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『ある晴れた日に』(勅使川原三郎、佐東利穂子、鰐川枝里、加藤梨花) [ダンス]


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雨が降りつづける街 雨が降りつづける身体 ずぶ濡れの世界
   いつ止むでもない雨 世界は重心をより低くした
創作を準備しているとガルシア マルケスの長雨の物語に出会った
   これこそ私が身体の外と内に降る雨ではないか
     湿気を帯びた静かな衝撃は幻と化した
       雨は私たちに降りつづける
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勅使川原三郎


 2015年12月6日は、夫婦でシアターXに行って勅使川原三郎さんの新作公演を鑑賞しました。ガルシア・マルケスの『マコンドに降る雨を見たイサベルの告白』にもとづいたダンス公演です。

 原作は、ひたすら続く長雨がもたらす倦怠感と絶望感、それらがやがて終末感や宗教的啓示へと展開してゆく幻想的な短篇。テキストを佐東利穂子さんが朗読(録音)し、そこに効果音(主に雨音)や音楽が重ねられます。


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――そして、涼しい風がドアを揺さぶり、錠前の金具をきしませたその瞬間、熟した果物のような固い物体が、中庭の池に落ちていきました。空中で何かが、目に見えない人物が現れたことを告げたのです。その人は薄闇の中で微笑んでいました。
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『マコンドに降る雨を見たイサベルの告白』(ガルシア・マルケス)より


 イサベル役は佐東利穂子さんで、最初から最後までほとんどずっと舞台上にいて踊ってくれます。この世のものではないような、幻想的、というより幻覚的なダンス。実体があるのか不安になるほどの、なめらかさ、しなやかさ、残像感。

 ほとんど舞台道具を使わず(ただし、犬人形はインパクト大でした)、長雨で浸水した薄暗い家の中や、イザベルの幻視を、照明効果だけで見事に表現します。いつものことながら勅使川原さんの照明は素晴らしい。

 その勅使川原さんは今回サポート担当に回ったらしく、踊っている佐東利穂子さんの背後で人形を動かしたり人間を動かしたり亡霊のように立っていたり暗闇の中から何やら只事でない気配を放ってみたり。ラスト近くで長めのソロダンスが入りますが、身の毛がよだつような感動を覚えました。


[キャスト等]

構成・演出・振付・照明・衣装・選曲: 勅使川原三郎
朗読: 佐東利穂子
出演: 勅使川原三郎、佐東利穂子、鰐川枝里、加藤梨花


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