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2014年を振り返る(5) [随筆・紀行・ルポ] [年頭回顧]

2014年を振り返る(5) [随筆・紀行・ルポ]

 2014年に読んだ随筆などのうち、印象に残ったものについてまとめてみます。なお、あくまで「2014年に私が読んだ」という意味であって、出版時期とは必ずしも関係ありません。

 まず、何と言っても次の一冊は大きな衝撃。

『オオカミの護符』(小倉美惠子)

 一枚の護符から土地の歴史と基層信仰をめぐる壮大な探索の旅が始まるという興奮の一冊で、自分が属しているものの根っこを見つめる感激と敬虔さに包まれます。

 世界の文化的多様性について考えさせられた三冊は次の通り。

『dress after dress クローゼットから始まる冒険』(中村和恵)
『日本語に生まれて 世界の本屋さんで考えたこと』(中村和恵)
『いま、世界で読まれている105冊 2013』(テン・ブックス編)

 衣服、書物、言葉を通じて、様々な文化とのめぐり合いが描かれ、心の中の欧米中心主義的世界観が粉々に打ち砕かれてゆきます。

 異文化との出会いから、日本語と日本文化を見つめなおす、次の一冊もスリリングでした。

『英語でよむ万葉集』(リービ英雄)

 英語を母語としながらあえて日本語で書き続けている作家、リービ英雄さんが、自身が行った英訳を通じて万葉集の魅力を語った一冊です。日本語の凄味、そして翻訳というものの奥深さを、垣間見ることが出来ます。

 いわゆる日本社会の「右傾化」が危惧された年でしたが、そのような傾向はたまたま「ここ数年の流行」というわけでもありません。自身の体験を通じて、その歴史を探る二冊を興味深く読みました。

『未来の記憶は蘭のなかで作られる』(星野智幸)

『右翼と左翼はどうちがう?』(雨宮処凛)

 過去に遡りながら病根を見つけようと懸命にもがく前者、左右のガチ活動家が本音を語る後者(「14歳の世渡り術」シリーズの一冊)、どちらもお勧めです。

 作家や歌人による、割と気軽に読めるエッセイ集としては、次の三冊がものすごく面白かった。

『ダメをみがく “女子”の呪いを解く方法』(津村記久子、深澤真紀)

『やりたいことは二度寝だけ』(津村記久子)

『蚊がいる』(穂村弘)

 個人的に津村記久子さんの小説が大好きなので、エッセイや対談も楽しめました。いっぽう、歌人の穂村弘さんは自身の内気さ引っ込み思案を強くアピールしてくれましたが、まあ、いつもの通り思わず笑ってしまいます。

 冒険作家、高野秀行さんの本は次々と電子書籍化されました。この機会にと、古めの作品を読んでみましたが、やっぱり面白いです。

『ワセダ三畳青春期』(高野秀行)

『腰痛探検家』(高野秀行)

 デビュー作である前者の青春汁どばどばっぷりも素敵ですが、個人的には「奇跡の腰痛治療、という暗黒大陸」を彷徨い遭難し続ける超常的紀行文というべき後者がインパクト大でした。


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