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『苦手から始める作文教室』(津村記久子) [読書(教養)]

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 わたしはうまい棒のことを考えるのが好きなので、うまい棒がメインの作文の計画になりましたが、家賃の話をするのが好きな人や、PBに関してもっと言いたいことがある人はそのことを書けば良いと思います。
 作文にうまい棒のことなんて、と抵抗を感じられる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、わたしが中学生の時に作文で賞をもらった時に書いた内容は、「外出先で注文したカレーが思ったより辛かったので、その後にやってきたプリンが普段の何倍もおいしく思えて幸せを感じた」という、うまい棒と大差ないものでした。これまで、学校の授業の作文で良い評価をされた時に、友情についてとか、努力についてとか、部活での成果についてとか、ステキな出会いについてとかいった「もっともらしい」内容で評価されたことは一度もないように思います。だいたいカレーとプリンの食べ合わせとか、毎朝通る横断歩道で青信号が点滅し始めるとものすごく急ぐけれども、いつも間に合うので毎朝ちょっとだけうれしい、みたいなことです。
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単行本p.14


 学校の課題などで作文を書けといわれて困っている若者たちのために、作文のプロである作家がその秘訣を伝授。『やりなおし世界文学』で読み方を教えてくれた津村記久子さんが、今度は書く方法を教えてくれます。ちくまQブックスから出版された実用書にして、著者の生活をかいま見ることが出来るエッセイ本としても楽しめる一冊。単行本(筑摩書房)出版は2022年9月です。




目次
第1章 作文は何を書いたらいいのだろう?
第2章 作文を書いたらいいことがある?
第3章 作文はどう書いたらいいだろう?
第4章 メモを取ろう
第5章 書き始めてみよう
第6章 伝わる文章ってどんなもの?
第7章 感想文をなぜ書くか?
第8章 文章をもっとよくしたいなあと思った時に
第9章 作文に正解はあるか
次に読んでほしい本 その前に・私が本をおすすめするわけ
次に読んでほしい本




第1章 作文は何を書いたらいいのだろう?
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 だいたいの時間は作家(小説家)になりたいと思ってすごしてきました。今は一応、その夢をかなえたということになるのですが、いつもどうやって文を書いたらいいかわからず、何を書いたらいいのかについて悩んでいて、あまりにも「なりたいと思っていた小説家」と自分がかけはなれているので、小説家になった今も「小説家になりたいなあ」とときどき思います。(中略)それで、文章を書くことを仕事にしている身分で言うのもなんですが、わたしは文章を書くこと、つまり作文が年々苦手になってきています。書くことはないし、書きたいとも思わないし、だいいち書けるわけがない、と思うようになってきているのです。書き方も毎回わからないと思います。言いたいこともべつにないのです。
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単行本p.8、9

 何を書いたらいいのか分からない、というか書きたいことなんて何もない。それでも作文を書けと言われたら、さあどうするか。何について書けばいいのかを考えます。




第2章 作文を書いたらいいことがある?
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 では、〈いいね〉が思うようにつかない文章、バズらない文章、そしてそもそも他人に見せない文章にはまったく価値がないものなのでしょうか? わたしから言わせていただくと、そんなことはぜんぜんありません。とにかく「書きたい」と思って書かれた文章なら、書かれたことの意味はじゅうぶんにあるし、価値もあります。(中略)少なくとも、トイレに行きたい時にトイレに行く価値があるのと同じぐらいは価値があるものだとわたしは思います。
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単行本p.19

 何か書きたいことがあるならSNSにでも書いた方がいいんじゃないの。なぜ作文を書かなきゃいけないの。あえて作文を書くことにどんなメリットがあるのかを考えます。




第3章 作文はどう書いたらいいだろう?
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 おまえは食べ物のことしか書けないのかよ! とおっしゃる向きもあると思います。でも、そういうことを言われたら、食べ物のことを書けばいいんだよ!まずは! と言い返そうかなあとも思います。それで、好きな食べ物なんかないんだよ!と言われたら、じゃあ昨日の晩ごはんのなんてことなさについて書けばいいんだよ! と言い返すかもしれません。
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単行本p.33

 書くことを決めたとしても、わずか二行で終わってしまう。話を広げて原稿用紙の枚数をかせぐにはどうすればいいのかを考えます。




第4章 メモを取ろう
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 わたしはメモをとてもよく取ります。生活においても仕事においても、メモを取ることは自分にとって生命線と言っていいぐらい大事なことです。「メモを取るな」と言われたら、わたしの文章を書く仕事の質は、冗談でなく10%以下まで落ちるように思います。生活もとても不自由になるでしょう。「今日はタコライスを食べる」とか「玉子と牛乳を買う」といったこと以外にも、わたしはとにかく何か思いついたらどんなくだらないことでもメモを取ります。というかくだらないことほど気を付けてメモを取ります。くだらないことは、よほどパンチのある内容でない限りは忘れてしまう可能性が高いからです。そしてわたしは、今までの文章をお読みいただいていたら察していただけるように、くだらない、とるにたらない思いつきから文章を書くことを仕事にしています。
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単行本p.40

 文章を書くうえでとても役に立つのが「メモを取る」ということ。何でもメモする作家が、その秘訣を教えてくれます。




第5章 書き始めてみよう
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 作文用紙の裏、または空いたところに「今からコバエについて書きます」とうすくかいてください、とわたしが申し上げたのは、書き出しよりさらに前の文、書き出しを1文目とするのであれば、ゼロ文目としてその文があれば、書き出しの文も決まりやすいのではないか、と考えたからです。うすく書いたゼロ文目である「今から××について書きます」という文の下に、一つだけ情報を付け加えた文を作り、その後もう一つ情報を足した文章を作る、というようなことをやっていけば、書き出しの文章を作っていくことができます。少しだけ時間を取りますが、作文用紙の白い枡目を見つめながら、頭の中だけで文章を作り出そうとするよりは、いくらかは負担が軽くなる方法だと思います。
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単行本p.58

 ある意味で最大の難関ともいえる「書き出し」。最初の一行に何を書くか。そのコツにせまります。




第6章 伝わる文章ってどんなもの?
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 わたし自身の体験しかお伝えすることはできないのですが、本当のことを書いて誰かが気に入ってくれたり、悪くないと思ってくれることは、決して居心地の悪いことではありません。この本の文章を通して、わたしがどれだけしょぼい生活をしている人間であるかについてはいいかげん伝わっていると思うのですが、「この人はこんなにしょんぼりした生活をしているのに一応生きているのだから、自分もあんまりいいことはないけどまあがんばろう」などと思っていただけたとしたら、わたしはとてもうれしく感じます。
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単行本p.69

 読んだ人に何かが伝わり、その心を動かす。そんな作文を書くにはどうすればいいのか。文章を書くうえでの大切な心構えについて考えます。




第7章 感想文をなぜ書くか?
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 何かについて自分が感じたこと、考えたことの記録を付けたら、すぐに人から信頼されるよとは言いません。けれども、一切そうしないよりは、昨日の自分がどんな人間だったかを思い出しやすいように思います。何かをおもしろい、好きだと思って、その理由を明日の自分に説明しているうちに、自分がどういう人間なのかということが作られていくようにわたしは思います。
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単行本p.84

 みんな苦労する読書感想文。いったい感想文を書くことに何の意味があるのか、それを考えます。




第8章 文章をもっとよくしたいなあと思った時に
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 それでも良い文章が書きたい、という強い気持ちのある方に、一応35年ぐらい文章を書いているわりにどう練習したらいいのかはよくわからないわたしから言えることは、読んで書くことを繰り返したらいいですよ、ということぐらいです。読んでばっかりよりは書いたほうがいいし、書いてばっかりよりは読んだほうがいいです。
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単行本p.91

 なんとか作文を書けるようになって、もっと文章を良くしたいと思ったときどうするか。文章のブラッシュアップについて考えます。




第9章 作文に正解はあるか
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 どうやって本当のことをおもしろい話にするのでしょうか? いろんなやり方があると思いますが、最初に思いつくのは「細部がわかること」です。ある程度でかまいません。(中略)細部をわかるようにするためには、よく見てよく聞くことです。それだけです。誰にでもできます。対象は、現実の出来事や風景や生活の中で起こることが望ましいですが、テレビでも映画でも動画でもかまいません。いろんなことをよく見てよく聞いているうちに、自分自身が何に関心を持っているかもわかってきます。
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単行本p.104、105

 結局、作文に善し悪しはあるのでしょうか。おもしろい作文とつまらない作文があるとして、どこが違うのでしょうか。作文の質について考えます。




次に読んでほしい本 その前に・私が本をおすすめするわけ
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 本がすぐれているのは、ものすごく長い歴史があることや、あらゆる娯楽の中でもっとも低いコストで書ける(作れる)ため、多様性と蓄積があることです。また、いろんな時代を経て生き残ってきているため、単純に著者も登場人物も「いろんな人がいる」のです。なので本は、「誰にでも好かれる人気者」というより、「自分にぴったり合う誰か」がいる可能性を秘めています。
 反対に、本は読む人を選んだりはしません。「読むのをやめてよ」と本が言うことはありません。そして、書かれていることに返信しなくても、落ち込んだり悲しんだり怒ったりもしません。また、感想文という形で返信のようなことをするのも自由です。本はずっとそこにあって、読む人を置いていったりはしません。本は急かさずに待ってくれます。
 なので興味を持たれたら、いつか本を読んでみてください。
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単行本p.117

 良い文章を書くためにはやはり読書が必要。とりあえず何を読んだらいいのか、作家が教えてくれます。





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