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『ウェン王子とトラ』(作・絵:チェン・ジャンホン、翻訳:平岡敦) [読書(小説・詩)]

 「トラは、大きく見ひらいたウェンの目に気づきました。子どものトラにそっくりの目です。そのとたん、トラの心に、おかあさんのやさしさがよみがえってきました」

 美しい中華風の絵で、獰猛なトラと幼い王子の物語を描いた絵本。単行本(徳間書店)出版は、2007年06月です。

 子供を殺されたせいで人間を憎むようになった獰猛なトラが、頻繁に村を襲うようになります。困った国王が占い師に対策を尋ねたところ、幼いウォン王子をトラに差し出すようにとのお告げがあったのです・・・。

 幼い王子とトラの交流の物語を扱った、中国出身の画家が描いた絵本。落ちついた渋い色彩、古典絵巻物のような雰囲気、その中に躍動感あふれる動物や軍勢の姿が力強い筆で描かれています。

 個人的に気に入った絵は、トラが王子を隠れ家につれてゆくシーンです。見開きで森の奥深くにある湖が描かれているのですが、そのおさえた色調や、暗がりに沈み込むような気配が素晴らしい。「あまりの美しさに、ウェンは息をのみました」とあるのですが、子供が読むとむしろ怖がるのではないでしょうか。

 全ての漢字にルビが振ってあるので、小学生でも容易に読めるでしょう。擬人化されてない野生動物のトラ、殺気だつ軍勢など、筆で描かれた迫力ある絵を、プレゼントされた甥っ子が気に入ってくれるといいなあ。


タグ:絵本
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