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『世界一素朴な質問、宇宙一美しい答え 世界の第一人者100人が100の質問に答える』(ジェンマ・エルウィン・ハリス、西田美緒子:翻訳) [読書(教養)]

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 子どもの質問は、大人が答えに詰まるようなものばかりです。正解や答えの一部を知っているのに、まったく思いだせないことや、生半可な説明しか思いうかばないこともあります。そんなとき、その道の著名な専門家に助けを借りて、子どもにもわかるシンプルな言葉で代わりに答えてもらえたら、どんなにすばらしいか……そう考えて、この本ができあがりました。
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Kindle版No.277

 「砂糖はからだに悪いの?」から「どうしていつも大人の言うことをきかなくちゃいけないの?」まで、「なにが、わたしをわたしにしているの?」から「宇宙のはじめに「なんにもなかった」のなら、どうして「なにか」ができたの?」まで。子供たちの素朴な質問に専門家が真剣に回答する一冊。単行本(河出書房新社)出版は2013年11月、Kindle版配信は2014年11月です。


 子供たちから集められた多数の質問に、専門家が答えるという本。「子供でんわ相談室」とは違って、質問ごとに最適と思われる専門家を選んで回答を依頼しています。子供たちの疑問に答えるために、世界のトップ科学者、歴史学者、哲学者、心理学者、動植物学者、探検家、アーティスト、ミュージシャン、作家、考古学者、古生物学者、イリュージョニスト、さらにはオリンピックの金メダリスト、一流シェフ、宇宙飛行士、プロゴルファー、そしてコメディアンまで総動員。


 子供たちの質問は様々。

「ミミズを食べても大丈夫?」

「砂糖はからだに悪いの?」

「口のなかにはほんとうに、やりをもった悪魔が住んでいるの?」

「わたしがいつも、きょうだいげんかばかりするのはなぜ?」

「どうしていつも大人の言うことをきかなくちゃいけないの?」

こういった、いかにも子供らしい質問があるかと思うと、

「どうして音楽があるの?」

「どうして食べものを料理するの?」

「どうしてお金があるの?」

「なぜ戦争が起きるの?」

「数字は永遠につづく?」

など、素朴で答えにくい質問もありますし、

「恐竜は絶滅して、ほかの動物は絶滅しなかったのはなぜ?」

「ペンギンは南極にいるのに北極にいないのはなぜ?」

「カタツムリにはがあって、ナメクジにがないのは、なぜ?」

「わたしの脳はどうやってわたしを思いどおりに動かしているの?」

「ふってくる雪がみんなちがうかたちだって、どうしてわかる?」

こうした鋭い質問もあります。そして最大の難問はこうです。

「宇宙のはじめに「なんにもなかった」のなら、どうして「なにか」ができたの?」

「神様ってだれ?」

「「よい」は、どこから生まれるの?」

「なにが、わたしをわたしにしているの?」

 こうした難問に答えるべく選ばれたメンバーもすごい。個人的に著作を読んだことがある学者だけでも、ノーム・チョムスキー(言語学者)、サイモン・シン博士(サイエンスライター)、カール・ジンマー(サイエンスライター)、リチャード・ドーキンス博士(進化生物学者)、といった具合の豪華ラインナップ。

 回答のレベルや方向性も様々ですが、なかには見事な回答もたくさん含まれています。


「なぜ戦争が起きるの?」より
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 戦争はたいてい、わたしたちの代わりにものごとをきめている政府が、こわがる気もちからはじまる。
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Kindle版No.987


「宇宙はなぜあんなにキラキラしているの?」より
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 ひとつだけたしかなことがあります。あなたは宇宙について、そして宇宙のなかのわたしたちの居場所について、現在の天文学者のだれよりもたくさんのことを知るようになるでしょう。
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Kindle版No.748


 また、知らなかったことも多く、意外と勉強になります。


「世界ではじめてペットを飼ったのはだれ?」より
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 ペットだとわかる、いちばん古い時代のイヌは、今はイスラエルになっている地方の1万年から1万2000年も前に作られた人間のお墓で見つかった子イヌです。そのお墓に埋葬されている女の人は、片方の手を子イヌのからだの上にのせ、まるでなでていたように見えます。たぶん天国や来世でも、友だちとしてそばにいてほしかったのでしょう。(中略)
ペットとして飼われはじめたころのネコとしては、9000年ほど前、今はキプロスと呼ばれている島の小さなお墓に埋められたものがいます。ネコのお墓から40センチメートルくらいはなれた場所に、人間のお墓があります。その人が飼っていたネコにちがいありません。
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Kindle版No.844、854


「水にさわると、どうしてぬれている感じがするの?」より
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水にぬれるには少なくとも六個の水の分子がいることがわかった。五個以下でできている分子のグループは、一個の分子の厚さをもった膜を作ってしまう。六番目が加わると、その分子グループははじめてちっちゃな水たまりに変わって、ぼくたちがさわったときにぬれたと感じるようになるんだ。
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Kindle版No.2106


「空を飛ぶ動物には(コウモリはべつにして)なぜ羽毛が生えているの?」より
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鳥は恐竜のなかまだということがわかったので、わたしは何人かの生物学者たちと力をあわせ、鳥のDNAにある遺伝子のスイッチをいれたり切ったりして、鳥から恐竜をよみがえらせようとしている。
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Kindle版No.1478


「ウシは空気をよごしているの?」より
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オーストラリアの科学者たちが、カンガルーの胃にいる細菌は、ウシの胃にいる細菌よりもメタンを出す量が少ないことをつきとめたんだって。そこで、カンガルーの胃の細菌をウシの胃に移して、ウシをもっと環境にやさしい動物にしようと、いろいろ頭をひねっているところだそうだ。
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Kindle版No.2183


「わたしの胃をぜんぶのばすと、どのくらい長い?」
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大腸の内側も小腸のように、ニューロンと呼ばれる細胞で網目状におおわれている。ニューロンは脳のなかにも見つかる細胞だ。おどろくことに、きみの腸には、ネコの脳とほとんど同じ数の脳細胞があるんだよ。
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Kindle版No.3126


 ボーナスとして、同じ質問に対してコメディアンの皆さんから寄せられた回答が並んでいます。

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Q:ミミズを食べても大丈夫?
A:ママが見ていなければ。
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Q:いろんな肌の色をした人がいるのはなぜ?
A:カラーテレビがおもしろくなるように。
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Q:夜になるとどうして空が暗くなるの?
A:太陽が充電中だから。
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Q:ハチはハチを刺せる?
A:刺せるけど、もし刺したらハチの刑務所にはいらなくちゃいけなくて、そこではハエの服を着せられる。ハチはハエの服がだいっきらいだ。
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Q:宇宙のはじめに「なんにもなかった」のなら、どうして「なにか」ができたの?
A:いっしょうけんめいに努力した。
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Q:人はどうして永遠に生きていられないの?
A:友だち関係がむずかしくなりすぎるから。
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Q:どうしてトイレに行くの?
A:家のほかの場所をきれいにしておくため
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Q:ほかの人より背の高い人がいるのはなぜ?
A:ほかの人より背の低い人がいるから。
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 もしかしたら、子供たちは専門家のきちんとした回答より、こちらの方を気に入るかも知れません。


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