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『SFマガジン2016年2月号 特集「スター・ウォーズ」』(ジェイムズ・L・キャンビアス、早瀬耕) [読書(SF)]

 隔月刊SFマガジン2016年2月号は、新作公開にあわせて映画「スター・ウォーズ」の特集でした。またジェイムズ・L・キャンビアスと早瀬耕の読み切り短篇が掲載されました。


『契約義務』(ジェイムズ・L・キャンビアス、中原尚哉:翻訳)
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戦場に人間の出る幕はない。大尉は脆弱な生身の体を比較的安全な輸送船内にとどめて、テレプレゼンスで分隊に参加すればいいのだ。しかし今回の仕事は対人交渉をともなう。顔のない殺人マシンにとってはさすがに不得手な分野だった。
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SFマガジン2016年2月号p.41

 殺戮マシンが主役となる宇宙戦闘。傭兵分隊を率いるヤマダ大尉は、ある任務の遂行中にいわゆる「冷たい方程式」状況に陥ってしまう。苦悩する大尉。だがむろん、戦闘AIは方程式をいともあっさり解いてしまうのだった……。感情のない機械が遂行する戦争を皮肉を込めて描いた短篇。


『有機素子板の中』(早瀬耕)
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サブ・プログラムは、ぼくと南雲が共同で作ったアルゴリズムに基づいて、ひと組の男女が会話を続けている。言い替えれば、メイン・プログラムの下で、ふたつのチューリング・テストを競わせている。それぞれの会話出力プログラムは、別の有機素子ブレードに実行空間を割り当てた。
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SFマガジン2016年2月号p.365

 旅の途中で知り合った女性とデートする語り手。二人の会話は、しかし、どこか不自然だった。一方、「出会い系チャットサービス」に応用するために開発されたチューリングテスト用の会話プログラム同士の会話を観察している研究者は、助手の仕事に応募してきた女性との面談を始める。人間の自然な会話、有機素子板の中で交わされているアルゴリズムに基づいた会話、どちらがどちらなのか、次第に判らなくなってゆく。

 SFマガジン2015年10月号に掲載された『彼女の時間』の著者による待望の新作で、機械と比べた人間らしい会話とは何か、という意外に難しい問題が扱われます。余談ですが、不正引数エラーによるハングアップをこれほど叙情的に表現した作品は他にないかも。

 ちなみにチューリングテストと「人間らしい会話」については、以下の本が参考になります。

  2015年01月30日の日記
  『機械より人間らしくなれるか?』(ブライアン・クリスチャン、吉田晋治:翻訳)
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-01-30


タグ:SFマガジン
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