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2010年を振り返る(5) [年頭回顧]

2010年を振り返る[コンテンポラリーダンス]

 2010年に観たコンテンポラリーダンス公演(映像含む)のうち、印象に残ったものについてまとめてみます。

 いきなり公演の話でなくて恐縮ですが、昨年の話題としてまずは『ダンス・バイブル -コンテンポラリー・ダンス誕生の秘密を探る』(乗越たかお)の出版を挙げておきたいと思います。

 バレエからモダンダンス、そしてコンテンポラリーダンスへと発展していった歴史を分かりやすく解説してくれる一冊で、コンテンポラリーダンスなるものが正体不明で釈然としない、何を観ればいいのかさっぱり分からず入門者には敷居が高すぎる、と感じている方は、本書と『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド HYPER』を合わせて読むことを強くお勧めします。あとはチケットを購入するだけ。

 今年、最も印象に残っている公演といえば、『SKINNERS - 揮発するものへ捧げる』(勅使川原三郎)です。今さらながら、初めて勅使川原三郎のダンスと演出を観てしまい、大いなる衝撃を受けました。

 市販映像『バウンド&アブソリュート・ゼロ 勅使川原三郎のダンス世界』(勅使川原三郎、ジャン・シュミット=ガレ監督)で観た『アブソリュート・ゼロ』も素晴らしかった。こんなダンスを何度も繰り返し再生して観ることが出来るなんて。

 『翼 TSUBASA』(森山開次)の再演も印象的でした。森山開次さんの白い肉体が緊張感をはらみつつ静止しているだけで、それそこの舞台はもはや異界。能の名人と世界的バレエダンサーにはさまれ、何とか調和をとるべく頑張る『鷹の井戸』(梅若玄祥、森山開次、ヤンヤン・タン)公演も面白かったと思います。

 一昨年に続き、BATIKの黒田育世さんも素晴らしい舞台をみせてくれました。新作公演『あかりのともるかがみのくず』(黒田育世、 BATIK)、代表作の再演『ペンダントイヴ -Studio Version-』(BATIK、黒田育世)、そして笠井叡さんが振付演出を担当した『カルミナ・ブラーナ』(黒田育世、BATIK、笠井叡)と、いずれも感動の嵐、というか土石流。今年も押し流されたい。

 珍しいキノコ舞踏団については、『あなたが「バレる」と言ったから』(伊藤千枝、珍しいキノコ舞踏団)、『私が踊るとき』(伊藤千枝、珍しいキノコ舞踏団)、という再演公演しか観られなかったので、個人的に少し不満が残っています。今年は新作公演に期待。

 『中国の不思議な役人/瀕死の白鳥/ボレロ』(H・アール・カオス)は有無を言わさぬ迫力だったし、『dancetoday 2010』(康本雅子、KENTARO!!、伊藤郁女、ミルカ・プロケソバ、山崎広太)における康本雅子さんのダンスも素敵。『月の的を射る犬』(森下真樹)も良かったと思います。たぶん。

 その他、『桜の園 ~いちご新聞から~』(矢内原美邦)は見事な構成と映像の使い方に感心させられました。『イデソロリサイタル』(井手茂太)も楽しい。今年は、しばらく活動を休止していたイデビアン・クルーが活動再開するとのことなので、大いに期待したいところです。

 目を海外に転じると、まずは2009年に死去したピナ・バウシュの追悼公演『私と踊って』(ピナ・バウシュ振付、ヴッパタール舞踊団)が感動的でした。その様子はNHKが放映してくれましたが、その特集番組の最後に流れた『ダンシング・ドリーム ~10代が踊るピナ・バウシュの「コンタクトホーフ」~』というドキュメンタリーフィルム(監督:アン・リンセル、ライナー・ホフマン)がまた素晴らしく、涙ぼろぼろ。

 ピナ・バウシュ作品の市販映像としては『オルフェウスとエウリディケ Orpheus und Eurydike』(ピナ・バウシュ振付、マリ・アニエス・ジロ、パリ・オペラ座)がお勧めです。パリ・オペラ座のダンサーたちがどのようにピナ・バウシュを踊ったのか、ご確認ください。なおDVD版とブルーレイ版は別商品となっているので気をつけて。

 そして『3Abschied ドライアップシート(3つの別れ)』(アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル)がこれまた素晴らしい公演でした。マーラー『大地の歌』最終楽章「告別」をダンスにする、すなわち「死とその受容」を身体で表現する、などという不可能事に敢然と挑戦してゆく舞台はスリリングでした。ローザス関連では、池田扶美代さんの肉声が聞ける『ナイン・フィンガー Nine Finger』(池田扶美代、ベンヤミン・ヴォルドンク、アラン・プラテル)も良かったと思います。

 その他の来日公演としては、『MAX マックス』(バットシェバ舞踏団、オハッド・ナハリン振付)、『アポクリフ』(シディ・ラルビ・シェルカウイ、首藤康之、ディミトリ・ジュルド)、『Political Mother ポリティカル・マザー』(ホフェッシュ・シェクター振付)が印象に残っています。

 中村祥子さん目当てで購入した市販映像作品『カラヴァッジオ Caravaggio』(マウロ・ビゴンゼッティ振付、マラーホフ、中村祥子、ベルリン国立バレエ団)にびっくりして、慌てて同じくマウロ・ビゴンゼッティが振付した『ロメオとジュリエット Romeo & Juliet』(マウロ・ビゴンゼッティ振付、成澤幾波子、アテルバレット)の映像を観てまた驚嘆。どちらもインパクト大というか、気分が悪くなるほどの肉体派。他の作品もぜひ映像作品化してほしいものだと思います。

 映像作品と言えば、ブラジルのダンスカンパニー、グループ・コルポの『Double Bill』(ホドリゴ・ペデルネイラス振付、グルーポ・コルポ)のカッコ良さにはシビれました。また、長らくビデオでしか観られなかったマッツ・エック版『ジゼル』(マッツ・エック振付)の映像が、ついにDVD化されたのも喜ばしいことです。


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