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『原色衝動』(白井剛、キム・ソンヨン) [ダンス]

 2016年2月27日は、夫婦で世田谷パブリックシアターに行って、日本の白井剛さんと韓国のキム・ソンヨンさんが共演した公演を鑑賞しました。二人が踊る85分の公演です。

 白い床(こすると耳障りな音が出る)、椅子の形をしたオブジェ(金属フレームのみ)二つ、背後に小さなパーカッションがあるだけの、比較的シンプルな舞台構成です。

 舞台背後にあるスクリーンに荒木経惟さんの写真が投影され、また舞台上に置いてあるプロジェクタからも写真が舞台上の小型スクリーンや出演者に投影されます。音楽は控えめで、虫の鳴き声など環境音が多かったように思います。

 この無機質かつ何やら不穏な印象を与える空間で二人のダンサーが踊るわけですが、激しく大きく動くシーンは少なめで、とりつかれたように何か特定の動きや対象に固執する動きが中心となります。例えば、二人が手にしている怪獣の人形。それを相手の背中に乗せたり、乗せたまま四つんばいで歩いたり。

 背景となっている荒木経惟さんの写真(怪獣人形も出てくる。血まみれシレーヌとか、海底原人ラゴンとか)とも相まって、全体的に不穏かつフェチな気配が濃厚。

 二人の関係も、ときおりキスしそうな友好的仕種を見せますが、険悪というか、相手を人間ではなくモノ扱いするような、人間性を剥奪するような、そんな表現が多くなってゆきます。苦しんでいる相手を他方が無関心に傍観しているかのようなシーンも多い。

 不意にパーカッションを叩いて攻撃的なノイズを出したり、ぶつぶつ恐怖症(トライポフォビア)を発症しそうな赤と灰色のまだら模様がダンサーの身体に投影されたり(激しく殴られ血まみれでもがいているような雰囲気)、座っていたはずの金属フレームの椅子にゆっくりと閉じ込められていったり、長いゴム紐が絡みついたり。直截的な暴力表現はありませんが、抽象化された暴力や束縛のイメージが繰り返され、落ち着かない空気が流れます。そしてそこに、身体の一部を拘束されているようにぎこちない印象を与える舞踏の動き。

 二人の顔がよく似ている(歳も同じ)ため、だんだんと区別がつかなくなるというか、同一人物を表現しているのかも知れません。

 観客の集中を強いる照明効果もあって、簡単に見当識失調が引き起こされます。体調がすぐれなかったせいもあって、嫌な目眩に襲われてしまいました。


[キャスト他]

振付・出演: 白井剛、キム・ソンヨン



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