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『ねことわたしの防災ハンドブック』(ねこの防災を考える会) [読書(教養)]

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「災害時の避難生活がうまくいくかどうかは、普段の準備で95%決まる」

この本では、ねこを飼っているみなさんに向けて、震災を乗り切るための心得と具体的な防災対策についてお話ししていきます。
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単行本p.9

 いつかやってくる大震災。そのとき、飼猫の安全をどのようにして守るのか。避難所での猫の生活をどうするのか。猫が逃げてしまったらどうすればいいのか。大切な猫を守るために、普段から「そのとき」に備えるための防災ハンドブック。単行本(パルコ出版)出版は、2014年12月です。


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大きな地震が起きたときのことを考えてみてください。
自分や家族、そしてペットと共にどうやって避難生活をすごすか。
今のあなたに具体的な手立てはできているでしょうか?
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単行本p.5


 先日読んだ小説のなかに、東日本大震災のとき一人暮らしの作家と老猫が自宅で被災するシーンが出てきて、それで心の中に不安がわき起こったわけです。うちはどうする?

 とりあえず猫のための防災ハンドブックを買ってきました。猫を守るために飼い主が普段からやっておくべきことから、非常時の心得まで、具体的なアドバイスが書かれています。

 まずは猫のための安全な室内づくりから。地震のときに猫が怪我をしないよう、モノを捨てる、危険地帯を作らない、猫避難場所を作る。また、猫のための備蓄、避難グッズも周到に準備。

 さらに、逃げ出したときの用心として、マイクロチップ装着、ワクチン接種。避難所生活のためのクレートトレーニング(ケージやキャリーに慣れさせる訓練)やしつけ。いざというとき助け合える、ねこ友仲間の結成。


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 人間の備えと同様に、大切なねこの避難グッズも必ず用意していつでも持ち運べるようにしてください。
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単行本p.35

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マイクロチップの装着は済みましたか?
必要な予防接種、去勢・避妊手術は?
ケージやキャリーに慣れさせるクレートトレーニングは?
どれも今からできることばかりです。
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単行本p.63


 いよいよ、そのとき。猫が怪我をしたらどうするか。飼い主が外出中に被災したらどうするか。猫を落ち着かせるための方法。他の避難者とのトラブルを回避する。もし、猫が逃げてしまったら。

 なお、巻末には「ねことわたしの防災チェックリスト」が収録されています。

 通読すると、普段から防災、防災と口にしながらも、実は猫のことまでは考えてなかったことを痛感します。うちの猫たちをどうやって守ればいいのか。避難所に何匹も猫を持ち込むことが可能なのか、許されるのか。猫飼いの責任として、真面目に防災対策を考えたいと思います。

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ねこの命を守れるのは、他の誰でもありません。飼い主であるあなただけなのです。
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単行本p.63


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『猫の西洋絵画』(平松洋) [読書(教養)]

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実は18世紀末から20世紀初頭にかけて、
見るものの心をとろかせ
抱きしめたくなるような
可憐で愛らしい猫の西洋絵画(以下、猫画)が
大量に描かれてきたのです。
ところが、現在の美術史は、
こうした猫画を評価することなく、
まるで存在しなかったかのようです。
本書は、
そうした美術史が忘却した
もう一つの猫画をご紹介し、
その可愛らしさを、愛くるしさを
堪能していただきたいのです。
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単行本p.6


 総勢270匹を超える猫が躍動する。現代の美術史から無視されてきた、知られざる西洋猫画の世界。18世紀末以降に描かれた「可愛い猫を主役とする西洋絵画」の数々を取り上げ、その魅力を堪能する画集。単行本(東京書籍)出版は2014年9月です。

 可愛い猫たちが、ちょこんと、あるいはどえーんと、ときにはぎっしりと、画面いっぱいに描かれた西洋絵画が大量に収録された画集です。猫好き読者ならページをめくっているだけでうっとり。猫いいですよ猫。

 著者によると、現代の美術史からは、これらの猫画はほぼ完全に黙殺され、「なかったこと」にされているといいます。なぜ?


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本書のような、あまり知られていない猫の西洋絵画を集めた書籍は世界的に見ても珍しいと思います。
 なぜ、有名でない猫の絵を取り上げたのか不思議に思われた方も多いかもしれません。しかし、私からすると逆に、何故、18世紀以降、20世紀初頭まで、ここまで数多く描かれてきた猫の絵が、全く評価されず、西洋美術史によって、いわば黙殺されてきたことのほうが不思議なのです。
  (中略)
こうした猫画が流行していたこと自体、西洋美術史の教科書や解説書、さらには美術事典にさえほとんど掲載されていません。まるで、可愛い猫画など世の中に存在しなかったかのようなのです。
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単行本p.126、138


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批判を恐れずにいえば、猫が主役で可愛い絵画は、現代の美術史においては黙殺され、醜い猫が片隅に描かれた作品が評価されているということなのです。
 これには、美術史のパラダイムに関わる大きな2つの力が働いてきたからだと考えています。その一つが、キリスト教による猫とその文化への迫害であり、もう一つが、モダニズムによるアカデミズムへの排撃です。
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単行本p.127


 キリスト教による猫文化の迫害、モダニズムによるアカデミズム芸術の批判と解体。こうした歴史的背景によって、「可愛い猫」を描いた絵画は無視されてきたのだそうで、それはとても悲しい。

 猫画の不幸な歴史を象徴しているようにも感じられるのが、ルイス・ウェインの作品。写実性を残しながら猫を擬人化したユーモラスな作品を描いた画家ですが、やがて生活苦から精神に異状をきたし、精神病院で亡くなったといいます。

 本書には、精神を病んでから描かれた作品も収録されているのですが、これがもう、多大なるインパクト。最初はリアルだった猫の絵が、次第に猫をモチーフにしたシンボルのようになってゆき、色も原色多用の幻覚じみてきて、やがてカラフルな抽象図形へと還元されてゆく。精神病の進行をイメージさせずにはいられないその変化は、劇的です(ちなみにウィキペディアの解説によると、精神病学の教科書でもそのように説明されることが多いものの、そういった記述は不正確で誤りだとのこと。直感と印象だけで分かった気になってはいけないようです)。

 猫画のそれぞれに画家の生い立ちが解説されており、こうした不幸はあちこちに散見されます。ただ、本書に収録されている猫画の猫たちが可愛いので、眺めているだけでほのぼの幸福感がわき上がってくるのが幸い。

 というわけで、まず魅力的な猫の絵に感激し、解説を読んで感心するという、二度おいしい素敵な猫画集です。


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『のせ猫 かご猫シロの里便り』(SHIRONEKO) [読書(随筆)]

 頭の上や揃えた前足に何でも乗せてじっとしているユーモラスな光景を中心に、かご猫シロたち6匹の何とも可笑しく愛おしい姿をとらえた猫写真集。単行本(宝島社)出版は、2014年12月です。

 一時期、あほうみたいにひたすら猫写真サイトを見て回っていた時期があるのですが、今でも毎日読んでいるのは『かご猫 Blog』と『くるねこ大和』だけ。その『かご猫 Blog』の最新書籍版が本書です。

  かご猫 Blog
  http://kagonekoshiro.blog86.fc2.com/

 末っ子の「くろ」が加わって6匹になった、かご猫ファミリー。本書には登場しませんが、ブログではくろの母猫(おそらく)である野良猫もしばしば写っています。

 今回は「くろ」のデビュー写真集ということで(?)、凛々しい写真がいっぱい掲載されています。くろファンにお勧め。

 個人的お気に入りは茶トラ。くろが引き戸を一所懸命に開けているのを後ろから見ている茶トラ、シロの上に乗っている茶トラ、「大胆にあおむけで寝るのがすき」な茶トラ、あとシロと取っ組み合いしている茶トラなど、茶トラの写真はいいなあ、と思う。なんか飽きないです。


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『プラスマイナス 149号』 [その他]

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今日らっこの種を友達がまいたので
 それに習った。
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 『プラスマイナス』は、詩、短歌、小説、旅行記、身辺雑記など様々な文章を掲載する文芸同人誌です。配偶者が編集メンバーの一人ということで、宣伝を兼ねてご紹介いたします。

[プラスマイナス149号 目次]
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巻頭詩 『時はいつも』(琴似景)、イラスト(D.Zon)
短歌 『羽のない木々』(島野律子)
随筆 『花蓮名産 バター風味漂流木 4』(島野律子)
詩 『息子』(多亜若)
詩 深雪とコラボ 『編みながら』(深雪のつぶやき(+やましたみか 編集))
特集 めざせ150号 まる25年!! 49号と99号の表紙再掲
     49号表紙より『わたしの気持ち』(三島貫緒)
     99号表紙より『嘘かな?』(深雪)
随筆 『一坪菜園生活 32』(山崎純)
詩 『夜の秋』(島野律子)
随筆 『香港映画は面白いぞ 149』(やましたみか)
イラストエッセイ 『脇道の話 88』(D.Zon)
編集後記
 「レシピをご紹介」 その1 やました みか
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 盛りだくさんで定価300円の『プラスマイナス』、お問い合わせは以下のページにどうぞ。

目黒川には鯰が
http://shimanoritsuko.blog.so-net.ne.jp/


タグ:同人誌
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『悟浄出立』(万城目学) [読書(小説・詩)]

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もう、お前から続く道ではない。これからは、俺一人が進む道なのだ。
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Kindle版No.1524

 世に知られた英雄だけが主役ではない。沙悟浄、趙雲、虞美人、司馬遷の娘など、脇役扱いされがちな、あるいは歴史に名を残さなかった人物を語り手として起用し、中国古典に名高い出来事の傍らで彼らの内面に起きていた変化を丁寧に描く歴史小説短篇集。単行本(新潮社)出版は2014年7月、Kindle版配信は2014年12月です。

 『とっぴんぱらりの風太郎』に続く著者の歴史小説第二弾ですが、前作がどちらかといえば忍者エンターテイメントだったのに対して、今作は本格的な歴史小説となっています。今後も歴史小説作家への道、さらには国民作家への道を歩んでゆくつもりなのか。注目したいと思います。


『悟浄出立』
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八戒が悟空の言いつけを破り、自ら危地に飛びこむだろう、ととっくの昔に承知していたにもかかわらず、俺は何も行動せず、何も発言せず、今もこうして黙って宙に浮くのみである。(中略)俺はいつからこうも力なき傍観者となり果てたのか。
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Kindle版No.126

 『西遊記』ご一行のなかで最も目立たない沙悟浄。ただ最後尾を黙々とついてゆくだけだった彼が知った、八戒の意外な過去。悟浄の心の中で静かに、だが着実に、何かが変わってゆく。


『趙雲西航』
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兵士らの威勢のいいかけ声を聞きながら、趙雲はいまだ胸にくすぶる不快の正体に、静かにたどり着こうとしていた。いや、正確には向こう側から、漂い流れてきたというべきか。
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Kindle版No.675

 建安19年。張飛、趙雲、諸葛亮は、成都を目指し、軍勢とともに長江を遡行していた。趙雲は船酔い、張飛は持病の痔が悪化、諸葛亮は風邪をひいて鼻ずるずる。どうにもぴりっとしない三人ではあった。

 『三国志演義』では飛ばされてしまうであろう、劇的なことが何も起きないだらだら時間のなかで、趙雲はふと己の心の中に生じた不快さに気づく。自分は何を恐れているのか。諸葛亮との会話を通じ、趙雲は自分自身の本音を見つめるのだった。


『虞姫寂静』
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女は覇王から、簪と耳飾りを取り戻した。さらに名をも取り戻した。あとひとつ、取り戻すべきものがある。
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Kindle版No.1124

 始皇帝亡き後、劉邦と天下を争った項羽。その傍にいつも控えていたという寵姫、虞美人。京劇『覇王別姫』のヒロインは、しかし、本名も、生い立ちも、それどころか項羽との出会いからその最後まで、何一つ歴史には残されていない。彼女は果たして何者だったのか。四面楚歌(オリジナル)のなか、何もかも失った彼女は、壮絶な戦いに挑んでゆく。自らの人生を取り戻すために。


『法家孤憤』
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「どうだ、滑稽な話と思うか? 陛下の命が失われたら、我々の国はおしまいだ。我々が作り上げた法は、あっという間にただの竹屑になる。それなのに、我々は法に従って、誰も衛兵を呼びに行かなかった。あるじが命を落とす瀬戸際にもかかわらず。おぬしはどう思う? 我々は馬鹿の集まりか?(中略)確かに、滑稽だ。だが、それが法治というものなのだ」
 その声には俺や上役に対してではなく、正面に続く暗い一本道に向け宣言するような、どこか孤独な響きが漂っていた。
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Kindle版No.1402、1410

 燕の荊軻による始皇帝暗殺未遂事件に巻き込まれた小役人は、そのとき辛くも生き延びたのは「法治主義」という革新的思想だということを悟る。誰からも好まれない、しかし世界を一つに束ねるために他にない道。

 徳治主義vs法治主義という、現在も中国を揺るがせ続けている対立軸の起源を描いた劇的な短篇で、旧作『プリンセス・トヨトミ』を連想させるものもあり、個人的に本短篇集のなかで最もお気に入り。


『父司馬遷』
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三年前、私たちは苦しんだ。父を捨てることで、その苦しみから逃れた。だが、父はその間、一人で牢の奥につながれ、獄を出た今も、変わらず続く辛苦のただ中にいるのだ。
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Kindle版No.1858

 耐えがたき屈辱と絶望のなかで、歴史書を執筆する決意を固めた司馬遷。その勇気を与えたのは、彼の娘だった。「士は己を知る者のため死す」。かつて教えた言葉が娘の口から峻烈な檄として放たれたとき、『史記』へと続く道が開かれてゆく。

 誰からも省みられない非力な娘が、言葉の力をもって、歴史そのものを救うという感動的な物語。万城目学さんの作品にはたいてい劇的な対決が登場しますが、屈指の名対決シーンというなら、この短篇における父娘対決ではないでしょうか。


タグ:万城目学
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