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『平和園に帰ろうよ』(小坂井大輔) [読書(小説・詩)]

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家族の誰かが「自首 減刑」で検索をしていたパソコンまだ温かい
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金がそんなに偉いかちきしょうそんなにも偉いか 金が 金を ください
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「もう無理」で始まる手紙にルマンドのカス入れてきたきみは悪党
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値札見るまでは運命かもとさえ思ったセーターさっと手放す
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うつ伏せになってるキューピー人形が笑顔だという確証はないから
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おいでおいでの動きキモいと妹に言われる即刻猫ブーム去れ
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「短歌の聖地」と呼ばれて久しい名古屋の中華料理店「平和園」からの贈り物。サブカル風味詰め合わせセットのような歌集。単行本(書肆侃侃房)出版は2019年4月、Kindle版配信は2019年8月です。


 まずは自己紹介というか、キャラクターを強烈にアピールしてくる作品。


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ほくろから伸びてくる毛があきらかに太いわたしは太陽の子だ
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聞かれたらこう答えたい「職業は小坂井大輔です」と激しく
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生まれたということそれは世界という大きな詩の一篇になること
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誰ですか陰でわたしをポエマーと呼んでいるのは謝りなさい
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欲しいのは、彼女、ベンツに乗る人を消す杖、社長のふかふかの椅子
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満席の車内でわたしの太ももに座らないかな運命の人
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しゃしゃり出てくんなと言われ枝豆を無心で食べるコンパ楽しい
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どこにもいけないどこにもいけないどこにもいけない 全身が恥部
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わたしのなかの進路指導の先生が死ぬなと往復ビンタしてくる
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退会のボタンが見当たらない通販サイトのような僕の人生
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 さらに「金」をテーマとした作品が目立ちます。


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宝籤が当たった人も即自害するような街で生まれ育って
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『食べられる野草・山菜図鑑』手にスリッパで行く牧野公園
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家族の誰かが「自首 減刑」で検索をしていたパソコンまだ温かい
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札束をチラつかせたら簡単になびくと思っていたか(裏声)
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世の中は金だよ金、と言うたびに立ってる焼け野原にひとりで
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金がそんなに偉いかちきしょうそんなにも偉いか 金が 金を ください
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親と交わした約束破り捺印を捺印をしました
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借りたのは三十万円だったのに利子がついてて咲くシクラメン
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無くなった。家も、出かけたまま母も、祭りで買ったお面なんかも
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 もちろん「愛」も大切です。


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偶然に石ころ蹴って、おっ、て下向いたその顔がよかった。
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あなたが渡りきったらレッドカーペット巻く係として側にいますよ
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やっぱり君が作ってくれる天麩羅は世間でいう唐揚げじゃないかな
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ぶりっ子かどうかは雪が降り出したときに見上げる顔でわかるよ
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おやすみをしたのに君はログインをしてるね汚れた天使みたいに
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「もう無理」で始まる手紙にルマンドのカス入れてきたきみは悪党
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すんませんもうしませんと謝って「前も言ったよね」のとこで泣く
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別れ話とわかっていたら頼んではいなかったレモンスカッシュが来る
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持ちあげたグラスの底におしぼりの袋がついてる愛欲は死ね
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 「子供」も頻出テーマです。


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トイレットペーパーの芯に指いれてなんだこの誇らしい気持ちは
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ありとあらゆる部分を使い自販機のボタン同時に押せよ 叶うぜ
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間奏で女性の悲鳴が薄っすらと聞こえるCDばかり集めた
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生後間もない木魚の放し飼いをしていますが動きませんよほとんど
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おびただしい数の天狗が電線に立って読んでる遺書らしきもの
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一度しかたぶん通用しないけど白鵬に勝つ技があります
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あの時に反撃すれば勝っていた昨日の喧嘩を思い出してる
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 「日常生活」をテーマにした作品も印象に残ります。


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店員が襲ってこない距離感でマネキンと同じポロシャツ探す
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値札見るまでは運命かもとさえ思ったセーターさっと手放す
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カフェのテラスで自己啓発本読むやつのバイブレーション手で跳ね返す
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ママチャリでロードバイクを抜き返す泣いたら強いんですよわたしは
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うつ伏せになってるキューピー人形が笑顔だという確証はないから
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おいでおいでの動きキモいと妹に言われる即刻猫ブーム去れ
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何ひとつ成しとげられずに生きてきたランキングがあれば一位だ
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マジレスが来たので眠りますここは私の独裁国家ですので
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『短歌ホリック第五号 特集「あなたの聖地、どこですか?」』 [読書(小説・詩)]

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後楽園ホールのリングの真ん中に倒れて
小坂井コール聞きたいっ
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「小坂井大輔さんの聖地」より


 第29回文学フリマ東京(2019年11月24日開催)にて購入。ちなみに第六号の紹介はこちら。

2019年11月27日の日記
『短歌ホリック第六号 特集『平和園に帰ろうよ』×『煮汁』』
https://babahide.blog.ss-blog.jp/2019-11-27


通販の申し込みは、こちらから
https://twitter.com/stsuji1983/status/1198576808339238912?s=20


「園長のお言葉」(小坂井大輔)より
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こんにちはぎょうざザーサイいか団子あぶらまみれの床を拭きます
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厨房で死ねたら本望ですよって言ったら好感度ってあがるの?
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味噌ラーメンに味玉入れてくれという加藤治郎の清きわがまま
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結局のところ料理は素材との対話なんですよ、って、wwwww
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妹よ、よく聞けわたしは長男の座を譲ってもいいんだぞもう
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名古屋駅を背にして西へ、と語るときわたしは平和園の園長
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「つやぶるまい」(戸田響子)より
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憎しみときいたときふと思い出す虻を潰してなする祖父の目
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行き先しか表示されないバスばかりどこから来たか誰も聞かない
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雨かなと見上げればビルの屋上に鳥居がみえてすぐ目をそらす
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エスプレッソマシンが吐き出すどす黒い本気を混ぜる他愛ない愚痴
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今日一日同じ景色を見つづけたコンタクトレンズぺろりと捨てる
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いつまでもレースのかかった黒電話ばかり思い出すもうない家の
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タグ:同人誌
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『短歌ホリック第六号 特集『平和園に帰ろうよ』×『煮汁』』 [読書(小説・詩)]

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 大人になって女性とお付き合いしたりするようになったものの最終的に浴びせられる言葉は「最低!」という二文字で、たまに「最ッ低!」という三文字にそれは変わったりした。その結果、お付き合いした女性全員から平手打ちをくらう、という不名誉なギネス記録(あるの!?)が打ち立てられたわけだが、これはもう存在している女性みなさんに対して重大な被害を及ぼしかねない人物だということを、事前に知ってもらうほかないな、という事でここに記させていただきました。みなさん読んでくれてありがとう。
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「知ってもらいたい」(小坂井大輔)より


 第29回文学フリマ東京(2019年11月24日開催)にて購入。書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズ第四期に出版された『平和園に帰ろうよ』(小坂井大輔)と『煮汁』(戸田響子)の特集号です。

通販の申し込みは、こちらから
https://twitter.com/stsuji1983/status/1198576808339238912?s=20


 『煮汁』(戸田響子)は読んでいたのですが、『平和園に帰ろうよ』(小坂井大輔)は未読でした。あわてて注文しました。ちなみに『煮汁』(戸田響子)の紹介はこちら。

2019年09月17日の日記
『煮汁』(戸田響子)
https://babahide.blog.so-net.ne.jp/2019-09-17




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先輩たちのタイトルには、いずれも自然や季節や遥かなものへの憧れがある。だが、『煮汁』。もちろん厨歌的な生活感を象徴しているわけではない。ここには小坂井大輔とも共有されるようなサブカル的なノリというか、一周回ったセンスが感じられる。ただ、実際に読んだ歌集の印象は、そこからもさらにズレるというか、タイトルの逆張り的なインパクトを超えた領域にまで詩性が及んでいるようだ。フォーカスのよく合った小坂井作品とは違って、戸田の歌においては一首ごとのランダムな揺れが詩の成立地点を予測させない。生きることへの違和感が心の奥で発酵したような、捉えどころのない魅力がある。
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「小坂井くんと戸田さんについてのメモ」(穂村弘)より




「脳の考え」(小坂井大輔)より
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パチンコ屋から違うパチンコ屋へ向かう信じる者を神は見捨てない
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礼をした隙にキエェェと面を打つような卑怯なわたしですから
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親友に財布盗られたときの目でドナドナは歌わんとあかんよ
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湯豆腐の豆腐抜きって注文をしたら湯だけが来るか賭けるか
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寝ていなくても横になってりゃ休息はちゃんととれてる説の採用
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あなたが体感している三千倍くらい努力は報われません 終了
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「縁石のうえを走りぬく」(戸田響子)より
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トイレットペーパーの芯にありがとうごさいますって印字してある
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高いバターを買った翌朝すこしだけ冷蔵庫の中あかるく光る
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ひとさじの粒マスタードパンに塗り架空のハムとキャベツをはさむ
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仕組みから外れてただよう公園でエサ横取りした鳩追いまわす
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不本意な謝罪をすれば体からいつまでも出る無数のひじき
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かつて味噌汁とごはんとキャベツのおかわりが自由だという国家があった
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『空想食材レシピ クックタンカ』(チカヨミ) [読書(小説・詩)]

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「新しい食材に興味があるけれど、衛生面や安全性が心配」
「宇宙グルメツアーに行ってみたいけれど、なかなか時間がない」
「実は、好奇心が強い」

そんな皆さまにぜひお試しいただきたい、宇宙コプコプならではの産地直送企画です。
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 第29回文学フリマ東京(2019年11月24日開催)にて購入。企画系短歌ユニット「チカヨミ」によるショートショートと短歌のアンソロジーです。BOOTHでの通販もあります。


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宇宙から食材をおとりよせ!
笑いあり愛ありの四つの短編と、縦横無尽に食を詠んだ短歌連作の二部構成。
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BOOTHの通販ページより
https://tikayomi.booth.pm/items/1694042


 まず前半は産地直送で届いた宇宙食材の試食レポート(レシピ付き)。爆発的に増殖する蔓野菜、青く光る(たぶんチェレンコフ放射光)宇宙青汁、食べる前に命がけバトルを要する触手系宇宙生物など、レシピうんぬん以前に、そもそも食べ物なのか、合法なのか。そして大丈夫なのか地球生態系。


 後半は「食」をテーマにした短歌連作で、こちらもちょっと宇宙食材の余韻が残ってたりします。


「郷土料理とカロリーメイトのあいだ」(真綿ひよん)
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芋煮って豚汁みたいなやつだつけ?それから口を利かないアバター
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わたくしに食習慣はあるといふひとにメイトひとつの幸あれ
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初物を恵方に向ひて食べるとふ星にも旬のサプリが実る
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「刺激的被虐カレー」(淀美佑子)
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カレーだといえばカレーでぬばたまのとろみ渦巻くスパイス星雲
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あふれだす汁という汁全身が熱いマグマのカレー支配下
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被虐的辛味ののちの冷めやらぬ吐息をそっと両手で隠す
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「シ・ゲをうたふ」(hypo-)
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単分子銛へ ratio とささやけばひとときののち《承認》灯る
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銛のさきパラライザーははなたれて刺されし腕を神は自切す
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またふかきふかきところへかへりゆく腕一本にふねは軋んで
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「恋と毒薬」(かのきあやか)
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海をいま思ったでしょう沈んでるわたしのからだ味わいながら
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かつて肉だったわたしとやがて骨なりゆく君が共にみる夢
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はつ恋を仕留めるための猟銃が見つからないまま息をしている
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タグ:同人誌
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『どうぶつの修復』(藤原安紀子) [読書(小説・詩)]

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宙空に単独で位置することは発生の潜像であり、絶望のまま快活に歩きだした兄妹の握ったてのひらは自立している。硬質にみえて湿度も粘度もあるかれらが地上に位置するためには破壊的な浮力が必要だが、集団に歩調を合わせられないことを卑下する知脳もない。「ぼくらの視力が七色以上を見分けたころ、綿毛のような人智に傷つくばかりが不毛だった」、そうモスキート音で話す。翳のないかれらの下膨れの頬。臆病で慎重、それでいて複雑な階調で眼筋をうごかす。兄妹を見た誰かが思い出したようにデラソーワと発語したことが契機となり、論争がはじまった。主題は、聖なる翼と退廃した言語だという。
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 もともと世界観を共有できない異語を無理やり日本語に変換したようなことばで理解の及ばない壮大な物語を語っているようなそうでもないような、かつて海外翻訳SFというものが放っていたあのときめきを今に伝える、なつかしかっこいい詩集。単行本(港の人)出版は2019年10月です。


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一目でわかることだが緑の生成はじかん軸を食いつくすことで増殖する。
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朱色が黄土色に、黄金色が土気色に、諧調が残滓のほうへ傾きかけています。もう交錯では済まされない、堆積がはじまっているのです。
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 こういう、意味ありげなぐっとくるフレーズが散りばめられた、というかほぼそれだけで構成された、驚くべき作品。不思議なひびきの造語が散りばめられ、よく分からないけどきちんとした設定のある別世界の物語を読んでいるという感触はあるけどやっぱりよく分からない。昔、こういう感じの海外翻訳SFが好きだった。今から思えば、あれは詩として読んでいたのだ。


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緑のファクトとはおそらく、ファクトリー(国家)に疲憊した修復師たちがもどってきてリハビリテーションする場所である。偽証に溢れた地上では自己解析についての臨床例など吐き捨てるほどあるのだが、六角形の、あるかなきかの天上では、擦り切れるまで磨耗した固有名詞が光りを内包し、霧散している。地底から汲みあげられた古い水は愛すべき小もの(じぶん)の名ではなく能力別のIDへ記載され、スタンプとして登録された。一連の行程を、半永久的ユートピアふう心象スケッチといわれてなお修復師が平気でいられるのは、グレーのなかでも一等古い水を含む緑があみはじめられているからである。円環という古代の文字が、まだ湿度のある表皮に彫られているためでもある。
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涌くようにあがる調音のボールは縦横無尽に廻らされ
すべての星をすくえるほどに細かいあみ目は、交差を無限にくりかえしても
縺れないと、舞いちる自身がしっている。からまないのも人道のルール? でも
ないね、方向性の問題だろう。二次元でみれば接点、三次元ならおさえた穴
四から六は逆算のブーメラン、八なら一族一家のピラミッド
ほら、喪木のほとりから、石火のおしゃべりがきこえる
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キュポスを引くチェーンの爆音とともに到着し、なだれ込んだ先、最上階へと最初に飛び降りたのは虚言クジラを自称するひとりの賢者だった。汚濁した霧状のすすのなかを勇敢にも搔きいって行く。二番手で追う毛むくじゃら(翼ナシ)は、前進をはばむような濁声がしたので振りかえる。背後から、栗毛とどんぐり目はよばれびとのようでもほかはまったく似たところのないデラソーワが、白衣をまとって近づいてきた。ヴォイドの方角からだった。きのうデラソーワはエキップにいた、百年前は飛行場からジョンドウンを見送った、ここ数年の赴任地であるここでは翼の研究をしている。油断している。
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