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『Galaーガラ』(ジェローム・ベル) [ダンス]

 2018年1月21日は、夫婦で彩の国さいたま芸術劇場に行ってジェローム・ベル演出による『Gala』を鑑賞しました。世界50都市以上で上演され、それぞれの開催都市ごとに20名の出演者を募ったという話題作の“埼玉版”です。上演時間90分。


[キャスト他]

構想・演出: ジェローム・ベル

出演(さいたま芸術劇場版):
相澤陽太、新井悠汰、入手杏奈、梅村千春、Elhadji Ba、大北岬、オクダサトシ、金子紗采、川口隆夫、木下栞、佐々木あゆみ、竹田仁美、BIBIY GERODELLE、百元夏繪、星遙輝、堀口旬一朗、矢崎与志子、吉田駿太朗、吉村計、李昊


 まず、さいたま芸術劇場の写真が投影され、続いて世界各地の劇場の写真が次々と映されてゆきます。大型劇場、小劇場、円形野外劇場、公民館みたいな所、プラスチックの椅子が並べれている商用施設の一画、さらには草原に丸太を置いただけの「劇場」。どうやら「多様性」がテーマらしいと、におわせます。

 続いて、「バレエ」「社交ダンス(ワルツ)」「マイケル・ジャクソン」などのお題が掲示され、20名の出演者が、一人ずつ、舞台を左から右へと横切りながら、お題のダンスを披露してゆきます。

 20名の出演者は、バレエダンサー、コンテンポラリーダンサー、バトントワラー、俳優、高齢者、幼い子供、障がい者、外国人、など様々。個人的には、「コンドルズ」のオクダサトシさんがいたり、つい先日この劇場で『大野一雄について』を踊ったばかりの川口隆夫さんがいたりして、びっくりしました。

 ついつい「身体の多様性(の賛美)」「舞踊の多様性(の賛美)」などと演出の意図を考えてしまいますが、そこは何しろ、ジェローム・ベル。これまで個人的に観たことがある作品は二つだけですが、無人の舞台に音楽だけ流してこれはダンスだと言い張ったり、マーラーの交響曲を演奏しながら演奏者が次々と倒れて死んだり、いずれも批評性の高いというか底意地の悪い演出で、「舞台を鑑賞する、というのはどういう行為なのか」という問いを観客に突きつけて居心地の悪い思いをさせてきた、あの人です。

 今作も「素人や、障がい者や、子供が、プロのダンサーと並んで頑張って踊っている様を受け入れて感動する」「みんな違ってみんないい」といった作品ではないだろう、と半信半疑でいると……。

 それぞれの出演者が「お手本」となって自分の得意なダンスを披露し、他の出演者たちがその真似をして踊る、というのを繰り返してゆくうちに、舞台上では出演者たちがチームとしてまとまってゆき、客席では観客が高揚感と一体感でまとまってゆくのです。客席から出演者に「がんばれ」と声援が送られたり。暖かい雰囲気。

 驚くほど感動的なシーンが繰り返され、最後は出演者たちと観客が一体となって盛り上がる、というたいそう高揚する展開となります。観客を大いに楽しませ、大いに感動させ、劇場という空間でだけ成立する共犯者的熱狂の心地よさを大いに堪能させるという、まんまとジュローム・ベルにしてやられたーという一抹の後ろめたさを残す、印象的な公演でした。



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