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『まばたき』(穂村弘、酒井 駒子:絵) [読書(小説・詩)]

 蝶が羽ばたく、鳩時計のハトが顔を出す、猫がネズミに飛び掛かる、紅茶に落とした角砂糖が溶ける、そして少女がまばたく。その一瞬をとらえた美しくもおそろしい絵本。単行本(岩波書店)出版は2014年11月です。

 絵本ですが、文章はほとんどありません。実のところ「しーん」「カチッ」「はっ」「ちゃぽん」「みつあみちゃん」という五つの言葉がすべて。絵と構成だけで、深い感銘と畏怖の念を覚えさせる作品です。

 連続している時間のなかからある一瞬を取り出して、外界、室内、テーブルの上、少女の顔、という具合に視点を近づけながら、その一瞬に起きた変化をそれぞれ複数枚の絵でとらえます。最後は『邯鄲の夢(一炊の夢)』をさらに極限まで突き詰めたような境地に到達することに。

 ラスト一枚で大人は衝撃を覚えることになりますが、はたして子供はどう感じるのでしょうか。時間というものの不可思議さに気づく年頃に、そっと読ませてあげたい一冊です。



タグ:絵本 穂村弘
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