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『サブロ・フラグメンツ』(勅使川原三郎) [舞台(コンテンポラリーダンス)]

 勅使川原三郎さんの新作公演を観るために、夫婦で川崎市アートセンターのアルテリオ小劇場に行ってきました。

 勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんを含む六名のダンサーが踊る抽象ダンス作品です。衣装は黒の簡素なもので、特に舞台道具はなし。暗い無機質な空間と化した舞台に、ダンサーが登場しては激しく踊り、次から次へと交替してゆきます。90分ほどの公演ですが、驚くべきはその密度。ほとんど常に誰かが踊っていました。

 舞台が小さく、しかも観客席からみて下方に位置する(全体を見下ろす)という配置を利用して、照明効果だけで観客の空間把握を混乱させます。バッハを背景に五線譜のような光が舞台に投射されると、奥行きと高さが区別できなくなり、錯覚なんでしょうが、空間が歪んでそこに飲み込まれたような気分になります。

 さらに勅使川原三郎さんの超絶ダンスが時間をも混乱させ、だんだん時間経過もあやふやに。ときどき停止したりスキップしたりループしたりしていたような気もします。舞踏魔術ですか。

 ダンスと照明だけを使って時空間を攪乱し、観客を夢の中にいるようなひどく混乱した気分にさせる演出はとにかく凄い。勅使川原三郎さんのダンスはやたらとカッコよく、観ているだけで浮遊感のようなものを味わえます。佐東利穂子さんが手を鋭く振りながら旋回すると、照明のせいか手の白い残像がくっきりと浮かび上がり、帯のように身体を取り巻きます。特撮みたい。

 何だかあっという間だったような気もするし、半日くらい観ていたような気もするのですが、気がつくと終わっていました。我に返ってみれば、これはまさしく超常現象。

 というわけで、勅使川原三郎さんの魔術的な演出とダンスに翻弄される90分の素晴らしい超常体験。公演は5月8日まで続くそうなので、コンテンポラリーダンスに興味がある方はぜひ体験してみて下さい。

[キャスト]

振付・美術・照明・衣装: 勅使川原三郎
出演: 勅使川原三郎、佐東利穂子、鰐川枝里、加見理一、高木花文、山本奈々


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