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『モーアシビ第30号 特別記念号』(河野聡子、川口晴美) [読書(小説・詩)]

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今回は記念特別号です。
三十六人の詩人の皆さんに見開きで作品を寄せていただきました。
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『編集後記』より


 配偶者が寄稿しているということで、宣伝を兼ねて、文芸同人誌『モーアシビ』特別記念号をご紹介いたします。


[モーアシビ 第30号 目次]
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『朝の礼拝』(村野 美優)
『around 30(+1)』(そらし といろ)
『息ノ行方』(森 ミキエ)
『いまここから』(五十嵐 倫子)
『小川のほとりで』(白鳥 信也)
『かい堀り』(田中 庸介)
『カピッ』(阿部 日奈子)
『川に届く羽の歌謡』(広瀬 大志)
『口を結んで』(北爪 満喜)
『クマの森』(河野 聡子)
『ぐるぐるヘルプ!』(長田 典子)
『ことば追い、ひかり零れ』(今井 義行)
『今生駄目なら来世で ビートエレクトロニカ(Gm’ ♩=110)』(李 幸子)
『探してはだめ』(ブリングル)
『ざんぱん』(岩佐 なを)
『下着』(小川 三郎)
『じんみんの蝉』(高塚 謙太郎)
『スネッフェルス死火山へようこそ』(サトミ セキ)
『そして』(西元 直子)
『漂っている』(浅井 拓也)
『誕生日に』(川上 亜紀)
『地点と肉体』(暁方 ミセイ)
『月降る夜の森に出て』(水嶋 きょうこ)
『トイレの紙様』(岡島 弘子)
『図書館は黄昏を抱きしめる』(小島 浩二)
『はじまりとおわり』(森岡 美喜)
『羽のない木』(島野 律子)
『ひが、そして、はぐ。』(薦田 愛)
『秘密』(タケイ・リエ)
『深まる秋の陽射しがテーブルの上にまで届くんです。』(鈴木 志郎康)
『フジツボのようにびっしりと』(浦 歌無子)
『夜行』(峯澤 典子)
『山田湊斗(やまだそうと)くん たんじょうび おめでとう』(山田亮太)
『夜の木』(渡邊 十絲子)
『別れます』(宮尾 節子)
『わたしたちのカミサマ』(川口 晴美)

散文
『風船乗りの汗汗歌日記 その29』(大橋 弘)
『きのこ採り』(平井 金司)
『還暦祝顛末記』(清水 耕次)
『ホットスポット・ブルース(4)』(大木 潤子)

翻訳
『幻想への挑戦 4』(ヴラジーミル・テンドリャコーフ/内山 昭一訳)

イラスト
野瀬怜奈
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 お問い合わせは、編集発行人である白鳥信也さんまで。

白鳥信也
black.bird@nifty.com


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ぼくが三日生きるあいだきみは八十九年としをとる
八十九年のあいだに
ヒトはクマになりクマはヒトになる
(中略)
八十九年のあいだに
きみは何度かクマになり何度かヒトになる
三日経ってぼくが帰ったとき
きみがクマならたき火を焚いて
きみがヒトならおかゆをつくる
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『クマの森』(河野聡子)より


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 ようこそ本の中に広がる地球の中心の旅へ。死火山の裂け目から垂直に暗闇を降りてゆくと、地球の内側の空洞世界へたどりつく。そこには雲が発生し、古生代の生き物が生き残っているんだよ。夕陽のような冬至の朝陽の中で、あなたの黒髪は既に透明に褪色し始める。もうすぐ追いつくからね。二〇一五年に本を開いたばかりのわたしは、残り僅かな頁をめくる一九七〇年の少年の薄い耳殻に囁いた。
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『スネッフェルス死火山へようこそ』(サトミ セキ)より


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体毛に覆われたものたちはここにはいないんだな
そう思っていたら
交差点の向こうから羊たちがやってきたのだ
羊の群は無言でもくもくとおしよせてきて吉祥寺の街も駅も覆いつくしてしまった
太陽は静かに中空に輝いて空には雲ひとつなかった
わたしは〈ポメラ〉で詩を書こうと思った
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『誕生日に』(川上亜紀)より


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このまま白い膜で被ったまま眠らせておくといいよ
白だったこともあったし黒だったこともあった
まだらもようで困ったこともあったとおもう
だれかにうっかり話したらたぶんさびしくなるから
あまい蜜のはなしは無かったことにしてね
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『秘密』(タケイ・リエ)より


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わかれることなく30年以上もつきあっていれば
記憶も記憶じゃないなにかも少しずつ共有されて
わたしの一部分はあなたのようであって彼女のような
わたしたちである
あと30年もすればどれかの体は
この世に存在しなくなっているだろうけど
とるにたりないひとかけらがわたしかあなたか彼女のどこかに
たとえばこのページに
残っているだろうからカミサマはきっと
ここに在るのだ
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『わたしたちのカミサマ』(川口晴美)より


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