SSブログ

2017年を振り返る(7)[教養・ノンフィクション] [年頭回顧]

 まず大きな感銘を受けたのは、森山至貴さんの『LGBTを読みとく』と内藤正典さんの『となりのイスラム』の二冊です。無知に基づく「善意の」差別や抑圧を、自分の中から、少しでも減らすために、学ぶということが本当に大切だということを思い知らされました。

2017年09月14日の日記
『LGBTを読みとく クィア・スタディーズ入門』(森山至貴)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-09-14

2017年02月09日の日記
『となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』(内藤正典)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09


 他には、NHK教育番組『ピタゴラスイッチ』の監修でも知られる佐藤雅彦さんの『新しい分かり方』の変な感じや、頭木弘樹さんが編集した『絶望名人カフカの人生論』のネガティブパワー、高月園子さんが翻訳した『男子劣化社会』の居心地の悪さ、などが印象に残りました。


2017年11月07日の日記
『新しい分かり方』(佐藤雅彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-11-07

2017年08月17日の日記
『絶望名人カフカの人生論』(フランツ・カフカ、頭木弘樹:編集、翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-08-17

2017年08月24日の日記
『男子劣化社会』(フィリップ・ジンバルドー、ニキータ・クーロン、高月園子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-08-24


 詩歌の教養としては、大岡信さんが子供のために書いた『星の林に月の船 声で楽しむ和歌・俳句』と、歌人の笹公人さんによる『ハナモゲラ和歌の誘惑』が強烈でした。半世紀以上いきてきて、あまりにも知らないことが多すぎる。


2017年09月26日の日記
『星の林に月の船 声で楽しむ和歌・俳句』(大岡信:編)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-09-26

2017年06月21日の日記
『ハナモゲラ和歌の誘惑』(笹公人)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-21


 美術では、まずは三色刷りで描かれた動植物のイラストが美しい『イルミネイチャー』、何でボクの妹にでも描けるような絵が高値で売られているの?というみんなの素朴な疑問に答えてくれる『美術ってなあに?』、がお気に入り。

 個人作品集としては、待望の『石黒亜矢子作品集』と、林美登利さんの人形写真集第二弾『Night Comers ~ 夜の子供たち』が話題になった年でした。


2017年06月19日の日記
『イルミネイチャー』(カルノフスキー:絵、レイチェル・ウィリアムズ:文、小林美幸:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-19

2017年10月17日の日記
『美術ってなあに?』(スージー・ホッジ、小林美幸:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-10-17

2017年06月20日の日記
『石黒亜矢子作品集』(石黒亜矢子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-20

2017年11月13日の日記
林美登利 人形作品集 Night Comers ~ 夜の子供たち』(林美登利、石神茉莉、田中流)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-11-13



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

2017年を振り返る(6)[随筆・紀行・ルポ] [年頭回顧]

 研究者のフィールドワークを描いた前野ウルド浩太郎さんの『バッタを倒しにアフリカへ』と、川上和人さんの『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』の二冊が、とにかく若い人が読めば人生観変わるレベルの面白さ。


2017年06月22日の日記
『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-22

2017年09月20日の日記
『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』(川上和人)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-09-20


 人生観が変わるといえば、美奈子アルケトビ(はなもも)さんの『Life in the Desert 砂漠に棲む』もそう。著者は、NHK教育「岩合光昭の世界ネコ歩き アラブ首長国連邦」の冒頭に出てくるあの方です。


2017年05月25日の日記
『Life in the Desert 砂漠に棲む』(美奈子アルケトビ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-05-25


 作風も興味関心も大きく異なる作家夫婦が互いに本を薦めあう、という企画で夫婦仲が危機に陥る『読書で離婚を考えた。』も面白かった。


2017年08月16日の日記
『読書で離婚を考えた。』(円城塔、田辺青蛙)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-08-16


 他には、津村記久子さん、穂村弘さん、それぞれのエッセイ集が安定の面白さ。


2017年04月26日の日記
『まぬけなこよみ』(津村記久子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-04-26

2017年04月05日の日記
『大阪的』(津村記久子、江弘毅)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-04-05

2017年02月23日の日記
『鳥肌が』(穂村弘)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-02-23

2017年04月19日の日記
『野良猫を尊敬した日』(穂村弘)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-04-19


 怪談、オカルトまわりでは、まずは山岳奇譚の聞き取りを集めた『山怪』の続篇、『山怪 弐 山人が語る不思議な話』(田中康弘)が魅力的でした。UFOを「懐かし昭和ネタ」として扱う『UFOにあいたかった 三島由紀夫から吉田類まで』、そして著名なUFO事件をまとめるASIOS印の教科書『UFO事件クロニクル』が印象に残っています。


2017年06月15日の日記
『山怪 弐 山人が語る不思議な話』(田中康弘)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15

2017年12月20日の日記
『UFOにあいたかった 三島由紀夫から吉田類まで』(朝日新聞、小泉信一)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-12-20

2017年09月07日の日記
『UFO事件クロニクル』(ASIOS)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-09-07



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

2017年を振り返る(5)[詩歌] [年頭回顧]

 2017年は、河野聡子さんの新作『地上で起きた出来事はぜんぶここからみている』が出版された年でした。内容はもとよりデザインも素晴らしく、そのデザインを担当した「いぬのせなか座」の叢書第一弾『灰と家』(鈴木一平)も急いで買いました。


2017年07月19日の日記
『地上で起きた出来事はぜんぶここからみている』(河野聡子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-07-19

2017年09月21日の日記
『灰と家』(鈴木一平)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-09-21


 旅と生活について切実につづった三角みづ紀さんの『とりとめなく庭が』、色彩豊かな風景が目に浮かぶような井坂洋子さんの『七月のひと房』、標題は短歌で目次は歌集だけど全体としては詩集というたくらみが見事な効果をあげているカニエ・ナハさんの『IC』などから、強い感銘を受けました。

 カニエ・ナハさんは装幀というか凝りまくり手作りブックデザインでも活躍しておられ、ポエケットや文学フリマでその作品を入手できたのも嬉しい。


2017年10月11日の日記
『とりとめなく庭が』(三角みづ紀)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-10-11

2017年02月16日の日記
『七月のひと房』(井坂洋子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-02-16

2017年12月13日の日記
『IC』(カニエ・ナハ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-12-13

2017年05月10日の日記
『玉繭の間取り』(中家菜津子、装幀:カニエ・ナハ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-05-10

2017年07月12日の日記
『おばけ詩篇』(暁方ミセイ、装幀:カニエ・ナハ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-07-12


 怖い詩集としては、小松郁子さんの『消える村』と『三匹のとけだした犬』が極上の怪談のようで、まじで夜中に困りました。また記憶の凄みという点では、財部鳥子さんの『氷菓とカンタータ』がすくみ上がるような衝撃。


2017年05月30日の日記
『消える村』(小松郁子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-05-30

2017年06月29日の日記
『三匹のとけだした犬』(小松郁子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-29

2017年05月29日の日記
『氷菓とカンタータ』(財部鳥子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-05-29


 物語や民話の形やノリを巧みに使った詩集としては、伊藤浩子さんの『undefined』と、マーサ・ナカムラさんの『狸の匣』が印象に残りました。また小川三郎さんの『あかむらさき』における「奇妙な話」風の雰囲気も好みです。


2017年10月25日の日記
『undefined』(伊藤浩子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-10-25

2017年12月18日の日記
『狸の匣』(マーサ・ナカムラ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-12-18

2017年07月13日の日記
『あかむらさき』(小川三郎)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-07-13


 詩集で猫やJK(女子高生)という題材を扱うのは結構リスキーではないかと思うのですが、松本秀文さんの『「猫」と云うトンネル』、尾久守侑さんの『国境とJK』は、そこに挑戦してくれました。


2017年12月14日の日記
『「猫」と云うトンネル』(松本秀文)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-12-14

2017年03月13日の日記
『国境とJK』(尾久守侑)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-03-13


 花山多佳子、花山周子、という母娘歌人の歌集を続けて読んで、それぞれが家族のことをよんだ歌を比べる、というやや悪趣味な楽しみ。


2017年08月21日の日記
『胡瓜草』(花山多佳子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-08-21

2017年08月22日の日記
『風とマルス』(花山周子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-08-22


 仕事や生活のことをよんだ、切実さあふれる歌集として、井上法子さんの『永遠でないほうの火』、仲田有里さんの『マヨネーズ』、原田彩加さんの『黄色いボート』、蒼井杏さんの『瀬戸際レモン』が印象に残りました。怒りと諦めが入り交じった現代の心象風景が刻まれています。


2017年01月25日の日記
『永遠でないほうの火』(井上法子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-01-25

2017年05月24日の日記
『マヨネーズ』(仲田有里)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-05-24

2017年04月11日の日記
『黄色いボート』(原田彩加)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-04-11

2017年01月16日の日記
『瀬戸際レモン』(蒼井杏)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-01-16


 社会や自分に対する絶望や憤りをそれなりにユーモアでくるもうとしてちょっとこうシャレにならないことになってしまう歌集として、松木秀さんの『親切な郷愁』、永井祐さんの『日本の中でたのしく暮らす』、虫武一俊さんの『羽虫群』が、それぞれインパクトありました。


2017年03月22日の日記
『親切な郷愁』(松木秀)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-03-22

2017年04月06日の日記
『日本の中でたのしく暮らす』(永井祐)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

2017年01月18日の日記
『羽虫群』(虫武一俊)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-01-18


 技巧的でたくらみのある歌集としては、斉藤斎藤さんの『渡辺のわたし』、谷川電話さんの『恋人不死身説』、倉阪鬼一郎さんの『世界の終わり/始まり』、奥村晃作さんの『造りの強い傘』が良かった。


2017年09月27日の日記
『渡辺のわたし』(斉藤斎藤)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-09-27

2017年11月16日の日記
『恋人不死身説』(谷川電話)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-11-16

2017年06月28日の日記
『世界の終わり/始まり』(倉阪鬼一郎)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-28

2017年02月15日の日記
『造りの強い傘』(奥村晃作)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15


 しかしインパクトという点では、個人的に最も衝撃的だったのがしんくわさんのデビュー歌集しんくわでした。これはしんくわ。


2017年03月14日の日記
『しんくわ』(しんくわ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-03-14


 若手歌人の紹介本としては、『太陽の舟 新世紀青春歌人アンソロジー』と山田航さんの『桜前線開架宣言』が役に立ちました。特に『桜前線開架宣言』はお勧めです。


2017年03月08日の日記
『桜前線開架宣言』(山田航)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-03-08

2017年04月20日の日記
『太陽の舟 新世紀青春歌人アンソロジー』
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-04-20


 句集は残念ながらあまり読んでいないのですが、小池正博さんの『転校生は蟻まみれ』が圧倒的に面白かった。また写真と俳句のコラボという異色句集として内田美紗さんの『鉄砲百合の射程距離』が衝撃的でした。あとは、倉阪鬼一郎の『怖い俳句』に続く俳句アンソロジー『猫俳句パラダイス』が素敵。猫いいよね。


2017年02月01日の日記
『転校生は蟻まみれ』(小池正博)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-02-01

2017年12月21日の日記
『鉄砲百合の射程距離』(内田美紗:俳句、森山大道:写真、大竹昭子:編集)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-12-21

2017年01月31日の日記
『猫俳句パラダイス』(倉阪鬼一郎)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-01-31


 詩歌同人誌では、『モーアシビ』、『Down Beat』、『Aa』、それぞれのクオリティの高さに感銘を受けました。


2017年05月23日の日記
『モーアシビ 第33号』(白鳥信也:編集、川上亜紀・他)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-05-23

2017年08月09日の日記
『Down Beat 10号』(柴田千晶:発行者代表)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-08-09

2017年09月25日の日記
『Aa』(高塚謙太郎、鈴木一平、疋田龍乃介、瀬戸夏子、タケイ・リエ、他)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-09-25



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

2017年を振り返る(4)[SF・ミステリ] [年頭回顧]

 今、最もお気に入りのSF作家といえば上田早夕里さんと宮内悠介さんなんですが、2017年には両名ともSFとは言いにくい長篇を出してくれました。どれも傑作なので、むしろSFファンではない読者にお勧めします。


2017年12月19日の日記
『破滅の王』(上田早夕里)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-12-19

2017年06月06日の日記
『あとは野となれ大和撫子』(宮内悠介)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-06

2017年01月26日の日記
『カブールの園』(宮内悠介)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-01-26


 SFど直球である藤井太洋さんの短篇集『公正的戦闘規範』、月村了衛さんの人気シリーズ最新作『機龍警察 狼眼殺手』、そして「ストルガツキー兄弟+ネットロア怪談」という大業『裏世界ピクニック』を軽やかにキメてみせた宮澤伊織さん、いずれも大いに楽しみました。


2017年11月06日の日記
『公正的戦闘規範』(藤井太洋)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-11-06

2017年10月26日の日記
『機龍警察 狼眼殺手』(月村了衛)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-10-26

2017年11月30日の日記
『裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト』(宮澤伊織)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-11-30

2017年03月23日の日記
『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』(宮澤伊織)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-03-23


 SFアンソロジー花盛りというか、とにかく次から次へと出版されて全部は読みきれません。特にAIテーマが盛り上がった年でした。


2017年08月30日の日記
『行き先は特異点 年刊日本SF傑作選』(大森望、日下三蔵、藤井太洋、宮内悠介、上田早夕里)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-08-30

2017年06月07日の日記
『誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選』(野﨑まど・大森望:編)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-07

2017年05月11日の日記
『人工知能の見る夢は AIショートショート集』(宮内悠介、矢崎存美、田中啓文、林譲治、井上雅彦、堀晃、高井信、新井素子、高野史緒、かんべむさし、森下一仁、他)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-05-11

2017年02月21日の日記
『AIと人類は共存できるか?』(早瀬耕、藤井太洋、長谷敏司、吉上亮、倉田タカシ、人工知能学会:編集 )
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-02-21

2017年01月23日の日記
『ヴィジョンズ』(宮内悠介、円城塔、神林長平、長谷敏司、他、大森望:編集)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-01-23


 海外SFでは、何といってもケン・リュウの活躍が注目された年でした。『母の記憶に』はSF界を越えて大きな話題に。またSFマガジンでは実質「中華SF」の特集が組まれ、話題作『折りたたみ北京』もケン・リュウによる英訳からの重訳で掲載されました。中華SFの翻訳ブームが来るといいなあ。

 他には、「バラード+ラブクラフト」という異色作『時間のないホテル』(ウィル・ワイルズ)、スコルジーの人気スペースオペラ『老人と宇宙』シリーズ最新作、『テメレア戦記』のナオミ・ノヴィクによる王道的ファンタジー長篇『ドラゴンの塔』などが印象に残りました。


2017年09月06日の日記
『母の記憶に』(ケン・リュウ、古沢嘉通・幹遙子・市田泉:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-09-06

2017年09月28日の日記
『時間のないホテル』(ウィル・ワイルズ、茂木健:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-09-28

2017年05月31日の日記
『終わりなき戦火(老人と宇宙6)』(ジョン・スコルジー、内田昌之:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-05-31

2017年04月13日の日記
『ドラゴンの塔(下) 森の秘密』(ナオミ・ノヴィク、那波かおり:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-04-13

2017年04月12日の日記
『ドラゴンの塔(上) 魔女の娘』(ナオミ・ノヴィク、那波かおり:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-04-12


 古典の新訳・再紹介としては、ハーラン・エリスンの短篇集、バラードの短篇集、そして伊藤典夫さんが翻訳した海外SF短篇アンソロジーが、いずれも読みごたえがありました。バラード短編全集は全5巻とのことで、残りは今年読もうと思います。


2017年10月12日の日記
『J・G・バラード短編全集2 歌う彫刻』(J.G.バラード、柳下毅一郎:監修、浅倉久志他:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-10-12

2017年05月16日の日記
『J・G・バラード短編全集1 時の声』(J.G.バラード、柳下毅一郎:監修、浅倉久志他:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-05-16

2017年02月27日の日記
『死の鳥』(ハーラン・エリスン、伊藤典夫 :翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-02-27

2017年01月17日の日記
『伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ』(ヘンリー・カットナー、フリッツ・ライバー、フレデリック・ポール、他、伊藤典夫:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-01-17



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

2017年を振り返る(3)[小説] [年頭回顧]

 まずは笙野頼子さんですが、2016年に出版された『植民人喰い条約 ひょうすべの国』に続いて、2017年は『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』が大きな話題となった年でした。この偉大なる二冊のかげに隠れてしまった感はありますが、『猫道 単身転々小説集』(笙野頼子)も素晴らしい短篇集です。猫との関係を描いた作品を集めた一冊で、笙野頼子さんの著作を初めて読むという方にも最適。みなさん最初に手を出すらしい『笙野頼子三冠小説集』よりも、「笙野頼子 最初の一冊」として個人的にお勧め。

 さらに2017年には、人でないものたちが集う図書館を描いた楽しい『S倉極楽図書館』がアンソロジーに収録されました。また小説ではないのですが、憲法テーマのエッセイ『ガラス細工の至宝』、ヘイトカウンターデモに参加した体験を描いた『九月の白い薔薇 ――ヘイトカウンター』、北原みのりさんによるロングインタビュー『「フェミニズム」から遠く離れて』、が発表されました。個人的には『「フェミニズム」から遠く離れて』は必読だと思います。


2017年03月16日の日記
『猫道 単身転々小説集』(笙野頼子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-03-16

2017年08月03日の日記
『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』(笙野頼子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-08-03

2017年06月13日の日記
『図書館情調』(日比嘉高:編、笙野頼子、三崎亜記、他)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-13

2017年04月24日の日記
『ガラス細工の至宝』(笙野頼子)(『私にとっての憲法』(岩波書店編集部:編)収録)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-04-24

2017年12月07日の日記
『九月の白い薔薇 ――ヘイトカウンター』(笙野頼子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-12-07

2017年12月25日の日記
『「フェミニズム」から遠く離れて』(笙野頼子)(『日本のフェミニズム since 1886 性の戦い編』(北原みのり責任編集)収録)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-12-25


 町田康さんは、救済を求め穢土を彷徨うというこれまでのテーマを突き詰めたような、町田版旧約聖書ともいうべき長篇小説『ホサナ』が話題となりました。愛犬スピンクの死という衝撃を伝える『スピンクの笑顔』も刊行され、二冊を合わせ読むことで涙ぼろぼろ。とにかく両方読んでほしい。

 また、大阪魂を回復すべく粉もんを拵えてはわやになる連作短篇集『関東戎夷焼煮袋』や、猫の猫たるゆえんを描く短篇『諧和会議』は、とにかく楽しい。そして2016年に発表されるや大きな話題となった『宇治拾遺物語』(町田康:現代語訳)の、伊藤比呂美さんをして「町田コロス!」と言わせたあの名訳がどのようにして出来たのかを解説する『みんなで訳そう宇治拾遺』も印象に残りました。


2017年07月06日の日記
『ホサナ』(町田康)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-07-06

2017年11月29日の日記
『スピンクの笑顔』(町田康)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-11-29

2017年04月04日の日記
『関東戎夷焼煮袋』(町田康)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-04-04

2017年06月14日の日記
『ニャンニャンにゃんそろじー』(町田康、他)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-14

2017年02月08日の日記
『作家と楽しむ古典』(池澤夏樹、伊藤比呂美、森見登美彦、町田康、小池昌代)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-02-08


 矢崎存美さんは、人気の「ぶたぶた」シリーズ新作二冊に加えて、新しいシリーズを二つ立ちあげました。今後の展開が楽しみです。


2017年07月11日の日記
『海の家のぶたぶた』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-07-11

2017年12月12日の日記
『ぶたぶたラジオ』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-12-12

2017年10月16日の日記
『NNNからの使者 猫だけが知っている』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-10-16

2017年12月26日の日記
『繕い屋 月のチーズとお菓子の家』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-12-26


 これまで主にミステリを書いてきた両角長彦さんは、自身の体験も活かした一般小説『メメント1993 34歳無職父さんの東大受験日記』で新境地を開拓。個人的には、ひりつくようなサスペンスと意表をつくどんでん返しが印象的なギャンブル小説『臓器賭博』がお気に入り。


2017年01月19日の日記
『ブラッグ 無差別殺人株式会社』(両角長彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-01-19

2017年02月02日の日記
『臓器賭博』(両角長彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-02-02

2017年02月13日の日記
『人間性剥奪』(両角長彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-02-13

2017年03月06日の日記
『解決人』(両角長彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-03-06

2017年11月09日の日記
『メメント1993 34歳無職父さんの東大受験日記』(両角長彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-11-09

2017年06月08日の日記
『短篇ベストコレクション 現代の小説2017』(日本文藝家協会:編、両角長彦、三崎亜記、森絵都、姫野カオルコ、他)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-06-08


 昭和を舞台に、塾を経営する一家の家族史を描く長篇『みかづき』(森絵都)は熟練の面白さで、いずれ朝ドラになるのではないでしょうか。

 明るく力強いフェミニズムに支えられた『おばちゃんたちのいるところ』(松田青子)は、奇想を含む楽しい連作短篇集。斉藤倫さんとヒグチユウコさんの絵本は、子供たちに何が本当に大切なことなのかを考えさせてくれます。


2017年03月30日の日記
『みかづき』(森絵都)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-03-30

2017年01月12日の日記
『おばちゃんたちのいるところ』(松田青子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-01-12

2017年10月10日の日記
『クリスマスがちかづくと』(斉藤倫、くりはらたかし:イラスト)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-10-10

2017年08月15日の日記
『せかいいちのねこ』(ヒグチユウコ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-08-15


 特筆すべきなのは、文芸誌『たべるのがおそい』の3号と4号が安定して刊行されたことです。どの号も傑作アンソロジーといっても過言ではないレベルの作品が集まっており、しかも1号と4号からそれぞれ芥川賞候補が出るという快挙。見逃してはいけないと思う。


2017年04月18日の日記
『たべるのがおそい vol.3』(星野智幸、最果タヒ、山尾悠子、他、西崎憲:編集)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-04-18

2017年10月19日の日記
『たべるのがおそい vol.4』(町田康、宮内悠介、他、西崎憲:編集)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-10-19


 海外文学では、「ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン」が4ページにまたがってひたすら続くという壮絶なラリーが多大なるインパクトをもたらすパク・ミンギュの『ピンポン』、魔術的なまでに冴えた小説技法を駆使して「差別も暴力も虐待もなくならないこの世界で傷はどうしたら癒せるのか」という問いと祈りに正面から向き合うトニ・モリスンの『神よ、あの子を守りたまえ』、そして映画化されたことでも話題になったジミー・リャオの美しい絵本『星空』が印象に残りました。翻訳者の方々に心から感謝します。


2017年07月26日の日記
『ピンポン』(パク・ミンギュ、斎藤真理子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-07-26

2017年07月20日の日記
『神よ、あの子を守りたまえ』(トニ・モリスン、大社淑子:訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20

2017年01月24日の日記
『星空』(幾米、ジミー・リャオ、天野健太郎:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2017-01-24



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ: