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『SFマガジン2015年2月号 創刊55周年記念号』(小田雅久仁) [読書(SF)]

『おまかせ! レスキュー 200回記念優待号』(横山えいじ)
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使い捨てキャラ達の争いは諸般の事情で2カ月後まで続くのであった…
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SFマガジン2015年2月号p.69


『大森望の新SF観光局 第43回』(大森望)
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長きにわたって途切れることなく続いてきた月刊の歴史がとうとう終幕。
2015年1月、わたしたちは55年ぶりに、SF雑誌が発行されない月を経験することになる。
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SFマガジン2015年2月号p.190


『編集後記』(塩澤快浩)
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私の業務は一編集者、あるいはSFM編集長としてのものだけではありません。すべてを総合したときにいわゆる出版不況と呼ばれる状況を覆せるほどではなかったということです。
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SFマガジン2015年2月号p.280


 さまざまな波紋を広げる隔月化。月刊誌として最後となるSFマガジン2015年2月号は、前号に引き続き、円谷プロダクションとのコラボレーション企画の短篇を1本掲載してくれました。また、日本オリジナル短篇集の出版が予定されているケン・リュウの短篇、小田雅久仁さんの中篇(連載)、そして上遠野浩平さんの短篇が掲載されました。


『影が来る』(三津田信三)
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こうしている間にも影たちは少しずつ近づき、やがて彼女と絢子の二人と入れ替わってしまうのではないか。しかも入れ替わったことに、万城目たちが気づかなかったとしたら、いったいどうなるのか。
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SFマガジン2015年2月号p.153

 毎日新報の報道カメラマン、江戸川由利子を襲う謎のドッペルゲンガー現象。相談を受けた一の谷博士は、またもや超短波ジアテルミーで解決を図るが……。ウルトラQの『悪魔ッ子』のエピソードを元にした“アンバランスゾーン”的な話。そういや一ノ谷博士って、やたら怪電波の放射や遮断が得意だったなあ。


『製造人間は頭が固い "The Institutional Man"』(上遠野浩平)
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そうです。僕は製造人間です。それが僕の本質です。そして製造人間はうかつにその能力を行使してはならないのです
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SFマガジン2015年2月号p.159

 どうか病気の子供を助けてほしいと、製造人間ウトセラ・ムビョウに懇願する夫婦。ウトセラは、なぜ人類を危険にさらすリスクをとってまで子供を助けるべきなのか、論理で自分を説得できたら助けよう、と言う。こうして命がけのディベート、ロジック格闘が始まった……。いかにも男子中学生の妄想めいた設定と会話と展開にたじろぐ。


『どこかまったく別な場所でトナカイの大群が』(ケン・リュウ、古沢嘉通:翻訳)
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ママは古代人だ。シンギュラリティ以前の存在。この宇宙でたった数億人しかいない。
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SFマガジン2015年2月号p.253

 ポストシンギュラリティ時代を舞台に、データ存在である娘と、元物理存在だった母親の、葛藤と和解を感傷的に描く短篇。もしかして、この作家は親子の葛藤と和解を感傷的に描いて泣かせる短篇ばかり書いているのでしょうか。


『長城〈中篇〉』(小田雅久仁)
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何かがおかしい。いや、何もかもが根本からおかしい。ありとあらゆる点で常道から外れている。なぜ俺は今、俺なのか。(中略)ひょっとして今まで戻らなかった兵士たちの多くは、こんなふうに理不尽な状況に追いこまれたあげくに死んでいったのだろうか。
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SFマガジン2015年2月号p.273

 どこからともなく聞こえてくる「叫び」。それを聞くことの出来る者は「長城」に召集され、「夷狄」と呼ばれる得体の知れない存在に取り憑かれた人間を抹殺しなければならない。人間の悪と暴力衝動の根源に触れることで世界からはみ出し、破滅してゆく人々の姿を描くダークファンタジー、その〈中篇〉。デビュー作『増大派に告ぐ』を思い出させる作品で、次号に掲載されるであろう完結編が楽しみ。


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