『エミリーの記憶喪失ワンダーランド』(ロブ・リーガー) [読書(小説・詩)]
ストレートロングの黒髪、黒のワンピース、パチンコ片手に、4匹の黒猫を連れた、ちょっと不気味で、誰にも何にも服従しない自由な女の子、エミリー・ザ・ストレンジ。
90年代の米国で登場するやたちまち人気キャラクターとなり、Tシャツ、ポストカード、マグカップという具合に次々とグッズが作られ、絵本になり、コミックブックになり、ついにはカウンターカルチャーの象徴となったエミリー。彼女を主人公としたヤングアダルト小説です。単行本(理論社)出版は 2010年2月。
エミリーってだれ?
という方は、とりあえず彼女のウェブページをご覧ください。
エミリー・ザ・ストレンジ
http://emilystrange.com/
輸入品を扱うギフトショップや大型文房具店などで彼女のイラスト入りグッズやらカードやら絵本やらを見かけることが多いので、おそらく多くの方が、ああこの娘か、と思うのではないでしょうか。そうです。彼女がエミリーです。
エミリーの絵本は何冊も持っていて、とても気に入っているのですが、さて、小説はどうでしょうか。エミリーの魅力は、何を考えているのかよく分からない、不条理なまでのクールさ、不敵さにあると思うので、小説には向かないのではないか、と懸念しながらも読んでみました。
しかし、意外なことに、これがすごく面白い。
いきなり記憶喪失の「あたし」が知らない街の小さな公園のベンチに座っているところから始まります。主人公は自分が誰だか分かりません。なぜこの街にいて、記憶喪失になったのかも分かりません。
何しろロブ・リーガーの素敵なイラスト満載なので、読者は彼女の正体がエミリーであることはすぐに分かります。しかし、でもエミリーってだれ?
彼女はとりあえず近くのカフェに住みつき、4匹の黒猫たちと共にダンボールハウスで暮らし始めます。やがて、どうやら自分が記憶喪失になったのにはちゃんとした理由があり、この街で何かやらなければならない任務があるらしい、ということが分かってくるのですが・・・。
主人公が街を探検しながら、発見したことを書き留めたメモが本書、という設定になっています。メモなので、最初の方が欠落していたり、途中のページが破りとられていたりします。これはストーリー展開と関係があるので要注意。
なお、奥付の最後に「この本では、途中でページが順番通りになっていない箇所がありますが、物語上の仕掛けとしてご理解ください」という注意書きがありますが、文字が小さいこともあり、見逃す読者も多いのではないでしょうか。ですから、最初にぱらぱらめくってみて、330ページの次が165ページ、172ページの隣に1ページ(すなわち本来の最初のページ)があったりしても驚かないで下さい。ちゃんと理由があります。
文章はこんな感じ。
「記憶喪失二十五日目。ちょっとあたしもう絶好調!!!!」(単行本p.228)
「記憶喪失二十七日目。やっちゃった。とうとうやっちゃった。(中略)なにをどうしていいかわかんなくて。めちゃくちゃ弱気になったせいで、あたしなんてまだガキンチョだし、とか、ここは一発パニクってみるか、とかおもいはじめてて」(単行本p.244)
「めでたい! もうね、うれしすぎて、あたし・・・・・・ヤバい」(単行本p.259)
エミリーって、見かけ通り、やっぱり13歳の女の子なのです。訳者もノリノリです。
キャラクター小説ではありますが、意外にストーリー展開はひねってあり、特に中盤から後半にかけての派手な展開やメタフィクショナルな仕掛けには感心しました。
ヤングアダルト小説ですから中学生くらいの皆さんが主要対象読者だと思われますが、エミリーのファンなら年齢を関わらずどなたでも大いに楽しめるでしょう。そうでない方は、とりあえず先にエミリーの絵本を何冊か読んでみて下さい。
90年代の米国で登場するやたちまち人気キャラクターとなり、Tシャツ、ポストカード、マグカップという具合に次々とグッズが作られ、絵本になり、コミックブックになり、ついにはカウンターカルチャーの象徴となったエミリー。彼女を主人公としたヤングアダルト小説です。単行本(理論社)出版は 2010年2月。
エミリーってだれ?
という方は、とりあえず彼女のウェブページをご覧ください。
エミリー・ザ・ストレンジ
http://emilystrange.com/
輸入品を扱うギフトショップや大型文房具店などで彼女のイラスト入りグッズやらカードやら絵本やらを見かけることが多いので、おそらく多くの方が、ああこの娘か、と思うのではないでしょうか。そうです。彼女がエミリーです。
エミリーの絵本は何冊も持っていて、とても気に入っているのですが、さて、小説はどうでしょうか。エミリーの魅力は、何を考えているのかよく分からない、不条理なまでのクールさ、不敵さにあると思うので、小説には向かないのではないか、と懸念しながらも読んでみました。
しかし、意外なことに、これがすごく面白い。
いきなり記憶喪失の「あたし」が知らない街の小さな公園のベンチに座っているところから始まります。主人公は自分が誰だか分かりません。なぜこの街にいて、記憶喪失になったのかも分かりません。
何しろロブ・リーガーの素敵なイラスト満載なので、読者は彼女の正体がエミリーであることはすぐに分かります。しかし、でもエミリーってだれ?
彼女はとりあえず近くのカフェに住みつき、4匹の黒猫たちと共にダンボールハウスで暮らし始めます。やがて、どうやら自分が記憶喪失になったのにはちゃんとした理由があり、この街で何かやらなければならない任務があるらしい、ということが分かってくるのですが・・・。
主人公が街を探検しながら、発見したことを書き留めたメモが本書、という設定になっています。メモなので、最初の方が欠落していたり、途中のページが破りとられていたりします。これはストーリー展開と関係があるので要注意。
なお、奥付の最後に「この本では、途中でページが順番通りになっていない箇所がありますが、物語上の仕掛けとしてご理解ください」という注意書きがありますが、文字が小さいこともあり、見逃す読者も多いのではないでしょうか。ですから、最初にぱらぱらめくってみて、330ページの次が165ページ、172ページの隣に1ページ(すなわち本来の最初のページ)があったりしても驚かないで下さい。ちゃんと理由があります。
文章はこんな感じ。
「記憶喪失二十五日目。ちょっとあたしもう絶好調!!!!」(単行本p.228)
「記憶喪失二十七日目。やっちゃった。とうとうやっちゃった。(中略)なにをどうしていいかわかんなくて。めちゃくちゃ弱気になったせいで、あたしなんてまだガキンチョだし、とか、ここは一発パニクってみるか、とかおもいはじめてて」(単行本p.244)
「めでたい! もうね、うれしすぎて、あたし・・・・・・ヤバい」(単行本p.259)
エミリーって、見かけ通り、やっぱり13歳の女の子なのです。訳者もノリノリです。
キャラクター小説ではありますが、意外にストーリー展開はひねってあり、特に中盤から後半にかけての派手な展開やメタフィクショナルな仕掛けには感心しました。
ヤングアダルト小説ですから中学生くらいの皆さんが主要対象読者だと思われますが、エミリーのファンなら年齢を関わらずどなたでも大いに楽しめるでしょう。そうでない方は、とりあえず先にエミリーの絵本を何冊か読んでみて下さい。
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