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『旅するウナギ  1億年の時空をこえて』(黒木真理、塚本勝巳) [読書(サイエンス)]

 ウナギの産卵、変態、解剖学、養殖、調理、さらにはウナギの絵画や工芸品まで、美しいカラー写真と緻密な図表を駆使して、ありとあらゆるウナギ情報を詰め込んだウナギづくしの大型ビジュアル本。単行本(東海大学出版会)出版は、2011年07月です。

 片手で持つのは少々つらい、ずしりと重い大型本です。開くと、どのページもどのページも話題は全てウナギ。

 まずはウナギの産卵場所をめぐる探索の歴史からスタートして、孵化、稚魚プレレプトセファルス、変態、河川の遡上、帰巣、交尾、産卵、というウナギの生活史を詳述。ウナギという不思議な魚の一生を徹底的に追求します。カラー写真を多数掲載。かなり専門的な話題にも踏み込んでおり、読みごたえがあります。

 ここまでが生物種としてのウナギの話だとすれば、次は食材としてのウナギ。資源変動、種の保全に向けた取り組み、養殖の困難さ、ウナギ漁、流通、調理法、世界のウナギ料理の数々、といった話題へ。ウナギ調理器具の写真からウナギの蒲焼の宣伝ポスターまで、そのビジュアルへのこだわりは執拗なほど。

 最後は文化としてのウナギ。大森貝塚から出土したウナギの骨についての研究、古典文学に登場するウナギ、絵画に登場するウナギ、ウナギをかたどった工芸品の数々、そしてウナギ信仰。人間とウナギの文化的関係が俯瞰されます。

 通読すればもうウナギでお腹一杯。なじみ深い魚だと思っていたウナギが、実はいまだ分からないことが多い謎の生物だということを知って驚きました。産卵場所を発見するまでの研究者たちの努力にも感銘を受けましたが、ウナギの血液と体表粘液には毒があること、川辺の岩の上で「昼寝」をすること、皮下に埋没しているものの実はウロコがあることなど、本書で初めて知った雑学にも感心。

 というわけで、ウナギに興味がある方はもちろんのこと、私のように「ウナギの産卵場所ついに特定」、「ウナギが3年連続で不漁」、「シラスウナギの回遊に異変」といった最近よく目にするウナギ関連ニュースに興味をひかれた方、そして単にウナギの蒲焼が好きな方にもお勧めします。


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