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『ますます酔って記憶をなくします』(石原たきび 編) [読書(教養)]

 mixiコミュによせられた酔っぱらい体験談集その第二弾。夫と娘の前でいきなり服を脱ぎ、全裸で踊ろうとして転倒、肋骨を2本折った女。英国からの極秘指令によりチェコに飛ぶべく泣きながら荷造りを開始した男。なぜ君らは飲むのか、そんなにしてまで。文庫版(新潮社)出版は2011年5月です。

 『酔って記憶をなくします』の続編ですが、いやあ、まったく反省というものが感じられません。心に残った、残ってしまったエピソードを少しばかりご紹介しましょう。

・飲んだ翌朝、バッグを開けたら、生きたサワガニがわさわさと出てきた。(34歳 女)

・マクドナルドで「バブルバーガー、パティを一枚抜いて」とわけの分からない要求(39歳 女)

・「クレオパトラはこうやって酒を飲んだのよ」と言い張り、大切な指輪をシャンパンに入れて飲んだ。翌朝、嘔吐したら出てきた。下からでなくて良かった。(39歳 女)

・口から落として股間付近についた米粒を「とって食え」と男に要求(24歳 女)

・「受け身も知らずにこの現代社会をどうやってサバイブするつもりか!」と一喝、公園のぬかるみで泥だらけになって受け身の猛特訓。続いて「特訓その2 木登り」に進む。(30歳 女)

・送ってくれた友人の車から飛び下り。道路に転倒するもすくと立ち上がり猛ダッシュ。「今から暴れるから来い!」と自分で警察に通報し、かけつけてきた警官に「こっちは命がけで毎日やってるんやぁ!」と叫んで暴れる。(30歳 女)

・失恋してやけ酒を飲んだ挙げ句、タクシーを降りてその前に仁王立ち。運転手に「私を轢いてください!」と叫ぶ。(22歳 女)

・ニワトリに挨拶したのに無視されたのが悲しくて、そのまま小学校に侵入し服を着たままプールに飛び込む。超気持ちよかった! (25歳 女)

 何だか「女」の体験談ばかり選んでしまいましたが、どういうわけか女性の所業の方が心に響くのですね。編者も「まえがき」でこう書いています。

 「前編も同様なんですが、通読すると男性より女性のほうが、“クリエイティブな失敗”をする傾向にあることがわかります。(中略)男性陣のさらなる奮起(?)を期待したいところですね」(文庫版p.3)

 やはり女性の方が色々と屈折し深く深くたまっているものがあるのかも知れません。でも男性諸君は張り合おうとしない方がいいと思う。

 巻末には、恩田陸さんと茂木健一郎さんの対談も収録されています。前作に引き続きの登場で“名誉あとがき対談者”認定された恩田陸さん、遅刻してきて最初の発言がこう。

 「すみませんすみません。お待たせしました! ちょっと二日酔いで・・・。(中略)朝方まで飲んでて最後の記憶がなくて」(文庫版p.235)

 というわけで、他人事として笑ってすませる酔っぱらい武勇伝。前作が気に入った方は買いです。あと恩田陸さんのファンも要チェック。