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『ヒトラーとUFO 謎と都市伝説の国ドイツ』(篠田航一) [読書(オカルト)]

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 グリム童話を生んだドイツは、民間伝承の豊かな伝統を持つ国だ。勤勉なイメージのあるドイツ人も一皮むけば実に噂好き、ゴシップ好きの人たちで、インターネット上で使用される国際言語としてドイツ語は上位を占めるとの調査もある。ドイツ人は世界に冠たるおしゃべり民族だ。
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新書版p.11

 ハーメルンの笛吹男からナチスのUFO開発まで。新聞社の特派員としてドイツに駐在した著者が、ドイツで語られている民間伝承や都市伝説を紹介してくれる本。新書版(平凡社)出版は2018年6月、Kindle版配信は2018年6月です。


[目次]

『第一章 ヒトラーは生きている?』
『第二章 UFOを追え』
『第三章 どこにもない町』
『第四章 フリーメーソンの真実』
『第五章 異人へのまなざし』
『第六章 ハーメルンの笛吹き男』
『第七章 怪物ワンダーランド』


『第一章 ヒトラーは生きている?』
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 ヒトラーに関する伝説は無数に存在する。その多くはいわゆるガセネタで、学術的な裏付けに乏しいものばかりだ。だが生存説や南極開発史のように、「ヒトラーの死因について議論が続いていた」「ナチスによる南極開発自体はあった」という史実の部分が少し加われば、伝説は多くの歴史ファンまで巻き込み、増殖力を持ってしまう。
 いったん増殖し始めた噂話は、どれほど学術的に否定しても忘れた頃に息を吹き返す。ヒトラーを巡る都市伝説は今も、そんな自己増殖を繰り返しているのだ。
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新書版p.34

 川で溺れていた子供を命がけで助けた牧師、その子こそ後のヒトラーだった……。
 ヒトラーは自殺しておらず密かに脱出し、今も南米あるいは南極で生きている。
 ヒトラーを巡る都市伝説の数々を紹介します。


『第二章 UFOを追え』
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 戦後の1948年8月4日、シュリーファーは空き巣に入られた。そして設計図と簡単な模型がごっそり盗まれた。シュリーファーは、かつて一緒に働いたチェコの技術者が、どこかの「外国勢力」のためにこの円盤計画を再現していると確信したという。
 シュリーファーやベルッチォは戦後、メディアの取材に対してこうした事実を公然と語っており、ナチスの円盤計画が特に秘密というわけではない。戦後に広まった「ナチスがUFOを作った」との都市伝説はその意味で、計画は頓挫したものの、確かに半分は当たっているのだ。
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新書版p.55

 UFO秘密文書公開請求をめぐる裁判の行方、ドイツの著名なUFO事件、中世のUFO出現記録、そしてナチスが開発していたUFO。ドイツ人のUFO好きを示す噂話の数々を紹介。


『第三章 どこにもない町』
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 架空の町や国を巡る都市伝説で、「ビーレフェルトの陰謀」がいわばジョークの範疇として純粋に楽しめる話なのに対し、「帝国市民」は明らかに反社会的行為をする人が続出しているため、笑い事では済まされない後味の悪さがある。
(中略)
 テロに詳しい学者は「どこにも存在しない国を信じるのは自由だが、彼らはそれを現実社会の中で主張し始めた。もう純粋な都市伝説の域を超えている」と話す。そして、「背景には難民の増加もある。排外主義的な空気が生まれている今のドイツを体現している」と分析する。
(中略)
 かつての広大な版図を懐かしみ、今のドイツは真の国家ではないと主張する人々は、もはや従来の「少しおかしな人たち」のレベルでは済まなくなっている。都市伝説や陰謀論が時に「娯楽」と「危険思想」の境界を行き来することを、ドイツの例が教えてくれる。
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新書版p.73、75、77

 「実は存在しない」というネタが大流行したビーレフェルトの街。今のドイツはニセモノの傀儡国家で、ナチス時代のドイツ帝国こそが今も本当のドイツだと主張する「帝国市民」。都市伝説と陰謀論と極右思想の危うい関係をあぶり出します。


『第四章 フリーメーソンの真実』
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 数多くの陰謀論が語られることについては、会員は特に気にしていないらしい。むしろ人気作家ダン・ブラウンが書くメーソンを題材にした本についても博士は「メーソンをよく書いてある部分が多いですよね」と評価している。
 にこやかに話を続ける博士の声のトーンがやや変わったのが、本題の「イルミナティ」について質問した時だった。
「イルミナティ、来ましたね」
 博士はにやりと笑った。
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新書版p.108

 世界を裏であやつる巨大秘密組織?
 フリーメーソンを取材する著者は、ベルリンのグランドロッジに出向いて、グランドマスターにインタビューする。はたしてフリーメーソンの実態とは、そしてイルミナティとの関係は。「イルミナティ、来ましたね」。


『第五章 異人へのまなざし』
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 ジョークとも都市伝説ともつかぬこの手の噂話が、当時は新聞にまで取り上げられた。統一の高揚感とは裏腹に「社会主義圏の人間は働かない」「東の住民は貧しい」との根強い偏見が西独地域の住民に浸透していたことが、流行の背景にある。
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新書版p.137

 ドイツに広がる排外主義の空気のなかで、よそもの(外国人)を危険視する噂や都市伝説が流布される。オルレアンの噂、エイズ・クラブへようこそ、バザールでの誘拐、そして東ドイツ人に関する悪意の噂。有名な都市伝説がドイツでどのように語られているのかを紹介します。


『第六章 ハーメルンの笛吹き男』
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 共通する数字がいくつかある。まず失踪した子供たちの「130人」という数字だ。そし
て失踪した日付を特定する「ヨハネとパウロの日」という表記だが、これは6月26日を指
す。「1284年」に起きたことも史料からほぼ断定できる。
 事件発生は1284年6月26日。それはおそらく間違いない。
 この日、ハーメルンの町で何が起きたのか。
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新書版p.153

 ただの民間伝承と思われがちな「ハーメルンの笛吹き男」の伝説。しかし、複数の史料による裏付けから「1284年6月26日にハーメルンで子供たち130名が大量失踪した」というのは歴史的事実とみてほぼ間違いない。いったい事件の真相は何だったのか。


『第七章 怪物ワンダーランド』
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 グリム童話の「赤ずきん」が代表例だが、「森とオオカミ」の二つはドイツの民間伝承に欠かせない要素だ。だがオオカミ男は中世の話とは限らない。現代にも時折その姿を垣間見せる。
 その一例が、東西冷戦末期の1988年にドイツ西部モアバッハで起きた「モアバッハの怪物」事件だ。
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新書版p.174

 森に棲む巨大なオオカミ男?
 民間伝承から抜け出して来たような「モアバッハの怪物」事件。謎めいた黒いヒョウの暗躍。中世の迷信や伝説が今もなお目撃され続けているドイツの深い森へと読者を案内します。



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