2015年を振り返る(3)[小説] [年頭回顧]
2015年を振り返る(3)[小説]
2015年は、笙野頼子さんの『金毘羅』と『笙野頼子三冠小説集』がついにKindle化された年でした。これで代表作のほとんどが、いつでもどこでも読めるようになったのは嬉しい。各作品の内容紹介は、次のページにまとめてあります。
『Kindleで読める笙野頼子著作リスト(内容紹介つき)』
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23
さて、昨年は衝撃的なほどに面白い海外文学にいくつも出会うことができました。まず最も印象に残ったのは、他人と分かり合えない深い孤独を抱えて生きる現代人の哀しみ、諦念、そしてささやかな希望を描いた、ケヴィン・ウィルソンの短篇集『地球の中心までトンネルを掘る』です。これは素晴らしかった。人体自然発火現象に怯えながら文字並べゲーム「スクラブル」の「Q」の駒だけを集める仕事をひたすら続ける話など。
『地球の中心までトンネルを掘る』(ケヴィン・ウィルソン、芹澤恵:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-23
韓国の人気作家、パク・ミンギュの短篇集『カステラ』のぶっ飛んだ魅力(シリアスな話に巨大怪獣やUFOの襲撃が平気で出てくる)にはやられましたし、容貌に恵まれないヒロインを通じてルッキズム(容姿至上主義)に抵抗する切ないラブロマンス『亡き王女のためのパヴァーヌ』も熱かった。また、独特のリアリティを持って人生の不条理さ不可解さを見事に描いたウン・ヒギョンの『美しさが僕をさげすむ』も優れた短篇集でした。
『カステラ』(パク・ミンギュ、ヒョン・ジェフン:翻訳、斎藤真理子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-29
『亡き王女のためのパヴァーヌ』(パク・ミンギュ、吉原育子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-31
『美しさが僕をさげすむ』(ウン・ヒギョン、呉永雅:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-08-20
台湾文学も鮮烈。80年代の台北、今はなき「中華商場」を舞台に記憶と魔法が交差する連作短篇集『歩道橋の魔術師』(呉明益)は忘れがたい傑作でしたし、これは台湾文学とは言えませんが戒厳令下の台北を舞台とした青春ミステリ『流』(東山彰良)、いずれも台湾映画のあの魅力がぎっしり詰まっていて、とてもキュートなのです。
『歩道橋の魔術師』(呉明益、天野健太郎:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-08-14
『流』(東山彰良)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-11
アジアの現代文学がこれほどまでに面白いということを教えてくれた翻訳家の方々に感謝です。
日本文学では、まずは今の日本を覆う嫌な空気をとらえた『呪文』(星野智幸)と、あるかないか微妙なリアリティの仕事を丁寧に描いたユーモラスな『この世にたやすい仕事はない』(津村記久子)の二冊にしびれました。個人として自尊心を保つ、誠意を持って仕事をする。大切な基本を忘れないためにも、今、必読の二冊だと思います。
『呪文』(星野智幸)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-28
『この世にたやすい仕事はない』(津村記久子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-20
それと、『ファイン/キュート 素敵かわいい作品選』という問答無用のかわいい小説アンソロジーが、思わず仰天するほど幅広い「かわいい」の不思議を教えてくれました。
『ファイン/キュート 素敵かわいい作品選』(高原英理:編)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-14
他には、本谷有希子さんと万城目学さんの安定感、実にたのもしい。
『〈この街から〉』(本谷有希子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-13
『悟浄出立』(万城目学)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-01-09
最後になりましたが、「ぶたぶた」と「食堂つばめ」の二枚看板で活躍している矢崎存美さんの官能描写(食いしん坊が美味しいものを食べる)にはいつも感心させられます。
『ぶたぶたの甘いもの』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-10
『学校のぶたぶた』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-13
『食堂つばめ6 忘れていた味』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-16
『食堂つばめ5 食べ放題の街』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-18
2015年は、笙野頼子さんの『金毘羅』と『笙野頼子三冠小説集』がついにKindle化された年でした。これで代表作のほとんどが、いつでもどこでも読めるようになったのは嬉しい。各作品の内容紹介は、次のページにまとめてあります。
『Kindleで読める笙野頼子著作リスト(内容紹介つき)』
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23
さて、昨年は衝撃的なほどに面白い海外文学にいくつも出会うことができました。まず最も印象に残ったのは、他人と分かり合えない深い孤独を抱えて生きる現代人の哀しみ、諦念、そしてささやかな希望を描いた、ケヴィン・ウィルソンの短篇集『地球の中心までトンネルを掘る』です。これは素晴らしかった。人体自然発火現象に怯えながら文字並べゲーム「スクラブル」の「Q」の駒だけを集める仕事をひたすら続ける話など。
『地球の中心までトンネルを掘る』(ケヴィン・ウィルソン、芹澤恵:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-23
韓国の人気作家、パク・ミンギュの短篇集『カステラ』のぶっ飛んだ魅力(シリアスな話に巨大怪獣やUFOの襲撃が平気で出てくる)にはやられましたし、容貌に恵まれないヒロインを通じてルッキズム(容姿至上主義)に抵抗する切ないラブロマンス『亡き王女のためのパヴァーヌ』も熱かった。また、独特のリアリティを持って人生の不条理さ不可解さを見事に描いたウン・ヒギョンの『美しさが僕をさげすむ』も優れた短篇集でした。
『カステラ』(パク・ミンギュ、ヒョン・ジェフン:翻訳、斎藤真理子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-29
『亡き王女のためのパヴァーヌ』(パク・ミンギュ、吉原育子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-31
『美しさが僕をさげすむ』(ウン・ヒギョン、呉永雅:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-08-20
台湾文学も鮮烈。80年代の台北、今はなき「中華商場」を舞台に記憶と魔法が交差する連作短篇集『歩道橋の魔術師』(呉明益)は忘れがたい傑作でしたし、これは台湾文学とは言えませんが戒厳令下の台北を舞台とした青春ミステリ『流』(東山彰良)、いずれも台湾映画のあの魅力がぎっしり詰まっていて、とてもキュートなのです。
『歩道橋の魔術師』(呉明益、天野健太郎:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-08-14
『流』(東山彰良)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-11
アジアの現代文学がこれほどまでに面白いということを教えてくれた翻訳家の方々に感謝です。
日本文学では、まずは今の日本を覆う嫌な空気をとらえた『呪文』(星野智幸)と、あるかないか微妙なリアリティの仕事を丁寧に描いたユーモラスな『この世にたやすい仕事はない』(津村記久子)の二冊にしびれました。個人として自尊心を保つ、誠意を持って仕事をする。大切な基本を忘れないためにも、今、必読の二冊だと思います。
『呪文』(星野智幸)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-09-28
『この世にたやすい仕事はない』(津村記久子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-10-20
それと、『ファイン/キュート 素敵かわいい作品選』という問答無用のかわいい小説アンソロジーが、思わず仰天するほど幅広い「かわいい」の不思議を教えてくれました。
『ファイン/キュート 素敵かわいい作品選』(高原英理:編)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-14
他には、本谷有希子さんと万城目学さんの安定感、実にたのもしい。
『〈この街から〉』(本谷有希子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-13
『悟浄出立』(万城目学)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-01-09
最後になりましたが、「ぶたぶた」と「食堂つばめ」の二枚看板で活躍している矢崎存美さんの官能描写(食いしん坊が美味しいものを食べる)にはいつも感心させられます。
『ぶたぶたの甘いもの』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-12-10
『学校のぶたぶた』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-07-13
『食堂つばめ6 忘れていた味』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-16
『食堂つばめ5 食べ放題の街』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-05-18