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『ミュージック・フォー・ジャパン PLAY&PRAY』(NHK プレミアムシアター) [映像(コンテンポラリーダンス)]

 2011年4月30日のNHK「プレミアムシアター」で放映された特別番組を録画しておいて鑑賞しました。日本のために、世界中で開催された複数のチャリティコンサートや特別公演の舞台を収録した映像です。

 オペラ、ダンス、オーケストラ、器楽、朗読、パフォーマンス。世界トップクラス、巨匠と呼ばれるアーティストたちがばんばん登場します。詳しくは後述の演目リストをご覧になって頂きたいのですが、とにかく目を見張るような奇跡の豪華キャスト。

 さて、ダンスファンにとって見逃せないのは、島地保武、そしてアクラム・カーンのソロでしょう。

 島地保武さんのダンスを観たのは初めてですが、その「1G重力下において人間の身体はこういう風に動くものだ」という観客の常識をくつがえしてくる小気味よい動きに魅了されます。表情もとてもよい。ウィリアム・フォーサイスとの共同作品だそうです。

 一方、北インド古典舞踊「カタック」とコンテンポラリーダンスを融合させる名手、アクラム・カーンも見事なパフォーマンスを披露してくれました。足腰を駆使した強力な身体の動きで苦難をダイナミックに表現。終盤、両手を波うたせる動きの展開は大迫力でしたが、あれはやはりツナミなんでしょうか。

 パリ・オペラ座のニコラ・ル・リッシュは、ユーモラスな、お馬さんダンスを披露。俳優のギヨーム・ガリエンヌが詩を朗読するなか、口に紐をくわえてひひひーんっと登場。馬(の前半身)になりきって舞台を一周してから餌をもらい、とっとこ舞台袖に走ってゆきます。会場は静まり返っていましたが、ちょっとは笑ってあげればよいのに。

 ニコラ・ル・リッシュといえば、確かにすげえけど何だかダンス表現が暑苦しいのでちょっと苦手、という印象だったので、こういうとぼけた馬鹿が似合うというのは意外でした。好感度アップです。

 そのニコラ・ル・リッシュとシルヴィ・ギエムが共演したマッツ・エック振付『アパルトマン』の一場面ですが、マッツ・エック作品から伝わってくるはずの、あの胸に響く悲哀のようなものがあまり感じられず、ちょっとがっかり。

 ギエムは少なくともマッツ・エック作品を踊るには向いてないような気がします。以前、市販映像で観た、ギエムがマック・エック作品を踊る『ウェット・ウーマン』でもそう感じたし。今回の公演でも、オープニングをかざったギエムのソロに少しも感心できなかったので、たぶん私、そもそもシルヴィ・ギエムのダンスが好きじゃないんだと、そう思いました。

 最後に、馬術芸術集団ジンガロを率いるバルタバスは、黒覆面をしたバルタバスの身体と本物の馬の顔が組み合わさって(二人羽織ならぬ一人一頭羽織)、馬頭人のように見えるパフォーマンス。この馬頭人がまたよく動くし、表情も豊か。実に感動的なのにびっくり。ダンス作品か、と真顔で問われるとちょっと困ってしまいますが。

 というわけで、コンテンポラリーダンス演目だけでも驚くほどの充実っぷり。もちろんクラシック音楽、オペラ・歌劇、詩の朗読など、様々な分野のファンを満足させるであろう特別番組でした。おそらく何度も再放送されるでしょう。今回、見逃した方も、機会を見つけてぜひ観て下さい。

[演目]

2011年4月30日のNHK「プレミアムシアター」

番組オープニング

  挨拶     小澤征爾
  番組進行  首藤奈知子

フランス
 パリ シャンゼリゼ劇場(収録:2011年4月6日)

  「Two」                  シルヴィ・ギエム
  「俳句朗読」               ナターシャ・パリー、島岡現
  「歌劇“ホフマン物語”から“恋の調べは”」
                         ナタリー・デセイ、ロランド・ヴィラゾン
  「仙台からの手紙」、「雨ニモマケズ」(宮沢賢治)  ランベール・ウィルソン
  「I don’t believe in Outer Space」 島地保武
  「俳句朗読」                        
  「悲歌」、「五木の子守唄」       庄司紗矢香、児玉桃
  「Friendship」              ニコラ・ル・リッシュ、ギヨーム・ガリエンヌ
  「俳句朗読」                        
  「からたちの花」「赤とんぼ」      大村博美、児玉桃
  「Nameless」              アクラム・カーン
  「ロンド イ長調」(シューベルト)   マルタ・アルゲリッチ、ネルソン・フレーレ
  「アパルトマン」(マッツ・エック)より シルヴィ・ギエム、ニコラ・ル・リッシュ
  「俳句朗読」                        
  「ピアノ三重奏曲“偉大な芸術家の思い出」から 第1楽章」(チャイコフスキー)
    ルノー・カプソン、ゴーティエ・カプソン、カティア・ブニアティシヴィリ
  「ケンタウルスと動物」から      バルタバス
                              
ドイツ
  ベルリン・フィルハーモニーホール(収録:2011年3月16日)

  「無伴奏チェロ組曲」(バッハ)より  ヨーヨー・マ
  「弦楽のための哀悼音楽」(ルトスワフスキ)
      ベルナルト・ハイティンク、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
                              
日本                               
  長野県松本市 まつもと市民芸術館(収録:2008年8月28日、9月2日)
  サイトウ・キネン・フェスティバル松本2008

  「歌劇“利口な女狐(ぎつね)の物語”」(ヤナーチェク)
      小澤征爾、サイトウ・キネン・オーケストラ
      東京オペラシンガーズ、SKF松本児童合唱団


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