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『ひょうすべの菓子(「文藝」2013年春号掲載)』(笙野頼子) [読書(小説・詩)]

 「四年からひょうすべが怖くなって六年で二万人に五人ひょうすべの子を産む、この国の女の子の普通の生活です。私は火星人なので完全に平均的とは言えないけどほぼこんなものです」(文藝2013年春号p.251)

 シリーズ“笙野頼子を読む!”第65回。

 「文藝」2012年冬号に掲載された『ひょうすべの嫁』(2012年10月08日の日記参照)の続編、というかシリーズ作品が早くも登場。代表作の一つ「だいにっほん三部作」とひょうすべがつながりました。おんたことひょうすべの華麗なるコラボレーション、嫌さも怖さも倍ぞーん。

 「ひょうすべさんはTPPというもののあった年に、ISDというものにくっついてわが国に入って来たそうです。おんたこさんがひょうすべさんを連れて来たと教科書には書いてあります」(文藝2013年春号p.251)

 「また、このひょうすべは外国産の民間のもので、おんたこさんとは直接には関係ないと言われています。わが国において関係ないとは、責任を取らないという意味です」(文藝2013年春号p.251)

 反原発だろうが何だろうがあっという間に「権力からの捕獲装置によって利権化され」(文藝2013年春号p.239)てしまう、だいにっほん。そこにひょうすべが、ISD条項に守られて、もちろん誰も責任をとらないまま、広まったようです。

 「この粉は安いおいしいお菓子には普段でもよく入っているそうです。(中略)このひみつの粉を食べると女の子の中の二万人に五人がひょうすべを産みます。産む年齢は普通十二歳です」(文藝2013年春号p.236)

 そんなだいにっほんに生きる11歳の火星人少女(埴輪詩歌)は、夜の学校にネット友達と集まって怪談話をすることになります。怪談話はいつしかひょうすべ話になってゆき、しかも集まった友達の中に誰も知らない娘が混じっていて・・・。

 「本当にぞーんとする百パーセントのぞーん、それはもうホラーとも怪談とも言っていられない。トイレに駆け込んで便座の蓋を開けて囁くだけです。「怖かった、怖かった、なんで見たのやろう、助けて、助けて、・・・・・・」(文藝2013年春号p.244)

 というわけで、三部作完結から五年を経て、ますますだいにっほん化してゆくこの国の今をぐりぐりえぐる。本当に、ぞーん、となる学校の怪談。助けて、助けて。

 「しりながら、ひょうすべのかし、やかされて、わがみひとりが、わがみひとりで」
 「ぞーん、ぞーん、ぞーん」(文藝2013年春号p.251)


タグ:笙野頼子
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