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『台湾旅ノート Taiwan Sketch Journal』(おおのきよみ) [読書(随筆)]

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スケッチは普通の風景を特別な場所に変えてくれる。普段見落としていたものを教えてくれる。私にとって海外でのスケッチは旅行をより楽しむための行為であり、様々なことを教えてもらえる勉強の場でもある。
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単行本p.84

 絵と短文でつづられた台湾旅行スケッチ。色彩豊かな絵から、落書きのような小さなイラストまで、短文を添えながら、台湾で出会った様々な風景やものが描かれています。単行本(JTBパブリッシング)出版は2015年1月です。


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私は絵を描きながら旅をしています。
旅行中はいつでもスケッチブックと一冊のノートを持ち歩きます。
絵を描く過程で感じたことや気がついたことを書き記すためです。
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単行本p.5


 2008年から2014年までの間、著者が台湾各地を旅行しながら記してきた旅ノートを再構成した一冊。様々な絵(イラスト)と短文が臨場感たっぷりに掲載されています。


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松山空港は ゆでた小豆の香りがする.
(イラスト)SUBWAYの看板を前に、「あー 台湾の香りー!!」
サブウェイ、台湾のごはんじゃないけどね……
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単行本p.10


 あー、あるある、と頷いてしまう読者も多いんじゃないでしょうか。ガイドブックではなく著者が実際に歩いてその場で書き残したノートを再構成したものなので、紹介というより体験共有。実際、読んでいるだけで、同じまたは似たような風景の中にいたときの思い出がありありと蘇ってきます。


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どこへ行っても意識的に風景を色から見るようになった。私はこの風景の何色に魅かれているんだろう? とじっと見ていると、そこに様々な色が入っているのがぽつりぽつりと見えてくる。それは思いがけない混色だったりするので、絵の具の名前をスケッチブックの片隅にメモしておく。まさに風景が教科書だ。
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単行本p.66


 色彩は本当に素晴らしく、台湾の街角の空気を見事にとらえています。個人的なお気に入りは、「不思議でなぜか懐かしい夜の異界感」が再現されている絵の数々。

 台湾色見本(単行本p.68)と題して、台湾の風景に見つけた色を、絵の具で再現した色見本が収録されています。「木瓜」「芋園」「トタン屋根」「文山包種茶」といったものから、「金山南路二段203巷」「夜の吉林路」「廟のランタン」「中華郵政」まで、台湾の“色”がびっしり。感涙ものです。

 同じように旅ノートをつけようと思った読者のために、絵の描き方も教えてくれます。


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かき氷を描いてみる
1. 丸でお皿を描く.
2. 丸や楕円で,豆やお餅を描く.
3. それぞれに,色や名前を書き込む.(緑豆 タロイモのお餅 紫色 花豆 小豆 紅白のお餅 氷たっぷり)
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「簡単な絵の描き方」より
単行本p.103


 その他、人との出会いや忘れがたい体験など様々なことが書かれており、旅エッセイとしても楽しめます。台湾リピータの方にお勧めです。


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台湾に行ったら必ず会えると思っていた李さんとのお別れは突然やって来た。最後にお会いしたとき、李さんに言われたことがずっと心に残っている。

「絵で台湾の美しさをたくさんの人に伝えて下さい」

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単行本p.78


タグ:台湾