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2015年を振り返る(6)[随筆・紀行・ルポ] [年頭回顧]

2015年を振り返る(6)[随筆・紀行・ルポ]

 2015年は、『ドゥルーズ 没後20年 新たなる転回』(河出書房新社編集部:編)に「文学者が読むドゥルーズ」の一篇として笙野頼子さんの小論が収録されました。思わずたじろいでしまう迫力。

『すべての隙間にあり、隙間そのものであり、境界をも晦ます、千の内在』(笙野頼子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-18


 事件や社会問題への取り組みを取材したルポとしては、圧倒的な筆致で日本社会の暗部に迫る『黒い迷宮』、困っている人や猫を助けるために立ち上げられた新しいビジネスを紹介する『弁護士ドットコム』と『猫を助ける仕事』が印象に残りました。

『黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実』(リチャード・ロイド・パリー、濱野大道:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-02

『弁護士ドットコム 困っている人を救う僕たちの挑戦』(元榮太一郎、上阪徹)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-02-10

『猫を助ける仕事 保護猫カフェ、猫付きシェアハウス』(山本葉子、松村徹)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-21


 社会学まわりでは、社会分析からこぼれ落ちてしまいがちな小さなものに目を向ける『断片的なものの社会学』、思考停止を強いるクリシェの弊害を真面目に考える『紋切型社会』が、どちらも非常に面白かった。

『断片的なものの社会学』(岸政彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-30

『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』(武田砂鉄)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-01


 台湾まわりでは、震えるほどの名著『台湾海峡一九四九』の著者による心を打つエッセイ集『父を見送る』、そして「台湾の駅弁カタログ」という意表を突いた旅行ガイド(?)『台湾行ったらこれ食べよう! 駅弁・鉄道旅編』の二冊が素晴らしい。

『父を見送る』(龍應台、天野健太郎:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-17

『台湾行ったらこれ食べよう! 駅弁・鉄道旅編』(台湾大好き編集部:編)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-04


 お気に入り作家のエッセイ集としては、津村記久子さんの脱力ゆるやかエッセイ集『二度寝とは、遠くにありて想うもの』、松田青子さんの書評集というか読書ガイド『読めよ、さらば憂いなし』、町田康さんの飼い犬スピンクが主人について大いに語る人気シリーズ最新作『スピンクの壺』および単行本未収録作品から選んだ傑作集『常識の路上』、この四冊がとても好きです。

『二度寝とは、遠くにありて想うもの』(津村記久子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-10

『読めよ、さらば憂いなし』(松田青子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-29

『スピンクの壺』(町田康)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-28

『常識の路上』(町田康)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-08-28


 怪談まわりでは、怪談実話から私小説へと見事に展開してゆく『セメント怪談稼業』(松村進吉)がとにかく素晴らしい。怪談実話をうさんくさく思っている方や、そもそも怪談が嫌いな方にも、お勧めです。

『セメント怪談稼業』(松村進吉)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09


 他に、狸に化かされた、狐火が飛んだ、山小屋の外を歩き回る足音がしたといった、素朴というか因縁も尾ひれもついてない「原石」の語りの魅力が詰まった『山怪 山人が語る不思議な話』(田中康弘)が素敵。山と渓谷社からは『山の不可思議事件簿』(上村信太郎)も出版されましたが、こちらは何十年も前に大陸書房から出版されたものの増補改訂版。あの大陸書房オカルト本のテイストが横溢していますので、懐かしいと感じる方にお勧め。

『山怪 山人が語る不思議な話』(田中康弘)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-06-15

『山の不可思議事件簿』(上村信太郎)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-06



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