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『MONOLITH』(山村佑理、渡邉尚、カンパニー「頭と口」) [ダンス]


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人には、その人なりに『意識しやすい空間』というものがあります。流れやすいエネルギーの方向に身体が発達する。日本人が意識しやすい空間というのは、『床』やと思うんですよ。日本人は昔から床と仲良しです。柔道なんかもそう。だからジャグリングをやるにしても、もっと床と仲良しになれる。人間は常に環境に囲まれて、影響を受けてる。だからその環境の中で、自分のやるべきことがあるんですよね
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渡邉尚(雑誌「PONTE」2015年秋号掲載インタビューより)


 2015年12月27日は、夫婦で中野テレプシコールに行って、山村佑理と渡邉尚によるジャグリングカンパニー「頭と口」の旗揚げ公演を鑑賞しました。二人がソロで出演するそれぞれ30分の作品2本立てです。公演時間は計1時間。


『ネタオーレンに捧ぐ』(山村佑理)
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 もしも僕と彼の探求が成果を収めたとしたら、これまで足下を疎かにしてきた世界中のジャグラーたちが一斉に、足下を掬われることとなるだろう。(中略)僕は彼と出会ったことで、まさに足下をすくわれた。転んだその目に映った空間に取り残された可能性を、今必死になって拾い集めている。
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山村佑理(雑誌「PONTE」2015年秋号掲載インタビューより)

 無造作に床に置かれたたくさんのお手玉(ビーンバッグ)。蒸し饅頭にも見える美味しそうなそれを、ひょいと口にくわえて、四つんばいで歩く。積み上げてみる。崩してみる。ときどき三つ組でジャグリングなどやってみる。あっさり床に落とす。猫のようにそれに飛びつく。

 端正なジャグリングを挟みながら、体勢を低くして獣のようにするすると動き回るダンスです。同じ動作が繰り返され、次第にスピードアップしてゆき、追いつめられた切迫感がぎりぎりと盛り上がってゆきます。

 身体に白いお手玉が乗っているだけで、ぐりぐり高まる求心力。

 決まった型のないコンテンポラリーダンスというのは、身体の動きをどう鑑賞したらいいのか戸惑うことが多いのですが、「そのお手玉、落とさずに動けるか」「落としたお手玉に向かってどう動くか」という単純明快なスリルが焦点となって、動きにすごく集中できます。お手玉とのコンタクトが身体とダンスを際立たせているようで、楽しい。


『逆さの樹』(渡邉尚)
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僕は、自分の中の動物学を究めたいと思っているんです。昔から、人間としてはやってはいけないことをやる、動物らしい身体で生きる、ということに憧れがありました。
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渡邉尚(雑誌「PONTE」2015年秋号掲載インタビューより)

 いったい自分が今何を見ているのか混乱するような衝撃的な作品。

 驚異の柔軟性を活かして、正体は不明ながら少なくともヒトではない、哺乳類でもない、触手がある、そんな謎の生き物が、転がりながらうねうねと白い卵(ビーンバッグ)を床に産みつけてゆきます。

 爬虫類、鳥類、はては節足動物まで、人外の生き物が乱舞します。うずくまった姿勢で背中から変な触手がぐにゃぐにゃ生えてきたり、頭から触手を生やした変な生き物がふらふら歩いたり。

 床によつんばいになっただけで肩甲骨がぐにぐに盛り上がって恐竜。口でくわえた卵を頭ごしにひょいひょい投げ上げて背中でキャッチして並べたり。卵を「履いて」歩いたり。

 身体の奇怪な想像外の動きが次々と繰り出され、白い卵が床と身体を自由気ままに移動し、散り、集まって、パターンを構成するなかを、得体の知れない謎の肉が這い回る跳ぶ歩く。

 側転を繰り返しながら床に散らばった36個の卵を配置していったり。それが時計のパターンを構成したり。36億年の進化系統樹、そのまんまやるのかしかし。

 次に何を仕出かすのか予想がつかず、とにかくひたすらびっくりしながら見ていました。こんなダンスがあるのか、という驚きが、後からじわじわ興奮に変わってゆき、夜眠れなくなる。びっくりするくらい独創的で素晴らしい公演でした。


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『SFマガジン2016年2月号 特集「スター・ウォーズ」』(ジェイムズ・L・キャンビアス、早瀬耕) [読書(SF)]

 隔月刊SFマガジン2016年2月号は、新作公開にあわせて映画「スター・ウォーズ」の特集でした。またジェイムズ・L・キャンビアスと早瀬耕の読み切り短篇が掲載されました。


『契約義務』(ジェイムズ・L・キャンビアス、中原尚哉:翻訳)
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戦場に人間の出る幕はない。大尉は脆弱な生身の体を比較的安全な輸送船内にとどめて、テレプレゼンスで分隊に参加すればいいのだ。しかし今回の仕事は対人交渉をともなう。顔のない殺人マシンにとってはさすがに不得手な分野だった。
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SFマガジン2016年2月号p.41

 殺戮マシンが主役となる宇宙戦闘。傭兵分隊を率いるヤマダ大尉は、ある任務の遂行中にいわゆる「冷たい方程式」状況に陥ってしまう。苦悩する大尉。だがむろん、戦闘AIは方程式をいともあっさり解いてしまうのだった……。感情のない機械が遂行する戦争を皮肉を込めて描いた短篇。


『有機素子板の中』(早瀬耕)
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サブ・プログラムは、ぼくと南雲が共同で作ったアルゴリズムに基づいて、ひと組の男女が会話を続けている。言い替えれば、メイン・プログラムの下で、ふたつのチューリング・テストを競わせている。それぞれの会話出力プログラムは、別の有機素子ブレードに実行空間を割り当てた。
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SFマガジン2016年2月号p.365

 旅の途中で知り合った女性とデートする語り手。二人の会話は、しかし、どこか不自然だった。一方、「出会い系チャットサービス」に応用するために開発されたチューリングテスト用の会話プログラム同士の会話を観察している研究者は、助手の仕事に応募してきた女性との面談を始める。人間の自然な会話、有機素子板の中で交わされているアルゴリズムに基づいた会話、どちらがどちらなのか、次第に判らなくなってゆく。

 SFマガジン2015年10月号に掲載された『彼女の時間』の著者による待望の新作で、機械と比べた人間らしい会話とは何か、という意外に難しい問題が扱われます。余談ですが、不正引数エラーによるハングアップをこれほど叙情的に表現した作品は他にないかも。

 ちなみにチューリングテストと「人間らしい会話」については、以下の本が参考になります。

  2015年01月30日の日記
  『機械より人間らしくなれるか?』(ブライアン・クリスチャン、吉田晋治:翻訳)
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-01-30


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『エンジェルメイカー』(ニック・ハーカウェイ、黒原敏行:翻訳) [読書(SF)]


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 〈理解機関〉は、正しく較正されないと人間の意識をあまりにも多量の知識にさらしてしまう。そしてその意識が今度は世界を決定してしまうのよ。宇宙の基調を完全に知覚すると、不確定なものがなくなり、選択の余地がなくなる。選択の余地がなければ、意識というものはなくなる。不確実でない未来は未来ではない。ある点を超えると、このプロセスが自分で自分を永続化することも起こりうる。可能なことは存在しなくなり……不変の歴史が後釜にすわる。水が消えて氷ばかりになる。こうしてニュートン的世界が完成するのよ。時計じかけの世界が。
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Kindle版No.9465


 時計職人のジョーが何気なく作動させてしまった謎めいた装置、アプリヘンション・エンジン=〈理解機関〉。コードネーム「エンジェルメイカー」。それは量子宇宙を消し去る最終兵器だった。ロンドン上空はアピス・メカニカ、機械仕掛けの蜜蜂の群れに覆われ、宇宙の終焉が迫るなか、ジョーと仲間たちは一世一代の大仕事に挑む。英国で最も堅固に守られた要塞から、奪われたエンジェルメイカーを盗み出せ!

 スチームパンク風バカSF、アクションスパイやりすぎコメディ、古き良き冒険活劇、スーパーヒーロー誕生オリジンストーリー、お宝ゲットを狙うクライムサスペンス。どれか一つ、せめて二つくらいに絞ったほうが、そんな分別も助言もてんで無視して全部ぶち込んでしまった痛快無分別暴走エンターティメント大作。新書版(早川書房)出版は2015年6月、Kindle版配信は2015年6月です。


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おれは骨董品を商う人間だ。人を驚かすようなことなんてできない。最近ひとりぼっちになったばかりで、もうすぐ人口統計の年齢区分“25歳~34歳”を永久に離脱してしまう。いまとは違う昔のやり方で焼いたチェルシーバン(菓子パンの一種)が好きで、こちらを面白い男だと思ってくれない痩せっぽちで安物の服ばかり着てすぐ怒る女の子に恋をする癖がある。
 おれは祖父ちゃんみたいにゼンマイのネジを巻く。
 そして父のようにはなるまいと思っている。
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Kindle版No.570


 ギャングの大物の息子として生まれた気弱で内向的なジョー。彼は犯罪者への道を避け、祖父の仕事を継いで時計職人となって一人静かに暮らしている。そんな彼が修理を依頼された謎めいた装置。


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その品物は――なんというか、どうとらえていいかわからない風変わりなもので、何をするものかわからない。それでおまえのことを思い出したわけなんだが……たぶんこういうふうに言っても大きく間違ってないと思いつつも、同時にそれじゃすべてを語っていないと言わざるをえない……それはほんとに変てこなものなんだ。
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Kindle版No.819


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「関わりになるのはよしなさい。逃げなさい。(中略)どう言ったらいいかしら。古代エジプトの王家の墓みたいなものなのよ。近づきすぎたために人が死んだ長い歴史があるというか」
「何に近づきすぎたの」
「たぶんそれを知ったら死ぬことになるんじゃないかな」
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Kindle版No.737、759


 装置の故障を修理し、それを作動させてしまうジョー。たちまち現れて複雑なダンス、というか演算、を開始する機械蜜蜂の群れ。


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「あの巣箱はたんなる時計じかけの玩具じゃない。高度な科学のめちゃくちゃ複雑な産物だ。その原理は、たとえ知っている人でも理解できず、理解できる人は知ることが許されない。(中略)われわれはそれが作動しはじめたいま、何が起こるのかと思うと気がかりでならない。だからあんたに訊かなければならない。どうやったらスイッチを切れるんだ」
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Kindle版No.3754


 装置は謎の敵に奪われ、ジョーは国家すら手が出せない強力な陰謀組織に追われることに。何しろ彼が作動させた、そして彼のみがスイッチを切れる、その装置の正体は、最終兵器だったのだから。


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依頼主から製作を頼まれたのは“戦争を永久になくす装置”でした。まあ、普通そういうのは表向きの名前ですよね。より強力な兵器の。
 しかし彼女はいま顧客の依頼を文字どおりに受けとめようとしています。いま開発中の装置がそういうものになると信じているのです。彼女はそれを〈アプリヘンション・エンジン〉と呼んでいます
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Kindle版No.3226


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それを封印して、しまっておいて。誰にも見せてはいけない。それは死だから。わたしが登場するまでは誰も経験したことがなかったような死だから。運命による死、結晶化による死、必然性による死。わたしはみんなの魂を殺して肉体を生かしておいた。人類の歴史上、彼らほど死んでいる人たちはいなかった。
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Kindle版No.7406


 世界中の都市を覆い始めるアピス・メカニカ、機械仕掛けの蜜蜂の群れ。膨大な演算が宇宙の物理基盤を変化させてゆく。観測によらず全てを理解する力、それは量子的不確定性を消し去り、すべての確率波を収束させ、何もかもが古典物理学的決定論宇宙に飲みこまれてゆく。自由意志も、魂も、意味も、すべて失われた機械仕掛けのクロックワーク宇宙が顕現する。


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核保有国は、もしどこかの国が〈理解機関〉を自分たちの国に使用したら――ところでどの国も〈理解機関〉を大量破壊兵器と呼びはじめているが――核で報復すると互いに宣言しあっている。この状況はたぶんまだ序の口で、これから〈理解機関〉が本格的に作動しだすんだろう。
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Kindle版No.8784


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「事態はどんどん大ごとになっていく」
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Kindle版No.6596


 次々と消される仲間たち。残虐非道な敵の仕打ちによって精神を破壊される寸前まで追いつめられたジョー。


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 おれの生涯の物語。文句を言うな。目立つまねはするな。金はさっと払い、注文どおりに仕事して、ルールを守れ。悪さはするな。言われたとおりにしろ。そうすれば大丈夫だ。
 おれはそうしてき たけど、大丈夫じゃない。
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Kindle版No.9140


 絶望の底で、彼の心の奥底に隠されていたものが、電撃のように突き上げてくる。新たなパワー、そして新たなスーパーヒーローが、覚醒する。


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 それは、憤怒だった。
 憤怒は赤い噴煙のようでも、雷雨のようでもなかった。たとえて言えば肩から重荷がとれたような感じ。あるいは世界の彼方から澄んだ光が射してきたような感じだった。
 そうか。そう来るのか。
 それなら、きさまこそくたばれ。
(中略)
世界の不正に対する怒りの深い井戸からまっすぐ噴きあげるような行動だった。怒りはまた冷淡な母親、気楽すぎた父親、祖父を捨てたフランキー、ふがいなさすぎた祖父にも向けられていた。ジョーは抑制する必要を認めなかった。いまの彼は戦闘機械であり怪物だったが、さらに言えば、戦っているのではなかった。壊れたものを修理しているのだった。
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Kindle版No.9035、9072


 現役を引退していたロンドン中の伝説的犯罪者を束ね、捨て身の戦いに挑むジョー。量子宇宙の終焉まであと一時間。英国史上最大の犯罪計画がついにスタートする。


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「宇宙が殺されかけてるのか」
「たぶん」
「地球だけじゃなくて? いや地球だけでも大ごとだが」
「まずは地球からだ。その上のすべてといっしょに」
(中略)
「ああくそ、ジョー。おまえ二十年ぶりに顔出したと思ったら、宇宙を救いたいってか」
「おれはスポーク家の人間だ。小さいことはやらない」
「ああ。まあそうなんだろうな」
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Kindle版No.9785、9800


 というわけで、ジャンルミックスというか何というか、スチームパンク風バカSF+アクションスパイやりすぎコメディ+古き良き一大冒険活劇+スーパーヒーロー誕生オリジンストーリー+お宝ゲットを狙うクライムサスペンス、という感じの、無分別にもほどがある暴走っぷり長編。

 ミステリとしては目茶苦茶だし、SFとしても荒唐無稽すぎ、冒険小説としては古めかしすぎ、スパイアクションとしてはやりすぎ。でも、驚くべきことに、破綻しないまま最後まで突っ走り続けます。まあ最後は脱線して大爆発しますけど。

 しかも、これが、圧倒的に面白い。いや、本当です。細かいこと抜きにしていうと、古きよき波瀾万丈荒唐無稽な冒険小説が好きな読者なら、きっと狂喜乱舞。いや、本当です。



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『プラスマイナス 155号』 [その他]

 『プラスマイナス』は、詩、短歌、小説、旅行記、身辺雑記など様々な文章を掲載する文芸同人誌です。配偶者が編集メンバーの一人ということで、宣伝を兼ねてご紹介いたします。

[プラスマイナス155号 目次]
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巻頭詩 『時計を戻す人』(琴似景)、イラスト(D.Zon)
短歌 『空に映る影までに』(島野律子)
随筆 『松林の裏道 3』(島野律子)
詩 『小児科病棟27時』(深雪)
詩 深雪とコラボ 『夢の七年間』(深雪&しまのりつこ)
詩 『離れるところ』(島野律子)
詩 『あなたがいても、いなくても』(多亜若)
小説 『一坪菜園生活 三十八』(山崎純)
随筆 『香港映画は面白いぞ 155』(やましたみか)
イラストエッセイ 『脇道の話 94』(D.Zon)
編集後記
 「レシピをご紹介」 その7 深雪
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 盛りだくさんで定価300円の『プラスマイナス』、お問い合わせは以下のページにどうぞ。

目黒川には鯰が
http://shimanoritsuko.blog.so-net.ne.jp/


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『フラット』(そらしといろ) [読書(小説・詩)]

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 マーケットの中

缶詰の棚
とぷん
水の気配

ツナ缶
桃缶
少年缶
鮭缶
スープ缶

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「ガブリエルと、象徴としての缶詰」より


 大学、就活、そして卒業。モラトリアムの終わりを前にして、全身に去来する不安と自棄と鬱屈したおもい。揺れ動く思春期を歩む双極性青春詩集。単行本(思潮社)出版は2013年7月です。

 最新作『『モブキャラ生徒Aが彩る高校青春グラフィティ』も3期に突入な件。』が極めて印象的だったので、前の詩集も読んでみました。
 ちなみに最新作読了時の紹介はこちら。


  2015年12月09日の日記
  『『モブキャラ生徒Aが彩る高校青春グラフィティ』も3期に突入な件。』(そらしといろ)
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-09


 高校を舞台とした明るくはじけた青春、といった感じだった最新作に比べると、大学生活、モラトリアムの終わりを扱った本書は、鬱屈した気持ちを吐露するような重たい作品が多く収録されています。くすぶる怒りと不安と。


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救いを求める手を握るふりして、
はらいのけ、
営業時間は終わりですよと、
悠々、
就職課の窓口をしめつつ、
ブラインドの隙間から、声高に叫ぶ

ゲンジツヲミナサイ
キビシイゲンジツヲミナサイ

あぁ、助けてください助けてください私たち仕事がないんじゃもうただ死ぬのを待つしかないんです助けてくださいオーモリさん、話だけでも聞いてください!!!!!
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「学食のメニューに[私=ナポリタン]を加えたいのです」より


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生き物は、健気です
栄養を調節されたカラダと純粋なタマシヒを惜しみなく私たちに捧げてくれます
私もカラダとタマシヒを捧げたいです
最初は業界ならメーカーに、
職種なら事務職に、
カラダとタマシヒ捧げたいので就活しました
大抵、二次面接くらいで落ちます
だからもう、ニンゲンとして働こうなんて思ってないです

捨身飼虎的な、

で、思いついたんです。

何か、血管てナポリタンに似てませんか、
こう、私右利きなんで、ナポリタンは左腕から作るんですけど、

ちょっと、オーモリさん奥に行かないでください
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「学食のメニューに[私=ナポリタン]を加えたいのです」より


 ひらがなを記号のように使って心境を表現した作品も、強い印象を残します。


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衝動、的 に、

まぜるまぜるまぜるまぜるしろみもきみもま
ぜるまぜるまぜるほんのすこしかなしいかん
じがしたのでなみだもまぜるまぜるまぜるま
ぜるぐるんぐるんはしがまわるまぜるまぜる
まぜるまぜるただただみぎてのえんしんりょ
くのままにまぜるまぜるまぜるおしょうゆを
ひとまわりまぜるまぜるまぜるまぜるまぜる

はい、たまごかけご飯
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「大学四年生」より


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きょう、そつぎょうしきというなの、じごくのさいてん、ひらかれますね
じごくのふちにたたされたあなたもわたしもじょがくせいのかわをぬがされて、
いろとりどりのはかま、じごくにおちてゆき、
じょがくせいからただのおんなになったおんなたちのしろいあし、あしのかず、
かぞえきれないほどのじんせいを、あるく、あし
となりにはつねに、
ひらがなじごくがあるから、
あなた、なにからそつぎょうしてしまったかわたしはしらないけれど、
つぎにあうときは、
ひらがなじごくのそこでしょう
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「ひらがなじごくにおちるとき」より


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みっちゃくしているふたつのからだ
わたしのからっぽのからだ、
むねのなか、はいのおくに
いずみをもたらすには
あなたのだえきをよびみずにしなくては
だから、
びちゃびちゃとしたくちづけを
ください、ください、ください

あなたのだえきをよびみずに
わたしのむねのなか、はいのおくに
いずみがわいたら
あなたのやわらかでひろいむねを
ふわっとおしながら
もういちどふかくくちづけをかわして
ことりを、
わたしのむねのなか、はいのおくに
おくりこんでください
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「とりかごのはなし」より


 さらに、数字、記号、カタカナを絶妙に配列した作品には、驚かされます。


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《 物 理 室 》

等 加 速 直

初 速 度 を v
加 速

例 題
教 /
V c o s θ
V s     θ

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「眼鏡と黒板」より


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 Fでつまずいて B♭から始める

指の長さの問題、ではなく根気の強さの問題
フレットに囚われないフレットレス、
フレットは箱庭療法6弦の6EをDへ下げる
フレットレス、敏感な耳を痛めつけている
眉間の4本のしわ、伸ばしてあげて、A音で

ショートカットキー・コントロール+S
たたく左手の小指中指 薬指でくすんでいる
             シルバーリング。
輪は無限大に広がり つなぎ
ちぎれて 天体へ還って
           /きてくれたら
よみがえっても いいかもしれない
もう一度だけ 一℃だけ
           /さわれなくても
吹き抜ける風の色香をさぐるため

 フラットな道に立っている裸足
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「フラット」より


 青春というと、思い出されるのは不安と鬱屈ばかりなもので、読んでいて身体に響いて失禁しそうになりました。それは歳のせいかも知れません。『『モブキャラ生徒Aが彩る高校青春グラフィティ』も3期に突入な件。』の明るい青春も感じよかったのですが、個人的には、切実にえぐりこんでくるこちらの痛打がヒットしました。


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