SSブログ

『Jiri Kylian Forgotten Memories + Wings of Wax』(イリ・キリアン) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 現代最高のコレオグラファの一人、イリ・キリアン。彼が自らの人生について語るドキュメンタリーフィルムです。制作は、Don KentとChristian Dumais-Lvowski。

 幼少期の思い出、故国への思い、師ジョン・クランコのこと、妻のこと、そしてもちろんダンスとNDTのこと。カメラに向かってキリアンが語り、そこに様々なイメージ映像、レッスン風景、舞台映像が挿入されるという作りになっています。収録時間は52分。

 日本語字幕は付いていませんが、キリアンの英語は発音・表現ともに簡潔にして明瞭で、聞き取りに困ることはありません。なお、事前にキリアンの来歴を調べておくことをお勧めします。(よく知られていること以外、特に目新しいことは言ってません)

 まあ、無理に聞き取らなくても、ただ次々と流れるキリアン作品の映像に酔いしれるだけで充分かも知れません。これまでに市販されている舞台映像のハイライトシーンが詰め込まれています。

 初めて観る映像もいくつかあったのですが、作品名が分からないというのは残念。最後にドキュメンタリー内で使用した作品のリストがまとめて提示されますが、どれがどれだか確認するのはかなりの手間。舞台映像シーンで作品名を表示してほしかったと思います。

 また、付録としてキリアン作品『Wings of Wax』の舞台映像が収録されています。収録時間は24分。

 天井から逆さまに吊るされた木、その周囲をゆっくりと周回する光源。いや、たぶん舞台こそが(樹上に拡がる)天上界で、その周囲を回る光源は太陽なのでしょう。この印象的な舞台で、数名のダンサーが踊ります。

 特に明確なストーリー(例えばタイトルから連想されるイカロスの物語)があるわけではなく、いわゆる抽象ダンスです。ドキュメンタリーでキリアンは「舞台に人間が立っている限り、“抽象”ダンスなんてあり得ない」と断言していましたけど。

 ドキュメンタリーに挿入されている映像も、『Wings of Wax』の舞台映像も、いずれも素晴らしい。まとめて観るとキリアン作品の凄み、その恐ろしいほどの吸引力、動きの斬新さ、色あせないシャープな演出、全てに感激を禁じ得ません。

 何より驚かされるのは、作風が多彩なこと。同じ振付家の作品とは思えないほどバラエティに富んだダンス、しかもどれも心を揺さぶられるような傑作ばかり。キリアン作品に興味がある方には、まずは入門としてこのディスクをお勧めします。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0