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『化学・意表を突かれる身近な疑問 昆布はなんでダシが海水に溶け出さないの?』(日本化学会) [読書(サイエンス)]

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 ビールのびんは重すぎる……軽いペットボトルにできないんだろうか? ダシをとる昆布って、海の中に生えているとき、ダシが溶け出したりしないんだろうか?

 こんなふうに、「いままで気にしてなかったけど、そう言われてみるとおかしいな……いったいなぜなんだろう?」と思わず意表を突かれる疑問はいろいろありますね。暮らしの中で出合うそうした「なぜ?」のうち、もの=物質=にからむ疑問を集めて謎解きをしてみました。「もの」とくれば化学の世界です。
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Kindle版No.6

 身の回りにある様々な疑問を、化学で説明してくれる一冊。新書版(講談社)出版は2001年7月、Kindle版配信は2015年1月です。


 素朴な疑問とその答えを通じて、化学の面白さや有用性を教えてくれる本です。取り上げられているのは、例えば次のような疑問。


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梅酒をつくるときは、なんで粉砂糖じゃなく氷砂糖を使うの?
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海藻にはヒ素がたくさん入っているっていうのに、なぜ食べて平気なの?
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電気の流れるプラスチックって、なぜそんなものができるの?
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芳香剤と一緒になった消臭剤は、なぜ芳香を消しちゃわないの?
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蛍光灯が古くなると、なぜ端っこに黒いシミができるの?
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フグは猛毒をもつらしいけど、なぜ自分の毒にやられないの?
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リンス入りシャンプーは、なんでシャンプーがリンスを洗い落としてしまわないの?
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梅干しは、すっぱいのになぜアルカリ性食品なの?
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 言われてみれば確かに不思議……、という絶妙なところを突いてくるのがうまい。

 子供の素朴な疑問に両親が答える、という質疑応答形式で書かれています。両親ともに化学の専門知識が豊富すぎて正直リアリティありませんし、専門用語がばしばし出てくる説明を聞いて「ふーん、そういうことかあ」と納得してしまう子供もどうかと。まあ、あくまで形式に過ぎないので、そこに突っ込むのは野暮というものでしょう。

 質疑の内容も面白いのですが、途中で色々と挟まれる雑談がまた面白く、ついつい誰かに話したくなります。


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海産物のヒ素濃度はすごく高くて、アジが海水の1万倍、コンブは5万倍にもなってる。(中略)あれほどに濃縮する理由はわかっていないの。
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Kindle版No.360

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じつは最近わかったんだが、フグ毒は、フグ自身じゃなく、皮膚や内臓に棲みついた細菌がつくるんだ。
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Kindle版No.1023

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〈低コレステロール食品〉を食べたり、卵やイクラをひかえたりしてもほとんど意味はないの。
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Kindle版No.1694


 ほとんどの疑問に対しては客観的に説明していますが、食品や健康に関する(特に疑似科学的な)デマについては、両親ともに割と厳しい態度を示します。


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お父さんも話は聞いてるし、そんな本も出ているらしいが、〈アルカリイオン水〉よりもあやしそうな話だ。なにせ能書きには〈従来の科学では理解しがたい未来科学である……〉なんて書いてあったりする。酸性・アルカリ性食品も、ひところ流行った〈遠赤外線は健康にいい〉もそうだけど、科学っぽい話につい乗ってしまう人が多いんだなあ。
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Kindle版No.1729

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〈成長ホルモンが入ってる〉とか、〈ヒナになりかけの生命パワーがある〉とかいって有精卵を讃える人がいるけど、その成長ホルモンは人間のからだにそのまま使えるわけないし、〈生命パワー〉とくればSFの話だわ。なんとなく〈いいらしい〉っていう思いこみの世界ね。
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Kindle版No.1752


 〈生命パワー〉はSFの話じゃないとは思いますが。それはさておき、化学入門書としても、単に面白豆知識本としても、気楽に読んで「え、そうだったの」という意外な知識が得られる幕の内弁当的な楽しさの一冊です。


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