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『PLACE』(ミハイル・バシリニコフ、アナ・ラグーナ、マッツ・エック振付) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 古典バレエの現代的改作で名高いスウェーデンの振付家、マッツ・エック。2007年に初演された彼の作品を、ミハイル・バシリニコフとアナ・ラグーナが踊った舞台映像です。収録は2009年05月。

 劇場の監視カメラがとらえたモノクロ映像が最初と最後に挿入されており、それらを除けば実質20分強の短い作品です。

 舞台はシンプルな構成で、絨毯よろしく広げた防水シートの上に、机が一脚あるだけ。四角いスポットライトが、それらを取り巻く空間(PLACE)を切り取っています。この空間に一緒に入った、今や60代のミハイル・バシリニコフと、50代のアナ・ラグーナが、(おそらく)中年夫婦の葛藤を踊るのです。

 現代の服装で男女が踊るマッツ・エック作品というと、その胸を刺すような悲哀が衝撃的で、ちょっと忘れられないものがあります。自分の核となる部分が決定的に壊れていて、つながることも、分かりあうことも、自立することも出来ない。そんな苦悩や悲哀がダイレクトに伝わってきます。

 本作もその路線上にありますが、何というか、突き刺すような悲哀はやわらぎ、厚みを増し、静かに迫ってくる、そんな感じがします。昔の作品のように無言の悲鳴のような悲しみがずっと続くというのではなく、ときに楽しげなシーンになり、ロマンティックなシーンもあり、躍動的なシーンも出てきます。それらを包み込むような静かな無常観がひしひしと。50代、60代の名ダンサーだからこそ出せる味でしょう。

 一部(特にバシリニコフのソロダンス)に特撮というか、痙攣的な早回しやリピートといった映像効果を加えているのですが、これはそんなに感心しませんでした。

 衰えを感じさせない迫力あるダンスを披露してくれるバシリニコフも凄いのですが、個人的にはアナ・ラグーナの静かに詰め寄ってくるようなダンスに戦慄しました。やはりマッツ・エック作品はアナ・ラグーナが踊るのがぴったりだと思います。


『PLACE』(2009年05月収録、スウェーデン・ロイヤル・ドラマチック・シアター)

振付: マッツ・エック
出演: ミハイル・バシリニコフ、アナ・ラグーナ
映像監督: ジョナス・アカーランド


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