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2015年を振り返る(8)[サイエンス・テクノロジー] [年頭回顧]

2015年を振り返る(8)[サイエンス・テクノロジー]

 2015年に読んだサイエンスまわりの本では、アストロバイオロジーの教科書『宇宙生命論』に大きな感銘を受けました。生物学、古生物学、物理化学、天文学、地球科学、惑星科学、系外惑星科学、SETI、そして人類学に至るまで、多種多様な研究分野の専門家が集まって、この新しい研究分野に確固たる基礎を築こうとした努力の結晶です。

 他に、太陽の磁場変動、超新星爆発から放出される高エネルギー粒子、銀河系の回転運動など、宇宙規模の環境が地球の気象に与えている影響を研究する「宇宙気候学」の入門書『地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか』、急激な勢いで進んでいる生物種の大絶滅について様々な側面から冷徹に解説する『6度目の大絶滅』にも感動しました。

『宇宙生命論』(海部宣男、星元紀、丸山茂徳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-08-26

『地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか 太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来』(宮原ひろ子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-03-17

『6度目の大絶滅』(エリザベス・コルバート、鍛原多惠子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-08-19


 サイエンスとは何かを考えるための本としては、魂の重量測定、逆さ眼鏡の実験、スキナー箱、蜘蛛へのLSD投与、ミルグラムの服従実験、1ドル札オークション実験、スタンフォード監獄実験、MRI撮影下の性交実験など、科学のフロンティアに果敢に挑んだことで面倒なことになった研究者たちの列伝『狂気の科学』、科学史に名高い科学者たちが仕出かした「間違い」に焦点を当て、一流の科学者は間違いからも偉大な成果を生み出すということを明らかにした『偉大なる失敗』、お馬鹿な疑問に対して大真面目に「科学的」に考察した結果、とんでもないところに跳んでゆく様を軽妙な文章とイラストで描いて笑わせてくれる『ホワット・イフ?』の三冊が素晴らしい。

『狂気の科学 真面目な科学者たちの奇態な実験』(レト・U・シュナイダー、石浦章一・宮下悦子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-06-30

『偉大なる失敗 天才科学者たちはどう間違えたか』(マリオ・リヴィオ、千葉敏生:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-03-10

『ホワット・イフ? 野球のボールを光速で投げたらどうなるか』(ランドール・マンロー、吉田三知世:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-01


 生物学まわりでは、タイトル通りの内容を実に味わい深い文章で書き大いに楽しませてくれる『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』と『ハトはなぜ首を振って歩くのか』の二冊にぐっときました。それと昆虫の脳に「電気的に接続した機械を操作させる」という不気味な実験を扱った『サイボーグ昆虫、フェロモンを追う』も衝撃的でした。

『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』(川上和人)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-03-27

『ハトはなぜ首を振って歩くのか』(藤田祐樹)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-22

『サイボーグ昆虫、フェロモンを追う』(神崎亮平)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-18


 天文・物理まわりでは、ナノテクノロジーから考古学まで応用分野が大きく広がる高輝度放射光を紹介した『放射光が解き明かす驚異のナノ世界』、あまりにも強烈なエネルギーを放射する天文現象「ガンマ線バースト」の正体が判明するまでの苦難を分かりやすく説明してくれる『宇宙最大の爆発天体 ガンマ線バースト』、深宇宙に向かって飛び続けている探査機パイオニア10号と11号に起きた変則事象の謎に挑んだ人々を描く『パイオニア・アノマリー』の三冊が印象的でした。

『放射光が解き明かす驚異のナノ世界 魔法の光が拓く物質世界の可能性』(日本放射光学会:編)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-01

『宇宙最大の爆発天体 ガンマ線バースト』 (村上敏夫)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-02

『パイオニア・アノマリー 惑星探査機の謎に迫る』(コンスタンティン・カカエス、翻訳:中村融)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-12


 化学、物性科学、材料工学などの分野では、カーボンナノチューブなどナノテク素材の発見からフィーバーに至る歴史を現場から語ってくれる『ナノカーボンの科学』、光触媒から光ピンセットまで光を使って物質を操る21世紀のテクノロジーを解説する『光化学の驚異』、そして物体の表面や界面で起きている現象を研究する表面科学とその応用を紹介する『すごいぞ! 身のまわりの表面科学』の三冊が良かった。

『ナノカーボンの科学 セレンディピティーから始まった大発見の物語』(篠原久典)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-04

『光化学の驚異 日本がリードする「次世代技術」の最前線』(光化学協会:編)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-30

『すごいぞ! 身のまわりの表面科学 ツルツル、ピカピカ、ザラザラの不思議』(日本表面科学会)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-12


 テクノロジーまわりでは、人工知能の発達によって起きるかも知れない危機について警鐘を鳴らす『人工知能 人類最悪にして最後の発明』、技術をイノベーションに繋げることが出来ない日本のロボット産業の課題をえぐる『ロボット革命』、「人間行動にも熱力学のような法則がある」「幸福は加速度センサで測れる」「運の良さはグラフ化できる」などウェアブルセンサで計測した人間行動データから導き出された驚くべき結論をまとめた『データの見えざる手』が、刺激的でした。内容そのものにはすべて納得できるわけではありませんが、いずれもその情熱に打たれます。

『人工知能 人類最悪にして最後の発明』(ジェイムズ・バラット、水谷淳:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-06-26

『ロボット革命 なぜグーグルとアマゾンが投資するのか』(本田幸夫)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-24

『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』(矢野和男)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-20


 テクノロジーと、社会・文化・政治との関わり合いを考える本としては、情報保存と著作権との狭間で模索が続く『デジタル・アーカイブの最前線』、汚染や安全などのいわゆる「基準値」がどのようにして決められているのかを教えてくれる『基準値のからくり』、そして政治や経済に翻弄されつつもしたたかに活動してきたNASAの歴史を詳しく教えてくれる『NASA 宇宙開発の60年』がお勧めです。

『デジタル・アーカイブの最前線 知識・文化・感性を消滅させないために』(時実象一)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-04

『基準値のからくり 安全はこうして数字になった』(村上道夫、永井孝志、小野恭子、岸本充生)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-25

『NASA 宇宙開発の60年』(佐藤靖)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-07



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