しかし、オピエート(アヘンアルカロイドの薬剤)や化学肥料のように、短期間のうちに得られた利益やメリットを長期的な損失が大幅に上回り、影響の大きさを簡単にはじき出せない場合も多い。
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単行本p.276

 科学の進歩によって生まれた問題解決の方法をどのように評価すればよいのだろうか。電子タバコ、樹脂化学薬剤、自閉症治療、がん検診プログラム、遺伝子組み替え作物など、今日の議論を取り上げて、その功罪について考えます。





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超常同人誌「UFO手帖5.0」掲載作品『微細構造定数の彼方に』を公開 [その他]

 馬場秀和アーカイブに、超常同人誌「UFO手帖5.0」(2020年11月刊行)に掲載された作品を追加しました。

『微細構造定数の彼方に』
http://www.aa.cyberhome.ne.jp/~babahide/bbarchive/FSC.html

 ちなみに「UFO手帖5.0」の紹介はこちら。

2021年02月09日の日記
『UFO手帖5.1』 雑誌「ムー」で紹介されました&重版・通販再開
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2021-02-09

 なお次号「UFO手帖6.0」は、2021年11月23日に開催される第33回文学フリマ東京にて頒布予定です。



タグ:同人誌
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『Free as a Bird』(構成・振付:近藤良平、コンドルズ) [ダンス]

 2021年6月6日は、夫婦で彩の国さいたま芸術劇場に行って、近藤良平ひきいる大人気ダンスカンパニー「コンドルズ」の新作公演を鑑賞しました。毎年、この時期になるとさいたま芸術劇場にやってくる恒例の「毎年初夏の楽しみな行事」(彩の国さいたま芸術劇場プロデューサー談)コンドルズさいたま公演。昨年は新型コロナ禍で中止となったため、二年ぶりのライブ公演ということになります。さいたま芸術劇場大ホールの客席に座って、さあこれからコンドルズの公演、と思っただけですでに感涙。なお上演時間は105分です。

 2017年5月の公演『17's MAP』では、冒頭シーケンスのオチに「文部科学大臣賞受賞おめでとう!」ネタを持ってきたので、今回もたぶんやるよねやるよねと期待していたのですが、やっぱり「次期芸術監督就任おめでとう!」ネタで会場を沸かせました。昔からコンドルズさいたま芸術劇場公演ではご当地ネタが出るというのが伝統なのですが、かつて「芸術監督の蜷川さん、一度くらい僕たちの公演を見にきてください!」という絶叫で笑わせていた頃から思えばずいぶん遠くに来たものだなあと。

 今回は舞台美術が特に素晴らしく、白一色に塗りつぶされた無個性な都市風景(信号機、電柱、郵便ポスト、自転車など)が舞台上に広がります。そこで色々とやらかすわけですが、最後にそこに大きな木と無数の鳥たちが舞い降りてくるシーンの美しさ、と同時に完成した光景が懐かしいLPレコードのジャケットにありがちな絵になるというあたり、感動が止まりません。

 いつもの通りショートコント、影絵芝居、人形劇(今回は焼き鳥)、脱力演劇、カッコイイダンスシーンを織り交ぜ、105分を疾走します。個人的には「木!」に爆笑。振付は全体的にシンプルになっているようで、バリバリ踊る若手とそうでもない古参のバランスをとる狙いがあるのでは、などど感じられました。

 近藤さんのソロはとにかく感動的。しびれます。ユーミンで踊る近藤良平を見よ。

 というわけで、毎回確実に楽しめる、期待を裏切らない安心感のさいたまコンドルズ公演。来年も楽しみです。





タグ:近藤良平
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『つまらない住宅地のすべての家』(津村記久子) [読書(小説・詩)]

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 その場にいる全員が動きを止め、次の行動に迷っているうちに、おずおずとした足音が方々から響き渡り、近所の人々が集まってくるのがわかった。亮太は、嫌悪と諦めの入り交じった視線で、隣の家の人やさらにもう一つ隣の家の人や、斜め向かいの家の人や、角の家の人や突き当たりの家の人々の呆けたような顔が倉庫内の電灯に照らされながら近付いてくるのを眺め回しながら、つまらない住宅地のすべての家の人がここに訪れたような気分がした。
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単行本p.201


 時が止まったような、つまらない住宅地。刑務所を脱走した犯罪者が近くに潜伏しているというニュースが流れ、住民が交替で夜の見張りをすることに。住民同士の交流が少しずつ進むにつれて、ごくささやかな変化が生まれてゆく。『八番筋カウンシル』『まともな家の子供はいない』の著者による住宅地群像劇。単行本(双葉社)出版は2021年3月です。


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 どこまでも同じような家が続いている住宅地には活気がない。周辺にあるのは、貴弘の家から歩いて十分かかるスーパーが一軒だけで、そこが住宅地の人々の食事をすべてまかなっている。反対方向に十分歩くと、やっとコンビニが一軒あるのだが、休日に訪れるとレジに店内を一周するような行列ができていて、本当は需要があるんじゃないか、と貴弘は呆れた覚えがある。でも誰も何もやらない。住民たちの生活レベルは悪くないと聞くけれども、そこからは一歩も出たくない、とでもいうような依怙地さを感じる。電気代の無駄と割り切っているのか、夜に門灯も玄関灯も点けない家が多い。もちろんそれは各家庭の勝手だけれども、防犯灯が途切れる界隈であっても点けないし、カーテンも閉めっぱなしの家などを眺めていると、この家の人にとって自宅は鎖国した島みたいなもので、通行人や近隣はすべて遠い国のようなものなんだろうなと思えてくる。外で誰かが飢えて倒れていても、きっと指一本動かさないだろう。もちろんそんな家ばかりではないだろうが、そういう様子の家が、この住宅地にはよく見受けられた。
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単行本p.26


 よどんだような住宅地。ぱっとしない住民たち。

 『八番筋カウンシル』『まともな家の子供はいない』といった住宅地小説を、『ディス・イズ・ザ・デイ』のような群像劇の手法で描いた長編です。お互いにほとんど交流がない、どころか多くは面識すらない住民たちの、それぞれの事情を抱え、鬱屈と諦めを混ぜたようなどんよりした生活を、丁寧にひとりひとり描いてゆきます。正直、読んでいて気が滅入るようなリアリティ。まるで今の日本社会の縮図のようです。

 そこに舞い込んできたのは、刑務所を脱獄した犯罪者が近くに潜伏しているらしい、というニュース。はりきりオヤジが自警団の結成を呼びかけ、夜の見張りを交替で務めるということに。


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「突然おたずねして申し訳ございません。単刀直入に申しますと、逃亡犯のことなんですが」
 しばらくこの路地で自衛できないものかと考えている、つきましては、夜警というか、道路を夜に見張れたらいいなあと考えまして、もしかしたら路地の出入り口にあるおたくの家の二階をお借りするかもしれませんが、よろしいか、ということを、丸川さんはよどみなく話す。
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単行本p.51


 積極的に拒否するでもなく、特に熱意ないまま、何となく参加することになる住民たち。


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 このあたりは時間が止まったようだと正美は思う。変化は何もない。刑務所から逃げた人間が逃げ込んでくるとかでもない限り。
 でも本当にそういうことがあってもこの辺の人たちの生活パターンは変わらないな、と再び時計を見ながら正美は思う。
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単行本p.63


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 この住宅地のつまらなさも、嫌なタイミングで刑務所から逃げ出した逃亡犯も、望はひどく疎ましく思う。消極的に日々をやり過ごすこの町や、一面識もない逃亡犯が、何かをなし遂げようとする望をあざ笑っているようにも思える。(中略)望は何をする気にもなれなかった。わずらわしい手持ち無沙汰が、すべて住宅地や逃亡犯のせいに思えてきて呪わしかった。
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単行本p.70


 ところが、何人かでローテーションを組んで交替で見張りをするうちに、少しずつ住民同士が顔見知りになり、心の交流が生まれてゆきます。ごくささやかなエピソードがつながってゆき、見えないところで変化が起きてゆくのです。それは、今まで諦めていた生活や家族関係を少しでいいから変えようとする気持ちだったり、たくらんでいた犯罪や監禁の計画を放棄することだったり、あるいは世界の広がりだったり。


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 とりあえず、これから自分が家に帰ったら門灯を点けようと千里は思った。怒られても、それが自分のしたいことならそうしようと思った。
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単行本p.212


 津村記久子さんの作品では、こういった小さな出来事、ごくささやかな心境の変化、が胸を打つことが多いのです。本作は特にそうでした。大げさにいうなら、どんなつまらなそうに思える人間にも尊厳があり最後にはそれがちゃんと守られる小説。登場人物が多いので最初は読みづらいのですが、住民各人に思い入れが出来てからはぐいぐい読み進められます。





タグ:津村記久子
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『三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題』(浅田秀樹) [読書(サイエンス)]

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 日常感覚からすれば、天体の個数が「2個」と「3個」の間に、劇的に大きなギャップが存在するというのが不思議です。
 実際、大昔の科学者たちも、「二体問題」が解けたのだから、「三体問題」も頑張れば(何らかのうまい数学的な操作を発見すれば)、その解は見つかるのではないかと楽観的に考えました。とくに天才数学者・科学者たちは、「俺こそ、その解の発見者になれる才がある」と自信満々だったに違いありません。実際に、天才たちによって「特別な状況」を仮定した場合においての「三体問題」の解は発見されています。しかし、「一般的な条件」での解を見つけることには、ことごとく失敗したのです。
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単行本p.8、10


 とある事情から最近やたら有名になった数学の難題「三体問題」。なぜ一般解が得られないのか、近似解すら得られないというのはどういうことか、そして今日なお発見が続く特殊解の研究。数学の難問に挑んだ天才たちの歴史と、実際の宇宙における多体問題について解説する一冊。単行本(講談社)出版は2021年3月、Kindle版配信は2021年3月です。


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「三体問題」には、オイラー、ラグランジュ、ポアンカレといった、科学史にその名を残す有名数学者・科学者が挑戦し、彼らの挑戦を次々とはねのけてきた輝かしい戦歴があります。彼らの素晴らしい才能をもってさえ、完全には解決することができなかった「問題」なのです。そして、21世紀の現在でも、「三体問題」は永遠のフロンティアであるかのような雰囲気を醸し出しています。
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単行本p.4


〔目次〕

第1章 解ける方程式
第2章 解けない方程式
第3章 ケプラーの法則とニュートンの万有引力
第4章 三つの天体に対する解を探して
第5章 一般解とはなにか
第6章 つわものどもが夢のあと
第7章 三つの天体に対する新しい解が見つかる
第8章 一般相対性理論の登場
第9章 一般相対性理論の効果をいれた三つの天体のユニークな軌道
第10章 天体の軌道を精密に測る




第1章 解ける方程式
第2章 解けない方程式
第3章 ケプラーの法則とニュートンの万有引力
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 5次方程式の解法をめぐる話は大変興味深いものです。このことから本書の核心である「三体問題の解」を考察するときにも重要になる教訓が一つ得られます。ある方程式が「解ける」あるいは「解けない」ということを論じるさいには、その解を得るための手段――例えば代数的な操作に限る――をはっきりさせる必要があるのです。
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単行本p.48

 まず基礎知識として、ある方程式が「解ける」とはどういうことか、「解法」とは何なのかを、一次方程式、二次方程式を例に解説します。そして五次方程式が「代数的には」解けないことの発見と、楕円関数を応用した「代数的ではない」五次方程式の解法について、さらにニュートン力学と二体問題の解決について示します。


第4章 三つの天体に対する解を探して
第5章 一般解とはなにか
第6章 つわものどもが夢のあと
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 ブルンスは科学者たちの頼みの綱であった「求積法」を用いて「三体問題」を解くことが不可能なことを証明してしまいました。さらに追い打ちをかけるように、ポアンカレが登場し、級数の形でさえ「三体問題」の解が得られないことを証明しました。もはや「三体問題」の解をこれ以上発見することは、永遠の夢になってしまったのでしょうか。
 答えを先にいいますと「求積法」や「級数展開」を用いて解が得られないことは、もう解を見つけられないことと等価ではありません。
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単行本p.162

 オイラーの制限解、ラグランジュの特殊解(ラグランジュ点とトロヤ群の発見)、一般解への挑戦とその顛末、カオス理論の発見、などの話題を解説し、三体問題に挑んだ数学者・物理学者たちの足跡をたどります。


第7章 三つの天体に対する新しい解が見つかる
第8章 一般相対性理論の登場
第9章 一般相対性理論の効果をいれた三つの天体のユニークな軌道
第10章 天体の軌道を精密に測る
――――
 ヘギーによる数値計算の結果によれば、「8の字軌道」の3体系が存在する確率は、銀河あたり高々1個程度だそうです。確率の小ささは想定の範囲内です。しかし、そんな数学的なモノが宇宙に存在可能だということに驚かされます。
 以上のように、数学者、物理学者、天文学者、計算機科学者らが「三体問題」に対しての「8の字解」に関する研究を精力的に行いました。しかし、核心に迫る答えは得られていません。「8の字軌道」が存在する数学的証明があり、数値的に高精度で軌道の形も計算されました。しかし、現在までのところ、その「8の字軌道」の形を数式で表現することに誰も成功していないからです。
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単行本p.178

 三つの天体が互いの軌道を交差するように周期的運動を永久に続ける「十字形解」、同じ8の字軌道上を互いに追いかけるようにして移動し続ける「8の字解」など現在も研究されている特殊解から、一般相対性理論の適用や実際に発見された三体天文現象の意義まで、数学・理論物理学・天文学など様々な研究分野にまたがって今なお精力的に研究が進められている三体問題、N体問題の最先端トピックを解説します。





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