『言えないコトバ』(益田ミリ) [読書(随筆)]
人気イラストレーターが漫画と文章でつづる「言ってもいいはずなのになぜか気恥ずかしさを覚えて口に出せない言葉」にまつわるエッセイ集。単行本(集英社)出版は2009年08月、私が読んだ文庫版は2012年06月に出版されています。
「言えないコトバってないですか? 人が言うのはいいけど、自分はなんか言えない、みたいな」
「たとえば、お店で「おあいそ」って言うのが照れくさいとか」
「別に、オレ言うけど?」
「うーん、たとえば、「おふくろ」って、なんか、言いにくいとか」
「別に、オレ言うけど?」
「・・・。この質問の意味がどうやっても通じない人が必ずいます」
というわけで、上の質問の意味が通じる方なら、思わず「そうそう」と膝を打つであろう共感系エッセイ集です。「おひや」、「おもてなし」、「遠慮のかたまり」、「ギャラ」、「彼氏」、「おばさん」などの単語、「思ってたより」、「結婚しないんですか?」、「育ちが悪い」、「元気だけが取り柄です」、「親にもらった大事なカラダ」、「今の子供はかわいそう」、「元気をあげる」などのフレーズが収録されています。
著者にとって気恥ずかしくて口に出しにくい言葉、には大雑把に三つあるようです。ひとつ目はその言葉そのものが恥ずかしいケース(例えば自転車のことを「チャリ」と言う)、二番目は相手に変な誤解をされそうで思わずひるんでしまうケース(例えばズボンのことを「パンツ」と言う)、最後に子供の頃から馴染んでいる言葉があるのに今風に言い換えるのに抵抗があるというケース(百貨店のことを「デパート」と言う)。
よく耳にする「遠慮のかたまり」という言葉が言えない、というエッセイを読んで驚きました。そんな言葉、まったく聞いた覚えがないからです。不安な気持ちで読み進めると、最後に「この言葉が大阪弁ということをこの本を出してから知りました」という註釈が付いていてひと安心。きっと単行本を読んだ非関西圏の読者から「そんな言葉、聞いたことありません」という声が殺到したんだろうなあ。
編集者から「益田さん、プレゼンフィーはもう少しお待ちいただけますか」という連絡があり、「どういう意味ですか」と尋ねたら、抗議されたと思ったらしく、大いにうろたえていた。「プレゼンフィー」が「原稿料」のことだと知らなかっただけなのに。というエッセイにもびっくり。「プレゼンフィー」って、知らんよそんな言葉。
と思ったら、やはり最後に註釈が。「この言葉はもう聞かなくなりました」。業界用語って、はかないですよね。
口に出しにくい言葉とは逆に、平気で口にするけど、それでいいのか気になる言葉というのも登場します。
「なんかさ、自分の使ってるコトバが古くなった気がするんだけど」
「たとえば?」
「ノリノリ」
「普通じゃない?」
「「ドキッ」とか」
「あー、ちょっとわかる気がする」
「「マジ?」とかも、今はどうなんだろ」
「若者との接点がないからわかんないよね」
「不正解のときの擬音語は?」
「「ブブーッ」じゃないの?」
「そういうのも、もう古いのかもよ?」
「「ガーン」」
言葉の話とは別に、恋人と一緒に住んでいるのにやたらと「ひとり暮らしの楽しみ方」みたいなテーマで仕事の依頼が来る、インタビューで「ひとりで生きて行くと覚悟を決めた理由は?」と聞かれたり、男といっしょに旅行にいったのに何のためらいもなく「ひとり旅もいいですよね」と言われたりする、という愚痴にはちょっと笑ってしまいました。おそらく世間では、著者のイメージと『すーちゃん』あたりが一緒くたになってるんでしょうね。
なお、文庫化にあたって、「つかえない」、「降りてくる」、「男前」、「元気をあげる」、「忙しい」の項目を追加しているそうなので、単行本を読了した方もチェックしてみて下さい。
「言えないコトバってないですか? 人が言うのはいいけど、自分はなんか言えない、みたいな」
「たとえば、お店で「おあいそ」って言うのが照れくさいとか」
「別に、オレ言うけど?」
「うーん、たとえば、「おふくろ」って、なんか、言いにくいとか」
「別に、オレ言うけど?」
「・・・。この質問の意味がどうやっても通じない人が必ずいます」
というわけで、上の質問の意味が通じる方なら、思わず「そうそう」と膝を打つであろう共感系エッセイ集です。「おひや」、「おもてなし」、「遠慮のかたまり」、「ギャラ」、「彼氏」、「おばさん」などの単語、「思ってたより」、「結婚しないんですか?」、「育ちが悪い」、「元気だけが取り柄です」、「親にもらった大事なカラダ」、「今の子供はかわいそう」、「元気をあげる」などのフレーズが収録されています。
著者にとって気恥ずかしくて口に出しにくい言葉、には大雑把に三つあるようです。ひとつ目はその言葉そのものが恥ずかしいケース(例えば自転車のことを「チャリ」と言う)、二番目は相手に変な誤解をされそうで思わずひるんでしまうケース(例えばズボンのことを「パンツ」と言う)、最後に子供の頃から馴染んでいる言葉があるのに今風に言い換えるのに抵抗があるというケース(百貨店のことを「デパート」と言う)。
よく耳にする「遠慮のかたまり」という言葉が言えない、というエッセイを読んで驚きました。そんな言葉、まったく聞いた覚えがないからです。不安な気持ちで読み進めると、最後に「この言葉が大阪弁ということをこの本を出してから知りました」という註釈が付いていてひと安心。きっと単行本を読んだ非関西圏の読者から「そんな言葉、聞いたことありません」という声が殺到したんだろうなあ。
編集者から「益田さん、プレゼンフィーはもう少しお待ちいただけますか」という連絡があり、「どういう意味ですか」と尋ねたら、抗議されたと思ったらしく、大いにうろたえていた。「プレゼンフィー」が「原稿料」のことだと知らなかっただけなのに。というエッセイにもびっくり。「プレゼンフィー」って、知らんよそんな言葉。
と思ったら、やはり最後に註釈が。「この言葉はもう聞かなくなりました」。業界用語って、はかないですよね。
口に出しにくい言葉とは逆に、平気で口にするけど、それでいいのか気になる言葉というのも登場します。
「なんかさ、自分の使ってるコトバが古くなった気がするんだけど」
「たとえば?」
「ノリノリ」
「普通じゃない?」
「「ドキッ」とか」
「あー、ちょっとわかる気がする」
「「マジ?」とかも、今はどうなんだろ」
「若者との接点がないからわかんないよね」
「不正解のときの擬音語は?」
「「ブブーッ」じゃないの?」
「そういうのも、もう古いのかもよ?」
「「ガーン」」
言葉の話とは別に、恋人と一緒に住んでいるのにやたらと「ひとり暮らしの楽しみ方」みたいなテーマで仕事の依頼が来る、インタビューで「ひとりで生きて行くと覚悟を決めた理由は?」と聞かれたり、男といっしょに旅行にいったのに何のためらいもなく「ひとり旅もいいですよね」と言われたりする、という愚痴にはちょっと笑ってしまいました。おそらく世間では、著者のイメージと『すーちゃん』あたりが一緒くたになってるんでしょうね。
なお、文庫化にあたって、「つかえない」、「降りてくる」、「男前」、「元気をあげる」、「忙しい」の項目を追加しているそうなので、単行本を読了した方もチェックしてみて下さい。
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