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2015年を振り返る(7)[教養・ノンフィクション] [年頭回顧]

2015年を振り返る(7)[教養・ノンフィクション]

 2015年に読んだ本のなかでも、照明が普及するより前の西ヨーロッパにおける「夜」の生活と文化を活き活きと描き出した『失われた夜の歴史』が、とても印象に残っています。まるで異世界のような「もうひとつの王国」、夜の世界。想像力が強く刺激されます。

 想像力という点では、オーラ写真、心霊写真、妖精写真、写真ダウジング、念写といったいわゆる「パラノーマル写真」の歴史を丹念に追うことで、写真が本来持っている魔術性に迫る『写真のボーダーランド』も刺激的でした。

『失われた夜の歴史』(ロジャー・イーカーチ、樋口幸子・片柳佐智子・三宅真砂子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-03-20

『写真のボーダーランド X線・心霊写真・念写』(浜野志保)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-06-01


 他に面白かったのは、途方もない危険に挑戦するエクストリームスポーツと極限の精神集中が生み出す「フロー」「ゾーン」などと呼ばれる変性意識状態について興奮気味に語る『超人の秘密』、「食の言語学」という斬新な観点から人類史を俯瞰した『ペルシア王は「天ぷら」がお好き?』の二冊でした。

『超人の秘密 エクストリームスポーツとフロー体験』(スティーヴン・ コトラー、熊谷玲美:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-13

『ペルシア王は「天ぷら」がお好き? 味と語源でたどる食の人類史』(ダン・ジュラフスキー、小野木明恵:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-16


 戦争や兵器に関する本としては、戦前から終戦直後の「核」にまつわる言説をたどり、日本人の心に今なお深く根を下ろす「原子力ユートピア」観を浮き彫りにする『核の誘惑』、戦局を一発でひっくり返す「超兵器」を待望する他ない戦争というものの哀しさと馬鹿馬鹿しさを描く『ぼくらの哀しき超兵器』の二冊が素敵でした。

『核の誘惑 戦前日本の科学文化と「原子力ユートピア」の出現』(中尾麻伊香)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16

『ぼくらの哀しき超兵器 軍事と科学の夢のあと』(植木不等式)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15


 医学まわりでは、日本における法医学の大問題を分かりやすく紹介する『死体は今日も泣いている』(岩瀬博太郎)、そして日本の医療がどのような課題に直面しているのかを解説する『医療ビッグデータがもたらす社会変革』や『医療の選択』が勉強になりました。日本の医療は世界でもトップクラスなんだろうなと思っている方には、一読をお勧めします。

『死体は今日も泣いている 日本の「死因」はウソだらけ』(岩瀬博太郎)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-03

『医療ビッグデータがもたらす社会変革』(21世紀医療フォーラム:編集、中山健夫:監修)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-15

『医療の選択』(桐野高明)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-14


 社会問題を扱った本としては、貧困問題のうち特にシングルマザーが置かれている状況に焦点をあてた『シングルマザーの貧困』、駅のデザインという観点から日本の駅がどれほど使いにくく利用者不在であるかを告発する『駅をデザインする』の二冊が印象に残っています。

『シングルマザーの貧困』(水無田気流)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-01-28

『駅をデザインする』(赤瀬達三)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-28


 人間とは何かという永遠のテーマに、「動物や機械が持つ“知能”と、人間の知能はどう違うのか」という観点から迫った、『アレックスと私』『機械より人間らしくなれるか?』も素晴らしい。

『アレックスと私』(アイリーン・M・ペパーバーグ、佐柳信男:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-22

『機械より人間らしくなれるか? AIとの対話が、人間でいることの意味を教えてくれる』(ブライアン・クリスチャン、吉田晋治:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-01-30


 古典まわりでは、光文社古典新訳文庫のカタログ本と、古典のなかで猫がどのように描かれてきたかその変遷を探る『猫の古典文学誌』が抜群に面白かった。

『猫の古典文学誌 鈴の音が聞こえる』(田中貴子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-06-16

『光文社古典新訳文庫 駒井稔編集長が熱く推奨する「今こそ読まれるべき古典」79冊』(光文社古典新訳文庫編集部)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-08


 芸術まわりでは、いわゆる正統な美術界から外れたところで生み出されるアウトサイダー・アートについて紹介する『アウトサイダー・アート入門』、英国ロイヤルバレエ団による美麗写真満載の『バレエの世界へようこそ』、何となくの感覚で良し悪しが語られがちなデザインを理詰めで考えてゆく『デザインを科学する』、の三冊が収穫でした。

『アウトサイダー・アート入門』(椹木野衣)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-01

『バレエの世界へようこそ あこがれのバレエ・ガイド』(リサ・マイルズ、英国ロイヤル・バレエ:監修、斎藤静代:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-10

『デザインを科学する 人はなぜその色や形に惹かれるのか?』(ポーポー・ポロダクション)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29



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