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2013年を振り返る(2) [小説] [年頭回顧]

 2013年に読んだ小説(SF、ミステリなどのジャンル小説を除く)のうち、印象に残ったものについてまとめてみます。なお、あくまで「2013年に私が読んだ」という意味であって、出版時期とは必ずしも関係ありません。

 昨年は、Kindle Paperwhiteで電子書籍を本格的に読んだ一年でした。重さを気にせず何冊でも持ち歩け、今や紙よりも読みやすく没入感が高い上に、いつでも本を購入できる、という電子書籍の利便性は素晴らしい。

 まず、笙野頼子さんの作品がどんどんKindle化されたのはありがたい。

 復刊された電書版『増殖商店街』を皮切りに、

『小説神変理層夢経 猫未来託宣本 猫ダンジョン荒神』、
『タイムスリップ・コンビナート』、
『水晶内制度』、
『笙野頼子窯変小説集 時ノアゲアシ取り』、
『てんたまおや知らズどっぺるげんげる』、
『だいにっほん、おんたこめいわく史』、
『だいにっほん、ろんちくおげれつ記』、
『だいにっほん、ろりりべしんでけ録』、
『極楽 大祭 皇帝 笙野頼子初期作品集』、
『なにもしてない』、
『幽界森娘異聞』、
『ドン・キホーテの「論争」』、
『居場所もなかった』、

と、立て続けに14冊もKindle版が配信され、再読が追いつかない勢い。

 なお、電子書籍化され、他の電子書店では配信しているのに、なぜかKindleでは配信されてない作品がいくつか(おそらく現時点で6冊)あります。色々と事情があるのかも知れませんが、何とか今年はすべてKindleで読めるようになることを期待したいと思います。

 ちみなに、紙の本では、

『母の発達、永遠に/猫トイレット荒神』、
『幽界森娘異聞』(講談社文芸文庫版)、

という二冊が出版されました。文芸誌には、『ひょうすべの菓子』と『日日漠弾トンコトン子』が掲載されました。どれも傑作。

 Kindleで購入して、はじめて読んで感心した作家も何人か。

 何と言っても津村記久子さんの作品がお気に入り。

『君は永遠にそいつらより若い』、
『ウエストウイング』、
『とにかくうちに帰ります』、
『これからお祈りにいきます』、

の四冊をKindleで読みましたが、いずれも日常の細部を描写する文章が実に魅力的。今年は津村さんの作品を集中的に読んでみようと思います。

 柚木麻子さんも印象的で、『私にふさわしいホテル』のようなパワフルコメディから、『終点のあの子』のような繊細な少女小説まで、幅広く書いてしまう手際に見とれます。他に、『けむたい後輩』と『あまからカルテット』をKindleで読みました。どちらも面白い。

 電子書籍が立て続けに出た作家といえば、万城目学さんもそうです。

『鴨川ホルモー』、
『鹿男あをによし』、
『ホルモー六景』、
『プリンセス・トヨトミ』、
『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』、
『偉大なる、しゅららぼん』、

と六冊をKindleで読みましたが、どれも楽しい関西ファンタジー(マドレーヌ夫人だけはちょっと傾向が違いますが)で、盛り上がります。

 他には、山崎ナオコーラさんの

『人のセックスを笑うな』、
『「『ジューシー』ってなんですか?」』、
『私の中の男の子』、

の三冊をKindleで読みました。地味な人々のぱっとしない物語が素敵です。

 あとは、

『永遠の出口』(森絵都)、
『小さいおうち』(中島京子)、
『冥土めぐり』(鹿島田真希)、
『海の仙人』(絲山秋子)、
『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(米原万里)、
『abさんご』(黒田夏子)、
『天地明察』(冲方丁)、

などがKindleで読んで印象に残った作品です。

 紙の書籍としては、まずは松田青子さんの『スタッキング可能』。日本人離れした力量とテクニックに感心させられます。同じく海外文学ライクな作品としては、『自分を好きになる方法』(本谷有希子)、『三姉妹とその友達』(福永信)が素晴らしい。

 『ぶたぶた洋菓子店』を出した矢崎存美さんは、新たなシリーズ作品『食堂つばめ』、『食堂つばめ2 明日へのピクニック』を立て続けに出版しました。角川PR誌で特集が組まれるなど、イチオシされている気配。

 他には、あまり読まない作家との出会いを用意してくれた『短篇ベストコレクション 現代の小説2012』(日本文藝家協会)、叙情的な『桜の首飾り』(千早茜)、原点回帰的な不条理ユーモア短篇集『玉磨き』(三崎亜記)、暗いくらーいダークファンタジー『増大派に告ぐ』(小田雅久仁)、など。

 残念ながら、海外作品はほとんど読めませんでした。短篇集として、『厭な物語』(クリスティー、ハイスミス、シャーリィ・ジャクスン、他)、『金色の髪のお姫さま チェコの昔話集』(著:カレル・ヤロミール・エルベン、絵:アルトゥシ・シャイネル)が印象に残っています。


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