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『クロスグリップ』(振付:池田扶美代、パーカッション:加藤訓子) [ダンス]

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私達5人は、住んでいる国も街も環境も違います。その5人が鳥のように一つの空間に集まります。(中略)鳥や魚の群れが完璧に流れを保ち行動する事、見える事、見えない事、ルール、破られるルールなどに興味があります。たった4人で群れの習性は表すのは難しいですが、私達の中にある磁気と加藤訓子さんのバイブレーションが流れを作れると願っています。
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池田扶美代

 2016年1月9日は、夫婦で象の鼻テラスに行って池田扶美代さんの新作公演を鑑賞しました。池田さんを含む4名のダンサーが、加藤訓子さんのパーカッションに乗って踊る1時間弱の舞台です。

 中村恩恵さんや黒田育世さんとの共演が話題になり、一気に日本のコンテンポラリーダンスを牽引する一人となった観のある(個人の感想です)、パーカッショニストの加藤訓子さん。これまでに観た公演についてはこちら。

  2014年12月19日の日記
  『TETRAHEDRON テトラヘドロン』(黒田育世、中村恩恵、加藤訓子、高木由利子)
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2014-12-19

  2014年04月21日の日記
  『PLEIADES プレイアデス』(加藤訓子:パーカッション、中村恩恵:ダンス)
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2014-04-21

 今回の共演相手は池田扶美代さん。池田扶美代さんといえばローザス、ローザスといえばライヒ、ライヒといえば加藤訓子さん、という安直な連想が働いてしまうのですが、この公演もライヒの曲からスタートしたので何やら嬉しい。

 ライヒのリズムで、4人が緻密に、幾何学的に、ポジションを変えてゆきます。動きの要素が様々に組み合わされ、展開し、群れとして動きを創発してゆく。やがて加藤訓子さんのマリンバ演奏に合わせて各人のソロダンスも披露され、盛り上がってゆきます。

 印象的だったのは、自発的には動かない畦地亜耶加さんを、マネキンのように、あるいはアクションフィギュアのようにストップモーション(コマ撮りアニメーション)で踊らせるシーン。無表情でポーズを固定する畦地亜耶加さん、律儀に「作業」する川合ロンさんと木原浩太さん、「見張っている現場監督」の池田扶美代さん、という構図が素敵でした。

 全体的に、ぱっと見ると親密で楽しげな空間なのに、なぜか不穏な印象が強く、というか、池田さんが壁際に立って見ているだけで場が緊張するような気がします。存在感すごいなと。


[キャスト他]

演出・振付: 池田扶美代
音楽・パーカッション演奏: 加藤訓子
出演: 畦地亜耶加、川合ロン、木原浩太、池田扶美代



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2015年を振り返る(8)[サイエンス・テクノロジー] [年頭回顧]

2015年を振り返る(8)[サイエンス・テクノロジー]

 2015年に読んだサイエンスまわりの本では、アストロバイオロジーの教科書『宇宙生命論』に大きな感銘を受けました。生物学、古生物学、物理化学、天文学、地球科学、惑星科学、系外惑星科学、SETI、そして人類学に至るまで、多種多様な研究分野の専門家が集まって、この新しい研究分野に確固たる基礎を築こうとした努力の結晶です。

 他に、太陽の磁場変動、超新星爆発から放出される高エネルギー粒子、銀河系の回転運動など、宇宙規模の環境が地球の気象に与えている影響を研究する「宇宙気候学」の入門書『地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか』、急激な勢いで進んでいる生物種の大絶滅について様々な側面から冷徹に解説する『6度目の大絶滅』にも感動しました。

『宇宙生命論』(海部宣男、星元紀、丸山茂徳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-08-26

『地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか 太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来』(宮原ひろ子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-03-17

『6度目の大絶滅』(エリザベス・コルバート、鍛原多惠子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-08-19


 サイエンスとは何かを考えるための本としては、魂の重量測定、逆さ眼鏡の実験、スキナー箱、蜘蛛へのLSD投与、ミルグラムの服従実験、1ドル札オークション実験、スタンフォード監獄実験、MRI撮影下の性交実験など、科学のフロンティアに果敢に挑んだことで面倒なことになった研究者たちの列伝『狂気の科学』、科学史に名高い科学者たちが仕出かした「間違い」に焦点を当て、一流の科学者は間違いからも偉大な成果を生み出すということを明らかにした『偉大なる失敗』、お馬鹿な疑問に対して大真面目に「科学的」に考察した結果、とんでもないところに跳んでゆく様を軽妙な文章とイラストで描いて笑わせてくれる『ホワット・イフ?』の三冊が素晴らしい。

『狂気の科学 真面目な科学者たちの奇態な実験』(レト・U・シュナイダー、石浦章一・宮下悦子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-06-30

『偉大なる失敗 天才科学者たちはどう間違えたか』(マリオ・リヴィオ、千葉敏生:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-03-10

『ホワット・イフ? 野球のボールを光速で投げたらどうなるか』(ランドール・マンロー、吉田三知世:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-01


 生物学まわりでは、タイトル通りの内容を実に味わい深い文章で書き大いに楽しませてくれる『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』と『ハトはなぜ首を振って歩くのか』の二冊にぐっときました。それと昆虫の脳に「電気的に接続した機械を操作させる」という不気味な実験を扱った『サイボーグ昆虫、フェロモンを追う』も衝撃的でした。

『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』(川上和人)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-03-27

『ハトはなぜ首を振って歩くのか』(藤田祐樹)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-22

『サイボーグ昆虫、フェロモンを追う』(神崎亮平)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-18


 天文・物理まわりでは、ナノテクノロジーから考古学まで応用分野が大きく広がる高輝度放射光を紹介した『放射光が解き明かす驚異のナノ世界』、あまりにも強烈なエネルギーを放射する天文現象「ガンマ線バースト」の正体が判明するまでの苦難を分かりやすく説明してくれる『宇宙最大の爆発天体 ガンマ線バースト』、深宇宙に向かって飛び続けている探査機パイオニア10号と11号に起きた変則事象の謎に挑んだ人々を描く『パイオニア・アノマリー』の三冊が印象的でした。

『放射光が解き明かす驚異のナノ世界 魔法の光が拓く物質世界の可能性』(日本放射光学会:編)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-01

『宇宙最大の爆発天体 ガンマ線バースト』 (村上敏夫)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-02

『パイオニア・アノマリー 惑星探査機の謎に迫る』(コンスタンティン・カカエス、翻訳:中村融)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-12


 化学、物性科学、材料工学などの分野では、カーボンナノチューブなどナノテク素材の発見からフィーバーに至る歴史を現場から語ってくれる『ナノカーボンの科学』、光触媒から光ピンセットまで光を使って物質を操る21世紀のテクノロジーを解説する『光化学の驚異』、そして物体の表面や界面で起きている現象を研究する表面科学とその応用を紹介する『すごいぞ! 身のまわりの表面科学』の三冊が良かった。

『ナノカーボンの科学 セレンディピティーから始まった大発見の物語』(篠原久典)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-04

『光化学の驚異 日本がリードする「次世代技術」の最前線』(光化学協会:編)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-30

『すごいぞ! 身のまわりの表面科学 ツルツル、ピカピカ、ザラザラの不思議』(日本表面科学会)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-12


 テクノロジーまわりでは、人工知能の発達によって起きるかも知れない危機について警鐘を鳴らす『人工知能 人類最悪にして最後の発明』、技術をイノベーションに繋げることが出来ない日本のロボット産業の課題をえぐる『ロボット革命』、「人間行動にも熱力学のような法則がある」「幸福は加速度センサで測れる」「運の良さはグラフ化できる」などウェアブルセンサで計測した人間行動データから導き出された驚くべき結論をまとめた『データの見えざる手』が、刺激的でした。内容そのものにはすべて納得できるわけではありませんが、いずれもその情熱に打たれます。

『人工知能 人類最悪にして最後の発明』(ジェイムズ・バラット、水谷淳:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-06-26

『ロボット革命 なぜグーグルとアマゾンが投資するのか』(本田幸夫)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-24

『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』(矢野和男)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-20


 テクノロジーと、社会・文化・政治との関わり合いを考える本としては、情報保存と著作権との狭間で模索が続く『デジタル・アーカイブの最前線』、汚染や安全などのいわゆる「基準値」がどのようにして決められているのかを教えてくれる『基準値のからくり』、そして政治や経済に翻弄されつつもしたたかに活動してきたNASAの歴史を詳しく教えてくれる『NASA 宇宙開発の60年』がお勧めです。

『デジタル・アーカイブの最前線 知識・文化・感性を消滅させないために』(時実象一)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04

『基準値のからくり 安全はこうして数字になった』(村上道夫、永井孝志、小野恭子、岸本充生)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-25

『NASA 宇宙開発の60年』(佐藤靖)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-07



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2015年を振り返る(7)[教養・ノンフィクション] [年頭回顧]

2015年を振り返る(7)[教養・ノンフィクション]

 2015年に読んだ本のなかでも、照明が普及するより前の西ヨーロッパにおける「夜」の生活と文化を活き活きと描き出した『失われた夜の歴史』が、とても印象に残っています。まるで異世界のような「もうひとつの王国」、夜の世界。想像力が強く刺激されます。

 想像力という点では、オーラ写真、心霊写真、妖精写真、写真ダウジング、念写といったいわゆる「パラノーマル写真」の歴史を丹念に追うことで、写真が本来持っている魔術性に迫る『写真のボーダーランド』も刺激的でした。

『失われた夜の歴史』(ロジャー・イーカーチ、樋口幸子・片柳佐智子・三宅真砂子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-03-20

『写真のボーダーランド X線・心霊写真・念写』(浜野志保)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-06-01


 他に面白かったのは、途方もない危険に挑戦するエクストリームスポーツと極限の精神集中が生み出す「フロー」「ゾーン」などと呼ばれる変性意識状態について興奮気味に語る『超人の秘密』、「食の言語学」という斬新な観点から人類史を俯瞰した『ペルシア王は「天ぷら」がお好き?』の二冊でした。

『超人の秘密 エクストリームスポーツとフロー体験』(スティーヴン・ コトラー、熊谷玲美:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-13

『ペルシア王は「天ぷら」がお好き? 味と語源でたどる食の人類史』(ダン・ジュラフスキー、小野木明恵:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-16


 戦争や兵器に関する本としては、戦前から終戦直後の「核」にまつわる言説をたどり、日本人の心に今なお深く根を下ろす「原子力ユートピア」観を浮き彫りにする『核の誘惑』、戦局を一発でひっくり返す「超兵器」を待望する他ない戦争というものの哀しさと馬鹿馬鹿しさを描く『ぼくらの哀しき超兵器』の二冊が素敵でした。

『核の誘惑 戦前日本の科学文化と「原子力ユートピア」の出現』(中尾麻伊香)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16

『ぼくらの哀しき超兵器 軍事と科学の夢のあと』(植木不等式)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15


 医学まわりでは、日本における法医学の大問題を分かりやすく紹介する『死体は今日も泣いている』(岩瀬博太郎)、そして日本の医療がどのような課題に直面しているのかを解説する『医療ビッグデータがもたらす社会変革』や『医療の選択』が勉強になりました。日本の医療は世界でもトップクラスなんだろうなと思っている方には、一読をお勧めします。

『死体は今日も泣いている 日本の「死因」はウソだらけ』(岩瀬博太郎)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-03

『医療ビッグデータがもたらす社会変革』(21世紀医療フォーラム:編集、中山健夫:監修)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-15

『医療の選択』(桐野高明)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-14


 社会問題を扱った本としては、貧困問題のうち特にシングルマザーが置かれている状況に焦点をあてた『シングルマザーの貧困』、駅のデザインという観点から日本の駅がどれほど使いにくく利用者不在であるかを告発する『駅をデザインする』の二冊が印象に残っています。

『シングルマザーの貧困』(水無田気流)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-01-28

『駅をデザインする』(赤瀬達三)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-28


 人間とは何かという永遠のテーマに、「動物や機械が持つ“知能”と、人間の知能はどう違うのか」という観点から迫った、『アレックスと私』『機械より人間らしくなれるか?』も素晴らしい。

『アレックスと私』(アイリーン・M・ペパーバーグ、佐柳信男:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-22

『機械より人間らしくなれるか? AIとの対話が、人間でいることの意味を教えてくれる』(ブライアン・クリスチャン、吉田晋治:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-01-30


 古典まわりでは、光文社古典新訳文庫のカタログ本と、古典のなかで猫がどのように描かれてきたかその変遷を探る『猫の古典文学誌』が抜群に面白かった。

『猫の古典文学誌 鈴の音が聞こえる』(田中貴子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-06-16

『光文社古典新訳文庫 駒井稔編集長が熱く推奨する「今こそ読まれるべき古典」79冊』(光文社古典新訳文庫編集部)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-08


 芸術まわりでは、いわゆる正統な美術界から外れたところで生み出されるアウトサイダー・アートについて紹介する『アウトサイダー・アート入門』、英国ロイヤルバレエ団による美麗写真満載の『バレエの世界へようこそ』、何となくの感覚で良し悪しが語られがちなデザインを理詰めで考えてゆく『デザインを科学する』、の三冊が収穫でした。

『アウトサイダー・アート入門』(椹木野衣)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-01

『バレエの世界へようこそ あこがれのバレエ・ガイド』(リサ・マイルズ、英国ロイヤル・バレエ:監修、斎藤静代:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-10

『デザインを科学する 人はなぜその色や形に惹かれるのか?』(ポーポー・ポロダクション)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29



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2015年を振り返る(6)[随筆・紀行・ルポ] [年頭回顧]

2015年を振り返る(6)[随筆・紀行・ルポ]

 2015年は、『ドゥルーズ 没後20年 新たなる転回』(河出書房新社編集部:編)に「文学者が読むドゥルーズ」の一篇として笙野頼子さんの小論が収録されました。思わずたじろいでしまう迫力。

『すべての隙間にあり、隙間そのものであり、境界をも晦ます、千の内在』(笙野頼子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-18


 事件や社会問題への取り組みを取材したルポとしては、圧倒的な筆致で日本社会の暗部に迫る『黒い迷宮』、困っている人や猫を助けるために立ち上げられた新しいビジネスを紹介する『弁護士ドットコム』と『猫を助ける仕事』が印象に残りました。

『黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実』(リチャード・ロイド・パリー、濱野大道:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-02

『弁護士ドットコム 困っている人を救う僕たちの挑戦』(元榮太一郎、上阪徹)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-10

『猫を助ける仕事 保護猫カフェ、猫付きシェアハウス』(山本葉子、松村徹)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-21


 社会学まわりでは、社会分析からこぼれ落ちてしまいがちな小さなものに目を向ける『断片的なものの社会学』、思考停止を強いるクリシェの弊害を真面目に考える『紋切型社会』が、どちらも非常に面白かった。

『断片的なものの社会学』(岸政彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-30

『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』(武田砂鉄)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-01


 台湾まわりでは、震えるほどの名著『台湾海峡一九四九』の著者による心を打つエッセイ集『父を見送る』、そして「台湾の駅弁カタログ」という意表を突いた旅行ガイド(?)『台湾行ったらこれ食べよう! 駅弁・鉄道旅編』の二冊が素晴らしい。

『父を見送る』(龍應台、天野健太郎:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-17

『台湾行ったらこれ食べよう! 駅弁・鉄道旅編』(台湾大好き編集部:編)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-04


 お気に入り作家のエッセイ集としては、津村記久子さんの脱力ゆるやかエッセイ集『二度寝とは、遠くにありて想うもの』、松田青子さんの書評集というか読書ガイド『読めよ、さらば憂いなし』、町田康さんの飼い犬スピンクが主人について大いに語る人気シリーズ最新作『スピンクの壺』および単行本未収録作品から選んだ傑作集『常識の路上』、この四冊がとても好きです。

『二度寝とは、遠くにありて想うもの』(津村記久子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-10

『読めよ、さらば憂いなし』(松田青子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-29

『スピンクの壺』(町田康)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-28

『常識の路上』(町田康)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-08-28


 怪談まわりでは、怪談実話から私小説へと見事に展開してゆく『セメント怪談稼業』(松村進吉)がとにかく素晴らしい。怪談実話をうさんくさく思っている方や、そもそも怪談が嫌いな方にも、お勧めです。

『セメント怪談稼業』(松村進吉)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09


 他に、狸に化かされた、狐火が飛んだ、山小屋の外を歩き回る足音がしたといった、素朴というか因縁も尾ひれもついてない「原石」の語りの魅力が詰まった『山怪 山人が語る不思議な話』(田中康弘)が素敵。山と渓谷社からは『山の不可思議事件簿』(上村信太郎)も出版されましたが、こちらは何十年も前に大陸書房から出版されたものの増補改訂版。あの大陸書房オカルト本のテイストが横溢していますので、懐かしいと感じる方にお勧め。

『山怪 山人が語る不思議な話』(田中康弘)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-06-15

『山の不可思議事件簿』(上村信太郎)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-06



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2015年を振り返る(5)[詩歌] [年頭回顧]

2015年を振り返る(5)[詩歌]

 2015年は、とにかく“現代詩なるものが誕生してから100周年だ”と力強く宣言する『現代詩100周年』(TOLTA)が出た年、ということに。100名近い詩人たちが集結した記念碑的アンソロジーです。

『現代詩100周年』(河野聡子、川口晴美、西元直子、斉藤倫、四元康祐、他)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-25


 この『現代詩100周年』で初めて出会った詩人も多く、なかでも西元直子さんと小笠原鳥類さんの作品は衝撃的でした。すぐに詩集を手に入れてもう大興奮。

『巡礼』(西元直子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-03

『けもの王』(西元直子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-02

『夢と幻想と出鱈目の生物学評論集』(小笠原鳥類)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17


 雑誌では、現代詩手帖のSF詩特集が、好み直撃でした。

『現代詩手帖2015年5月号 【特集】SF×詩----未知なる詩の世界へようこそ!』(河野聡子、最果タヒ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-29


 ちょっとSFっぽい言葉が出てくるだけで「SF詩だっ」「SF詩だっ」と喜んでしまう悪い癖があるのですが、2015年に読んだ詩集のうち「SF詩だっ」と喜んでしまったのが次の三冊です。

『美しい動物園』(倉本修)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-08-17

『memories』(270725 PROJECT 高塚謙太郎)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-29

『背丈ほどあるワレモコウ』(コマガネトモオ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-03-11


 ちなみに、同じ癖で「SF短歌だっ」と喜んでしまった歌集は次の三冊です。

『ビットとデシベル』(フラワーしげる(西崎憲))
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-09

『モーヴ色のあめふる』(佐藤弓生)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-08

『念力ろまん』(笹公人)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-06-04


 さて、今年とても印象に残っているのは、長編ミステリ詩『双花町についてあなたが知り得るいくつかのことがら』が6巻で完結したこと。雰囲気もデザインも素晴らしい。2015年に読んだ川口晴美さんの詩集としては『Tiger is here.』が強烈で、読後すぐにブルーレイディスク11枚を購入してしまって大散財です。(詳しくは『半島の地図』の紹介に書きました)

『ビタースイートホーム』(川口晴美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-05

『半島の地図』(川口晴美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-14

『Tiger is here.』(川口晴美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-02

『双花町についてあなたが知り得るいくつかのことがら vol.6』(川口晴美:詩、芦田みゆき:写真、小宮山裕:デザイン)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-03


 まずタイトルに驚かされたのは、『『モブキャラ生徒Aが彩る高校青春グラフィティ』も3期に突入な件。』(そらしといろ)。こ、これはラノベならぬラポエか、などと訝りながら読みましたが、素晴らしい青春詩集でした。慌てて前作『フラット』も読んでみましたが、こちらも良かった。

『フラット』(そらしといろ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-22

『『モブキャラ生徒Aが彩る高校青春グラフィティ』も3期に突入な件。』(そらしといろ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-09


 静かな不安と違和感に満ちた、斎藤恵子さんの詩集も好みです。とてもいい。

『夜を叩く人』(斎藤恵子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19

『樹間』(斎藤恵子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-01


 そして、圧倒的な言葉の力に押し流されるような傑作がこの三冊。個人的に、2015年に読んだ詩集トップスリーです。

『舵を弾く』(三角みづ紀)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-09

『用意された食卓』(カニエ・ナハ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-18

『花と死王』(中本道代)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-23


 台湾、そして福生。個人的に愛着がある場所を扱った詩集には、特別な思い入れがあります。というか福生に住んでいるのに吉増剛造さんの作品を今まで読んでなかったという恥ずかしさ。

『艸の、息』(松岡政則)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-21

『ことばの古里、ふるさと福生』(吉増剛造)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-20

『静かな場所』(吉増剛造)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-19


 最後になりましたが、(SF短歌以外の)歌集でいいなあと思ったのは次の二冊でした。

『オーロラのお針子』(藤本玲未)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-03-12

『タンジブル』(鯨井可菜子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13



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