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『リアルリアリティ』(矢内原美邦、ニブロール) [ダンス]

 2015年1月25日は夫婦でシアタートラムに行って、矢内原美邦さんの新作公演を鑑賞しました。ニブロールの『リアルリアリティ』、四人のダンサーが踊る1時間の舞台です。

 それぞれ二畳くらいの大きさの、真っ白いパネルが7枚ほど立てられ、舞台を囲んでいます。パネルは片面の下半分が格子状になっており、ところどころ部分的に塞がれていて、ここに映像を投影するとでこぼこに歪んで変な立体感が生じます。

 それらの背後には、家具や雑貨を積み上げて作られた山。

 白いパネルに様々な角度から映像が投影されると、パネル、床、劇場の壁までが映像空間に包まれてしまいます。最前列で観たので、視界の大半が動画で占められることが多く、いかにもニブロールらしい「小さなオブジェクトが大量に降り注ぎ、吹雪のように舞う」シーンなど、見当識失調を起こして3D酔いのような感じに。

 出演者たちは、こうした映像のなかで、あるいは映像がなくなった殺風景な白い空間で、孤独、いらだち、拒絶感などを感じさせるダンスを踊ります。ダンサー同士のコンタクトは少なく、それも非友好的なものばかり。ますます痛々しい感じが強まります。控えめながら、切実さを漂わせるダンスです。

 最終場面では、背景だとばかり思っていた家具や雑貨の「山」の上に矢内原美邦さんご本人が登場し、積み上げられた家具や雑貨を次から次へと床に落としてゆきます。無表情に、淡々と、自傷行為のように。机の端にそっと置いたマグカップを次の瞬間あっさり払い落としたり。

 落ちたものはすべて数メートル下の床に叩きつけられますが、その箇所はパネルで隠されて見えません。がしゃんっ、じゃらんっ、ばごんっ、ぱしーっん、ごんっ、どんっ、ぐわしゃっ、がんっ。落とされたものが床に激突する破壊的なノイズが背景音となり、何もかも「壊れゆく」感覚が強まります。その騒音が痛々しい。

 ものを舞台中にまき散らして、一つ一つ丁寧に片づけて、再びまき散らす。そんな不毛な行為をえんえん続けるといった、陰鬱というか無常というか、生きている実感が得られない虚しさや自傷とか破壊衝動を連想させる、そういうシーンが続く作品です。これが現代日本における本当のリアリティなのかも知れません。

[キャスト]

振付: 矢内原美邦 
出演: 鶴見未穂子、森井淳、石垣文子、小山衣美


タグ:矢内原美邦
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