SSブログ
読書(オカルト) ブログトップ
前の5件 | -

『ポップ・スピリチュアリティ メディア化された宗教性』(堀江宗正) [読書(オカルト)]

――――
 宗教についても心理学や医学などの知識についても、ある程度は知っているが、それを全面的には支持せず、心や魂の問題を理解して解決するのに使えるものは使うというプラグマティックな意識を持った人々のスピリチュアリティ、その中でも理解しやすく、実践しやすく、人気を基準として選別されたもの、SNS上で人々自身がメディアとなって流通させてゆくもの、本書が扱うのはそのような「ポップ・スピリチュアリティ」の、21世紀に入ってからのテーマ別の動向である。
(中略)
 「宗教」を相対化し、宗教ではないけれど、何か自分にとって大切な価値観を表明し、伝えようとする人々がいる。そのような人々が日々に更新し続けているポップ・スピリチュアリティの世界は、現代的な現象ではあるが、むしろ文字以前の、つまり「宗教」以前の人々の精神生活の有様に近いものであるかもしれない。
――――


 江原啓之、生まれ変わり、パワースポット、そしてアニメに登場する西洋魔術。21世紀の日本において人気があり普及しているスピリチュアルなもの、ポップ・スピリチュアリティについての論説集。単行本(岩波書店)出版は2019年11月です。


〔目次〕

第1章 スピリチュアリティとは何か――概念とその定義
第2章 2000年以後の日本におけるスピリチュアリティ言説
第3章 メディアのなかのスピリチュアル――江原啓之ブームとは何だったのか
第4章 メディアのなかのカリスマ――江原啓之とメディア環境
第5章 スピリチュアルとそのアンチ――江原番組の受容をめぐって
第6章 現代の輪廻転生観――輪廻する〈私〉の物語
第7章 パワースポット現象の歴史――ニューエイジ的スピリチュアリティから神道的スピリチュアリティへ
第8章 パワースポット体験の現象学――現世利益から心理利益へ
第9章 サブカルチャーの魔術師たち――宗教学的知識の消費と共有




第1章 スピリチュアリティとは何か――概念とその定義
――――
 米国では、個人的スピリチュアリティがキリスト教から逸脱することを警戒する傾向がある。とくにキリスト教に代わる新時代がやってくると主張する「ニューエイジ」に対する保守的なキリスト教徒の反発は強い。カトリックの教皇庁はニューエイジ批判の公式文書を出している。それに対して「スピリチュアリティ」という言葉はキリスト教でも使われるために、「ニューエイジ」ほどの抵抗を引き起こさない。一方、キリスト教の衰退の著しい英国では、宗教と距離をとる「ニューエイジ」への抵抗はさほど大きくない。
 日本では「宗教」に対する警戒心の方が強い。このような違いは、スピリチュアリティ言説の展開にどのような影響を与えるだろうか。
――――
単行本p.11


 それはニューエイジ思想や心霊主義とは、そして宗教とは、どのように関連しているのか、いないのか。まずは「スピリチュアリティ」という概念と定義を明らかにし、欧米と日本との違いを浮き彫りにしてゆきます。


第2章 2000年以後の日本におけるスピリチュアリティ言説
――――
 スピリチュアリティ現象は、アイディアとしては英語圏の心理学的思想やニューエイジの輸入というスタイルをとりながら、ポピュラーなレベルで受容される過程で、実質的には伝統回帰と日常生活の保守的な肯定とに変容していった。「癒し」はもともとの自発的治癒力の活性化という意味を離れて、現世利益的な消費行動をうながすキャッチフレーズとなった。知識人の「スピリチュアリティ」概念は「霊」信仰との決別を目指していたが、霊への草の根的な関心とは逆行したため、ポピュラーなものとしては定着せず、マス・メディアでは、逆に霊信仰とポップ心理学と英国スピリチュアリズムの折衷を図った江原的「スピリチュアル」、ポップ・スピリチュアリティに押されていく。
――――
単行本p.37


 トランスパーソナル心理学、トラウマ、アダルト・チルドレン、癒しブーム、オウム事件、心霊ブーム、江原啓之。メディアとの関連のなかで、21世紀日本におけるスピリチュアリティがどのように変遷していたのかを見て行きます。


第3章 メディアのなかのスピリチュアル――江原啓之ブームとは何だったのか
第4章 メディアのなかのカリスマ――江原啓之とメディア環境
第5章 スピリチュアルとそのアンチ――江原番組の受容をめぐって
――――
 超越的な存在や力を前提とする信念や儀礼であっても、「特殊な拘束集団」と関わりがなければ、つまり個人的信念にとどまるものや社会的通念に達したものであれば「宗教」とは呼ばず、許容し、享受するという態度が、メディアを中心に――とくにメディアの影響を受けやすい若者に――定着していると考えられる。
 江原のように、個人相談をおこなわず、教祖になることを自ら避けて、メディアでのみ「スピリチュアル」なことを語り実践するような存在は、このような環境に極めて適応的である。
――――
単行本p.56


 日本で「スピリチュアル」という言葉を普及させるのにもっとも貢献した人物、江原啓之。その言動、メディアにおける扱い、そして視聴者の反応、それぞれの観点から詳しく分析してゆきます。


第6章 現代の輪廻転生観――輪廻する〈私〉の物語
――――
 『ムー』は輪廻の特集に消極的だったし、『ぼくの地球を守って』は、前世共有者を求める投稿のパロディ、後追いである。つまり、メディアは「前世ブーム」の原因ではなく、結果にすぎない。時代的に先行する『幻魔大戦』の影響は否定できないが、単なるフィクションが、なぜ大きな影響を与えたのか。この作品がなければ、前世への関心は起きなかったのか。(中略)どの場合も先行する影響、カウンター・カルチャーや新宗教があり、これらの作品がなくても、別の作品が「きっかけ」を与えただろう。つまり、輪廻転生を受け入れる土壌が、日米で同時に人々の間に育まれていたと考えた方がよい。本書の主題であるポップ・スピリチュアリティの好例と言える。
――――
単行本p.124、125


 生まれ変わり、輪廻転生という考えは、日米でほぼ同時期に広まっていった。それは従来の宗教的概念とはどう違うのか。なぜ定着したのか。現代的輪廻転生観のルーツと展開を探ります。


第7章 パワースポット現象の歴史――ニューエイジ的スピリチュアリティから神道的スピリチュアリティへ
第8章 パワースポット体験の現象学――現世利益から心理利益へ
――――
 パワースポットは、長年来のニューエイジャーにとっては国内に限られるものではないし、神社に限られるものでもない。しかし、2000年代以降は、伊勢神宮や出雲大社のような神道の聖地が「パワースポット」として再発見され、結果的にパワースポット現象はある種の復興に吸収されそうになっている。パワースポットへの関心は個人的スピリチュアリティと伝統回帰の間を揺れ動いており、世俗化(私事化)かポスト世俗の宗教復興/再魔術化かという二項対立図式に収まらない興味深い研究領域を形成している。
――――
単行本p.172


 パワースポットへの関心はどのようにして高まっていったのか。パワースポットとしての神社の再発見、神道的スピリチュアリティの動きは、どこを目指しているのか。日本におけるパワースポットをめぐる言説を追います。


第9章 サブカルチャーの魔術師たち――宗教学的知識の消費と共有
――――
 「魔術」関心層はアニメおよびそれに関連するサブカルチャーに親しんでいる。そこで、テレビアニメのなかで「魔術」および広い意味で「宗教」に関わる語彙が登場する作品にどのような傾向があるかを、2012年から13年の2年に絞って確認した。(中略)
 テレビアニメを取り上げることには調査の戦略上の利点がある。原作がアニメ以外のメディアであるものがほとんどであり、ラノベ、マンガ、ゲームのなかでも人気のある作品がテレビでアニメ化されるため、一定程度のポピュラリティが保証されるという点である。(中略)したがって、アニメを分析するといっても、純粋にアニメだけを取り上げることにはならない。アニメが一つの結節点となっている魔術・宗教的語彙を用いた様々なメディア作品が織りなすサブカルチャーの内容的特徴をすることが可能になるのである。
――――
単行本p.243


 『とある魔術の禁書目録』を中心に、マンガ・アニメ・ゲームに登場する「魔術や宗教に関わる語彙」を分析してゆきます。さらにそれらの用語「事典」の出版ブーム、サブカルチャーの受け手と作り手の境界の曖昧さなど、サブカルチャーの特徴と宗教との関連を考察します。





nice!(0)  コメント(0) 

『宇宙人とおともだちになりたい』(島村ゆに) [読書(オカルト)]

――――
 ロマンとかそんなもんも金で買えるご時世だった。バブルとはそんな夢の時代。
 残照眩しいその時期に、私は分割払いでチャネラーを目指す講座の第一歩を記した。
 そうして出会ったのが、宇宙人ではなく、天使だった。
――――


 第29回文学フリマ東京(2019年11月24日開催)にて購入。私も参加している「Spファイル友の会」のメンバーでもある島村ゆにさんの個人誌です。これまで『UFO手帖』に寄稿した漫画3作品と、漫画を解説した書き下ろしの文章を収録した一冊。詳しくはこちらをどうぞ。


しまゆー文庫新刊『宇宙人とおともだちになりたい』
https://simayu-s.blogspot.com/2019/10/blog-post_22.html


[もくじ]

『バシャール講演会の思い出』(漫画)
「バシャールについて」(エッセイ)
『UFO写真展の思い出』(漫画)
「UFO写真展の思い出」(エッセイ)
「フライング・ソーサー」(エッセイ)
『目撃体験談』(漫画)
あとがき・おくづけ




『バシャール講演会の思い出』(漫画)
――――
入場券:バシャール・チャネリング
¥7,000-

ぷるぷる

こ…こないだの
ビージーズと一緒や…

外タレ
たっか!!!

わし時給
500円やで
――――


「バシャールについて」
――――
 私もその時は「虹色の天使が見えた。もう死期が迫っているのだ」と真剣に思った。
 それまでに見えていたような幽霊や妖怪めいたものとも、天使はまったく見え方が違った。(中略)
 他にも、赤やピンク、青色の鮮やかな髪色の美しい人達をたくさん見た。「さあ、あなたの世界に帰りなさい」と誰かに言われて目覚めたこともある。
 きっと天使は私とともだちになりたかったのだろう。だが私がほんとうにともだちになりたかったのは、子供の頃から憧れていたともだちは、それは天使などではなかった。
――――


『UFO写真展の思い出』(漫画)
――――
…か、完全にスルーされた…

当時からビリーバーに嫌われている島村ゆにであった
――――


「UFO写真展の思い出」(エッセイ)
――――
 その写真展が行われたビルは令和の現在も存在している。
 私はそのビルで、不思議な青いワンピースを着た女性を何度か見かけたことがある。(中略)
 それからもう随分時間が流れたが、青いワンピースの女は今もあのビルにいるのだろうか? 時々思い出しては確認しに行ってみたくはなるのだが、いかんせん現在は他人様の仕事場である。
――――


「フライング・ソーサー」(エッセイ)
――――
 皿として生まれたのに、皿としての役目を果たせず、ただただ射撃の的となって砕け散る運命。その運命を呪った「皿」たちの無念の思い。それが私の前にUFOとして姿を現した。
 十二分に考えられる展開ではないか。私は霊を見、そして霊と語ることができる霊媒である。役目としてはそのほうが正しい。
 故に、UFOとはクレー射撃の的の無念の思いが顕現したものである。
 そう言っても過言ではなかろう。
――――


『目撃体験談』(漫画)
――――
こんにちは
綾小路ゆに麿です

あれから30年!!

なぜ宇宙人のみなさんは
いっこうに逢いに来て
くれないんですかッ!!

宇宙人のみなさん!!!
受け入れ体制は万全ですッ!
――――
ゆに先生の次回作にご期待ください! 完





タグ:同人誌
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

『死の海 「中河原海岸水難事故」の真相と漂泊の亡霊たち』(後藤宏行) [読書(オカルト)]

――――
 この悲劇は事故と呼ぶにはあまりにも複雑で、多くの疑問と謎を抱え込む事態となった。それはなぜか。理由はふたつある。
 ひとつは、学校の授業中に起こった事故であったがゆえに、学校側、特に引率の教員の責任が厳しく問われ、裁判となったこと。
 もうひとつは、溺れて意識を失った女子生徒のひとりが、海中より異形の「女たち」が現れ、「自分を海に引きずり込んだ」と証言したことで、「怪談」がクローズアップされ、さまざまな因縁話を吸い寄せる引力を有してしまったことである。(中略)海の向こうから波間をぐいぐいと進み近づいてくる、「防空頭巾の亡霊」たちの鮮烈なイメージは、今なお私たちの中にある。
 なぜあの怪談がこれほどまでに、今も私たちをとらえて離さないのか。
――――
単行本p.21、25


 昭和30年7月28日、三重県津市の中河原海岸で起きた事故。中学生36名が溺死するという大惨事はどうして起こり、またその後の展開はどのようなものだったのか。そして今なおささやかれる「怪談」が流布した経緯、その真相とは。徹底した取材を通して「中河原海岸水難事故」の全貌を明らかにした一冊。単行本(洋泉社)出版は2019年8月です。


 波間から現れた防空頭巾姿の女たちが、水泳授業中の子供たちの足をつかんで水の中に次々と引きずり込んだ。後から調べたところ、その海岸はまさに戦争中に空襲で多くの人が死んだ場所だった……。子供のころ、水木しげる氏や、つのだじろう氏の漫画で読んで、その恐ろしさに震え上がったあの「怪談」。その真偽を含め、中河原海岸水難事故とその後の顛末について、詳細に取材したルポです。


 「怪談」の件についてはNHKの番組『幻解!超常ファイル』で取り上げられた回を観て、ああやっぱり真相はそんなとこか、と納得していたのですが、番組の取材に同行し出演もした著者は、あの番組で無視された事実も暴いてゆきます。


――――
 私は、NHK BSプレミアムのドキュメンタリー番組『幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー』で2017年9月に放送された〈File-22 「戦慄の心霊現象 追求スペシャル」〉の取材協力をした。きっかけは、本書のベースとなる記事を読んだ担当プロデューサーからの依頼だった。
 そして、私は同番組で梅川弘子さんへの取材をアテンドし、取材の際にも同席した。
 取材の席で梅川さんが話した内容は、まさに臨死体験そのものだった。
 私はその話を聞いて、思わず言った。
「ちょっと待って、これ大変なことじゃないですか。臨死体験ですよね? 全部ひっくり返るかもしれない」
 だが、スタッフからは「静かにしてください」と言われ、オンエアーでもその臨死体験について語られた部分はすべてカットされていた。(中略)メディアの人間たちは、彼女の臨死体験を聞いているにもかかわらず、黙殺し、記事にする者は誰もいなかった。
――――
単行本p.206


〔目次〕

第1章 スケープゴート
第2章 「防空頭巾の亡霊」はどこからやってきたのか
第3章 法廷の記録と事故原因
第4章 水難事故の黒い影
第5章 週刊誌の記事がすべての発端だった
第6章 決裂と重い十字架
第7章 女子生徒たちを海に引きずり込んだ「亡霊」の正体
第8章 あの日、彼女は何を見たのかーー真実の告白
終章 水難事故と震災




第1章 スケープゴート
――――
 当時の日本人の、津市民の感情に必要だったのは、事故原因の究明ではなく、速やかにして鮮やかな解決だった。悪の実態が要求された。投石できる悪の顔が。
 その最も手早く、そしてパズルのピースが合うがごとく理想的な解決が、「教員の責任」だったのではないだろうか。
――――
単行本p.67


 事故の後、教員たちの責任があまりにも早く、そして過酷なほどに厳しく問われたのはなぜか。水難事故にいたる経緯と直後の反応を概観します。


第2章 「防空頭巾の亡霊」はどこからやってきたのか
――――
 まず、昭和20年の大空襲で、戦火を逃れ海に入り、溺れて亡くなった避難民100名は存在しなかった。
 彼らも、また空襲で焼死した市民の遺体も、中河原海岸には埋められていない。のちに行われた大規模工事においても、遺骨は発見されていない。(中略)中河原海岸水難事故と戦時中の悲惨な出来事の数々との間には、「直接的な関連はない」と結論せざるを得ない。
 だが――だからこそ、私は改めて問わねばならない。(中略)
 誰もが疑うはずの、この世の者ならぬ、亡霊たちが女生徒たちを溺れさせたという怪談話を、誰が、いかなる目的で活字にしたのか。
 結果として、街の中と外にその怪談が拡散していったのはなぜか。
 さらに、以後も繰り返し繰り返し、悲惨な水難事故としてではなく、「防空頭巾の亡霊」が現れる物語として、よみがえり続けるのは、なぜなのか――。
――――
単行本p.112、113、114


 あの怪談の根拠とされた事実は本当なのか。丹念な取材により、怪談が流布されていった経緯とその真相を明らかにします。


第3章 法廷の記録と事故原因
――――
 私は、事故について予測不能だったという関係者の言が虚言とは思わない。(中略)いずれも生徒たちを哀悼し、愛児たちの不慮の死に苦しむ遺族への同情を誰もが持っていただろうことは確かだ。それは疑いようのない事実である。
 ただし、15年の長きにわたり遺族と争った空虚な時間については、今後も津市行政史の汚点となる異常な「事件」と呼ばれても仕方ないだろうと思われる。
 何がそうさせたのか、結局のところはわからないにしても――。
――――
単行本p.154


 学校、市行政、遺族を巻き込んだ裁判は、なぜ判決まで15年を要するほどこじれたのか。そこで明らかにされた事実は何だったのか。裁判記録をたどります。


第4章 水難事故の黒い影
――――
 水難事故の不可視な影響は、ひたひたと広がっていった。
 マスコミの論調、特に教員の逮捕と起訴、遺族と市の裁判は、まるで緞帳のように、重く暗く市民の上に垂れ落ちた。
 事故に関わった人ばかりではなく、直接関わらなかった人たちの人生にも、水難事故は深甚な影響を与え、暗い影を落とし続け、今日に至っている。
――――
単行本p.160


 事故が残した影響、特に心理的な影響はどのようなものだったのか。「怪談」の提示と流布の背景となる当時の状況を再現してゆきます。


第5章 週刊誌の記事がすべての発端だった
――――
 私はこのタイミングで、つまり刑事裁判は決着し、3教員は悪人ではなくなり、民事裁判で遺族と市が対立して、津の街が険悪な空気に包まれていたこの状況で、精緻に練られた『女性自身』の怪談話が登場したことに、目に見えない作為を感じるのである。
――――
単行本p.212


 なぜ「怪談」は語られなければならなかったのか。その狙いはどこにあったのか。怪談の登場と流布が持つ意味を改めて見直してゆきます。


第6章 決裂と重い十字架
――――
 物事の因果関係は、すべてが判決のように合理的・論理的とはならない。
 ただ、漁師たちが皆、金銭をめぐる自分たちの主張がほんの少し違っていたら、あるいは子供たちは、皆元気に長生きできたのではないだろうか……どこかでそう思い続けていたことだけは確かである。(中略)学校関係者や市の教育行政に携わる人々のように、公然と批判されたり、罪を公式に問われなかった津漁協の漁師たちもまた、水難事故の重い十字架を背負って、その後の人生を生き、死んでいったのである。
――――
単行本p.240、241


 当日、漁協が監視のために船を出していたら、あれだけの大惨事は防げたのではないか。そうならなかった事情を探ってゆき、これまで語られることのなかった漁師たちの立場を掘り下げます。


第7章 女子生徒たちを海に引きずり込んだ「亡霊」の正体
――――
 戦争で、空襲で亡くなった人はたくさんいる。
 にもかかわらず、中河原水難事故で海から現れる異形の者たちは、「女たち」であった。そして、「防空頭巾」をかぶり、「もんぺ」を身につけていた。
 なぜ、女たちであったのか、なぜ防空頭巾ともんぺであったのか――。
 ここで私たちには、中河原水難事故とその後の混乱を俯瞰的に、あたかもひとつのテクストを読むように眺める必要が生じるのである。
――――
単行本p.256


 犠牲者も、亡霊も、全員が「女」だった。それはなぜなのか。どんな意味があるのか。怪談の背後に隠された心理を読み解いてゆきます。


第8章 あの日、彼女は何を見たのかーー真実の告白
――――
 ただあえていえば、NHKの取材時にも取材陣は「亡霊など見ていません」と彼女にはっきり明言させることに腐心していたのも事実である。
 だからこれまでは、彼女が「防空頭巾の亡霊」を見ていたことにしたいにせよ、見なかったことにしたいにせよ、取材する側の意図や目論見が、いわば威圧的に介在してきたわけである。
 番組制作に目的がある以上、仕方のないこととはいえ、私はそうしたあらゆるバイアスから解放された状態で、中西さんと話をしてみたかったのである。
――――
単行本p.288


 果たして事故を生き延びた彼女は、波間に何を見たのか、あるいは見なかったのか。これまで「あらかじめ用意されたシナリオ」に沿った発言をさせようと誘導あるいは威圧してきたマスコミ取材をいったんリセットし、シナリオなしに本当の話を聞くために、著者はインタビューを申し込みます。そこで語られた真実とは。



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

『ビジュアルストーリー 世界の陰謀論』(マイケル・ロビンソン:著、ナショナルジオグラフィック:編、安納令奈:翻訳) [読書(オカルト)]

――――
 本書では、人々をいまも魅了してやまない有名な陰謀説や謎について、数多く取り上げる(中にはマイナーなものもある)。陰謀説の歴史は古く、何世紀も前から存在する。社会現象となった20世紀を経て21世紀の今なお、陰謀説は色褪せることなく人々の好奇心をかき立てている。
――――
単行本p.9


 ロズウェル、ケネディ暗殺、イルミナティ。写真などビジュアルを中心に、有名どころの陰謀論を広く浅く紹介してくれる一冊。単行本(日経ナショナルジオグラフィック社)出版は2019年6月です。


 80項目もの陰謀論が取り上げられています。陰謀論とはほとんど関係ない項目もかなり含まれており、とにかく陰謀論中心に人気のあるオカルトネタを無造作に大量に並べたという印象です。そういう意味で昔の子ども向けオカルト本のノリが感じられます。ちなみに邦題は「世界の陰謀論」となっていますが、取り上げられている話題は米国で知られているものばかりなので、あらぬ期待はしないように。


――――
 陰謀説の根底には、「さまざまな出来事はすべて誰かの思惑に操られている」という発想がある。陰謀論者に言わせれば、この世界に偶然起きた出来事などなく、表に出る情報はまやかしであり、裏ではすべてが陰謀でつながっている――だからこれは一種のパズルで、その謎は陰謀論者あるいは陰謀説ファンでなければ解けない、という。
――――
単行本p.6


 各項目についても表面的な紹介がごく短く書かれているだけなので、それぞれの陰謀論について背景や経緯などを知りたい読者にとっては不親切な本です。独特の視点や切り口があるわけでもなく、見た目でコリン・ウィルソン『超常現象の謎に挑む』みたいな本だと思って読むと失望します。


 本書のポイントは、とにかく大型本見開きでばばーっんと迫ってくる写真の迫力でしょう。あくまでビジュアルブックとして楽しむべき一冊です。米国で人気のある陰謀論の全体像を手っとり早く知りたいという方にもお勧め。


【目次】

1章 科学の陰謀

UFO
古代宇宙飛行士説
ロズウェル、そしてエリア51
ピラミッド
消えたソ連人宇宙飛行士たち
月面着陸
高エネルギー技術
地球温暖化と気候変動
HIV/エイズ
プラム島の秘密
SARSコロナウイルス
エボラウイルス
MKウルトラ計画
水道水へのフッ化物添付
優生学
ケムトレイル
フリーエネルギーとピークオイル
グローバル規模の大量監視
計画的旧式化
カウスピラシー
遺伝子組み換え作物(GMO)
砂糖にまつわる陰謀


2章 政治の陰謀

フリーメイソンとイルミナティ
古代レプティリアン(爬虫類人)・エリート説
新世界秩序説
ビルダーバーグ・グループ
スカル・アンド・ボーンズ
真珠湾攻撃
フィラデルフィア実験
湾岸戦争症候群
FEMA(米国連邦緊急事態管理局)
タイタニック号
巨大製薬会社(ビッグ・ファーマ)
9・11同時テロ攻撃
ロンドン同時爆破テロ
ロシア高層アパート連続爆破事件
パンアメリカン航空103便爆破事件
マレーシア航空370便
トランスワールド航空800便航空機事故
ブッシュ大統領とブレア首相、そして大量破壊兵器
バラク・オバマ
闇の国家


3章 歴史のミステリー

ストーンヘンジ
マヤ文明
ナスカの地上絵
ラスコー洞窟
アトランティス
失われたムー大陸
失われたレムリア大陸
ネス湖の怪物
ボドミンの野獣
イエティまたは怪人雪男
モスマン
テンプル騎士団
シオン賢者の議定書
反カトリック主義
ロンドンの大火
カトリック陰謀事件
ふたつのバビロン
イエスとマグダラのマリア
ファントム時間仮説
バーミューダ・トライアングル


4章 暗殺、行方不明、謀略

ロマノフ一族
JFK
ダイアナ妃
ヴワディスワフ・シコルスキ将軍
デイヴィッド・ケリー博士
アドルフ・ヒトラー
エルヴィス・プレスリー
ポール・マッカートニー
ウサマ・ビンラディン
ファラオの呪い
マリリン・モンロー
トゥパック・シャクール(“2パック”)
マイケル・ジャクソン
ルーカン卿
シャーガー
ウィリアム・シェイクスピア
切り裂きジャック



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

『南米妖怪図鑑』(ホセ・サナルディ:著、セーサル・サナルディ:イラスト、寺井広樹:企画) [読書(オカルト)]

――――
 今回取り上げた妖怪は、現地での聞き取りや資料調査などに基づいてまとめたもので、今なお人間社会の中で生きつづけている妖怪たちです。しかし、彼らの姿は書物や言い伝えで詳しく説明されているものもあれば、情報に乏しくビジュアルが決まっていないものもありました。そういう場合、出没する環境や発見者の文化的な背景などの要素を考慮して妖怪をデザインしましたが、初めてビジュアル化された妖怪も少なくありません。
 本書のような南米(と中米一部)の国々の妖怪を網羅した図鑑は、世界初ではないかと考えています。この本を、日本にいるみなさんに最初に報告できるのは、とても喜ばしいことだと思っています。
――――
単行本p.117


 これまで日本に紹介されることの少なかった南米の妖怪40種を、イラスト付きで詳しく解説してくれる妖怪図鑑。単行本(ロクリン社)出版は2019年7月です。


 日本語で読める南米妖怪本というと『ブラジル妖怪と不思議な話50』(野崎貴博)が知られていますが、これはブラジルに絞った内容でした。本書はそれに加えて南米各国、さらに中米まで範囲を広げた妖怪図鑑です。ちなみに『ブラジル妖怪』の紹介はこちら。


  2014年02月05日の日記
  『ブラジル妖怪と不思議な話50』(野崎貴博)
  https://babahide.blog.so-net.ne.jp/2014-02-05


 本書の特徴は、何といってもすべての妖怪にイラストが付いていることでしょう。おどろおどろしいものではなく、かといって漫画やアニメ風にキャラ化されたものでもなく、異質で不気味なのにどこかユーモラスという味のあるイラストが満載されています。

 UMAまわりでナウェリートやチュパカブラ、ホラー映画まわりでラ・ヨローナ、あたりは日本でも知名度がありますが、大半の妖怪は日本では名前すらほとんど知られていない新鮮なものばかり。

 厳しい自然環境や社会状況を反映してか、出会った者を瞬殺する恐ろしい妖怪も多いのですが、なかには「ペニスがすごく長い」「おっぱいがすごくでかい」「髭と髪をのばして愛の歌をうたうおっさん」「秘密の鉱山を所有しているお金持ち」といった妖怪もいっぱい載っていて、人々が妖怪を身近に感じていることが伝わってきます。

 付録として中南米の主な国々の地図や基礎情報が掲載されており、収録された妖怪はすべてイラスト付き索引にまとめられているという親切設計。中南米の国々と文化に親しみを感じる一冊です。


――――
 妖怪たちを知れば、きっと南米大陸の文化や自然を知ることにつながっていくことでしょう。ぜひこの本を片手に、異国情緒あふれる南米の木々や風の音を感じながら、妖怪探訪を楽しんでいただければ幸いです。
――――
単行本p.3


[目次]

ナウェリート -世界の果ての巨大生物
ピウチェーン -パタゴニアの吸血生物
ギリビーロ -氷河湖に生息する怪しい獣
チョンチョン -空飛ぶ邪悪な頭
チェルーフェ -溶岩の中の怒りっぽい巨人
コケーナ -アンデス山脈の金持ち妖怪
クエーロ -水辺に潜む人食い妖怪
パンパのバシリスコ -邪眼で精神的被害を与える
ロビソン -末っ子の七男には要注意!
ルース・マーラ -光となってさまよう怨念
リアスタイ -山岳地帯の守り神
サッパン・スックーン -巨大なおっぱいを揺るがす怪音
スパイおじさん -怒らせてはならない鉱山の守り鬼
ウクク -クマと人間のハーフ
ジャグアレテー・アヴァ -夜に正体を現す、恐怖のジャガー人間
アルマ・ムーラ -悲鳴を上げて駆けずりまわる、呪われたロバ
カアー・ポラ -マテ茶栽培は命がけ
イルペの二人の女 -湖面に浮かぶ危険な美女
ポンペーロ -密林の忍者
クルピー -あそこの長さは世界一
ジャシー・ジャテレー -厄介な美少年
テジュー・ジャグアー -財宝を守る魔獣
アオアオ -狙われたら最後、強烈イノシシ
ボイタタ -炎に包まれ飛来する大蛇
ピサデイラ -寝込みを襲う不気味な老婆
コルポ・セーコ -枯れ木に注意!
サシー・ペレレー -いたずら好きな国民的愛され妖怪
マピングアリ -アマゾン最強の怪物
ヤクルーナ -アマゾン川の龍宮城!?
ポイラ -「いたずら命」のゴールデンボーイ
パテターロ -不潔極まりない最悪妖怪
パタソーラ -復讐を誓った一本足の女
シルボーン -恐怖の人骨コレクター
マドレモンテ -マグダレナ川の美しい女神
モハーン -夜の川面に響く愛の歌
カイマン男 -出歯亀のワニ
セグア -中米の美しき殺人鬼
ミコ・ブルーホ -敵意むき出しのサルとブタ
チュパカブラ -急速に目撃情報が広がっている吸血獣
ラ・ヨローナ -さまよいつづける女の亡霊

コラム【友よ、お前もしかして……!】
コラム【その名を三度いわせるな!】
コラム【宇宙人が関係してる?!】

主な南米(南アメリカ)の国
南米の主な地形
主な中米(中央アメリカ)の国
妖怪の分布とアイコンについて
南米の国々について
中米の国々について



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:
前の5件 | - 読書(オカルト) ブログトップ