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2016年を振り返る(6)[随筆・紀行・ルポ] [年頭回顧]

 2016年は、「〆切」や「誤植」といった出版業の内情をテーマにしたアンソロジーが面白かった。七転八倒しつつ、言い訳したり逃げたりする作家たちの醜態をこれでもかと集めた『〆切本』が、個人的にはいっとうお気に入り。


『〆切本』
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-22

『誤植文学アンソロジー 校正者のいる風景』(高橋輝次:編著)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28


 辺境作家の高野秀行さんの著作としては、アジア各地の「納豆」を探求した『謎のアジア納豆』と、トルコのUMAを探求した『怪獣記』、この二冊を読みました。どちらも眠れなくなるほどの面白さ。ぜひ多くの人に読んでほしいと思います。たぎるぞ。


『謎のアジア納豆 そして帰ってきた〈日本納豆〉』(高野秀行)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30

『怪獣記』(高野秀行)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-07-20


 作家のエッセイ集としては、津村記久子さんのぼやきエッセイと読書エッセイ、松田青子さんのこれが好き好き大好きエッセイが印象的でした。


『くよくよマネジメント』(津村記久子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-05-24

『枕元の本棚』(津村記久子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-07-13

『ロマンティックあげない』(松田青子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-08-04


 上田早夕里さんは、トークショーなどの場で行った自作解説をまとめて電書化してくれました。作品を読んで気に入った方にはお勧めです。


『ミューズ叢書<1> 特集『妖怪探偵・百目』対談&インタビュー』(上田早夕里、八杉将司)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-02-04

『ミューズ叢書<2> トークイベント記録』(上田早夕里)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-04-13


 他に、町田康さんの人生相談、東山彰良さんの熱いハードボイルドエッセイ、万城目学さんの脱力エッセイなど。

『人生パンク道場』(町田康)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-03-03

『ありきたりの痛み』(東山彰良)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-02-23

『ザ・万遊記』(万城目学)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-01-20


 実話系怪談は避けているのですが(だって怖いんだもん)、『セメント怪談稼業』の松村進吉さんだけは例外として読んでいます。森絵都さんの絵本は、放射能汚染による立入禁止区域内にある牧場で牛を守り続ける実話が元になっています。『おいで、一緒に行こう』に感動した方はこちらもどうぞ。


『「超」怖い話 丙(ひのえ)』(松村進吉)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-08-03

『希望の農場』(森絵都:作、吉田尚令:絵)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-04-06


 猫エッセイのコーナー。猫歌人・猫エッセイストの二尾智さんが短歌とエッセイで綴る猫馬鹿あるある、四季折々の猫を詠んだ俳句から88句を選び解説とマンガを付けた猫好きのための句集、それぞれ猫好きにはたまりません。

『これから猫を飼う人に伝えたい10のこと』(仁尾智、小泉さよ:イラスト)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-07

『ねこのほそみち 春夏秋冬にゃー』(堀本裕樹、ねこまき:漫画)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06


 猫といえば台湾、猫夫人の猫写真集は鉄板。他に味わい深いロゴやタイポグラフィ、レタリングを鑑賞・収集する路上文字観察の台湾篇、料理研究家による台湾美食ガイド、などが印象に残りました。


『店主は、猫 台湾の看板ニャンコたち』(猫夫人、天野健太郎・小栗山智:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-03-10

『タイポさんぽ 台湾をゆく』(藤本健太郎、柯志杰)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-06-30

『私的台湾食記帖』(内田真美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-06-08



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2016年を振り返る(5)[詩歌] [年頭回顧]

 2016年には、東京国立近代美術館で開催された「声ノマ 全身詩人、吉増剛造展」が強烈なインパクトを残してくれました。また、児童文学総合誌「飛ぶ教室」の詩歌特集号も忘れがたい。


『声ノマ 全身詩人、吉増剛造展』
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-08-01

『飛ぶ教室 第44号(2016年冬) 金原瑞人編集号 えっ,詩? いや,短歌! それとも俳句?』(斉藤倫、最果タヒ、文月悠光)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03


 詩集では、異国における生活の断片を静かに散りばめてゆく、三角みづ紀さんの『よいひかり』と和田まさ子さんの『かつて孤独だったかは知らない』の二冊に強い感銘を受けました。


『よいひかり』(三角みづ紀)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-01

『かつて孤独だったかは知らない』(和田まさ子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-09


 読者を異界へ誘い込んでゆく詩集は個人的に好みなのですが、とにかくじんわり怖くなる日和聡子さんの『砂文』、戦争や虐殺に逃げずに向き合おうとするカニエ・ナハさんの『馬引く男』、ほのぼのしているようでどこかひやりとしたものも感じる岩佐なをさんの『パンと、』が印象的でした。


『砂文』(日和聡子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-27

『馬引く男』(カニエ・ナハ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-11-30

『パンと、』(岩佐なを)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17


 詩はいわゆる詩的な言葉から生まれるとは限りません。一昨年は少女マンガの言葉から先鋭的な現代詩が生まれる様を目の当たりにして感激したのですが、昨年はロックのベタベタな歌詞や表現からクールな現代詩を紡いでみせた山﨑修平さんの『ロックンロールは死んだらしいよ』、ひらがな連打でリズムを刻む橘上さんの『うみのはなし』、知覚対象ではなく知覚体験をそのまま表現するための意表をつく技法が冴える貞久秀紀さんの『貞久秀紀詩集』という三冊が、先入観をぶちぶちにしてくれました。


『ロックンロールは死んだらしいよ』(山﨑修平)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-26

『うみのはなし』(橘上)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16

『貞久秀紀詩集』(貞久秀紀)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-04-05


 四元康祐さんの長篇小説とエッセイ集も面白かった。特に、文学ムック『たべるのがおそい vol.2』に掲載された『ミハエリの泉』と、詩のオリジナリティとは何かという疑問を扱った長篇『偽詩人の世にも奇妙な栄光』。


『たべるのがおそい vol.2』(石川美南、宮内悠介、穂村弘、津村記久子、四元康祐、西崎憲:編集)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-19

『偽詩人の世にも奇妙な栄光』(四元康祐)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-03-01

『現代ニッポン詩(うた)日記』(四元康祐)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-05-25


 歌集はあまり読めなかったのですが、何といっても木下龍也さんの第二歌集は素敵でした。


『きみを嫌いな奴はクズだよ』(木下龍也)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-06-29


 短歌エッセイから絵本まで、どんどん出版される穂村弘さんの本はどれも面白い。これで歌集も読めれば、と。


『短歌ください その二』(穂村弘)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-03-30

『短歌ください 君の脱け殻篇』(穂村弘)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-05-19

『ぼくの短歌ノート』(穂村弘)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-04-04

『まばたき』(穂村弘、酒井 駒子:絵)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-02-09



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2016年を振り返る(4)[SF・ミステリ] [年頭回顧]

 2016年に読んだ海外SFでは、まずはケン・リュウの『蒲公英王朝記』が印象に残っています。楚漢戦争の史実をベースに、架空の群島世界で繰り広げられる「項羽と劉邦」の物語。二冊が刊行されましたが、これでまだ三部作の第一部なのだそうで、続きが気になります。


『蒲公英王朝記 巻ノ一 諸王の誉れ』(ケン・リュウ、古沢嘉通:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-09-08

『蒲公英王朝記 巻ノ二 囚われの王狼』(ケン・リュウ、古沢嘉通:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-09-12


 本格SFとしては、クレオール文化やAIの自己認識など今日的な問題意識を巧みに設定に落とし込んで注目された『叛逆航路』(アン・レッキー)、第二次世界大戦で枢軸側が勝利した世界を舞台とした21世紀の『高い城の男』(P.K.ディック)こと『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』が良かった。銀河帝国や巨大ロボット、さらには後述する宇宙海賊など、古めかしいSFガジェットを、パロディや懐古趣味ではなく、現代SFとしてきちんと蘇らせる試みはこれからも続くだろうなと思います。


『叛逆航路』(アン・レッキー、赤尾秀子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-02-25

『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』(ピーター・トライアス、中原尚哉:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-05


 短篇集では、とにかくぶっちぎりだったのがジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『あまたの星、宝冠のごとく』。SFに何が出来るかをまざまざと見せつけた孤高の作家の最後の一撃。


『あまたの星、宝冠のごとく』(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、伊藤典夫・小野田和子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-05-17


 軽めの娯楽SFでは、多くの人々が遠隔操縦ロボットにリンクして社会生活を送っている世界での殺人事件という奇抜な設定がうまいジョン・スコルジー『ロックイン』、宇宙海賊なる古めかしい存在をハードSFとして書いてみせたジェイムズ・L・キャンビアス『ラグランジュ・ミッション』、そして二丁拳銃かまえたエースパイロットの猿がサイボーグ女や凄腕ハッカー少女と組んで大活躍という有無を言わさぬガレス・L・パウエル『ガンメタル・ゴースト』、この三冊が素敵でした。


『ロックイン -統合捜査-』(ジョン・スコルジー、内田昌之:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-04-26

『ラグランジュ・ミッション』(ジェイムズ・L・キャンビアス、中原尚哉:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-04-21

『ガンメタル・ゴースト』(ガレス・L・パウエル、三角和代:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-02-10


 日本SFでは、とりあえず読んどけという年刊日本SF傑作選。これ一冊で今注目すべき作家は誰なのかが分かります。


『アステロイド・ツリーの彼方へ 年刊日本SF傑作選』(大森望、日下三蔵、藤井太洋、宮内悠介、上田早夕里)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-07-12


 年刊日本SF傑作選の表題作の作者、上田早夕里さんについては、本格SF短篇集『夢みる葦笛』と、海洋冒険小説『セント・イージス号の武勲』を読みました。前者はもちろん、後者も「SFの気配」が濃厚で、歴史小説やミステリの読者よりもむしろSF読者にお勧めしたい。


『夢みる葦笛』(上田早夕里)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-06

『セント・イージス号の武勲』(上田早夕里)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26


 2016年に最も活躍した作家の一人が宮内悠介さんでしょう。どう考えてもSFな『スペース金融道』、純粋ミステリ『月と太陽の盤』、さらに青春音楽小説『アメリカ最後の実験』やオカルトネタ満載の『彼女がエスパーだったころ』を出すという、傑作・話題作の連射には圧倒されました。


『アメリカ最後の実験』(宮内悠介)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-03-31

『彼女がエスパーだったころ』(宮内悠介)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-06-13

『スペース金融道』(宮内悠介)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-09-27

『月と太陽の盤 碁盤師・吉井利仙の事件簿』(宮内悠介)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-08


 恒例の短篇ベストコレクションに収録された作品を読んで、その馬鹿馬鹿しいまでの変な状況を大真面目に書くという作風を個人的に気に入ったのが両角長彦さん。ついつい気になって、デビュー作から2014年までの単行本を読みました。読んだ範囲で一番いいと思うのは『ハンザキ』かな。今年は2014年以降の作品を読んでいこうと思います。


『短篇ベストコレクション 現代の小説2016』(日本文藝家協会:編)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-07-28

『ラガド 煉獄の教室』(両角長彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-26

『大尾行』(両角長彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-13

『デスダイバー』(両角長彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-09-29

『便利屋サルコリ』(両角長彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-08-31

『ハンザキ』(両角長彦)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-08-24


 その他ミステリとしては、死が「日常」である戦場で起きた「非日常」の謎に挑むコック兵たちの姿を通じて戦争の狂気を描く深緑野分『戦場のコックたち』が圧巻でした。他にポーランド文学史上ほぼ唯一といってよい古典ホラー作家による鉄道奇譚集、ステファン・グラビンスキ『動きの悪魔』が、鉄道マニアの心情を見事にとらえていて印象的。変化球として、現代の人気作家たちが怪人二十面相の謎に挑む『みんなの少年探偵団』も面白かったです。


『戦場のコックたち』(深緑野分)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-05-23

『動きの悪魔』(ステファン・グラビンスキ、芝田文乃:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-01-14

『みんなの少年探偵団』(万城目学、湊かなえ、小路幸也、向井湘吾、藤谷治)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-01-18



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2016年を振り返る(3)[小説] [年頭回顧]

 2016年に読んだ海外小説のなかでは、《ニューヨーカー》掲載作品傑作選『ベスト・ストーリーズ』の三冊が印象に残っています。粒揃いの短篇アンソロジーです。


『ベスト・ストーリーズⅠ ぴょんぴょんウサギ球』(若島正:編、岸本佐知子、中村和恵、他:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-04-11

『ベスト・ストーリーズⅡ 蛇の靴』(若島正:編、岸本佐知子、他:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-05-18

『ベスト・ストーリーズⅢ カボチャ頭』(若島正:編、松田青子、他:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-09-15


 海外小説アンソロジーといえば、岸本佐知子さんが選んで翻訳した傑作選が、どれも変な話ばかりで個人的に非常に好み。


『コドモノセカイ』(岸本佐知子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-01-19

『楽しい夜』(岸本佐知子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16


 他に、カレン・ラッセルとミック・ジャクソンの短篇集、そして金原瑞人さんが定番の怪談を集めて翻訳しなおした子供向けホラー短篇アンソロジーも良かった。


『レモン畑の吸血鬼』(カレン・ラッセル、松田青子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-03-15

『10の奇妙な話』(ミック・ジャクソン、田内志文)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-04-19

『八月の暑さのなかで』(金原瑞人:編集・翻訳、佐竹美保:イラスト)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-04-12


 長篇では、シャーリイ・ジャクスンとセサル・アイラが、それぞれ展開が読めない奇妙な話を豪腕で読ませてくれました。


『日時計』(シャーリイ・ジャクスン、渡辺庸子:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-05-26

『文学会議』(セサル・アイラ、柳原孝敦:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-03-08


 国内では、まずは様々な文芸ジャンルにおける新鮮ですごいとこだけざざっと集めた文学ムック「たべるのがおそい」の発刊がめでたい。


『たべるのがおそい vol.1』(穂村弘、岸本佐知子、西崎憲:編集)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-04-18

『たべるのがおそい vol.2』(石川美南、宮内悠介、穂村弘、津村記久子、四元康祐、西崎憲:編集)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-19


 アンソロジーとしては、まず『美術手帖』に連載された驚愕の小説アート集『小説の家』に度肝を抜かれましたし、『十年後のこと』の安定した出来栄えには感心させられました。


『小説の家』(福永信:編、山崎ナオコーラ、最果タヒ、円城塔、他)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-11-01

『十年後のこと』(小山田浩子、最果タヒ、松田青子、森絵都、他)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-21


 作家別では、まずは笙野頼子さんの最新長篇『ひょうすべの国』が凄い。とにかく凄いので、紹介だけでも目を通して下さい。今のこの国を生きるために。それと小山田浩子さんの『穴』文庫版解説にもしびれた。


『植民人喰い条約 ひょうすべの国』(笙野頼子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-11-29

『読んでくれてありがとう/書いてくれてありがとう(小山田浩子『穴』文庫版解説)』(笙野頼子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-08-10


 津村記久子さんと松田青子さんは、エッセイを除けば、それぞれ短篇集一冊だけ読みました。どちらもすごく面白いのです。


『浮遊霊ブラジル』(津村記久子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-25

『ワイルドフラワーの見えない一年』(松田青子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-09-01


 矢崎存美さんは、人気シリーズを着実に書き下ろしてくれました。『食堂つばめ』は完結。


『ドクターぶたぶた』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-07-14

『ぶたぶたの花束』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12

『居酒屋ぶたぶた』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-14

『食堂つばめ7 記憶の水』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-06-15

『食堂つばめ8 思い出のたまご』(矢崎存美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-11-17


 町田康さんは、生活や雑事がどんどん幻想になってゆく独特の作品がインパクト。


『珍妙な峠』(町田康)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-15

『リフォームの爆発』(町田康)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-03-16

『記憶の盆おどり』(町田康)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-11-22


 しかし何といっても強烈インパクトだったのは、『義経記』と『宇治拾遺物語』をぶっちぎり現代文学として語り直した長篇。『ギケイキ』は、あまりのことに定番現代語訳と比べ読みするはめに。『宇治拾遺物語』(町田康:翻訳)と同じ巻に収録された『今昔物語』(福永武彦:翻訳)、『日本霊異記/発心集』(伊藤比呂美:翻訳)も素晴らしかった。


『ギケイキ 千年の流転』(町田康)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-07-05

『義経記』(高木卓:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06

『宇治拾遺物語(日本文学全集08収録)』(池澤夏樹:編集、町田康:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-02-18

『今昔物語(日本文学全集08収録)』(池澤夏樹:編集、福永武彦:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-02-17

『日本霊異記/発心集(日本文学全集08収録)』(池澤夏樹:編集、伊藤比呂美:翻訳)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-02-16


 本谷有希子さん、小山田浩子さん、川上弘美さん、それぞれ一冊だけ読みましたが、どれも圧倒的でした。


『異類婚姻譚』(本谷有希子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-04-25

『穴』(小山田浩子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-08-09

『このあたりの人たち』(川上弘美)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-09-28


 斉藤倫さん、津原泰水さん、万城目学さん、西崎憲さん、期待を裏切らない安定した面白さで心を揺さぶってくれました。


『せなか町から、ずっと』(斉藤倫、 junaida :イラスト)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21

『とうだい』(斉藤倫:文、小池アミイゴ:絵)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-09-20

『ヒッキーヒッキーシェイク』(津原泰水)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-09-21

『バベル九朔』(万城目学)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20

『ゆみに町ガイドブック』(西崎憲)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-06-22



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2016年を振り返る(2)[ダンス公演] [年頭回顧]

 2016年に観た海外カンパニー来日公演としては、まずはインバル・ピント&アヴシャロム・ポラックとフィリップ・ドゥクフレの、夢の舞台(文字通り)が印象に残っています。夢、それも体調のすぐれないときに見る淡い悪夢を見ている感覚が生々しかった。


『DUST ダスト』(インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-02-01

『コンタクト CONTACT』(フィリップ・ドゥクフレ振付、カンパニーDCA)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-31


 東京芸術劇場で上演されたTACT/FESTIVAL 2016 の公演三本は、大人も子供も楽しめる作品ながら「人間の尊厳とは何か」といった今日的なテーマを巧みに伝えてくれるのに感心しました。今年も楽しみ。ぜひ子供連れで観に行ってほしい好企画です。


『空飛ぶ男たち Men with Soles of Wind』(ソラス・デ・ヴェント)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-05-09

『ストイック Stoik』(カンパニー・レ・ギューム)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-05-10

『リネア(Linea) ダンシングロープ!』(カンパニー・ドゥッシュドゥッスゥ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-05-11


 ドイツ表現主義舞踊というと何となく堅苦しいイメージというか偏見があったのですが、スザンネ・リンケの『ドーレ・ホイヤーに捧ぐ』の恋愛至上主義をぶっ飛ばすような辛辣なユーモアと過剰な苦々しさには、良い意味で予想を裏切られて嬉しかった。今年のピナ・バウシュ(ヴッパタール舞踊団)の来日公演への期待も高まります。


『ドーレ・ホイヤーに捧ぐ 『人間の激情』『アフェクテ』『エフェクテ』』(スザンネ・リンケ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-13


 国内カンパニーでは、まずはこれが最後の「トヨタコレオグラフィーアワード」最終審査会が強烈でした。個人的に思い入れがあるダンサー・振付家が受賞してほしいという気持ちを抱えながら、どの作品もドキドキしながら観ました。


『トヨタコレオグラフィーアワード2016 最終審査会』
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-08-08


 そのトヨタコレオグラフィーアワード2016に参加した横山彰乃さんが踊る「東京ELECTROCK STAIRS」は、今年は一回しか観られなかったのですが、キュートで泣きそうなくらい素敵でした。高橋萌登さんのダンスにはいつも魂抜かれる思い。管尾なぎささんとのデュオ公演も良かった。今年は高橋萌登さんのダンスをもっとたくさん観たい。


『前と後ろと誰かとえんを壊せ』(東京ELECTROCK STAIRS、KENTARO!!、高橋萌登)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-12

『0o。(スーパースリーパースリー)』(高橋萌登×管尾なぎさ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-06-06


 一方、トヨタコレオグラフィーアワード2016に参加した渡邉尚さんのフロア・ジャグリング公演『WHITEST』は驚きの連続。カンパニー デフラクトの来日公演『フラーク』もそうでしたが、自分のなかにあった「ジャグリング」というもののイメージがどんどん刷新されてゆきます。


『WHITEST』(山村佑理、渡邉尚、カンパニー「頭と口」)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-11-07

『フラーク』(カンパニー デフラクト)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-18


 勅使川原三郎さんと山下洋輔さんが共演するというだけで凄いのに、本物の馬が舞台上で「踊る」ということでも話題をさらった『up』は、とにかく凄かった。他にも勅使川原三郎さんの公演は外れがない安定のクオリティが素晴らしい。今年は鰐川枝里さんの活躍にも期待したいです。


『up』(勅使川原三郎、山下洋輔、佐東利穂子、馬)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-11

『シナモン』(勅使川原三郎、佐東利穂子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-05-02

『白痴』(勅使川原三郎、佐東利穂子、鰐川枝里)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-20


 異種分野のエキスパート同士の共演ということでは、池田扶美代さんと加藤訓子さんの共演、山田うんさんと芳垣安洋さんの共演、という「ダンス×パーカッション」の公演が熱かった。クロスカルチャーという意味では、北村明子さん、白井剛さん、アジア各国との文化共鳴の試みが印象的でした。


『クロスグリップ』(振付:池田扶美代、パーカッション:加藤訓子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-01-12

『Co.山田うん ダンスライヴ with 芳垣安洋アンサンブル』
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-07-04

『Cross Transit』(北村明子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

『原色衝動』(白井剛、キム・ソンヨン)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-02-29


 個人的に好きなダンサー・振付家の今年の公演としては、中村恩恵さんの『ハムレット』、関かおりさんの『を こ』、井手茂太さんの『シカク』などが印象に残っています。コンドルズ恒例さいたま公演『LOVE ME TenDER』における「僕たちコンドルズ・コント班、通称“二軍”は、一度でいいから蜷川さんに舞台を見てもらいたいと思って毎回しょうもないコントを続けてきましたが、それも叶わなくなりました!」という絶叫は2016年のハイライト。


『DEDICATED 2016 DEATH 「ハムレット」』(中村恩恵、首藤康之)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-04

『を こ』(関かおり、PUNCTUMUN)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-02-12

『シカク』(井手茂太、斉藤美音子、イデビアンクルー)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-24

『ハウリング』(井手茂太、斉藤美音子、イデビアンクルー)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-03-22

『ロミオとジュリエット』(小野寺修二、カンパニーデラシネラ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19

『あの大鴉、さえも』(小野寺修二)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-10-17

『錆からでた実』(束芋、森下真樹、鈴木美奈子)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-07-11

『LOVE ME TenDER』(構成・振付:近藤良平、コンドルズ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-06-20


 他には、耳の不自由な人とそうでない人を想像力でつなごうとする試み『ノイズの海』、演劇とダンスを一体化させた『インフルエンデ』、もはや古典の風格を備えた『愛と精霊の家』などが印象に残っています。


『ノイズの海』(南村千里)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-12-19

『インフルエンデ』(まことクラヴ)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-01-25

『愛と精霊の家』(金森穣、井関佐和子、小尻健太、Noism0)
http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2016-08-22



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