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『クラシック偽作・疑作大全』(近藤健児、久保健) [読書(教養)]

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「偽作」とは、真の作曲者が別人と判明している作品、「疑作」とは、真の作曲者が他人かもしれないと疑われている作品を指す。18世紀までは売らんがために勝手に有名作曲家の名前を付けて別人の楽譜を出版するなど、かなりずさんなことが平気でなされていたため、大作曲家の作品目録のなかには相当数の偽作や疑作が紛れ込むことになった。(中略)偽作や疑作についてのまとまった情報は思った以上に少なく、散発的なのだ。それぞれの作曲家の全作品事典の類いで申し訳程度にふれているか、あとは熱心な方が公開しているウェブサイトに頼るしかない。
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単行本p.9、10


ヴィヴァルディの『忠実な羊飼い』
モーツァルトの『交響曲第37番』
ハイドンの『おもちゃの交響曲』
アルビノーニの『アダージョ』
バッハの『トッカータとフーガ ニ短調』

 あの名曲も、この有名曲も、真の作曲者は別人だった?
 作曲者が誤って伝えられてきた曲、真の作曲家が別人ではないかと疑われている曲。クラシック音楽のなかから偽作・疑作に関する情報をまとめた興味深い一冊。けっこう有名な曲にも偽作や疑作が含まれていて驚かされます。単行本(青弓社)出版は2022年6月です。


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 肝心なのは、真作か偽作かではなく、音楽そのものである。そもそも偽作といっても、同時代のほかの作曲家が真面目に作り上げた作品である。歴史のなかに埋もれてしまったが、大作曲家に比肩できる力量をもった当時は有名だった作曲家かもしれない。たとえ真の作曲家がわからなくても、それが名曲から聴いてみたくなるではないか。(中略)一時は大作曲家の作品と信じられていた曲だ。先入観なしに耳を傾ければ、少なくない掘り出し物にきっと出合えることだろう。
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単行本p.10




目次

第1章 カッチーニからペルゴレージまで

1-1 『カッチーニのアヴェ・マリア』
1-2オラツィオ・ベネヴォリの『53声のミサ曲』
1-3『ヴィターリのシャコンヌ』
1-4ヴィヴァルディ『忠実な羊飼い』
1-5 『アルビノーニのアダージョ』
1-6ヘンデルの『ヴァイオリン・ソナタ』
1-7バッハのドイツ語教会音楽
1-8バッハのモテットと歌曲
1-9バッハの『ルカ受難曲』
1-10バッハのラテン語教会音楽
1-11バッハのオルガン作品
1-12バッハのクラヴィーア作品
1-13バッハの室内楽作品
1-14バッハの『管弦楽組曲第5番』
1-15ペルゴレージの『コンチェルト・アルモニコ』
1-16擬バロックの作曲家

第2章 ハイドン、高い人気、多い偽作
2-1 『おもちゃの交響曲』
2-2ディヴェルティメント
2-3フルート協奏曲
2-4オーボエ協奏曲
2-5クラリネット協奏曲
2-6ホルン協奏曲
2-7チェロ協奏曲
2-8オルガン/チェンバロ協奏曲
2-9弦楽四重奏曲
2-10クラヴィーア・ソナタ 1
2-11クラヴィーア・ソナタ 2
2-12ミサ曲

第3章 モーツァルト、早すぎる死、多すぎる疑作
3-1交響曲 1
3-2交響曲 2
3-3交響曲 3
3-4交響曲 4
3-5交響曲 5
3-6協奏交響曲
3-7管弦楽曲
3-8ディヴェルティメント
3-9ヴァイオリン協奏曲 1
3-10ヴァイオリン協奏曲 2
3-11ファゴット協奏曲
3-12弦楽五重奏曲
3-13弦楽四重奏曲
3-14弦楽三重奏曲
3-15ヴァイオリン・ソナタ
3-16ピアノ曲 1
3-17ピアノ曲 2
3-18宗教曲 1
3-19宗教曲 2
3-20歌曲

第4章 ベートーヴェン以後
4-1ベートーヴェン 1:交響曲
4-2ベートーヴェン 2:ピアノ三重奏曲
4-3ベートーヴェン 3:フルート・ソナタ
4-4ベートーヴェン 4:ピアノ曲
4-5シューベルト
4-6ブラームス
4-7マーラー




第1章 カッチーニからペルゴレージまで
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 ライトなクラシック・ファンであれば、これを大バッハの代表曲とする人も多いのではないか。それどころか、すべてのオルガン曲で、これほど認知されている曲はない。それほどの人気曲、有名曲なのだが、この曲がバッハの作品か否か、真偽についての議論があることはあまり知られていない。(中略)『トッカータとフーガ 二短調』が大バッハの作品ではないのではないかという疑念は、19世紀半ばからすでにあった。
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単行本p.52

 バロック音楽の名曲集に必ずといってよいほど収録される有名曲、『アルビノーニのアダージョ』や『トッカータとフーガ 二短調』は、実はアルビノーニやバッハの作品ではない? 他にもNHK長寿番組「バロック音楽のたのしみ」のテーマ曲であるヴィヴァルディの『忠実な羊飼い』が、実はヴィヴァルディの作品ではなかったことが放送終了後に判明したなど、バロック期の音楽に関する偽作・疑作の情報をまとめます。




第2章 ハイドン、高い人気、多い偽作
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 ハイドン作と伝わってきたものの、現在では他人の手によるものと明らかになった曲はほかにも多々あるが、これほどのメジャー作品はないだろう。ラチェットやカッコウ笛、ウズラ笛など7つのおもちゃがオーケストラに加わった『おもちゃの交響曲』の楽しさは子供ばかりか大人も魅了する。極端な話ほとんど誰もが知っていて、100曲以上あるハイドンの本格的な交響曲のどれよりも有名なぐらいなのだから。
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単行本p.79

 有名な『おもちゃの交響曲』をはじめとして、ハイドンの偽作・疑作情報をまとめます。




第3章 モーツァルト、早すぎる死、多すぎる疑作
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 少し前までにモーツァルト交響曲を聴き始めた人は、きっと著者のようにショップに並んでいる後期交響曲を集めたLPないしCDが、第35、36、38、39、40、41番の6曲セットばかりなことを不思議に思ったのではないだろうか。「どうして第37番がないのだろうか。そんなに駄曲なんだろうか」
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単行本p.120

 交響曲第37番をはじめとして、数多いモーツァルトの偽作・疑作情報をまとめます。




第4章 ベートーヴェン以後
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 ベートーヴェンの場合には、初めて作曲家としての自立性を苦難の末に獲得し、また自らの作品に作品番号を付与するなどの管理を徹底したことで、贋作が入り込む余地はぐっと狭くなった。(中略)ベートーヴェンよりあとは、偽作の入り込む余地はさらになくなるが、例外として、シューベルト、ブラームス、グスタフ・マーラーの興味深い偽作ないし疑作を、それぞれ1曲ずつ取り上げて紹介する。
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単行本p.173

 ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、マーラーに関わる偽作・疑作情報をまとめます。





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『UFO手帖7.0』 『又人にかけ抜かれけり秋の暮』で紹介されました [その他]

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『May B』(マギー・マラン、カンパニー・マギー・マラン) [ダンス]

 2022年11月19日は夫婦で埼玉会館に行ってマギー・マランの代表作を鑑賞しました。さいたま芸術劇場が大規模改修工事中ということで埼玉会館で上演されたもので、この劇場にゆくのははじめて。

 前にマギー・マラン作品を観たのは2013年06月の『Salves サルヴズ』ですから、もう10年近くの歳月が流れています。『May B』は今から40年以上前、1981年に初演され、その後のコンテンポラリーダンス作品に大きな影響を与え続けている伝説的な作品。ほとんど言葉を使うことなくサミュエル・ベケットの不条理演劇をやってみせるというダンスシアターで、私たちは初見です。

 ダンサーたちが統一感のある美しい身体をもって美しいダンスを踊る、というのが当たり前だった時代に、年齢や性別や身長やスタイルがバラバラなごく普通(に感じられる)身体の出演者たちが踊る。しかもそのダンスは「背中をかく」「腰に手を当てて背伸びする」「前かがみになって尻を振る」「つかみあいの喧嘩」といった日常的で誰にも覚えがある動きから構成されており、いわゆるダンス的な美しい動きではない。「ごく普通の人々がごく普通に動いている」ことがダンスになる。コンテンポラリーダンスに決定的な影響を与えたというのも納得できるスタイルです。

 最初は同じ衣装を着て無個性なゾンビ集団めいて感じられた出演者たちが、やがてそれぞれの服装になって、個別の事情や人生を感じられるようになってゆく。ごく小さなドラマが連続し、やがてひとりまたひとりと舞台から消えてゆく。最後にひとりとり残される男。予想していたよりずっと感動的な作品で、最後は胸がしめつけられるような感傷的な気持ちになりました。





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『UFO手帖7.0』 11/20文フリにして新刊頒布 [その他]


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『私の恋人』(黒田育世、近藤良平) [ダンス]

 2022年11月12日は、夫婦で吉祥寺シアターに行って、吉祥寺シアターでは16年ぶりとなる黒田育世さんと近藤良平さんの共演を鑑賞しました。

 16年前に見たときの感想はこちら。

2006年05月17日の日記
『私の恋人』
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2006-05-17


 16年の歳月というより、踊る季節の違いによって生じる問題がネタにされていてちょっと笑いました。

 それはともかく、16年前に見たときよりも感動的というか感傷的な気持ちになります。出演者も自分も、16年前の若さはもう取り返しがつかないのだという単純な事実と、舞台上でじたばたしている二人のいじましさせつなさを見守る気持ちが合わさって、ラスト(それぞれ渾身のソロを踊った後に二人で踊るコーダ)に涙腺がゆるみます。今、二人が全力で表現したどうしようもなくいじましい青春が、若い観客の目にはどのように見えるのか、興味があります。




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