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『ガンメタル・ゴースト』(ガレス・L・パウエル、三角和代:翻訳) [読書(SF)]


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 アクアク・マカーク。この単純な言葉からすべてが生まれた。キャッチーで意外とシンプル、ここから物語を紡ぐには猿が戦闘機のパイロットとして説得力のある世界を作らねばならなかった。
(中略)
アクアク・マカークがまさにそこで待っていた。特大の葉巻をふかし、白毛交じりの顔にボンクラの笑みを貼りつけて。
「おまえがもどってくるって、わかってたぜ」彼は言った。彼は正しかった。ぼくは彼を振り切れたことがない。きっとこれからも。
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Kindle版No.4929、4944


 片目に革の眼帯、腰には二丁拳銃。英国空軍が誇るエースパイロットとして長年ドイツ軍のニンジャ部隊と闘ってきたその猿の名は、アクアク・マカークだった。伸縮自在の長棒をあやつる女サイボーグ、凄腕のハッカー少女らと共に、皇太子を守りつつ天竺に向かうのかと思いきや、原子力飛行船で空を飛び回って世界を救うために大暴れ。疾走感あふれる痛快アクションSF長編。文庫版(東京創元社)出版は2015年12月、Kindle版配信は2015年12月です。


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伸縮式カーボン・ファイバーの棒を手にして回転させた。ずしりとした重みが心強かった。
(中略)
 ヴィクトリアの型はヨーロッパ伝統の棒を使った武術と、日本の杖道と棒術から拝借した動きを組み合わせたものだ。脳の人工装具に練習の模様を記録し、パリ近くにある研究所でライヴ・ストリーミングとして流し、彼女の再建を手がけた外科医たちがこのデータを利用し、自前と人工の神経がいまなお続けている融合の過程をモニターしている。
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Kindle版No.157


 事故で脳の一部をジェルウェア(人工神経組織)に取り換えるサイボーグ手術を受けた元ジャーナリストのヴィクトリアは、元夫が殺されて脳および意識のバックアップデータを奪われるという事件に巻き込まれて危うく殺されそうに。なぜ夫と自分が狙われたのか。その謎を追う彼女は犯人と対決することになったが、事件の背後には恐るべき陰謀が……。


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 スピットファイア戦闘機のコックピットには、航空燃料と猿の糞の悪臭が充満していた。操縦桿を握るオナガザル科マカーク属の猿は、毛深い手にありったけの力を込めて翼を水平に保たねばならなかった。(中略)煤けた飛行服、片目に革の眼帯をつけ、腰の左右にクロームメッキのリボルヴァーを提げた猿。
(中略)
 アクアク・マカークはいいほうの片目で男をにらみ、黄色い歯で短くなった葉巻を嚙んだまま答えた。「ダイキリを頼む」彼はベルトを外し、ふたつのホルスターをテーブルにドンと叩きつけた。「それからバナナを一、二本かき集められたら、そいつもよろしく」
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Kindle版No.324、361、367


 長年に渡ってドイツ軍と戦い続けてきた、アクアク・マカーク。英国空軍が誇るエースパイロット。決して負けない不死身の猿。だが、どうも様子が変だ。熱線を発射してあたりをなぎ払うドイツ軍のトライポッド(ウォーカーマシン)、上空からパラシュート降下しながらシュリケンを放つニンジャ部隊。どっか嘘くさくねえか?


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この生き物に同情していた。どこにも行き場がなく、自分には抗えない力によって閉じこめられ、他者が決めた役割を演じるしかないのがどんなものか身に沁みてわかる。
 腰をかがめてさらに近づいた。汗、尿、汚れた毛のつんとくる臭いがする。頭蓋骨の膨らんだ皮膚の下にはジェルウェアが埋めこまれているとみていいだろう。
「本物の猿を連れてきて、知能を強化して知性をもたせたんだな」顔をあげると、ジュリーがガラス扉を押して入ったきたところだった。コンピュータのプリントアウトを手にしている。「問題は、こいつをどうするかということだが?」
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Kindle版No.1066


 英仏統合百周年記念行事にうんざりしていた皇太子。その運命は、たまたまアクアク・マカークを救い出したことで急転換することになった。解放された暴れ者の猿(力を封じる呪文つき)、長棒を振り回す女サイボーグ、凄腕のハッカー少女。三人のお供と共に、経典をとりに天竺へ……ではなくて、世界の破滅を目論む巨大な陰謀と闘うことになったのだ。いやマジで。


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「殺し? 違いねえぜ、スイートハート」毛深い手首を一捻りして、彼は葉巻を車の通らないアスファルトに飛ばした。「問題は、おれたちはその件でどうするかだ」
 メロヴィクはしっかり目を合わせた。
 アクアク・マカークは腰をボリボリ引っかき、そこにない二丁のリボルヴァーを握る仕草をした。「ドアを蹴破り、大暴れする。いつものことさ。なんだよ、もっといい考えがあるか?(中略)この件じゃ、おれたちみんなつらい思いをしてるわけよ。だから、ここに揃ってる。いまこそ、一泡吹かせるときだろ? おれのことを言わせてもらうと、腹がたってるから、物をブッ壊して、人を痛めつけてやりたい」
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Kindle版No.1995、3232


 ついに原子力飛行船の上に集結した一行。敵はあまりにも強大だった。万が一にも勝ち目のない戦い。でも、諦めたらそこで世界終了だよ。


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「すべてが混乱している。自分たちの命を賭けて戦っているが、どうしたらいいかわからないでいる。危うくなっているものが多すぎるし、解決策が見つからない。母は空軍も海軍も押さえているが、わたしたちにはなにがある?」
 壁が金属音をたてて振動した。ジュリーの手がメロヴィクの頬にふれた。髪をなで、整えた。
「わたしたちには猿がいるでしょ」
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Kindle版No.3975


 そう、わたしたちには猿がいる。アクアク・マカークが。


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 くちびるにきっと力が入る。ただじゃ済まさないから。あいつらはフランケンシュタインからなにも学ばなかったの? 上の寝台に積んだ武器からオートマティック銃を手にしてマガジンを調べた。ずしりとした冷たい感触。
 怪物たちが里帰りするからね。
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Kindle版No.3278


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「自分のやるべきことはわかってる?」
 アクアク・マカークは歯を剥きだして笑った。
「いつもやってることと同じだろ?」弾込めしたコルトをどちらもホルスターにもどし、銃身をまわした。「大暴れして人を痛めつける」
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Kindle版No.3278、4278


 というわけで、映画的というか、むしろゲーム的な勢いで疾走する軽快なアクションSF長編です。アクアク・マカークが活躍するシリーズ第一作ということで、続きも楽しみ。

 なお、オマケとして、原型となった短篇『アクアク・マカーク』も収録されています。こちらは、まあ、『BILLY BAT』(浦沢直樹)みたいな話。設定も何もかも長編版とは異なりますが、アクアク・マカークのイメージは同じ。この猿が読者を魅了したことから、すべてが始まったようです。


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 このゲームの魅力はそこにある。簡単に言えば、みんなあの猿が大好き。彼がいつまでも飛びつづけることを祈る。
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Kindle版No.929



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『まばたき』(穂村弘、酒井 駒子:絵) [読書(小説・詩)]

 蝶が羽ばたく、鳩時計のハトが顔を出す、猫がネズミに飛び掛かる、紅茶に落とした角砂糖が溶ける、そして少女がまばたく。その一瞬をとらえた美しくもおそろしい絵本。単行本(岩波書店)出版は2014年11月です。

 絵本ですが、文章はほとんどありません。実のところ「しーん」「カチッ」「はっ」「ちゃぽん」「みつあみちゃん」という五つの言葉がすべて。絵と構成だけで、深い感銘と畏怖の念を覚えさせる作品です。

 連続している時間のなかからある一瞬を取り出して、外界、室内、テーブルの上、少女の顔、という具合に視点を近づけながら、その一瞬に起きた変化をそれぞれ複数枚の絵でとらえます。最後は『邯鄲の夢(一炊の夢)』をさらに極限まで突き詰めたような境地に到達することに。

 ラスト一枚で大人は衝撃を覚えることになりますが、はたして子供はどう感じるのでしょうか。時間というものの不可思議さに気づく年頃に、そっと読ませてあげたい一冊です。



タグ:絵本 穂村弘
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『猫の急病対応マニュアル』(佐藤貴紀) [読書(教養)]


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 飼い主さんが猫の異変に気づいた場合はすぐに病院に連れて行くことが一番望ましいでしょうが、病院が休みのときや仕事が忙しいとき、旅行先にいるときなど、すぐに獣医師に診察してもらえない場合もあるのではないでしょうか。そんなとき、猫の病状が深刻なのか、それとも様子を見ても大丈夫なのかどうかのある程度判断ができるに越したことはありません。
 それに、病院に連れて行くにしても、その前に家でできる応急手当を施しておけば、大事に至らずに済むケースも多く存在します。
 本書ではそうしたとき、飼い主さんが慌てふためかないように、主な症状と原因、さらに応急処置法を記しました」
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単行本p.3


 猫の様子がおかしいと思ったとき、考えられる原因と飼い主にできる応急処置について、コンパクトにまとめた一冊。単行本(鉄人舎)出版は2014年6月です。

 猫の医学書や治療マニュアルはけっこう市販されているのですが、本書の特徴は「とっさの対応(応急手当て)」に的を絞っていること。項目は病気の原因となっている箇所ではなく症状や異変が生じている部位ごとに分類され、飼い主がすべき処置の順番はフローチャートで明示されています。頭がパニックになっているとき、とっさに手にするための一冊です。

 全体は次の5つの章から構成されており、とりあえず「原因」ではなく「症状」ベースで該当する項目を見つけられるように工夫されています。


「第1章 顔[目・鼻・耳・口]」

  目が腫れている
  目やにが出る
  涙の量が多い
  くしゃみ・鼻水が出る
  鼻が乾いている、等

「第2章 全身・脳」

  元気がなく、体が熱い
  呼吸が速い
  触ると痛いのか、怒る
  体のどこからか出血している
  痙攣を起こしている
  歩き方がフラフラしている、等

「第3章 尿[泌尿器]」

  水をたくさん飲み、おしっこをたくさんする
  尿の量が異常に減った
  気が付くとトイレばかり行っている
  尿が臭い、濁っている
  尿から甘いにおいがする、等

「第4章 お腹[消化器]」

  吐いている(水を飲んでも吐く)
  血を吐いた
  異物(おもちゃや、食べ物など)を飲み込んでしまった
  下痢をしている
  便が2日以上出ない、等

「第5章 皮膚」

  腫れている場所がある
  皮膚が赤い
  フケが出ている
  デキモノがある、等


 それぞれの項目には、まず「主な症状と原因」として概説が書かれ、続いて「応急処置」としてどういう場合には何をすべきかが解説されます。さらにフローチャート(はい/いいえ、の矢印に沿って進むと処置に辿り着く)で分かりやすくまとめられているので、時間または心の余裕がないときは、文章を読まなくてもとりあえず対処できるように配慮されています。

 あくまで症状ベースなので、同じ病因から生じ得る複数の症状が別々の項目に分かれて載っていることもありますが、実用的にはその方が望ましいでしょう。

 というわけで、猫を飼っている人は、全体を通読した上でとっさに手にとれる場所においておくと安心。ただ、なにげない異常の裏に深刻な病気が隠れていることもあるし、また猫は病気を隠して大したことないように装うことも多いので、「おかしいと思ったら、可能な限りすぐに動物病院へ」という原則は守りたいと思います。



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『ミューズ叢書<1> 特集『妖怪探偵・百目』対談&インタビュー』(上田早夕里、八杉将司) [読書(随筆)]

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 私にとって「妖怪」や「異形のもの」は、子供の頃から慣れ親しんできた友達にも等しい存在です。一度はどこかで作品の形にしなければ――と思っていたところ、『異形コレクション』という素晴らしいホラーアンソロジーに招待して頂く機会を得て、その後、様々な幸運に恵まれたおかげで、ここまで辿り着くことができました。
 執筆中は、自分の意思で書いているというよりも「何かに書かされている」という気持ちが強くあり、自分の中にそのような不思議な通路が開いている感覚を、何よりも大切にしながら書きました。
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Kindle版No.1035


 人気作『妖怪探偵・百目』シリーズはどのようにして生まれたのか。著者である上田早夕里さんが経緯や裏話を余すところなく語った対談&インタビュー集。Kindle版配信は2016年1月です。


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 異形コレクションは、様々なタイプの短篇ホラーを集めたアンソロジーだが、テーマによっては、SFと怪奇幻想との融合を目指した意欲的な作品を集めていた。このとき同シリーズが求めたのは、進化する妖怪、宇宙空間に潜む妖怪、科学で解き明かされたかに見えつつも新たな様相を呈する妖怪、未来へ伝承される古来の姿そのままの妖怪――すなわち《未来》と《妖怪》という、あまり類を見ない取り合わせを描く試み。これに応じて書かれた50枚の短篇「真朱の街」が、のちに『妖怪探偵・百目』シリーズとなっていく。
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Kindle版No.29


 テーマとなっている『妖怪探偵・百目』シリーズについては、以下の紹介を参考にして下さい。

  2014年07月16日の日記
  『妖怪探偵・百目1 朱塗りの街』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2014-07-16

  2015年04月14日の日記
  『妖怪探偵・百目2 廃墟を満たす禍』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-04-14

  2015年11月24日の日記
  『妖怪探偵・百目3  百鬼の楽師』
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2015-11-24


 著者である上田早夕里さんから色々と聞き出すインタビューアーの担当は、八杉将司さん。個人的に『Delivery』しか読んでないのですが、かなりのSF者という印象。

  2012年06月18日の日記
  『Delivery』(八杉将司)
  http://babahide.blog.so-net.ne.jp/2012-06-18


 二人の対話は、シリーズの原点であり、また両名ともに係わってきた、「異形コレクション」の話から始まります。


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「異形コレクション」は、ジャンルホラーの作家とSF系の作家が半々ぐらいの割合で載っていて、あれがすごくありがたかったですね。ジャンルホラーの作家さんは、同じテーマでもアプローチの仕方が全然違う。SF作家さん同士でも全然違うんだけど、非SF系の発想はさらに別の視点から見る驚きと楽しさがあって。「異形コレクション」でやっているうちに、自分が子供の頃にホラーを好きだったことを思い出して、非常に懐かしい気持ちになったんです。SFだけ書いていると、これを忘れてしまう。
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Kindle版No.141


 続いて、百目が探偵なのは私立探偵=プライベート・アイだから(駄洒落か!)とか、「凶銃」という言葉が繰り返されるのは元ネタ(小松左京の短篇)に気づいてほしかったからだとか、どうして沖縄が出てくるのかとか、さらには本来なら5巻は必要な話なのになぜ3巻で終わらせなければならなかったのか、といった様々な話題。

 登場人物の人気というネタも盛り上がります。「ある年齢以上の男性読者に非常に受けがよかった登場人物」「好き嫌いが真っ二つに割れた登場人物」「著者が“非常に気に入っている”と語る登場人物」、それぞれ誰でしょう。

 個人的には、シリーズそのものの話より著者に関する話題の方が興味深く読めました。


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自分の作品が、「真面目な人物が真面目に社会のことを考えて、理想の社会を作ろうとする話」としか評されないのがものすごく嫌で、居心地の悪いものを感じていました。それだけじゃあないんだと。だから百目シリーズでは、意図的に、それを全部ひっくり返そうとした。
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Kindle版No.347


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でも、フィクションの中で人格者を書くのが嫌なのね私は。変なことに拘り続けて、その拘りと共に破滅していく人間のほうが好きなんですよ。
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Kindle版No.531


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 百目シリーズに関しては、SFとして読めるという人もいるし、いや違うよという人もいて、それぞれに見方があるらしいんです。その幅の広さは、著者から見ると大変興味深いものでした。いま日本で、 SFというものが、どう思われているのかという意味で。
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Kindle版No.792


 というわけで、百目シリーズを気に入った方は必読といってよい充実した一冊。また、対談でもあるので八杉さんもそれなりにご自身のことを語りますし、上田さんが八杉さんにインタビューするパートも収録されていますので、八杉将司さんの読者にもお勧めです。



タグ:上田早夕里
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『飛ぶ教室 第44号(2016年冬) 金原瑞人編集号 えっ,詩? いや,短歌! それとも俳句?』(斉藤倫、最果タヒ、文月悠光) [読書(小説・詩)]


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 自分の好きな詩、歌、句で特集が組めるなんて、おそらく、これが最初で最後でしょう。詩歌に関してはまったくの門外漢で、好きなだけが取り柄のぼくが、好き勝手に作った画期的な超現代詩歌の本がこれです。きっと増刷になると思います。もし売れ残ったら、すべて買い取る覚悟でいます。
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「飛ぶ教室」第44号p.93


 冒険を続ける児童文学総合誌「飛ぶ教室」の最新号は、金原瑞人さん編集による詩歌句の特集です。現代詩については、斉藤倫、最果タヒ、文月悠光という活躍中の詩人三名を取り上げ、編集長が気に入った作品、書き下ろし新作、そしてインタビューを掲載。雑誌発行(光村図書出版)は2016年1月です。


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ここ二十年間の日本の詩、短歌、俳句の世界は
魅力的な新人が次々に登場して、
ぼくなんか、かつてゲームやコミックに
注ぎこんでいた時間がすべて、
こちらにいっているといってもいいくらいだ。
それくらい、面白い!
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「飛ぶ教室」第44号p.5


 というわけで、豪華メンバーが揃った詩歌句特集号です。


俳句
 せきしろ
 又吉直樹
短歌
 斉藤斎藤
 服部真里子
 藤本玲未
 吉岡太朗

 斉藤倫
 最果タヒ
 文月悠光


 ここでは詩の新作から一部を引用して紹介します。中学生、高校生の読者にも興味をもってもらえる題材を選んでいるようですが、作品としては全力投球。大人が読んでも問題ありません。


『種明かし』(文月悠光)より
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歩道橋から夕空見上げて
くらりとして
手のひらを空へと投げた。
途端に、ぱっと飛び散る光。
来世は決まりだ、
シルクハットから生まれる鳩。
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「飛ぶ教室」第44号p.63


『ハッピーバースデー』(最果タヒ)より
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美しいってことにしておきたい、女の子の欲望。
大嫌いだと言えることすら言い訳したいから、正義もパルコに売ってほしい。
間違っているなんて、生きている奴がどうして言えるんだろう。二酸化炭素排出。世界のためにならないきみはいつだって間違っている。文化の日。ためにならない音楽、小説、映画が好きだよ。きみも人生もプチトマトみたいに食べてみたかった。
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「飛ぶ教室」第44号p.74


『裸のATM』(斉藤倫)より
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ATMは服も着ないで
往来に立っている
じぶんたちのいなかった世界が
かつてあったことなど
考えもせずに立っている
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「飛ぶ教室」第44号p.84


『ニュームーン』(斉藤倫)より
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トランクスのすそから
さきいかが出てるなあ
こわいよね
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「飛ぶ教室」第44号p.85



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