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『地磁気逆転と「チバニアン」 地球の磁場は、なぜ逆転するのか』(菅沼悠介) [読書(サイエンス)]

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 驚くべきことに、地球の磁場(地磁気)が180度ひっくり返るという現象が過去に何度も起きてきたのです。そして、いちばん最近に起きた地磁気逆転の証拠が、まさにチバニアン誕生の舞台となった地層、千葉セクションから見つかったのです。(中略)
 一般には知られていませんが、過去200年ほどの間、地磁気の強さは低下し続けています。この傾向がさらに続けば、地磁気逆転に向かう可能性もあるのです。我々にとって重要な地磁気が、もしいま逆転をしたらどのような事態が起こるのでしょうか? 現代の文明社会は、存亡の危機を迎えてしまうのでしょうか? 科学者たちの研究の積み重ねによって、少しずつ、でも着実に、その謎の解明に近づいています。
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単行本p.5、6


 観測が始まってから、一貫して弱まり続けている地球磁場。このまま近い将来に地磁気逆転が起きるのだろうか。謎を解くためのカギとなるのが、最も直近に起こった地磁気逆転のデータが残されている千葉セクションだ。新たな地質年代「チバニアン」の命名元となった千葉セクションに残された記録から地磁気逆転のメカニズムに迫る研究者の姿を紹介するサイエンス本。単行本(講談社)出版は2020年3月、Kindle版配信は2020年3月です。


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 千葉セクションが前期-中期更新世境界GSSPとして認定されたことにより、千葉セクションは文字どおり世界標準の地層となりました。
 今後は、世界中の研究者が、地磁気逆転や気候変動の研究のために千葉セクションを訪れることになるでしょう。
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単行本p.239


〈目次〉

第1章 磁石が指す先には ――磁石と地磁気の発見
第2章 地磁気の起源 ――なぜ地球には磁場が存在するのか
第3章 地磁気逆転の発見 ――世界の常識を覆した学説
第4章 変動する地磁気 ――逆転の「前兆」はつかめるか
第5章 宇宙からの手紙 ――それが、謎を解くヒントだった
第6章 地磁気逆転の謎は解けるのか ――なぜ起きるのか、次はいつか
第7章 地磁気逆転とチバニアン ――その地層が、地球史に名を刻むまで



第1章 磁石が指す先には ――磁石と地磁気の発見
第2章 地磁気の起源 ――なぜ地球には磁場が存在するのか
第3章 地磁気逆転の発見 ――世界の常識を覆した学説
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 こうして「地磁気逆転」は、溶岩、海洋底の地磁気異常、そして海底堆積物のすべてから明確な証拠が見出されることによって、その存在が確認されました。また、地磁気逆転の存在は、同時に海洋底拡大説が正しいことも示しており、これらの成果を統一的にまとめることで、このあと「プレートテクトニクス」が成立していくことになります。
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単行本p.101

 地磁気の発見からその生成メカニズムの解明、そして地磁気逆転現象の証明とプレートテクトニクス理論の完成に至る歴史を解説します。


第4章 変動する地磁気 ――逆転の「前兆」はつかめるか
第5章 宇宙からの手紙 ――それが、謎を解くヒントだった
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 古くから、地磁気逆転と生命の進化や絶滅の関係については、さまざまな仮説が提唱されてきました。しかし、両者になんらかの関係性があることを証明した研究は今のところありません。それは、もしかすると、地磁気逆転、もしくは生命の絶滅・進化の年代測定精度が十分でなかったことが理由かもしれません。一方、地磁気エクスカーションについては、ごく最近になって興味深いデータが報告されています。(中略)
 最新の年代測定によると、ネアンデルタール人の絶滅は約4万1000~3万9000年前と推定されていますが、この絶滅のタイミングが、まさにラシャン・エクスカーションの最盛期と一致するというのです。
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単行本p.132

 宇宙線と地磁気、年代測定技術の進歩、そして地磁気と生命進化の関係など、地磁気変動にかかわる様々なトピックを解説します。


第6章 地磁気逆転の謎は解けるのか ――なぜ起きるのか、次はいつか
第7章 地磁気逆転とチバニアン ――その地層が、地球史に名を刻むまで――――
 まず、海底堆積物のベリリウム10から示された松山-ブルン境界年代の修正について、氷床コアや、火山灰に含まれるジルコン粒の放射年代測定など、最新の分析によって証明されていく過程を紹介しましょう。そして、その結果から明らかになってきた地磁気逆転の全容も含めて、地磁気逆転に前兆現象はあるのか、そして地磁気が逆転したとき、この地球はどうなってしまうのか、そもそもなぜ地球の磁場は逆転するのか――、地球科学最大の謎ともいえるこのテーマについて、最新の研究成果も紹介しながら追ってみたいと思います。
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単行本p.182

 地磁気逆転についてどこまで分かっているのか、そして千葉セクションの地層から何が読み取れるのか。最新の研究成果をまとめます。





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『あの人と短歌』(穂村弘) [読書(随筆)]

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 おかげで作家、詩人、俳人、漫画家、モデル、翻訳家、ブックデザイナー、ミュージシャンなど、さまざまなジャンルで活躍中の方々に出会うことができた。現代の短歌について、近代の詩歌について、万葉集について、うた合わせについて、昭和天皇の御製について、それぞれの方の視点からお話が伺えて嬉しかった。本書のどの頁からでも開いて貰えれば、その魅力をわかっていただけると思う。「短歌は面白いですよ」といくら口で云っても信じる人はいないだろう。本当に面白がっている人がいるということ、その人がこんなにも魅力的だということ、それだけが証になり得るのだ。
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「あとがき」より


 作家やミュージシャンなど様々なゲストと歌人の穂村弘さんが短歌をテーマに語りあった対談集。単行本(NHK出版)出版は2020年12月、Kindle版配信は2020年12月です。


〈対談相手〉

北村薫(作家)
酒井順子(エッセイスト)
三浦しをん(作家)
清家雪子(漫画家)
高原英理(小説家)
知花くらら(モデル・女優)
金原瑞人(翻訳家)
文月悠光(詩人)
鳥居(歌人)
朝吹真理子(小説家)
小澤實(俳人)
保阪正康(ノンフィクション作家)
里中満智子(マンガ家)
吉澤嘉代子(シンガーソングライター)
名久井直子(ブックデザイナー)
俵万智(歌人)




 短歌の内容には作者の実体験が反映されてなければいけないのか。
 短歌の題材に流行というのはどのくらいあるのか。
 文語や韻文の要素が廃れてきているのはなぜか。
 詠われないテーマはあるか。あるなら、なぜか。
 究極の一首、が存在するか。あるいは存在すると信じているか。


 さすが『NHK短歌』の連載をまとめたものだけあって、短歌に関して素人が疑問に思うことが話題となります。必ずしも明快な答えが語られるとは限りませんが、やっぱり歌人もいろいろと悩み、考え、迷っているのだな、と分かって距離が少し縮まるように感じられます。


 穂村弘さんの話題の持ち出し方も巧み。こんな感じでリードしてゆきます。


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穂村
 せっかく読むなら、抑制が効いているものより、恥ずかしいことを書いているものを読みたいですよね。与謝野晶子や若山牧水を見よ! ですよ。近代歌人の「我に返らなさ」加減は本当にすごいですから。
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単行本p.43


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穂村
 短歌には、そういう盲点がけっこうあるんです。例えば「夕暮れの厨(台所)でほのかな性欲がきざした」といった歌はよくありますが、なぜか時間は必ず「夕暮れ」で、場所は「厨」で、かつ性欲は「ほのか」だったりする。「真夜中の寝室で激しい性欲が湧いた」という歌は、おそらく一首もありません。
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単行本p.50


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穂村
 一字一句、少しも動いてはいけないというのは、韻文家の感覚ですね。唯一無二の正解がある、という感受性もしくは強迫観念。それこそが、短歌のイデア(本質)だと言えると思います。
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単行本p.115


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穂村
 つまり、ある運命が、自分に本当に言いたいことを言わせない状況です。そうした「言いたいことを言えない」「けれども言わねばならない」という二重性が、優れた強度のある詩歌を生むという側面は絶対にある。
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単行本p.139


 ときには穂村さんから挑発したり。


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穂村
 詩の場合は、どうやって良し悪しを決めるんですか? そもそも他人の詩って、読んで「わかる」ものなんですか?
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単行本p.125


 むろんゲストから煽られることの方が多いわけです。


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酒井
 穂村さんによる短歌鑑賞の本はすごく論理的です。カマトトなのに、こんなにすごいことを考えているなんて! という驚きがありました。
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単行本p.30


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金原
 最近、学生に「穂村弘を知ってる?」と聞くと、「あのエッセイストの」って答えるんですよ。そんな状況を打破すべく、早く次の歌集を出してください。
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単行本p.116





タグ:穂村弘
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『SFマガジン2021年6月号 異常論文特集』 [読書(SF)]

 隔月刊SFマガジン2021年6月号は、学術論文の体裁をよそおった怪文書=異常論文の特集という、どうかしてる号でした。


『SF作家の倒し方』(小川哲)
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 池澤春菜率いるSF作家界に加わり、世界を素晴らしいものにしていく手伝いをするか、それとも、大森望率いる裏SF作家界に加わり、闇の力で日本を支配するか。(中略)裏SF作家界の力は強大です。有力な作家を次々と陣営に引きこみ、陰から社会を支配しています。(中略)
 そんな絶望的な状況でも、明るい未来を作るため、みんなの笑顔を守るため、SFを信じる力で世界に光が満ちるその瞬間まで、私たちSF作家は戦い抜かなければなりません。本稿では、二大勢力による戦争の最前線にいる私が、裏SF作家を倒す方法をみなさんに教えたいと思います。
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SFマガジン2021年6月号p.62

 大森望率いる裏SF作家界と戦うために、裏SF作家の倒し方を大公開。具体的に、柴田勝家、樋口恭介、高山羽根子、宮内悠介、飛浩隆、の五名を取り上げ、各人の弱点および有効な攻撃方法をまとめる。論文の体裁で書かれた怪文書。


『殲滅の代償』(デイヴィッド・ドレイク、酒井昭伸:翻訳)
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「戦車科、全車突入! 殲滅せよ、戦車隊(パンツァー)!
 ダニーは非常バーに手の平をあて、車長席を砲塔内に固定した。頭上のハッチをロックする。爆音をあげて大地を打ちすえる浮揚ファンの烈風も、部厚い装甲にはばまれて車内に影響をおよぼすことはない。だが、その高回転にともなって、車内にかんだかい回転音と熱が満ちていく。
〈双つ星〉は猛然と尾根を踊り越えた。
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SFマガジン2021年6月号p.359

 ある惑星の紛争に投入された傭兵部隊。ライバルの傭兵を雇っている敵勢力は、古代種族が遺した超テクノロジー遺跡を拠点としている。攻撃を仕掛けたら、宇宙の至宝を傷つけてしまうかも知れない。だが、戦争は戦争。主力戦力である浮揚大型戦車隊は、進軍を開始する。
 未来の戦車戦を非常にリアルに描いた短編。





タグ:SFマガジン
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『「春」変奏曲 宮沢賢治』(勅使川原三郎、佐東利穂子) [ダンス]

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陽が照って鳥が啼き
あちこちの楢の林も、
けむるとき
ぎちぎちと鳴る 汚ない掌を、
おれはこれからもつことになる
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春と修羅 第三集より『春』(宮沢賢治)


 2021年4月18日は、夫婦でKARAS APPARATUSに行って勅使川原三郎さんの公演を鑑賞しました。勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんが踊る上演時間一時間ほどの作品です。

 佐東利穂子さんによる宮沢賢治の詩集『春と修羅』の朗読(録音)が流れるなか、二人が交互に踊ります。テーマは「春」ですが、のどかな雰囲気はなく、激しい春の嵐の気配がずっと漂う舞台です。

 ときおり背後に映し出される雲のような春霞のような光が印象的で、薄暗いなか照明によりおぼろげな姿が浮かび上がる光景にはどこか圧倒的なものが感じられます。

 憤激を抑えてじっと立ち尽くしているような勅使川原三郎さんの身体の繊細な動き。いっぽう佐東利穂子さんは、おそらく妹のイメージなのでしょうが、明るく軽やかな動きで踊ってくれました。


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まことのことばはうしなはれ
雲はちぎれてそらをとぶ
ああかがやきの四月の底を
はぎしり燃えてゆききする
おれはひとりの修羅なのだ
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『春と修羅』(宮沢賢治)より





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『プラスマイナス 174号』 [その他]

 『プラスマイナス』は、詩、短歌、小説、旅行記、身辺雑記など様々な文章を掲載する文芸同人誌です。配偶者が編集メンバーの一人ということで、宣伝を兼ねてご紹介いたします。

[プラスマイナス174号 目次]
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巻頭詩 『春の空 より』(琴似景)、イラスト(D.Zon)
俳句  『微熱帯 41』(内田水果)
エッセイ『我們的歌』(島野律子)
川柳  『春までの糸』(島野律子)
詩   『春の空』(琴似景)
詩   『花(墨流し)』(深雪、みか:編集)
詩   『春へ渡る』(島野律子)
詩   『誕生日 32』(多亜若)
小説  『一坪菜園生活 57』(山崎純)
エッセイ『香港映画は面白いぞ 174』(やましたみか)
イラストエッセイ 『脇道の話 113』(D.Zon)
編集後記
 「気になることば」 その1 mika
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 盛りだくさんで定価300円の『プラスマイナス』、お問い合わせは以下のページにどうぞ。

目黒川には鯰が
https://shimanoritsuko.blog.ss-blog.jp/





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