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2014年を振り返る(4) [詩歌] [年頭回顧]

2014年を振り返る(4) [詩歌]

 2014年に読んだ詩集・歌集のうち、印象に残ったものについてまとめてみます。なお、あくまで「2014年に私が読んだ」という意味であって、出版時期とは必ずしも関係ありません。

 まず、インターネットを通して見える世界を思わずはっとするような新鮮な言葉で表現してくれた『やねとふね』(河野聡子)、いわゆる女子ポエムの叙情性にどれだけのことが出来るかその可能性を見せつけてくれた『死んでしまう系のぼくらに』(最果タヒ)、一読するやその「声」から逃れられなくなるほど強力な存在感を放つ『隣人のいない部屋』(三角みづ紀)の三冊が、個人的にお気に入り。

 語感というものを執拗に追求することから笑いが生まれる『月の裏側に住む』(高柳誠)、言葉のリズムでどこまでゆけるか挑戦したような『眠れる旅人』(池井昌樹)もいいなあ。

 記憶の不思議さ、「事実」のあやふやさを突いてくる『偽記憶』(入沢康夫)は、むしろオカルト本として読むことでぞくぞくするような楽しさ。怪談系の詩集としては、『MU』(カニエ・ナハ)も、装幀含めて相当に怖かった。でもどこか懐かしい気持ちにもなりました、ムーだけに。

 怖い詩集という観点では、『現代詩文庫197 中本道代詩集』(中本道代)のじわじわ迫ってくる怖さは“もう戻れない”レベルで、まじびびり、ました。

 読者を無常観でくるんでしまう『瑞兆』(粕谷栄市)、死というものを真っ直ぐに見つめた『空の水没』(渡辺みえこ)、とぼけたイメージをしれっと書いてみせた『海町』(岩佐なを)、人間として社会生活を送らなければならないことに何だか疲れてしまったという気持ちを生き生きと表現した『なりたいわたし』(和田まさ子)、も素敵でした。

 『双花町についてあなたが知り得るいくつかのことがら』(川口晴美)は、まだ全体の1/3くらいしか電子書籍化されてないので見通せないのですが、言葉と写真の見事なコラボレーションから生み出されるミステリ長篇詩として注目しています。早く続きを出してほしい。

 さて、短歌集としては、表現に関してまっすぐで一所懸命なところに限りなく惹かれる『春戦争』(陣崎草子)、SFのイメージを効果的に使ってきた『薄い街』(佐藤弓生)、切り込む鋭いユーモアで何かを問うてくるような『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』(笹井宏之)が、個人的にお気に入り。

 何のためらいもなく若さ全開の歌集として、『緑の祠』(五島諭)と『さよならバグ・チルドレン』(山田航)、もう青春まみれ。

 不思議な感覚でちょっとだけ怖い感じがする『世界が海におおわれるまで』(佐藤弓生)、切なさと変さがほどよくブレンドされた『東直子集』(東直子)と『愛を想う』(東直子)も素晴らしかった。


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